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第32話 ピンチそれも特大の
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「コフィレさんお願いします」
「は~い」
「あっ、こっちも後でお願いします」
ノアの状態は続き、BIGボーナスを引いた為コフィーに代打ちを依頼している。
それとは別に、ナナにもBIGボーナスが訪れていた。
ナナも、ノアに続きチェリーを引き攻略法を使用。
チェリー出現率を大幅に上げ、状態に突入。
だが、最初のボーナスがBIGだったのだ。
ノアはすでに3000枚以上のメダルを獲得している。
内訳はBIG2回のREG10回。
REGの比率が高いのはノアのヒキが良かったのだろう。
それに、今しがた引いたBIGで1000枚は獲得できるだろうから、合計で4000枚以上となる。
打ち始めて1時間程でそれだけのメダルを獲得できたのだ。
ヒキが良かったのもあるが、1000枚抜きの効果が大きい。
ノアとナナに対して、俺とコフィレと夫婦は苦戦中だ。
チェリーを引っ張ってこれない。
コフィーは代打ちもこなしている為、消化ゲーム数が若干少ないから仕方がないとしても、俺と夫婦は打ち続けている。
確率は1/400だが、すでに900ゲームに達した。
投資もかなりの額だ。
俺はまだいいとしても、夫婦の予算は大丈夫だろうか。
生活に支障が出ないか心配だ。
「あまり無理はするなよ」
「大丈夫です」
旦那の方に声を掛けると大丈夫だと言う。
隣の女も頷いている。
本当に大丈夫なのか? おっ!
ここで、ようやく旦那の方がチェリーを引っ張ってくる。
「あっ!」と声がした方へ振り向くと、コフィーにもチェリーが。
まるで、それが契機のように女もチェリーを引っ張ってきた。
そして、ここまでの帳尻を合わせるかのように三人共状態に突入した。
だが、良い事ばかりでもなかった。
ナナの状態が終わってしまったのだ。
その内訳はBIGボーナス1回のREGボーナス0回。
BIG一発で抜けた事になる。
そのBIGボーナスで1000枚以上のメダルを獲得していなければ目も当てられなかっただろう。
ナナは「なんでや~」と頭を抱えていたが、そんな事もある。
持ちメダルで次のボーナスを持ってくるのを願うしかないな。
反面、ノアは順調そのもの。
順調どころか異常なまでにボーナスを引きだした。
状態中のボーナス確率はB・R合成で1/8なのだが、明らかにそれ以上の高確率で引いている。
しかも、その振り分けはほぼ1:1。
BIGボーナスを引いても転落しないものだからメダルはモリモリ増え、最早何枚出ているのかさえ分からない程だ。
メダル補給に来ているスタッフも不思議そうな顔をしている。
それはそうだろう。
このボルテージは裏返っている訳だから、一度出だしたらメダル補給は頻繁に必要となる。
だが今は1000枚抜きを駆使している為、補給頻度はいつもと比べ物にならないぐらいに早くて多い。
見ている方が気の毒になるぐらいだ。
おっと。
そんな事を言っている場合ではない。
これでチェリーを引っ張ってきていないのは俺だけだ。
投資も結構掛かっている。
皆が俺を気の毒そうに見ている。
大丈夫だからそんな顔をしないでくれ。
これまで、他の攻略法で稼いできたから軍資金には余裕がある。
チェリーもその内引っ張ってくるさ。
そう気楽に考えていたのだが、チェリーを引っ張ってきたのは開始からおよそ1700ゲーム回した所。
投資は10万エソにまで達した。
確率の4倍以上ハマった事になるが、そんな事もあるだろう。
メダル枚数に換算すると5000枚の投資。
それぐらいなら、取り戻せるだけのポテンシャルをボルテージは秘めている。
1000枚抜きと併せると尚更だ。
その間、俺以外はかなり出していた。
ノアの状態は抜けたものの、メダルはすでに1万枚をゆうに超え、2万枚を超えていそうな程だ。
夫婦も同じく状態が抜けたが、共に6000枚近いメダルを得ている。
コフィーは代打ちもあって、ゲーム数を消化できていないから状態は継続中。
出したメダルも2000枚程だ。
ナナは持ちメダルでチェリーを引き戻した。
それから数時間後。
俺達6人の周りはメダルで埋め尽くされていた。
全て俺達が出したメダルだ。
ノアと夫婦に至っては、側に置ききれず別積みされている。
そろそろか……
来るとすれば、一番出しているノアに、か。
「ノア、そろそろ来てもおかしくない、来るとすれば一番使っているお前にだろう。 来たら合図してくれ」
「分かった」
ノアは頷く。
今日、俺達6人の中で最も多く自力でチェリーを引いているのはノアだ。
必然と、攻略法を一番使っているのもノアとなる。
勿論、体感器は使っていない。
この攻略法はチェリーの周期を狙い撃つと言う物だ。
一見、普通に打っているように見えても、攻略法を使っている前提で見ると、普通に打っているのと若干違う。
スタッフが体感器を使っていると疑うのは自然だ。
ならば、体感器の使用を確認に来るはず。
現に、ノアは身をもって体験している。
今日はヒキが強い日なのか、ノアが出したメダルは相当の枚数だ。
ギルド側は体感器の使用を理由にメダルを没収しにくるだろう。
その時に体感器を使っていないと証明しなければならない。
その証明方法は、残念ながらボディーチェックで体感器が無いと確認させるしかない。
だが、ノアに二度もあんな思いはさせられない。
だから俺が身代わりになり、ボディーチェックを受ける。
そして体感器を使っていないと証明し、攻略法の使用を認めさせる。
このギルドは体感器を使わなければ、攻略法を認めているそうだからな。
注意していると、スタッフが俺達の後ろを通る頻度が増してきた。
やはり、目を付けられている。
ノアに再度注意を促す。
「ちょっとよろしいですか」
その声と同時に、俺の肩に手を置かれる感触が。
振り向くと、ギルドスタッフだった。
えっ、俺!?
まさか、俺をボディーチェックするつもりなのか?
それはそれで好都合なのだが何故?
俺もメダルを結構出し、今では投資も回収出来てはいる。
だが、ノアと比べると全然少ない。
何か他の目的があるのか?
う~ん、分からん。
俺?と自分を指さすとギルドスタッフは頷いている。
間違いとかではなさそうだ。
ノアの方に視線を送ると、首を傾げる。
コフィーや夫婦も頭に?マークが浮かんでいるような顔をしている。
まぁ、いい。
いずれにせよ、体感器を使っていないと証明し、ギルド側に攻略法の使用を認めさせなければならない。
何の用だか分からないが、とりあえずこのスタッフの話しを聞こう。
「何か?」
「ちょっと、事務所まで来てくれますか」
事務所だと。
やっぱり俺をボディーチェックするつもりか。
それは望んでいた事だから問題は無いが、最も使っているノアでは無くてなぜ俺なんだ。
不思議に思い尋ねてみる。
「事務所へ? なぜ?」
「…………とにかく来て下さい」
ごちゃごちゃ言わずにさっさと来いって感じだな。
しかし、俺の気のせいだろうか。
このスタッフ、俺を憐れんでいるような目をしている。
まさか、手荒な事はされないだろうな。
「分かった」
そう言いスタッフに付いていく。
手荒な事をするならすればいい。
そうなれば、然るべき機関へ駆け込む。
マシュウに相談してもいいだろう。
いや、マシュウはダメか。
あいつなら、このギルドに殴り込みを掛け兼ねない。
それに、出来るなら荒事は避けたい。
なんとか、話し会いで解決したいものだ。
スタッフの後に続き事務所へ入る。
中にはスタッフが数人いたが、俺が入ると一人を残し皆出て行った。
「なぜ呼ばれたか分かっているだろ」
一人残った男は抑揚のない声で俺に言う。
「いや、全く」
体感器絡みだろうと予想は付くが、それだとノアに行くはずだ。
ノアはギルマスにボディーチェックをされたと言っていたが、この男がギルマスかどうかも分からない。
それに、この男だけ事務所に残ったのもおかしい。
体感器のチェックなら使用を証明する時、証人は複数人居た方が有利になるはずだ。
それなのになぜ人払いをした。
複数人で手荒な事をする可能性は低くなったが、この男一人で暴力に訴えてくるとも考えられる。
その場合、俺は被害者となるから証人は少ない方が良い。
そう考えると、人払いした事の辻褄も合う。
くっ、覚悟を決めるしかないのか。
命までは獲るまい。
「とぼけるのか。 まぁ、いいか」
「アンタは?」
「僕はここのギルドを任されている者だ」
「ギルドを任されている? ギルマスか」
男は頷く。
この男が、ノアのボディーチェックをしたと言うギルマスか。
ギルマス権限とやらで。
ノアの時もこうやって人払いをし、ボディーチェックだけをしたのか?
もしそうなら、暴力に訴える事は無い……と願いたい。
くそ、その辺りは聞いていないな。
「そのギルマスが、俺をここに呼んだ理由は?」
「当ギルドでは体感器の使用を禁止している。 君には体感器を使った疑いが掛けられている」
「ここのギルドでの体感器使用禁止は承知している、告知もしているしな。 だが、俺は体感器なんて使っていない」
「それを証明出来るか?」
答えは勿論イエスだ。
ボディーチェックでも何でもすればいい。
「ああ、好きにしてくれ」
「!!!!!」
好きにしてくれとの俺の言葉に驚いた様子のギルマス。
体感器を使っていると思い込んでいたから、まさか俺からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったのだろう。
「ほ、本当に好きにしていいのだな!」
心なしか食い気味に念押ししてくるギルマス。
逆にそうしれくれないと、体感器を使っていないと証明できないのだから少々困る。
でも、暴力は無しの方向でお願いします。
「ああ、だが、暴力は勘弁してくれ」
俺も念を押す。
だが、ギルマスは何も答えず、ニチャアとした笑みを浮かべる。
そして、俺の方へ一歩踏み出す。
俺は一歩下がる。
「動くな!」
ギルマスが高圧的な声で言う。
それは無理な相談だ。
お前が暴力に訴えるなら、自己防衛の手段をとるしかない。
やられたらやり返す。
これは正当防衛だ。
こう見えても、俺はステゴロでは無敗を誇っている。
ちなみにだが、残念な事に勝った事もない。
俺は平和主義者だから、殴り合いなんてした事ないんだよ。
ギルマスがさらに一歩踏み出す。
俺は身構える。
それを見たギルマスが言う。
「暴力は振るわない」
「本当か」
「約束する」
言質を得たが信用は出来ない。
警戒はしておかなければ。
「しかし、ボディーチェックはさせてもらう」
ボディーチェックは歓迎する所だ。
「分かった」
そう言って、俺は両手を上げる。
ギルマスは静かに近づいて来て、まずは俺の脇腹から胸の辺りをポンポンと軽く叩く。
手を降ろせと言われたので、手を降ろすと同じようにポンポンと両手とも軽く叩く。
次いで、腰の辺りから足首まで同じく軽く叩く。
ポケット部は特に念入りに叩かれた。
勿論何もない。
「後ろを向いて下さい」
ギルマスがそう言うので後ろを向く。
同じように身体中を軽く叩かれる。
ここでもズボンのポケット部は念入りに叩かれた。
ここで少し違和感。
ギルマスの息が少し荒いのだ。
調べても体感器らしき物が出てこないからイラついているのか?
後ろを向いているので表情は分からない。
暴力は振るわないと言ったが本当だろうな。
そんな心配をヨソに、ギルマスはボディーチェックを繰り返す。
再度ズボンのポケットを入念に調べている。
確かに体感器を使っているならポケットにある可能性が高い。
だから入念に調べているのだろうと思ったが、遂にはポケットの中に手を突っ込んできた。
そして、手をウネウネしている。
いや、これはウネウネと言うよりモミモミだ。
ギクリとする。
違和感が疑惑に変わる。
イヤ、まさか……
そう思っていると、ギルマスは背後から俺を抱くようにズボンの前ポケットの中に手を滑らせる。
間髪入れずに手をウネウネ、いや違うモミモミ。
全身に鳥肌が立つ。
俺は半ば突き飛ばすようにギルマスを遠ざける。
ギルマスを見ると、頬を軽く染めて恍惚としている。
なんだその顔は。
疑惑が深まる。
「服を脱いで」
ノアの時も服を脱げと言われたらしいから、想定通りで最初は望む所だったのだが今は状況が違う。
脱ぎたくない。
すごく。
だが、体感器を使っていないと証明する為だ。
それに、疑惑は俺の勘違いと言う事もある。
でも、ヤだなぁ~。
「服を?なぜ?」
ささやかな抵抗を試みてみる。
口では冷静さを保っているようだが、内心は汗ダラダラだ。
「ハァ、た、体感器を、ハァ、し、調べる為に」
一見苦しそうだが、そうでは無い事を俺は知っている。
コレ、ヤヴァいやつや。
「つい今しがたボディーチェックをしたばかりだろ? アンタ自ら。 だから服を脱ぐ必要は無いはずだ」
ガッツリ抵抗してみる。
「服自体が、ハァ、ハァ、た、体感器かも。 ハァ、ハァ、着てみないと、ハァ、ハァ、分からない」
息を荒げながら答えるギルマス。
服自体が体感器って、んなワケあるか。
そんな体感器、元いた世界でもなかったぞ。
オーバーテクノロジーにも程がある。
「服自体が体感器って、本気で思っているのか? そんな技術があるとでも?」
さらにガッツリ抵抗してみる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ぎ、技術は、ハァ、ハァ、ひ、ハァ、ハァ、日々進歩している」
息はさらに荒くなり、顔もほんのりどころか真っ赤で目は血走っている。
これは、一歩も引く気はないな。
え~。
脱ぐの~。
ヤなんですケド。
「…………………………分かった」
「!!!!!」
脱ぐと俺が言うと、ギルマスは驚いた……いや、歓喜と恥じらいの混ざったような顔をする。
疑惑がさらに深まる。
その深さは、チャレンジャー海淵より深い。
渋々。
嫌々。
俺は服を脱ぎ始める。
その様子を、ギルマスは俺を射殺すような目で凝視している。
「………………下着は……いいよな」
下着一枚になった俺が尋ねる。
「……………………」
ギルマスは無言で俺を見つめている。
「早く済ましてくれないか」
服をチェックするなら早くして欲しいと俺が声を掛けると、ギルマスはハッとした表情になる。
「脱いで」
「えっ!?」
「下着も脱いで」
「いや、だが」
「技術は日々進歩している」
くっ、なんて無駄に便利な言葉を覚えやがったんだ。
チラリと椅子に掛かったスタッフ用の上着に目をやる。
意を理解したギルマスが「仕方ないな」と、残念そうにため息交じりに言う。
その上着をとり腰に巻くと下着を脱いだ。
そう、俺は産まれたままの姿になったのだ。
右腕に残った腕時計が最後の砦だ。
砦としては全く機能していないが……
ギルマスは俺を見つめたまま動かない。
さっさと服を調べてくれ。
「おい、早くしてくれないか」
その言葉にビクッとギルマスが反応し、脱いだ服を調べだした。
特に下着は入念に。
もちろん、何もない。
すると、ギルマスは信じられない事をしだした。
「ハァ、ハァ、ハァ、この服自体が体感器なら…… ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、着てみないと分からない」
そう言って服を脱ぎ出すギルマス。
服を着るのはさっき聞いたがちょっと待てーーーー!
今は暑い時期だから薄着だ。
しかも、ギルマスは小柄だから、服の上からでも俺の服を着られるだろう。
だから、お前が服を脱ぐ必要はないはずだ。
今の俺は防御力ゼロ。
襲われたら抗う術はない。
疑惑が俺の勘違いの可能性もあるがそれは希望的観測だ。
俺が儚い希望を抱いている間も、一枚、また一枚と服を脱いで行くギルマス。
そして、ギルマスが最後の一枚を脱いだ瞬間、その疑惑が確信に変わる。
お前、ギンギンぢゃね~か!
ギンギンぢゃね~か!!
※注)パチンコ・パチスロ店は18歳未満の方は入場できません(高校生は不可)
ネットに溢れる攻略法はガセが多いと聞きますのでご注意下さい
「は~い」
「あっ、こっちも後でお願いします」
ノアの状態は続き、BIGボーナスを引いた為コフィーに代打ちを依頼している。
それとは別に、ナナにもBIGボーナスが訪れていた。
ナナも、ノアに続きチェリーを引き攻略法を使用。
チェリー出現率を大幅に上げ、状態に突入。
だが、最初のボーナスがBIGだったのだ。
ノアはすでに3000枚以上のメダルを獲得している。
内訳はBIG2回のREG10回。
REGの比率が高いのはノアのヒキが良かったのだろう。
それに、今しがた引いたBIGで1000枚は獲得できるだろうから、合計で4000枚以上となる。
打ち始めて1時間程でそれだけのメダルを獲得できたのだ。
ヒキが良かったのもあるが、1000枚抜きの効果が大きい。
ノアとナナに対して、俺とコフィレと夫婦は苦戦中だ。
チェリーを引っ張ってこれない。
コフィーは代打ちもこなしている為、消化ゲーム数が若干少ないから仕方がないとしても、俺と夫婦は打ち続けている。
確率は1/400だが、すでに900ゲームに達した。
投資もかなりの額だ。
俺はまだいいとしても、夫婦の予算は大丈夫だろうか。
生活に支障が出ないか心配だ。
「あまり無理はするなよ」
「大丈夫です」
旦那の方に声を掛けると大丈夫だと言う。
隣の女も頷いている。
本当に大丈夫なのか? おっ!
ここで、ようやく旦那の方がチェリーを引っ張ってくる。
「あっ!」と声がした方へ振り向くと、コフィーにもチェリーが。
まるで、それが契機のように女もチェリーを引っ張ってきた。
そして、ここまでの帳尻を合わせるかのように三人共状態に突入した。
だが、良い事ばかりでもなかった。
ナナの状態が終わってしまったのだ。
その内訳はBIGボーナス1回のREGボーナス0回。
BIG一発で抜けた事になる。
そのBIGボーナスで1000枚以上のメダルを獲得していなければ目も当てられなかっただろう。
ナナは「なんでや~」と頭を抱えていたが、そんな事もある。
持ちメダルで次のボーナスを持ってくるのを願うしかないな。
反面、ノアは順調そのもの。
順調どころか異常なまでにボーナスを引きだした。
状態中のボーナス確率はB・R合成で1/8なのだが、明らかにそれ以上の高確率で引いている。
しかも、その振り分けはほぼ1:1。
BIGボーナスを引いても転落しないものだからメダルはモリモリ増え、最早何枚出ているのかさえ分からない程だ。
メダル補給に来ているスタッフも不思議そうな顔をしている。
それはそうだろう。
このボルテージは裏返っている訳だから、一度出だしたらメダル補給は頻繁に必要となる。
だが今は1000枚抜きを駆使している為、補給頻度はいつもと比べ物にならないぐらいに早くて多い。
見ている方が気の毒になるぐらいだ。
おっと。
そんな事を言っている場合ではない。
これでチェリーを引っ張ってきていないのは俺だけだ。
投資も結構掛かっている。
皆が俺を気の毒そうに見ている。
大丈夫だからそんな顔をしないでくれ。
これまで、他の攻略法で稼いできたから軍資金には余裕がある。
チェリーもその内引っ張ってくるさ。
そう気楽に考えていたのだが、チェリーを引っ張ってきたのは開始からおよそ1700ゲーム回した所。
投資は10万エソにまで達した。
確率の4倍以上ハマった事になるが、そんな事もあるだろう。
メダル枚数に換算すると5000枚の投資。
それぐらいなら、取り戻せるだけのポテンシャルをボルテージは秘めている。
1000枚抜きと併せると尚更だ。
その間、俺以外はかなり出していた。
ノアの状態は抜けたものの、メダルはすでに1万枚をゆうに超え、2万枚を超えていそうな程だ。
夫婦も同じく状態が抜けたが、共に6000枚近いメダルを得ている。
コフィーは代打ちもあって、ゲーム数を消化できていないから状態は継続中。
出したメダルも2000枚程だ。
ナナは持ちメダルでチェリーを引き戻した。
それから数時間後。
俺達6人の周りはメダルで埋め尽くされていた。
全て俺達が出したメダルだ。
ノアと夫婦に至っては、側に置ききれず別積みされている。
そろそろか……
来るとすれば、一番出しているノアに、か。
「ノア、そろそろ来てもおかしくない、来るとすれば一番使っているお前にだろう。 来たら合図してくれ」
「分かった」
ノアは頷く。
今日、俺達6人の中で最も多く自力でチェリーを引いているのはノアだ。
必然と、攻略法を一番使っているのもノアとなる。
勿論、体感器は使っていない。
この攻略法はチェリーの周期を狙い撃つと言う物だ。
一見、普通に打っているように見えても、攻略法を使っている前提で見ると、普通に打っているのと若干違う。
スタッフが体感器を使っていると疑うのは自然だ。
ならば、体感器の使用を確認に来るはず。
現に、ノアは身をもって体験している。
今日はヒキが強い日なのか、ノアが出したメダルは相当の枚数だ。
ギルド側は体感器の使用を理由にメダルを没収しにくるだろう。
その時に体感器を使っていないと証明しなければならない。
その証明方法は、残念ながらボディーチェックで体感器が無いと確認させるしかない。
だが、ノアに二度もあんな思いはさせられない。
だから俺が身代わりになり、ボディーチェックを受ける。
そして体感器を使っていないと証明し、攻略法の使用を認めさせる。
このギルドは体感器を使わなければ、攻略法を認めているそうだからな。
注意していると、スタッフが俺達の後ろを通る頻度が増してきた。
やはり、目を付けられている。
ノアに再度注意を促す。
「ちょっとよろしいですか」
その声と同時に、俺の肩に手を置かれる感触が。
振り向くと、ギルドスタッフだった。
えっ、俺!?
まさか、俺をボディーチェックするつもりなのか?
それはそれで好都合なのだが何故?
俺もメダルを結構出し、今では投資も回収出来てはいる。
だが、ノアと比べると全然少ない。
何か他の目的があるのか?
う~ん、分からん。
俺?と自分を指さすとギルドスタッフは頷いている。
間違いとかではなさそうだ。
ノアの方に視線を送ると、首を傾げる。
コフィーや夫婦も頭に?マークが浮かんでいるような顔をしている。
まぁ、いい。
いずれにせよ、体感器を使っていないと証明し、ギルド側に攻略法の使用を認めさせなければならない。
何の用だか分からないが、とりあえずこのスタッフの話しを聞こう。
「何か?」
「ちょっと、事務所まで来てくれますか」
事務所だと。
やっぱり俺をボディーチェックするつもりか。
それは望んでいた事だから問題は無いが、最も使っているノアでは無くてなぜ俺なんだ。
不思議に思い尋ねてみる。
「事務所へ? なぜ?」
「…………とにかく来て下さい」
ごちゃごちゃ言わずにさっさと来いって感じだな。
しかし、俺の気のせいだろうか。
このスタッフ、俺を憐れんでいるような目をしている。
まさか、手荒な事はされないだろうな。
「分かった」
そう言いスタッフに付いていく。
手荒な事をするならすればいい。
そうなれば、然るべき機関へ駆け込む。
マシュウに相談してもいいだろう。
いや、マシュウはダメか。
あいつなら、このギルドに殴り込みを掛け兼ねない。
それに、出来るなら荒事は避けたい。
なんとか、話し会いで解決したいものだ。
スタッフの後に続き事務所へ入る。
中にはスタッフが数人いたが、俺が入ると一人を残し皆出て行った。
「なぜ呼ばれたか分かっているだろ」
一人残った男は抑揚のない声で俺に言う。
「いや、全く」
体感器絡みだろうと予想は付くが、それだとノアに行くはずだ。
ノアはギルマスにボディーチェックをされたと言っていたが、この男がギルマスかどうかも分からない。
それに、この男だけ事務所に残ったのもおかしい。
体感器のチェックなら使用を証明する時、証人は複数人居た方が有利になるはずだ。
それなのになぜ人払いをした。
複数人で手荒な事をする可能性は低くなったが、この男一人で暴力に訴えてくるとも考えられる。
その場合、俺は被害者となるから証人は少ない方が良い。
そう考えると、人払いした事の辻褄も合う。
くっ、覚悟を決めるしかないのか。
命までは獲るまい。
「とぼけるのか。 まぁ、いいか」
「アンタは?」
「僕はここのギルドを任されている者だ」
「ギルドを任されている? ギルマスか」
男は頷く。
この男が、ノアのボディーチェックをしたと言うギルマスか。
ギルマス権限とやらで。
ノアの時もこうやって人払いをし、ボディーチェックだけをしたのか?
もしそうなら、暴力に訴える事は無い……と願いたい。
くそ、その辺りは聞いていないな。
「そのギルマスが、俺をここに呼んだ理由は?」
「当ギルドでは体感器の使用を禁止している。 君には体感器を使った疑いが掛けられている」
「ここのギルドでの体感器使用禁止は承知している、告知もしているしな。 だが、俺は体感器なんて使っていない」
「それを証明出来るか?」
答えは勿論イエスだ。
ボディーチェックでも何でもすればいい。
「ああ、好きにしてくれ」
「!!!!!」
好きにしてくれとの俺の言葉に驚いた様子のギルマス。
体感器を使っていると思い込んでいたから、まさか俺からそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったのだろう。
「ほ、本当に好きにしていいのだな!」
心なしか食い気味に念押ししてくるギルマス。
逆にそうしれくれないと、体感器を使っていないと証明できないのだから少々困る。
でも、暴力は無しの方向でお願いします。
「ああ、だが、暴力は勘弁してくれ」
俺も念を押す。
だが、ギルマスは何も答えず、ニチャアとした笑みを浮かべる。
そして、俺の方へ一歩踏み出す。
俺は一歩下がる。
「動くな!」
ギルマスが高圧的な声で言う。
それは無理な相談だ。
お前が暴力に訴えるなら、自己防衛の手段をとるしかない。
やられたらやり返す。
これは正当防衛だ。
こう見えても、俺はステゴロでは無敗を誇っている。
ちなみにだが、残念な事に勝った事もない。
俺は平和主義者だから、殴り合いなんてした事ないんだよ。
ギルマスがさらに一歩踏み出す。
俺は身構える。
それを見たギルマスが言う。
「暴力は振るわない」
「本当か」
「約束する」
言質を得たが信用は出来ない。
警戒はしておかなければ。
「しかし、ボディーチェックはさせてもらう」
ボディーチェックは歓迎する所だ。
「分かった」
そう言って、俺は両手を上げる。
ギルマスは静かに近づいて来て、まずは俺の脇腹から胸の辺りをポンポンと軽く叩く。
手を降ろせと言われたので、手を降ろすと同じようにポンポンと両手とも軽く叩く。
次いで、腰の辺りから足首まで同じく軽く叩く。
ポケット部は特に念入りに叩かれた。
勿論何もない。
「後ろを向いて下さい」
ギルマスがそう言うので後ろを向く。
同じように身体中を軽く叩かれる。
ここでもズボンのポケット部は念入りに叩かれた。
ここで少し違和感。
ギルマスの息が少し荒いのだ。
調べても体感器らしき物が出てこないからイラついているのか?
後ろを向いているので表情は分からない。
暴力は振るわないと言ったが本当だろうな。
そんな心配をヨソに、ギルマスはボディーチェックを繰り返す。
再度ズボンのポケットを入念に調べている。
確かに体感器を使っているならポケットにある可能性が高い。
だから入念に調べているのだろうと思ったが、遂にはポケットの中に手を突っ込んできた。
そして、手をウネウネしている。
いや、これはウネウネと言うよりモミモミだ。
ギクリとする。
違和感が疑惑に変わる。
イヤ、まさか……
そう思っていると、ギルマスは背後から俺を抱くようにズボンの前ポケットの中に手を滑らせる。
間髪入れずに手をウネウネ、いや違うモミモミ。
全身に鳥肌が立つ。
俺は半ば突き飛ばすようにギルマスを遠ざける。
ギルマスを見ると、頬を軽く染めて恍惚としている。
なんだその顔は。
疑惑が深まる。
「服を脱いで」
ノアの時も服を脱げと言われたらしいから、想定通りで最初は望む所だったのだが今は状況が違う。
脱ぎたくない。
すごく。
だが、体感器を使っていないと証明する為だ。
それに、疑惑は俺の勘違いと言う事もある。
でも、ヤだなぁ~。
「服を?なぜ?」
ささやかな抵抗を試みてみる。
口では冷静さを保っているようだが、内心は汗ダラダラだ。
「ハァ、た、体感器を、ハァ、し、調べる為に」
一見苦しそうだが、そうでは無い事を俺は知っている。
コレ、ヤヴァいやつや。
「つい今しがたボディーチェックをしたばかりだろ? アンタ自ら。 だから服を脱ぐ必要は無いはずだ」
ガッツリ抵抗してみる。
「服自体が、ハァ、ハァ、た、体感器かも。 ハァ、ハァ、着てみないと、ハァ、ハァ、分からない」
息を荒げながら答えるギルマス。
服自体が体感器って、んなワケあるか。
そんな体感器、元いた世界でもなかったぞ。
オーバーテクノロジーにも程がある。
「服自体が体感器って、本気で思っているのか? そんな技術があるとでも?」
さらにガッツリ抵抗してみる。
「ハァ、ハァ、ハァ、ぎ、技術は、ハァ、ハァ、ひ、ハァ、ハァ、日々進歩している」
息はさらに荒くなり、顔もほんのりどころか真っ赤で目は血走っている。
これは、一歩も引く気はないな。
え~。
脱ぐの~。
ヤなんですケド。
「…………………………分かった」
「!!!!!」
脱ぐと俺が言うと、ギルマスは驚いた……いや、歓喜と恥じらいの混ざったような顔をする。
疑惑がさらに深まる。
その深さは、チャレンジャー海淵より深い。
渋々。
嫌々。
俺は服を脱ぎ始める。
その様子を、ギルマスは俺を射殺すような目で凝視している。
「………………下着は……いいよな」
下着一枚になった俺が尋ねる。
「……………………」
ギルマスは無言で俺を見つめている。
「早く済ましてくれないか」
服をチェックするなら早くして欲しいと俺が声を掛けると、ギルマスはハッとした表情になる。
「脱いで」
「えっ!?」
「下着も脱いで」
「いや、だが」
「技術は日々進歩している」
くっ、なんて無駄に便利な言葉を覚えやがったんだ。
チラリと椅子に掛かったスタッフ用の上着に目をやる。
意を理解したギルマスが「仕方ないな」と、残念そうにため息交じりに言う。
その上着をとり腰に巻くと下着を脱いだ。
そう、俺は産まれたままの姿になったのだ。
右腕に残った腕時計が最後の砦だ。
砦としては全く機能していないが……
ギルマスは俺を見つめたまま動かない。
さっさと服を調べてくれ。
「おい、早くしてくれないか」
その言葉にビクッとギルマスが反応し、脱いだ服を調べだした。
特に下着は入念に。
もちろん、何もない。
すると、ギルマスは信じられない事をしだした。
「ハァ、ハァ、ハァ、この服自体が体感器なら…… ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、着てみないと分からない」
そう言って服を脱ぎ出すギルマス。
服を着るのはさっき聞いたがちょっと待てーーーー!
今は暑い時期だから薄着だ。
しかも、ギルマスは小柄だから、服の上からでも俺の服を着られるだろう。
だから、お前が服を脱ぐ必要はないはずだ。
今の俺は防御力ゼロ。
襲われたら抗う術はない。
疑惑が俺の勘違いの可能性もあるがそれは希望的観測だ。
俺が儚い希望を抱いている間も、一枚、また一枚と服を脱いで行くギルマス。
そして、ギルマスが最後の一枚を脱いだ瞬間、その疑惑が確信に変わる。
お前、ギンギンぢゃね~か!
ギンギンぢゃね~か!!
※注)パチンコ・パチスロ店は18歳未満の方は入場できません(高校生は不可)
ネットに溢れる攻略法はガセが多いと聞きますのでご注意下さい
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