80 / 101
最終章 最強部長はロードレースでも最強を目指す
第80話 遅れた二人
しおりを挟む
私達3人は何事もなく先頭集団内でレース中盤の山岳地帯に辿り着いた。
「先に行きますよぉ」
ヒルクライムが得意な木野さんが加速を始め、先頭集団を抜け出して独走を始めた。
すかさず木野さん同様にヒルクライムが得意そうな4人の選手が、木野さんを追いかけた。
残りの先頭集団の選手は淡々と上り続ける。
優勝は諦めていないのだろうが、中盤の山岳地帯では勝負しないのだろう。
試しに周囲の選手とペースを合わせてみると、260W前後のパワーが必要だった。
私の体重は65kgだから、体重の4倍程度のパワーで上っている事になる。
一緒に走っている利男なら57kgだから228Wで上れる計算だ。
私の方が体重がある分、より大きいパワーが必要になる。
今の実力でも10分程度なら出せなくはない。
だが、ここで頑張り過ぎて消耗したら終盤で勝負が出来ない。
一度先頭集団からは遅れる事になるが、パワーを抑えてやり過ごすしかない。
「大丈夫か猛士? もうバテたのか?」
利男が徐々に先頭集団から遅れ始めた私を気遣う。
「ペースを調整してるだけだ。下りと平地で追いつく」
「分かった。先行した正と一緒に待ってるぜ!」
利男は私が追いつくと確信している様だ。
苦手なヒルクライムだけど、息切れせずに会話出来る余裕を見せたからだろうか?
信じてくれる仲間がいるのだ。
必ず追いつこう。
遂に先頭集団が見えなくなり独走する事になったが焦りはない。
去年は斜度5~10%の坂が交互に現れる中、淡々とペダルに力を込めて踏み込み続けていた。
だけど、今年は敢えてパワーを抑える位の余裕がある。
だから、斜度がキツイ10%区間で600Wくらいで加速して乗り切る事にした。
斜度が10%の箇所は数か所あるが、僅か50m以下の長さしかない。
距離で言えば非常に短いが、速度が極端に落ちるこの区間で出来るだけ速く走る事は重要だ。
速度が遅い程、走行時間が長くなるからだ。
だから、速く走りたければ遅く走らないのは鉄則だ。
去年は永遠に続くと錯覚する終わらない上り坂と思えたが、一度知ってしまえば頂上までの距離感が分かる。
予定通り、体力を節約しながら山頂に辿り着いた。
今日は応援が無いから先頭集団とのタイム差が分からない。
だが、ここからは私と愛車が得意な領域だ。
下り区間に入り、ジェットコースターの様に加速し始める。
ここでは空力性能が全てだ。
直ぐに時速60kmを越え、傾斜面でも時速50kmを下回る事はない。
去年より圧倒的に加速する愛車をコントロールする為にブレーキングに集中する。
そして、今までより速めにブレーキをかけた。
直進部分で減速を終えておくのが重要だからだ。
コーナリング中にブレーキをかけると、タイヤがグリップを失って落車するからだ。
コーナリング中は横の力がタイヤにかかっているが、減速の縦の力がタイヤに加わるとタイヤのグリップの限界を超えてしまう為だ。
平地やヒルクライムではコーナリング速度が遅いから、レース用のハイグリップタイヤを使っていれば起きない現象だ。
だが、速度が高いダウンヒルのコーナリングでは問題となる。
落車しない様に慎重に下り区間を通過し、平地区間に突入した。
先頭集団との距離は700mくらいだろうか。
思ったより離されていない。
周囲に他の選手がいなかったので、最速のラインで走行出来たからだな。
ここから先頭集団を追いかなければならない。
だが、その前に頼もしい仲間と再会出来た。
「追いつきましたよ木野さん」
前を走る木野さんに話しかけた。
「猛士さん! 一人で追いつけるなんて流石ですねぇ」
「ダウンヒルで速度が出過ぎた時は少し焦ったけどね」
「僕はダウンヒルで速度出せないで追い抜かれてしまいましたよぉ。頂上では先頭だったんですよ!」
「それは残念だったけど、ヒルクライム区間でタイムを稼いだから、まだ勝負出来るチャンスがある」
「そうですねぇ。去年はダウンヒルの入口で勝負は終わってましたからね」
「ここに利男がいないって事は、先頭集団に残っているって事か?」
「そうですよ。だから追いかけないといけないんですよ。待ってるって言われましたからねぇ」
「それは私も同じだ」
利男が先頭集団で私と木野さんの二人を待っている。
なら、二人で追いかけるしかない。
「それでは先頭を引きますよ」
「いや、二人でローテーションしよう」
私は木野さんの提案を断った。
去年と違ってアシストしてもらうだけの存在ではない。
レーサーとして成長したし、今の愛車の性能は圧倒的だ。
ここで力を発揮出来なければ、高性能バイクを購入した意味が無い。
「大丈夫ですか? 苦手なヒルクライムで消耗してないんですか?」
「消耗はしてるけど大丈夫だ。愛車のホライズンの空力性能は世界最高峰だ。平地なら木野さんより30W低いパワーで巡行出来る」
「それは反則レベルの性能差ですよぉ。でも安心しましたよ。一緒に頑張りましょう」
私は木野さんと先頭交代しながら先頭集団を追いかけた。
「先に行きますよぉ」
ヒルクライムが得意な木野さんが加速を始め、先頭集団を抜け出して独走を始めた。
すかさず木野さん同様にヒルクライムが得意そうな4人の選手が、木野さんを追いかけた。
残りの先頭集団の選手は淡々と上り続ける。
優勝は諦めていないのだろうが、中盤の山岳地帯では勝負しないのだろう。
試しに周囲の選手とペースを合わせてみると、260W前後のパワーが必要だった。
私の体重は65kgだから、体重の4倍程度のパワーで上っている事になる。
一緒に走っている利男なら57kgだから228Wで上れる計算だ。
私の方が体重がある分、より大きいパワーが必要になる。
今の実力でも10分程度なら出せなくはない。
だが、ここで頑張り過ぎて消耗したら終盤で勝負が出来ない。
一度先頭集団からは遅れる事になるが、パワーを抑えてやり過ごすしかない。
「大丈夫か猛士? もうバテたのか?」
利男が徐々に先頭集団から遅れ始めた私を気遣う。
「ペースを調整してるだけだ。下りと平地で追いつく」
「分かった。先行した正と一緒に待ってるぜ!」
利男は私が追いつくと確信している様だ。
苦手なヒルクライムだけど、息切れせずに会話出来る余裕を見せたからだろうか?
信じてくれる仲間がいるのだ。
必ず追いつこう。
遂に先頭集団が見えなくなり独走する事になったが焦りはない。
去年は斜度5~10%の坂が交互に現れる中、淡々とペダルに力を込めて踏み込み続けていた。
だけど、今年は敢えてパワーを抑える位の余裕がある。
だから、斜度がキツイ10%区間で600Wくらいで加速して乗り切る事にした。
斜度が10%の箇所は数か所あるが、僅か50m以下の長さしかない。
距離で言えば非常に短いが、速度が極端に落ちるこの区間で出来るだけ速く走る事は重要だ。
速度が遅い程、走行時間が長くなるからだ。
だから、速く走りたければ遅く走らないのは鉄則だ。
去年は永遠に続くと錯覚する終わらない上り坂と思えたが、一度知ってしまえば頂上までの距離感が分かる。
予定通り、体力を節約しながら山頂に辿り着いた。
今日は応援が無いから先頭集団とのタイム差が分からない。
だが、ここからは私と愛車が得意な領域だ。
下り区間に入り、ジェットコースターの様に加速し始める。
ここでは空力性能が全てだ。
直ぐに時速60kmを越え、傾斜面でも時速50kmを下回る事はない。
去年より圧倒的に加速する愛車をコントロールする為にブレーキングに集中する。
そして、今までより速めにブレーキをかけた。
直進部分で減速を終えておくのが重要だからだ。
コーナリング中にブレーキをかけると、タイヤがグリップを失って落車するからだ。
コーナリング中は横の力がタイヤにかかっているが、減速の縦の力がタイヤに加わるとタイヤのグリップの限界を超えてしまう為だ。
平地やヒルクライムではコーナリング速度が遅いから、レース用のハイグリップタイヤを使っていれば起きない現象だ。
だが、速度が高いダウンヒルのコーナリングでは問題となる。
落車しない様に慎重に下り区間を通過し、平地区間に突入した。
先頭集団との距離は700mくらいだろうか。
思ったより離されていない。
周囲に他の選手がいなかったので、最速のラインで走行出来たからだな。
ここから先頭集団を追いかなければならない。
だが、その前に頼もしい仲間と再会出来た。
「追いつきましたよ木野さん」
前を走る木野さんに話しかけた。
「猛士さん! 一人で追いつけるなんて流石ですねぇ」
「ダウンヒルで速度が出過ぎた時は少し焦ったけどね」
「僕はダウンヒルで速度出せないで追い抜かれてしまいましたよぉ。頂上では先頭だったんですよ!」
「それは残念だったけど、ヒルクライム区間でタイムを稼いだから、まだ勝負出来るチャンスがある」
「そうですねぇ。去年はダウンヒルの入口で勝負は終わってましたからね」
「ここに利男がいないって事は、先頭集団に残っているって事か?」
「そうですよ。だから追いかけないといけないんですよ。待ってるって言われましたからねぇ」
「それは私も同じだ」
利男が先頭集団で私と木野さんの二人を待っている。
なら、二人で追いかけるしかない。
「それでは先頭を引きますよ」
「いや、二人でローテーションしよう」
私は木野さんの提案を断った。
去年と違ってアシストしてもらうだけの存在ではない。
レーサーとして成長したし、今の愛車の性能は圧倒的だ。
ここで力を発揮出来なければ、高性能バイクを購入した意味が無い。
「大丈夫ですか? 苦手なヒルクライムで消耗してないんですか?」
「消耗はしてるけど大丈夫だ。愛車のホライズンの空力性能は世界最高峰だ。平地なら木野さんより30W低いパワーで巡行出来る」
「それは反則レベルの性能差ですよぉ。でも安心しましたよ。一緒に頑張りましょう」
私は木野さんと先頭交代しながら先頭集団を追いかけた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる