私のわがままな異世界転移

とみQ

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第2章 ピスタ襲来、限界を越えたその先に

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「おい!いよいよピスタの街の近くまで来たみたいだぞっ!?」

「よくわかるものだな。やはり君達の魔法は特殊だ」

 工藤の感知能力にアリーシャは素直に驚いていた。どうやらこの手の魔法には覚えがないらしいのだ。
 岩山を抜けて、視界が開けた場所に出た。遠くに石壁に囲まれた街が一望出来た。あれがピスタの街だろう。
 しかしどうも街の様子がおかしいように感じる。

「……あれ……煙じゃないかな?」

「確かに。穏やかな雰囲気じゃないわね」

 美奈、椎名も異変に気づいて呟きを漏らす。そう、遠目から見ても明らかに黒煙が上がっているのだ。察するに街で何かしらの争いが起こっているのではないか。

「工藤。何か分からないか?」

 彼に尋ねると暫し思案顔で首を捻る。

「う~ん……詳しくはわからねーが……。街の人たちが走り回ってんな。……後それを追いかける足音を感じる。……人が倒れたりもしてるな」

「何者かに襲われているという事か!?」

 アリーシャの顔色が険しくなる。これは早く助けに行った方が良さそうだ。

「椎名」
  
「はいはい行きますよ。アリーシャとでいい? 大人数は厳しいから」

 呼んだだけで意図を察しため息混じりにそう答える。私はこくりと頷く。自分の方に移動してくる椎名を見て今一意図が掴めていないようで困惑した表情を作るアリーシャ。

「? ……ハヤト、一体どうするというのだ?」

「アリーシャ、恐らく何者かに街が襲われている。事態は一刻を争うのだ。先行して椎名と街に向かってくれ。椎名の風の能力で飛んでいけばここからでも数分で街に着ける筈だ」

 相手が何者かは分からない。だがあらゆる状況に於いて、この二人が最も最善の対応をしてくれるだろう。

「じゃ、もう行くよ。アリーシャ」

「え? う、うわあーーーっ!!!?」

 言うが早いか私達の周りに一陣の強風が巻き起こる。その推力を利用してあっという間に二人は空へと上昇。アリーシャの焦ったような声が気には掛かったがそのまま街へと飛んで行ってしまった。風が収まった後に見やれば二人は最早豆粒程の大きさとなっている。それを確認しつつ工藤の方を振り返る。

「工藤。お前も走って行ってくれ。お前の足なら五分と掛かるまい」

 戦力は少しでも多い方がいい。今ならすぐに椎名達に追い付けるだろう。

「そうだな、椎名が無茶しねーか心配だしな!」

「あ、あのっ! クドーさん!」

「ん?」

 フィリアが身を乗り出してきて工藤の手を握った。

「姫様のこと、よろしくお願いします。私じゃ姫様の力になれないから……。昔から、結構無茶をする人だから」

「お、おう……。フィリアちゃん大丈夫! 俺に任しときな!」

 まんざらでもないニヤけた笑みを浮かべ、暫くフィリアの手を握り返し見つめ合う二人。椎名が見たらジト目で蹴り飛ばす姿が目に浮かぶ。

「じゃなっ! 行ってくるぜ!」

 少しだけ名残惜しそうに、最後にフィリアにウインクを一つ残し、猛然と走り去って行く工藤。結果的に椎名達とは少しタイムロスが生まれてしまったが、あの速さならば大きな問題は無いだろう。最早工藤も豆粒程の大きさになり、あっという間に見えなくなる。

「よし、では私達も急ごう」

 そして私は手に握る手綱に力を込めた。

「あ、あのっ!」

「ん? フィリア?」

 馬車のスピードを上げようとした矢先、フィリアは今度は私の方を向く。一旦そのままの速度で馬車を走られる。

「あの……出来ることならお二人も先に行って下さい! 私のせいでお二人は馬車に残って街に向かってくれてるんですよね? 私は大丈夫ですからっ!」

「……だが、もしフィリアを残して私達も先に行き、万が一何かあったらどうするのだ?」

「私なら防護魔法で馬車ごと守ってますから。街に入るのも少し経ってからにします。何なら様子が落ち着くまでこの辺りで待ってますので。それよりも姫様を守ってあげてください。昔から向こう見ずな所があって、きっと無理をしてしまうから。私じゃ姫様を守ってあげることは出来ないから」

 工藤に言ったような事を私達にも訴えてくるフィリア。余程アリーシャの事が心配なようだ。まあ幼少期からアリーシャの隣で侍女として共に過ごして来た相手が、危険な場所に身を投じるのだから当然と言えば当然の行為。だが、フィリアも決して安全という訳では無いのだ。

「……分かったのだ。では、街からの黒煙が消えるまではここで待機していてくれ。一時間でケリをつけてくる」

 少考した後、結局フィリアの防護魔法を信用し、待っていてもらう事にした。街での戦いに、戦力があるに越した事は無い。フィリアに関しては補助系の魔法は使えるようだが戦力的には足手まといになる可能性が高い。ここは比較的安全なこの辺りで待っていてもらう方が得策と考えた。

「はい! お願いします!」

 私は街道の端に馬車を止め、武器を持って道へと降りた。

「では美奈、私達も行こう」

「うん、わかった。……フィリアさん、本当に無理しないでくださいね?」

「はい。ここに隠れてるだけですから」

 フィリアは微かに笑って手を振ってくれた。

 私と美奈はフィリアが防護魔法を掛け終わるのを待ち、数分遅れで皆に次いで街へと駆けた。
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