私のわがままな異世界転移

とみQ

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間章2 椎名と工藤の腕試し

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 私こと椎名めぐみはつい最近、この異世界グラン・ダルシに足を踏み入れた。
 と言ってもどういう仕組みか、自分がいた地球からこの場所にいきなり転移してしまう、という何とも非現実的な方法でたどり着いたのだ。
 そして飛ばされてきたこの世界で、私が余りにも可愛かったものだからいきなり目の前に現れた虎みたいな魔物が涎を垂らして襲い掛かってきた。
 けれど、風の力と超人的な身体能力を得たクールビューティーな私。何だかんだで障害を華麗に乗り越えて、今ではそこら辺の魔物なんて相手にならないくらい強く成長したのだ。
 だけど、本当に怖いのは魔物なんかじゃない。この世界を滅ぼそうとしている種族、魔族だ。
 現在私はその魔族に命を狙われている。
 もちろんそれは私が可愛いすぎるから。
 時に類い稀なる才能と美貌というものは敵を作ってしまうものなのだ。
 こんな私に嫉妬した悪の権化たる魔族が、この世界に私を無理矢理引き入れて、私の全てを奪おうとしているのぴえん。
 でも、私だってそれを黙って手を拱(こまね)いて見ているつもりは毛頭ない。
 魔族を見事討ち滅ぼして、絶対に元の世界に帰ってみせる!
 そしてその目的のために、私は更に強くなってみせる!
 そんな事を思いながら、私は今日も修行に勤しむのだ。
 うんうんこんな感じかな。
 我ながら中々ドラマチックなあらすじになったんじゃないかしら。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「ひゃっほーっ!」

 ごうごうと私の耳を劈(つんざ)く風切り音と共に、私の体はどんどん上へ上へと上昇していく。
 風を操る能力に目覚めてから、早いものでもう一週間以上が過ぎた。
 私は最早、意のままに風を操り、鳥のように自由に空を滑空する事ができるようになった。
 いや、空を滑空どころか、これはもう泳いでいると言っても過言ではない。

「ふんふふんふふ~ん♪」

 鼻唄混じりに空を泳いでいく私。
 最初の頃こそちょっと怖かったけれど、いざ慣れると本当に気持ちいいものだ。
 この雲一つない異世界の澄みきった空を、今私だけが縦横無尽に駆け巡っているのだ。
 と、思いきや。
 ここから約二キロメートル程東の空に、中型の魔物を察知した。
 察知と言っても雲一つないこの空を飛んでいる中型の魔物なのであれば感知能力に頼らなくてもすでに視界に捉えてはいるのだけれど、今特筆すべきはそんなことじゃない。
 最初の頃はせいぜい三十メートルがやっとのことだった風による感知能力も、この一週間で半径五キロ圏内程にまでなったのだ。
 その感度に達したのが二日前。そこからはさらに感度が上がるということはなくなったので、もしかするとこの辺で感知スキルは限界に達したのかもしれない。
 けれど五キロ先の動向まで解るのならそれで充分と言えた。
 私は風を操ってまっすぐにその魔物の方へと向かう。 

「ギャアアッ!」

 見通しのいい空に似つかわしくないしゃがれた鳴き声にその成り。
 それは体長五メートル程のうす黒い大鷲のような魔物だった。
 私の接近に気づいた魔物は、その場で大きく羽ばたいてこちらに突風を見舞ってきた。
 挨拶もなしに攻撃してくるとかほんとデリカシーのないヤツ。
 私は左手を一薙ぎして風を相殺。次に右手を振り上げて、風の刃を発生させた。
 その風で魔物をあっという間に真っ二つ。
 その魔物は一瞬にして完全に事切れて、森の中へと落下していった。 
 魔物は森へ到達する前に魔石へと変わり、私はその先に回り込んでそれを受け止める。 

「ふう……もうこの辺の魔物じゃ相手にならないわね」 

 私はこの一週間でだいぶ強くなった……と思う。
 現に始めの頃こそ苦戦したものの、ここ最近では魔物相手に終始楽勝ムードで戦えるようになったし、その分風の扱いも見違えて上手くなったと思える。
 元々能力との相性が良かったのか、一日二日で出来るようになったことはたくさんあったけれど、それでもあの頃とは使える能力の規模も、威力も精度も比べ物にならない。

「……何か、そろそろ退屈かも」

 私は風にぽしゅんと乗っかり、仰向けになって青い空を見ながらポツリと呟いた。
 あと二日もすれば、王国からの使者が私たちのお世話になっている村、ネストにやって来る。
 そしてそのまま四人揃って王国へと旅立つ予定なのだけれど、さすがに暇を持て余してきていた。

「ふ~む……」

 私はあごに手を当て思案顔を作りながら、ふと周りの感知を始める。
 空気の流れから様々な状況が脳裏に飛び込んでくる。
 木々の揺れる様。動物。村の人々。
 実際のところそこまで精密に把握できるわけじゃないのだけれど、ここかは半径五キロ圏内の風の感知により感じられる存在、動くものは余り多くない。
 だから私は目的の彼をすぐに捉えることが出来た。

「せっかくだからちょっとちょっかい出しにいくか」

 私は暇潰しにでもと、彼の元へと飛んでいくのだった。
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