36 / 101
3章 レースチームを立ち上げる中年
第36話 忘年会と完成したチームジャージ
しおりを挟む
東尾師匠のレース終了後、表彰式に参加した。
ビギナークラスで3位に入った木野さんが表彰されるからだ。
1位の人から次々に名前を呼ばれて表彰台に上がる。
そして、3位の木野さんが最後に名前を呼ばれて表彰台に立った。
私達5人で木野さんの雄姿を写真に収める。
数日後には立ち上げたチームブログに活動記録が上がるだろう。
気を使いすぎる木野さんの事だ。
自分自身の3位入賞より、私のアシストを大々的に記事にするだろう。
そう思うと少し恥ずかし思いがこみ上げてくる。
でも、それも良いか……西野の言う通り私が負けながらも活躍する姿を見て、ロードレースを始める人が増えるかもしれない。
それならチームの広報役としては十分な働きだ。
表彰台の上で木野さんが最高の笑顔を浮かべている。
木野さんだけではない。私達にとっては、一番下のクラスで3位でも最高に嬉しい瞬間だ。
この思いを多くの人に伝えられたら良いなーー
表彰式が終了した後、チームメンバーで忘年会の約束をした。
今年のレースは今日が最後だからだ。
意外だったが幹事は西野が名乗りを上げた。
どうやら行きたいお店が決まっているようだ。
そして、お互いの健闘を称えて帰路についたのであった。
*
忘年会の会場は中華料理店だった。
私は初めてだが、西野にとっては打ち上げの定番らしい。
西野が予約したお店に、北見さん、東尾師匠、南原さん、木野さんと一緒に来ている。
「全員成人しているし、とりあえず生6つで良いか?」
北見さんが飲み物のオーダー確認をする。
希望が無ければ、とりあえず生ビールを注文する予定の様だ。
「私はコーラで」
「自分は烏龍茶で」
私は筋肉に悪影響があるからお酒関係は避ける様にしている。
同じ筋肉系の南原さんも烏龍茶を頼んだので、同じ思いなのだろう。
「なんだ中杉君と南原君は飲めんのか?」
「猛士が飲めないなんて意外ね」
北見さんと西野に驚かれる。
南原さんは兎も角、中年男性の私がお酒を飲まないのは意外と思われるようだ。
「お酒は筋肉に悪いから飲まない様にしている」
「自分も同じです。お酒より筋肉が大事です」
私がお酒を飲まない理由を説明すると、南原さんも同意した。
やはり、想像通り南原さんも同じ思いだったか。
「うっわぁ、筋肉マニアか! そんなに気を使わなくても大丈夫だろ?」
「駄目です、筋肉は繊細なんです。気にかけて下さい」
大げさに冷やかす北見さんを、南原が真顔で否定する。
「レースにかける意気込みが感じられて良いな。俺もコーラにするぜ」
師匠も筋肉系メンバーに同意する。
小柄だけど師匠も筋肉系のサイクリストだからな。
「僕は生で大丈夫です!」
木野さんの返事が空しく響く。
一番まともな発言なのだけど、何故か浮いて見える。
「あぁ、グダグダね」
西野が呆れる。
「まぁ、高校生の部活の打ち上げ気分で良いではないか」
「そんなもんかねぇ」
部活気分で楽しそうにする私を見て、北見さんがぼやいた。
結局、私と師匠と南原さんの筋肉系サイクリストの3人はお酒を注文せず、西野、北見さん、木野さんの3人だけ生ビールを注文した。
料理については西野にお任せだ。
エビチリ、チャーハン、麻婆豆腐、エビチリ、青椒肉絲、エビチリ、回鍋肉、油淋鶏、エビチリ……あれ、エビチリ多くないか?
西野の手元を見るとエビチリが大量に積まれている。
西野はエビチリが好きだったのだな。
一部料理の偏りがあったが、皆で料理を取り分けながら、今年のレースについて楽しく話あった。
そして、楽しい忘年会が終わり店を出た所で、今日のメインイベント……チームジャージのお披露目だ!
北見さんが全員にチームジャージを配布する。
これが私達のチームジャージか。
ジャージを掲げて出来栄えを確認する。
ベースカラーは赤色で文字は黒で縁取りされた金色か……派手で良いな!
背中にはチーム名であり、いつまでも仲間と楽しく走りたいとの思いを込めた『いつも一緒』の文字が書かれている。
筆で大きく書かれると、とても素晴らしい言葉に見える。
更に右袖口に『always』、左の袖口に『together』とチーム名の『いつも一緒』の英文が書かれている。
「まったり系のデザインになるかと思ったが、結構カッコよくなったな」
「そうですね。チーム名だけ聞いたらツーリングクラブみたいですからね」
北見さんと南原さんがチームジャージの感想を言う。
「格好良く見える様に、文字の配列は拘ったわよ。一応レーシングチームだからね」
「カラーは俺の好みで選んだけどな」
デザインは西野と師匠が考えてくれたのだよな。
「みんなのお陰だよ」
私は皆にお礼を言った。皆のお陰で最高のチームジャージが完成したのだから。
「来季のレースはこれを皆で着て走るのですねぇ」
木野さんが感慨深い顔でジャージを見つめている。
木野さんは今まで一人でレースに参加していたと言っていたからな。
だけど、これからは私達が『いつも一緒』にレースに参加するのだ。
「あぁ、これからはチームとしてのレース参加が増えるな」
私もこれから袖を通す、自分のチームジャージを眺めながら、来年参加するレースに想いを馳せた。
ビギナークラスで3位に入った木野さんが表彰されるからだ。
1位の人から次々に名前を呼ばれて表彰台に上がる。
そして、3位の木野さんが最後に名前を呼ばれて表彰台に立った。
私達5人で木野さんの雄姿を写真に収める。
数日後には立ち上げたチームブログに活動記録が上がるだろう。
気を使いすぎる木野さんの事だ。
自分自身の3位入賞より、私のアシストを大々的に記事にするだろう。
そう思うと少し恥ずかし思いがこみ上げてくる。
でも、それも良いか……西野の言う通り私が負けながらも活躍する姿を見て、ロードレースを始める人が増えるかもしれない。
それならチームの広報役としては十分な働きだ。
表彰台の上で木野さんが最高の笑顔を浮かべている。
木野さんだけではない。私達にとっては、一番下のクラスで3位でも最高に嬉しい瞬間だ。
この思いを多くの人に伝えられたら良いなーー
表彰式が終了した後、チームメンバーで忘年会の約束をした。
今年のレースは今日が最後だからだ。
意外だったが幹事は西野が名乗りを上げた。
どうやら行きたいお店が決まっているようだ。
そして、お互いの健闘を称えて帰路についたのであった。
*
忘年会の会場は中華料理店だった。
私は初めてだが、西野にとっては打ち上げの定番らしい。
西野が予約したお店に、北見さん、東尾師匠、南原さん、木野さんと一緒に来ている。
「全員成人しているし、とりあえず生6つで良いか?」
北見さんが飲み物のオーダー確認をする。
希望が無ければ、とりあえず生ビールを注文する予定の様だ。
「私はコーラで」
「自分は烏龍茶で」
私は筋肉に悪影響があるからお酒関係は避ける様にしている。
同じ筋肉系の南原さんも烏龍茶を頼んだので、同じ思いなのだろう。
「なんだ中杉君と南原君は飲めんのか?」
「猛士が飲めないなんて意外ね」
北見さんと西野に驚かれる。
南原さんは兎も角、中年男性の私がお酒を飲まないのは意外と思われるようだ。
「お酒は筋肉に悪いから飲まない様にしている」
「自分も同じです。お酒より筋肉が大事です」
私がお酒を飲まない理由を説明すると、南原さんも同意した。
やはり、想像通り南原さんも同じ思いだったか。
「うっわぁ、筋肉マニアか! そんなに気を使わなくても大丈夫だろ?」
「駄目です、筋肉は繊細なんです。気にかけて下さい」
大げさに冷やかす北見さんを、南原が真顔で否定する。
「レースにかける意気込みが感じられて良いな。俺もコーラにするぜ」
師匠も筋肉系メンバーに同意する。
小柄だけど師匠も筋肉系のサイクリストだからな。
「僕は生で大丈夫です!」
木野さんの返事が空しく響く。
一番まともな発言なのだけど、何故か浮いて見える。
「あぁ、グダグダね」
西野が呆れる。
「まぁ、高校生の部活の打ち上げ気分で良いではないか」
「そんなもんかねぇ」
部活気分で楽しそうにする私を見て、北見さんがぼやいた。
結局、私と師匠と南原さんの筋肉系サイクリストの3人はお酒を注文せず、西野、北見さん、木野さんの3人だけ生ビールを注文した。
料理については西野にお任せだ。
エビチリ、チャーハン、麻婆豆腐、エビチリ、青椒肉絲、エビチリ、回鍋肉、油淋鶏、エビチリ……あれ、エビチリ多くないか?
西野の手元を見るとエビチリが大量に積まれている。
西野はエビチリが好きだったのだな。
一部料理の偏りがあったが、皆で料理を取り分けながら、今年のレースについて楽しく話あった。
そして、楽しい忘年会が終わり店を出た所で、今日のメインイベント……チームジャージのお披露目だ!
北見さんが全員にチームジャージを配布する。
これが私達のチームジャージか。
ジャージを掲げて出来栄えを確認する。
ベースカラーは赤色で文字は黒で縁取りされた金色か……派手で良いな!
背中にはチーム名であり、いつまでも仲間と楽しく走りたいとの思いを込めた『いつも一緒』の文字が書かれている。
筆で大きく書かれると、とても素晴らしい言葉に見える。
更に右袖口に『always』、左の袖口に『together』とチーム名の『いつも一緒』の英文が書かれている。
「まったり系のデザインになるかと思ったが、結構カッコよくなったな」
「そうですね。チーム名だけ聞いたらツーリングクラブみたいですからね」
北見さんと南原さんがチームジャージの感想を言う。
「格好良く見える様に、文字の配列は拘ったわよ。一応レーシングチームだからね」
「カラーは俺の好みで選んだけどな」
デザインは西野と師匠が考えてくれたのだよな。
「みんなのお陰だよ」
私は皆にお礼を言った。皆のお陰で最高のチームジャージが完成したのだから。
「来季のレースはこれを皆で着て走るのですねぇ」
木野さんが感慨深い顔でジャージを見つめている。
木野さんは今まで一人でレースに参加していたと言っていたからな。
だけど、これからは私達が『いつも一緒』にレースに参加するのだ。
「あぁ、これからはチームとしてのレース参加が増えるな」
私もこれから袖を通す、自分のチームジャージを眺めながら、来年参加するレースに想いを馳せた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる