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2章 砂界で始める大いなる術
11-2 世界を変え得るアフターライフ
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「さて。テアが私に抱く不信感として、マスターを再び邪神の糧などにするかという点があるかと思います」
言われると、テアはこくこく頷いた。
「結論から言えばありえません。邪神はマスターによって大器を得て、晩成するためにマナを取り入れて自己進化を始めています。あれが持つ技能の限りではすでに人の及ばぬ領域にあり、マスターから得られるものはありません」
「むっ。出がらしみたいに言われるのも何かイヤな――もがっ!?」
「イオン、続けていいよ」
どっちに転んでも怒られるのは流石に理不尽なので口を封じておく。
テアはこういうところは感情に正直すぎるので仕方ない。
「加えて言うなら、あなたたちが言う邪神は善なる者なのです。そもそもの名は《地の聖杯》。《天の聖杯》と対になる名なのですから」
ここから本題に入るらしい。
自然と場の真剣みは増してくる。
「《天の聖杯》は神が作り、与えたと言われる神造遺物です。これらの遺物は世界各地に散見され、正しき時に正しき人の手に渡ると言われています。脅威を打ち払う伝説と共に語り継がれていることでしょう」
「うーん。聖杯は人間領で何百年も活用されているし、勇者はあの国では英雄でも、他国からすれば略奪者っていうのはずっと変わらないって聞くけどなぁ」
「はい。それこそ創造主の過ちであり、地の聖杯が生まれた理由です」
全知全能が枕詞として語られる神や創造主が過ちとはどういうことだろう?
「そうですね、実際には単なる“創造主”で全知全能には程遠かったのでしょう。けれども、その力は凄まじく、語り継がれる間に尾ひれがついて“神”になったのかと」
「要するに、良いことに使ってもらおうと配った道具の一つが思わぬ形で悪用され始めちゃった。それが《天の聖杯》ってこと?」
「その通りです」
悪用をした結果が諸国を荒らす勇者たちだ。
思考が徐々に整理されてきた。
「その悪用にどうにか対抗しようと、創造主の遺物を掻き集めて作られたのが《地の聖杯》です。神造遺物と違って制約が多いのはご存知の通りです」
「使い手を選ぶどころか、犠牲にしちゃうしね」
「……っ」
僕にとってはすでに過去のこと。
けれども、テアはそれを思い出したのか腕の締め付けが強くなった。
「邪神は個々の勇者より強いけれど、《天の聖杯》が扱う力の総量には及びません。しかし、元は《天の聖杯》対策に用意された代物です。同じ機能では競えないとわかっていたからこその仕様ですし、勝利した時のプランも用意されていました。それが私です」
アイオーンは自らの胸に手を当てて答える。
「《天の聖杯》は創造主の失敗作でした。それを正しき形に組み替える機能が《時の権能》です。ただし、それも邪神には扱う機能がありませんでした」
「呼び起こすにも犠牲がいるし、付与した機能も使い切れなかったとか、かなりガタガタな存在だったんだね」
「はい。しかし、創造主の廃品から何とかそこまで組み上げただけでもマシな結果だったのだと思われます」
「……まあ、邪神もいない衰退期の獣人領を思えば言い分はわかるよ。そこで必死になって作ったもののおかげで一時的にでも張り合えるくらいになっているんだもん」
もし、邪神がいなかったら。
そんな仮定をしてみるとテアでも否定はできないようだ。
「なるほど。本体では使えない力だからこそ、それを使える人に託した方が世のため人のためになるってわけだね。悪いことを企むどころか、最大限活用させてもらってるってわけだ」
「いえ、それどころの話ではないでしょう」
現にドワーフの役に立ち、砂界の緑化という夢まで見られている。
それだけで儲けと思ったら、アイオーンは首を振った。
「奇跡的な状況です。邪神の器になれる者とて数十年に一度の才が求められます。そして、その邪神が持つ権能を振るえる者も同等以上に希少でしょう。マスターは今の均衡――いえ、獣人領の劣勢を覆しうるのです」
「いや、まさかそこまで……」
「砂界の緑化に、この地に関わっている勇者の打倒。十分に行く末を左右する事案では?」
「あっ……」
言われてみて理解した。
確かにその通りかもしれない。
「しかし、それを強要することはありません。獣人領の宰相もそうでしたし、私が邪神から受けた使命はマスターの補助をすることのみなのですから。進むべき道はマスター自身で決められます」
「…………なるほど」
これは思った以上に責任重大なのかもしれない。
自分の動きようによっては数百年に渡る歴史に終止符を打つことができる。
そう思うと胸にずんとプレッシャーを感じてしまった。
「……エル」
その一方で、腕を締め付けるテアもいる。
二度も三度も自分の命を犠牲にしていたら一番大切な人を泣かせてしまう。
進むべき道を定めるのはなんとも難しそうだ。
しかし――。
「うん。第二の人生、大事にしたいけどひとまずの方針くらいは十分に可能性があるし達成したい。ドワーフの問題を解決して、勇者を倒して竜を救う。そこまではやってみよう?」
「はぁ。わかってる。そこまではもう決めたし、やらずにおいたら気持ち悪いもんね? 私も最大限手伝うよ」
少しばかり嫌そうだったけれど、テアはもう否定はしなかった。
そして彼女は僕の腕を放すとアイオーンと向き合う。
「イオン、今までごめんね? あなたの事情はわかった。エルを支えてくれるなら、私は嫌わないよ。一緒に頑張ろう?」
「はい、こちらこそ。テア」
二人はテーブル越しに手を伸ばし、握手をした。
ひとまずこれで問題解決だ。次の目標に向かって頑張れる。
「――というわけで、マスターに私を使ってもらうのは実益を兼ねた趣味です。おわかり頂けましたね?」
「ああん?」
和平を結んだ直後、みしりと握手に不協和音が混じった気がした。
第二章、終わり
言われると、テアはこくこく頷いた。
「結論から言えばありえません。邪神はマスターによって大器を得て、晩成するためにマナを取り入れて自己進化を始めています。あれが持つ技能の限りではすでに人の及ばぬ領域にあり、マスターから得られるものはありません」
「むっ。出がらしみたいに言われるのも何かイヤな――もがっ!?」
「イオン、続けていいよ」
どっちに転んでも怒られるのは流石に理不尽なので口を封じておく。
テアはこういうところは感情に正直すぎるので仕方ない。
「加えて言うなら、あなたたちが言う邪神は善なる者なのです。そもそもの名は《地の聖杯》。《天の聖杯》と対になる名なのですから」
ここから本題に入るらしい。
自然と場の真剣みは増してくる。
「《天の聖杯》は神が作り、与えたと言われる神造遺物です。これらの遺物は世界各地に散見され、正しき時に正しき人の手に渡ると言われています。脅威を打ち払う伝説と共に語り継がれていることでしょう」
「うーん。聖杯は人間領で何百年も活用されているし、勇者はあの国では英雄でも、他国からすれば略奪者っていうのはずっと変わらないって聞くけどなぁ」
「はい。それこそ創造主の過ちであり、地の聖杯が生まれた理由です」
全知全能が枕詞として語られる神や創造主が過ちとはどういうことだろう?
「そうですね、実際には単なる“創造主”で全知全能には程遠かったのでしょう。けれども、その力は凄まじく、語り継がれる間に尾ひれがついて“神”になったのかと」
「要するに、良いことに使ってもらおうと配った道具の一つが思わぬ形で悪用され始めちゃった。それが《天の聖杯》ってこと?」
「その通りです」
悪用をした結果が諸国を荒らす勇者たちだ。
思考が徐々に整理されてきた。
「その悪用にどうにか対抗しようと、創造主の遺物を掻き集めて作られたのが《地の聖杯》です。神造遺物と違って制約が多いのはご存知の通りです」
「使い手を選ぶどころか、犠牲にしちゃうしね」
「……っ」
僕にとってはすでに過去のこと。
けれども、テアはそれを思い出したのか腕の締め付けが強くなった。
「邪神は個々の勇者より強いけれど、《天の聖杯》が扱う力の総量には及びません。しかし、元は《天の聖杯》対策に用意された代物です。同じ機能では競えないとわかっていたからこその仕様ですし、勝利した時のプランも用意されていました。それが私です」
アイオーンは自らの胸に手を当てて答える。
「《天の聖杯》は創造主の失敗作でした。それを正しき形に組み替える機能が《時の権能》です。ただし、それも邪神には扱う機能がありませんでした」
「呼び起こすにも犠牲がいるし、付与した機能も使い切れなかったとか、かなりガタガタな存在だったんだね」
「はい。しかし、創造主の廃品から何とかそこまで組み上げただけでもマシな結果だったのだと思われます」
「……まあ、邪神もいない衰退期の獣人領を思えば言い分はわかるよ。そこで必死になって作ったもののおかげで一時的にでも張り合えるくらいになっているんだもん」
もし、邪神がいなかったら。
そんな仮定をしてみるとテアでも否定はできないようだ。
「なるほど。本体では使えない力だからこそ、それを使える人に託した方が世のため人のためになるってわけだね。悪いことを企むどころか、最大限活用させてもらってるってわけだ」
「いえ、それどころの話ではないでしょう」
現にドワーフの役に立ち、砂界の緑化という夢まで見られている。
それだけで儲けと思ったら、アイオーンは首を振った。
「奇跡的な状況です。邪神の器になれる者とて数十年に一度の才が求められます。そして、その邪神が持つ権能を振るえる者も同等以上に希少でしょう。マスターは今の均衡――いえ、獣人領の劣勢を覆しうるのです」
「いや、まさかそこまで……」
「砂界の緑化に、この地に関わっている勇者の打倒。十分に行く末を左右する事案では?」
「あっ……」
言われてみて理解した。
確かにその通りかもしれない。
「しかし、それを強要することはありません。獣人領の宰相もそうでしたし、私が邪神から受けた使命はマスターの補助をすることのみなのですから。進むべき道はマスター自身で決められます」
「…………なるほど」
これは思った以上に責任重大なのかもしれない。
自分の動きようによっては数百年に渡る歴史に終止符を打つことができる。
そう思うと胸にずんとプレッシャーを感じてしまった。
「……エル」
その一方で、腕を締め付けるテアもいる。
二度も三度も自分の命を犠牲にしていたら一番大切な人を泣かせてしまう。
進むべき道を定めるのはなんとも難しそうだ。
しかし――。
「うん。第二の人生、大事にしたいけどひとまずの方針くらいは十分に可能性があるし達成したい。ドワーフの問題を解決して、勇者を倒して竜を救う。そこまではやってみよう?」
「はぁ。わかってる。そこまではもう決めたし、やらずにおいたら気持ち悪いもんね? 私も最大限手伝うよ」
少しばかり嫌そうだったけれど、テアはもう否定はしなかった。
そして彼女は僕の腕を放すとアイオーンと向き合う。
「イオン、今までごめんね? あなたの事情はわかった。エルを支えてくれるなら、私は嫌わないよ。一緒に頑張ろう?」
「はい、こちらこそ。テア」
二人はテーブル越しに手を伸ばし、握手をした。
ひとまずこれで問題解決だ。次の目標に向かって頑張れる。
「――というわけで、マスターに私を使ってもらうのは実益を兼ねた趣味です。おわかり頂けましたね?」
「ああん?」
和平を結んだ直後、みしりと握手に不協和音が混じった気がした。
第二章、終わり
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