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3章 レースチームを立ち上げる中年
第29話 初めての勝利だから
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スプリント対決で勝利した私を称えてくれた師匠が、そのままコース外へ先導してくれた。
そしてピットロードに戻った所で師匠と別れた。
今日の師匠は他のチームメンバーと一緒に参加しているからだ。
だから今日のレースの話は後日会った時にする事にした。
私達のピットに戻ると西野、北見さん、南原さんの3人が出迎えてくれ、それぞれ労いの言葉をかけてくれた。
「お疲れ! スプリントだけは凄いじゃないの!」
「お疲れさん。最後を中杉君に任せたのは正解だったな」
「お疲れ様です。凄かったですよ」
ロードバイクから降りて、ピット脇に愛車を立てかけた。
皆のお陰で師匠とスプリント対決出来たのだ。
ハッキリとお礼を言わないとな。
「ありがとう御座います。皆さんが距離を稼いでくれたお陰です。あれだけ後続と距離を離してくれていたのに最後はギリギリでした」
「戻りが遅かったから少し焦ったな」
「まぁ、私にとっては想定内よ。猛士の上りの遅さは知ってるから。最終コーナーだけで追いつかれたのでしょ?」
西野に上りの遅さを指摘される。
まぁ、初めて峠を上った時からずっと一緒に走っているのだ。
私の上りの実力は西野が一番把握しているのは当然の事だな。
「その通りだよ。下りと平地区間は参加者の中で速い方だからね。最終コーナーの上りで一気に距離を詰められてしまった。南原さんが最後まで走った方が楽に勝てたのでは?」
「自分が最終走者だったらスプリントで捲られてましたよ。高速巡行で逃げ切れる相手ではなかったので。自分はアシストとしての仕事をしただけです。勝てたのは猛士さんのお陰ですよ」
南原さんが謙遜する。
南原さんはチーム内で一番年下なのに一番シッカリしている。
逆に最年長の北見さんの方がやんちゃな雰囲気なのが不思議だ。
「南原は謙遜し過ぎなんだよ。もっと堂々と自慢しようぜ。優勝なんだぜ?」
ほらね。この調子だ。
まだまだ話し足りないが、私達のレースは終わっていない。
ソロエントリーの木野さんがゴールしていないからだ。
「まだまだ話したいけど、木野さんを応援しよう。まだ頑張って走っているからな」
「そうね、先頭集団からはドロップしたけど、結構ハイペースで走っているから後数周でゴールすると思うわよ」
提案する私に西野が賛同してくれた。
私達4人はコース脇の観戦スペースに向かい、レースを観戦する事にした。
「木野さーん!」
「頑張ってー!」
「頑張れや!」
「ファイトです! 木野さん!」
木野さんがホームストレートを通過する毎に、みんなで声援を送る。
私達が声援を送る度に少し恥ずかしそうだが、嬉しそうに頷きながら走り去っていく。
そして木野さんもゴールして、ピットロードに戻って来た。
「いやぁ、皆さんのサポートのお陰で目標より速く走れましたよ」
木野さんにピットインした時にボトル交換を手伝った事を感謝された。
前回一人で参加した時は、ピットインした後に自分でドリンクを詰めたり、不足したドリンクを購入する為に自販機まで買いに行っていたそうだ。
全員ケガもなく無事に完走出来たのは良かった。
後は表彰式を待つだけだーー
*
レースが終了してピット裏の受付付近で表彰式が始まった。
先ずは男子ソロエントリーの表彰。
東尾師匠が堂々と表彰台の一番高いところに上る。
主催者の人から優勝トロフィーと賞状を受け取り、高く掲げた。私達は師匠の雄姿を写真に収めた。
続いて女子のソロエントリーの表彰……だが、知り合いがいないのでスルーした。
そして、私達が参加した団体エントリーの表彰。
私達4人で表彰台に上る。
優勝トロフィーと賞状を受け取り高々と掲げた。
木野さんと東尾師匠が写真を撮ってくれている。
僅か50cm程度の高さの簡易表彰台。
大した高さではない。だけど……私にとっては、今まで上ったどこの峠よりも遥かに高いと思える場所だった。
今の自分自身の力では絶対に立つ事が出来なかった場所だから。
表彰式が終わり、帰宅する為に駐車場で愛車の積み込みを始めた。
「なんで泣いてるのよ」
西野は突然何を言い出しているのだ。誰が泣いているのだ?
疑問に思う私と西野の目が合う……泣いているのは私か?
西野の指摘で自分が泣いている事に気付かされた。
初めての勝利で気持ちが昂り過ぎたか?
「初勝利で感動したからかな。全力で戦って負けたならスッキリ出来る。だから、今まで参加したレースは負け続けたけど最高だったよ。でも……勝てたらそれ以上に最高だった」
「感動したのは分かったけど、泣くのは帰ってからにしてよ」
西野が困惑している。
一回りも年下の女性を困らせているとはな……何をしているのだ私は!
「それじゃ、メンドクサイのは任せたよ。南原君と木野君は私が送っていくから」
車に乗った北見さんに声をかけられた。いつの間にか南原さんと木野さんも同乗している。
「チョット! 置いていくの?」
慌てて引き留めようとする西野に3人は別れの挨拶をする。
「じゃあな!」
「失礼します!」
「またご一緒しましょう!」
私と西野はあっさり置いていかれた。
置いていかれたといっても、私が車で西野を送っていけば良いだけなの事なのだがな。
だが、今は帰宅する事より、初勝利の余韻に浸っていたい……西野を少し待たせる事になるのは申し訳ないけどな。
そしてピットロードに戻った所で師匠と別れた。
今日の師匠は他のチームメンバーと一緒に参加しているからだ。
だから今日のレースの話は後日会った時にする事にした。
私達のピットに戻ると西野、北見さん、南原さんの3人が出迎えてくれ、それぞれ労いの言葉をかけてくれた。
「お疲れ! スプリントだけは凄いじゃないの!」
「お疲れさん。最後を中杉君に任せたのは正解だったな」
「お疲れ様です。凄かったですよ」
ロードバイクから降りて、ピット脇に愛車を立てかけた。
皆のお陰で師匠とスプリント対決出来たのだ。
ハッキリとお礼を言わないとな。
「ありがとう御座います。皆さんが距離を稼いでくれたお陰です。あれだけ後続と距離を離してくれていたのに最後はギリギリでした」
「戻りが遅かったから少し焦ったな」
「まぁ、私にとっては想定内よ。猛士の上りの遅さは知ってるから。最終コーナーだけで追いつかれたのでしょ?」
西野に上りの遅さを指摘される。
まぁ、初めて峠を上った時からずっと一緒に走っているのだ。
私の上りの実力は西野が一番把握しているのは当然の事だな。
「その通りだよ。下りと平地区間は参加者の中で速い方だからね。最終コーナーの上りで一気に距離を詰められてしまった。南原さんが最後まで走った方が楽に勝てたのでは?」
「自分が最終走者だったらスプリントで捲られてましたよ。高速巡行で逃げ切れる相手ではなかったので。自分はアシストとしての仕事をしただけです。勝てたのは猛士さんのお陰ですよ」
南原さんが謙遜する。
南原さんはチーム内で一番年下なのに一番シッカリしている。
逆に最年長の北見さんの方がやんちゃな雰囲気なのが不思議だ。
「南原は謙遜し過ぎなんだよ。もっと堂々と自慢しようぜ。優勝なんだぜ?」
ほらね。この調子だ。
まだまだ話し足りないが、私達のレースは終わっていない。
ソロエントリーの木野さんがゴールしていないからだ。
「まだまだ話したいけど、木野さんを応援しよう。まだ頑張って走っているからな」
「そうね、先頭集団からはドロップしたけど、結構ハイペースで走っているから後数周でゴールすると思うわよ」
提案する私に西野が賛同してくれた。
私達4人はコース脇の観戦スペースに向かい、レースを観戦する事にした。
「木野さーん!」
「頑張ってー!」
「頑張れや!」
「ファイトです! 木野さん!」
木野さんがホームストレートを通過する毎に、みんなで声援を送る。
私達が声援を送る度に少し恥ずかしそうだが、嬉しそうに頷きながら走り去っていく。
そして木野さんもゴールして、ピットロードに戻って来た。
「いやぁ、皆さんのサポートのお陰で目標より速く走れましたよ」
木野さんにピットインした時にボトル交換を手伝った事を感謝された。
前回一人で参加した時は、ピットインした後に自分でドリンクを詰めたり、不足したドリンクを購入する為に自販機まで買いに行っていたそうだ。
全員ケガもなく無事に完走出来たのは良かった。
後は表彰式を待つだけだーー
*
レースが終了してピット裏の受付付近で表彰式が始まった。
先ずは男子ソロエントリーの表彰。
東尾師匠が堂々と表彰台の一番高いところに上る。
主催者の人から優勝トロフィーと賞状を受け取り、高く掲げた。私達は師匠の雄姿を写真に収めた。
続いて女子のソロエントリーの表彰……だが、知り合いがいないのでスルーした。
そして、私達が参加した団体エントリーの表彰。
私達4人で表彰台に上る。
優勝トロフィーと賞状を受け取り高々と掲げた。
木野さんと東尾師匠が写真を撮ってくれている。
僅か50cm程度の高さの簡易表彰台。
大した高さではない。だけど……私にとっては、今まで上ったどこの峠よりも遥かに高いと思える場所だった。
今の自分自身の力では絶対に立つ事が出来なかった場所だから。
表彰式が終わり、帰宅する為に駐車場で愛車の積み込みを始めた。
「なんで泣いてるのよ」
西野は突然何を言い出しているのだ。誰が泣いているのだ?
疑問に思う私と西野の目が合う……泣いているのは私か?
西野の指摘で自分が泣いている事に気付かされた。
初めての勝利で気持ちが昂り過ぎたか?
「初勝利で感動したからかな。全力で戦って負けたならスッキリ出来る。だから、今まで参加したレースは負け続けたけど最高だったよ。でも……勝てたらそれ以上に最高だった」
「感動したのは分かったけど、泣くのは帰ってからにしてよ」
西野が困惑している。
一回りも年下の女性を困らせているとはな……何をしているのだ私は!
「それじゃ、メンドクサイのは任せたよ。南原君と木野君は私が送っていくから」
車に乗った北見さんに声をかけられた。いつの間にか南原さんと木野さんも同乗している。
「チョット! 置いていくの?」
慌てて引き留めようとする西野に3人は別れの挨拶をする。
「じゃあな!」
「失礼します!」
「またご一緒しましょう!」
私と西野はあっさり置いていかれた。
置いていかれたといっても、私が車で西野を送っていけば良いだけなの事なのだがな。
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