6 / 8
6.夢をみせて(1)
しおりを挟む
「んっ――~~!」
数年ぶりだというのに身体は容易くグレッグ様の存在を思い出してきゅうきゅうと喜悦する。
「痛くない……みたいだね。ほら、メアリーの好きな奥、優しくとんとんしよう」
腰を掴まれ甘く揺さぶられれば指で散々蕩かされた弱いところを一定のリズムで刺激される。じわじわと、そして確実に絶頂へ押し上げられるのを意識せざるを得ない状況に大きく首を振って身を捩った。
こんなの、嫌。
「ゃっ、やです、グレッグ様……止まって、くださ」
「どうして?」
晴天色の瞳に生理的な涙をたっぷり溜め睨む。旦那様に女主人らしからぬ情けない顔を見せたくない、普段ならそう思うけれど今はそんなこと言っていられない。
でも、そんな本音は全く伝わらず、うまく力の入らない腕で厚い胸板を押し返しても甘い抵抗と捉えられて諭すように纏めあげられてしまう。
愛している人に触れられているという都合のいい妄想が繰り出す事実に身体は素直に喜んで戦慄いた。
「こんなに熱くてぐちゃぐちゃにして、もっとって甘えてきてくれてるよ」
うっ、と泣きそうになる。身体だけがどんどん先走って反応して心は置き去りなのに、気持ちいいと感じるのを止められない。
彼が口端に色気をたっぷりと乗せて緩ませる。イタズラな眼差しと親指が散々弄られて敏感になりすぎている豆をぐりぐりと押し潰した。
「やっ! いやですっ、ほんとうに……っ、グレッグさまぁっ……ああぁっ!」
規則的なリズムで剛直が内側から弱いところを突き、外からは蜜を絡めた指で刺激される。
頭がおかしくなってしまいそうな刺激に耐えられる訳もなかった。
「ぁっあっ、ぁ――ッ」
大きく腰を震わせてつま先がピンッと張る。心臓が弾けるくらい大きな鼓動が全身を駆け巡る感覚が走って、じわっと涙が滲んできた。
愛しい人に触れられて感じるのは身体だけ果てた絶望感と遣る瀬なさだけだ。
こんなに苦しいのに、悲しいのに、気持ちよくて、こんな妄想をしているなんて馬鹿みたい。
こんな厭らしい妻、たとえ『ヒト』の姿でなくても彼は触れてくれなかったかもしれない。
大きな手が昔猫耳の生えていた場所をするりと撫でた。まるで、猫の耳を懐かしむように。
「本当に、夢なのが惜しいくらいだな……我が儘か」
――ああ。
夢の中でも、この方は今の私に触れてくださらないのね。
失望、諦め、苦痛――そのどれを持ったとしても表現できない感情が静かに胸を埋め尽くしたとき、静かにぽたぽたと泣く……のが常だった。妻であり、母になる3年前までは。
気づけば、私は旦那様の頬を思いっきり平手打ちしていた。
どんっ、と全体重をかけて押し返してその腕の中から逃げ出して寝台の隅に後ずさった。
「夢の中でくらい、夢を見させてくださいっ!」
旦那様は言葉を失って金色の瞳を瞠っている。私だってまさか夢の中とはいえ旦那様を叩くとは思ってもみなかった。
けれど、どんなに破廉恥で卑猥でどうしようもないくらい寂しい夢だとしてもつかの間の幸せだと錯覚していたかった。
我が儘だということくらいグレッグ様から言われなくたって分かってる。
これ以上の幸せを望むのが『ヒト』の姿でありながら寵愛を望むのが女主人としてふさわしく無いことくらい。
「義務だなんて……分かっていても、分からないふりをさせてください……嬉しく、なっちゃうんです」
数年ぶりだというのに身体は容易くグレッグ様の存在を思い出してきゅうきゅうと喜悦する。
「痛くない……みたいだね。ほら、メアリーの好きな奥、優しくとんとんしよう」
腰を掴まれ甘く揺さぶられれば指で散々蕩かされた弱いところを一定のリズムで刺激される。じわじわと、そして確実に絶頂へ押し上げられるのを意識せざるを得ない状況に大きく首を振って身を捩った。
こんなの、嫌。
「ゃっ、やです、グレッグ様……止まって、くださ」
「どうして?」
晴天色の瞳に生理的な涙をたっぷり溜め睨む。旦那様に女主人らしからぬ情けない顔を見せたくない、普段ならそう思うけれど今はそんなこと言っていられない。
でも、そんな本音は全く伝わらず、うまく力の入らない腕で厚い胸板を押し返しても甘い抵抗と捉えられて諭すように纏めあげられてしまう。
愛している人に触れられているという都合のいい妄想が繰り出す事実に身体は素直に喜んで戦慄いた。
「こんなに熱くてぐちゃぐちゃにして、もっとって甘えてきてくれてるよ」
うっ、と泣きそうになる。身体だけがどんどん先走って反応して心は置き去りなのに、気持ちいいと感じるのを止められない。
彼が口端に色気をたっぷりと乗せて緩ませる。イタズラな眼差しと親指が散々弄られて敏感になりすぎている豆をぐりぐりと押し潰した。
「やっ! いやですっ、ほんとうに……っ、グレッグさまぁっ……ああぁっ!」
規則的なリズムで剛直が内側から弱いところを突き、外からは蜜を絡めた指で刺激される。
頭がおかしくなってしまいそうな刺激に耐えられる訳もなかった。
「ぁっあっ、ぁ――ッ」
大きく腰を震わせてつま先がピンッと張る。心臓が弾けるくらい大きな鼓動が全身を駆け巡る感覚が走って、じわっと涙が滲んできた。
愛しい人に触れられて感じるのは身体だけ果てた絶望感と遣る瀬なさだけだ。
こんなに苦しいのに、悲しいのに、気持ちよくて、こんな妄想をしているなんて馬鹿みたい。
こんな厭らしい妻、たとえ『ヒト』の姿でなくても彼は触れてくれなかったかもしれない。
大きな手が昔猫耳の生えていた場所をするりと撫でた。まるで、猫の耳を懐かしむように。
「本当に、夢なのが惜しいくらいだな……我が儘か」
――ああ。
夢の中でも、この方は今の私に触れてくださらないのね。
失望、諦め、苦痛――そのどれを持ったとしても表現できない感情が静かに胸を埋め尽くしたとき、静かにぽたぽたと泣く……のが常だった。妻であり、母になる3年前までは。
気づけば、私は旦那様の頬を思いっきり平手打ちしていた。
どんっ、と全体重をかけて押し返してその腕の中から逃げ出して寝台の隅に後ずさった。
「夢の中でくらい、夢を見させてくださいっ!」
旦那様は言葉を失って金色の瞳を瞠っている。私だってまさか夢の中とはいえ旦那様を叩くとは思ってもみなかった。
けれど、どんなに破廉恥で卑猥でどうしようもないくらい寂しい夢だとしてもつかの間の幸せだと錯覚していたかった。
我が儘だということくらいグレッグ様から言われなくたって分かってる。
これ以上の幸せを望むのが『ヒト』の姿でありながら寵愛を望むのが女主人としてふさわしく無いことくらい。
「義務だなんて……分かっていても、分からないふりをさせてください……嬉しく、なっちゃうんです」
57
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

【完結】妻至上主義
Ringo
恋愛
歴史ある公爵家嫡男と侯爵家長女の婚約が結ばれたのは、長女が生まれたその日だった。
この物語はそんな2人が結婚するまでのお話であり、そこに行き着くまでのすったもんだのラブストーリーです。
本編11話+番外編数話
[作者よりご挨拶]
未完作品のプロットが諸事情で消滅するという事態に陥っております。
現在、自身で読み返して記憶を辿りながら再度新しくプロットを組み立て中。
お気に入り登録やしおりを挟んでくださっている方には申し訳ありませんが、必ず完結させますのでもう暫くお待ち頂ければと思います。
(╥﹏╥)
お詫びとして、短編をお楽しみいただければ幸いです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
【完結】愛する夫の務めとは
Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。
政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。
しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。
その後……
城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。
※完結予約済み
※全6話+おまけ2話
※ご都合主義の創作ファンタジー
※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます
※ヒーローは変態です
※セカンドヒーロー、途中まで空気です

【R18】愛され総受け女王は、20歳の誕生日に夫である美麗な年下国王に甘く淫らにお祝いされる
奏音 美都
恋愛
シャルール公国のプリンセス、アンジェリーナの公務の際に出会い、恋に落ちたソノワール公爵であったルノー。
両親を船の沈没事故で失い、突如女王として戴冠することになった間も、彼女を支え続けた。
それから幾つもの困難を乗り越え、ルノーはアンジェリーナと婚姻を結び、単なる女王の夫、王配ではなく、自らも執政に取り組む国王として戴冠した。
夫婦となって初めて迎えるアンジェリーナの誕生日。ルノーは彼女を喜ばせようと、画策する。

コワモテ軍人な旦那様は彼女にゾッコンなのです~新婚若奥様はいきなり大ピンチ~
二階堂まや
恋愛
政治家の令嬢イリーナは社交界の《白薔薇》と称される程の美貌を持ち、不自由無く華やかな生活を送っていた。
彼女は王立陸軍大尉ディートハルトに一目惚れするものの、国内で政治家と軍人は長年対立していた。加えて軍人は質実剛健を良しとしており、彼女の趣味嗜好とはまるで正反対であった。
そのためイリーナは華やかな生活を手放すことを決め、ディートハルトと無事に夫婦として結ばれる。
幸せな結婚生活を謳歌していたものの、ある日彼女は兄と弟から夜会に参加して欲しいと頼まれる。
そして夜会終了後、ディートハルトに華美な装いをしているところを見られてしまって……?

鉄壁騎士様は奥様が好きすぎる~彼の素顔は元聖女候補のガチファンでした~
二階堂まや
恋愛
令嬢エミリアは、王太子の花嫁選び━━通称聖女選びに敗れた後、家族の勧めにより王立騎士団長ヴァルタと結婚することとなる。しかし、エミリアは無愛想でどこか冷たい彼のことが苦手であった。結婚後の初夜も呆気なく終わってしまう。
ヴァルタは仕事面では優秀であるものの、縁談を断り続けていたが故、陰で''鉄壁''と呼ばれ女嫌いとすら噂されていた。
しかし彼は、戦争の最中エミリアに助けられており、再会すべく彼女を探していた不器用なただの追っかけだったのだ。内心気にかけていた存在である''彼''がヴァルタだと知り、エミリアは彼との再会を喜ぶ。
そして互いに想いが通じ合った二人は、''三度目''の夜を共にするのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる