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精霊の愛し子編
35. 部隊長さんのアドバイス
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「やはり平民を入学させるとなると、入学前の準備が必要ですね」
「字の読み書きから教えるとなると、どれくらいかかるのでしょうか」
子どもたちと土の子の家族がいなくなったサロンで、部隊長さんたちと話をしている。この家の人たちだけだと、意見が偏っちゃうからね。
部隊長さんがもう平民だからって遠慮してるけど、ここは無礼講で意見をバンバン出して。
この国の貴族は十歳から十七歳まで学校に行くが、入学する時点で字の読み書きができることが前提になっている。
庶民は十歳から十五歳くらいの間に教会付属の学校に一、二年通って、字の読み書きと簡単な計算を習うだけだ。
土の子は例外だけど、今後読み書きを教わる機会のない村に魔力量の多い子が生まれた場合、学園に入学する前に補習が必要になってしまう。
「十歳から二年間を予科として読み書きや計算、魔力操作を教え、本科を十二歳からにするのはどうでしょう。国によっては貴族でも学校は十二歳からです」
「貴族学校のようにダンスや剣など幅広く教えず魔法や薬学に特化すればそれも可能か」
トゥレボルも十二歳からだったよね。さすが二番目のお兄さんは、あちこちの国に赴任しているだけあって詳しい。
貴族は自前で家庭教師を雇えるのだから、十歳からの予科に貴族は入学させない。そうすれば貴族学校との差別化も図れるから、オレとお近づきになりたいだけの目的でウィオの学園に入学する人も減りそうだ。
土の子は年下の子と一緒に学ぶことになっちゃうけど、最初の数年は魔力量の多い子に限っては入学年齢を超えていても入学させる案が出ている。
「目に属性が出ている子どもが生まれた場合はどうすることになったのですか?」
「ルジェくんに精霊が入れない結界を張ってもらった家を用意して、貸し出す予定です」
部隊長さんはやっぱり精霊に愛されている子が生まれたときが気になるようだ。
一家で引っ越しとなったら、学園か街の中の仕事をあっせんする予定だ。もし子どもだけ引き取ってほしいと言われたら、それから考えようと棚上げになっている。今までの感じだと五年から十年に一人くらいのはずなので、今考えても状況が変わっているかもしれない。
「先ほどの土属性の子は、フォロン侯爵家で後見されるのですか?」
「ウィオラスもリュカもいるので、偏りすぎるのもよくないだろう」
「でしたらイリファス様がご当主となられる新しい家が後見されてはどうでしょう。トゥレボルの教会のように学園に所属するという意味合いで」
学園所属、いいかも。
今までのように貴族の養子になってもいいし、土の子のように貴族に取られたくないというなら学園所属ということで二番目のお兄さんの家が後見についてもいい。そんな風に選択肢が広がるのはいいことだろう。
部隊長さんは本当にいろいろと考えてくれている。今すぐ学園のお手伝いをしてほしいくらいだ。
と思ったら、お兄さんも同じことを思っていた。
「カエルラ殿が騎士団に所属していなければ、ぜひ学園を手伝ってもらいたいところです」
「イリファス様、私はもう平民ですので」
『部隊長さんと副隊長さんは、騎士を引退したら学園の先生って決まってるよ』
決めたのはオレだ。独断だけど、これ以上の適任はないのだから雇わない手はない。
「私に務まるでしょうか」
『魔力操作の取得方法を聞かれて、ある朝なんとなくって言うウィオよりは向いてるでしょ』
副隊長さんが分かるわーって顔をしている。以前に騎士団で上級魔法の使い方を聞かれて、対象に向けて撃つだけだと答えたらしい。そんなことはみんな知ってるって。聞きたかったのはコツだよ。まあ天才肌のウィオにはコツなんてないんだろう。
でもウィオだって多すぎる魔力に振り回された経験は、今後同じようなことで悩むだろう子どもたちの役に立つはずだ。
「ところでルジェくん、今度騎士団に行くときに、王太子殿下がいらっしゃったら嫌かな?」
「父上」
「陛下から執り成しを依頼されていてね。無理は言わないよ」
『いいよ』
「ルジェ」
ウィオが反対しているけど、オレは問題ないよ。前は突然でちょっと驚いただけだよ、多分。
第二王子の事件のときにはウィオを助けようとしてくれたらしいし、火の子へのちょっかいも止めようとしてくれていたみたいだし。王様みたいに会うだけなら構わないよ。また訓練を見に来ましたっていう感じでしょう。
オレは神獣になって、細かいことはあんまり気にしない性格になったみたいだ。
それよりも土の子の家族が倒れないかのほうが心配だよ。
「あの家族には知らせないほうがいいだろう。殿下には事前に無礼があるかもしれないことは伝えておこう」
「そうなると、服を用意しないといけませんね」
明日午前中に服屋さんに来てもらえるようにと執事さんに言っている。土の子の家族は驚くだろうけど、心を強く持って頑張って。
そういえば、ずっと気になっていることがあったんだ。
『王様って動物飼ってる? なでなでが上手だったんだけど』
「兎を可愛がっていらっしゃるので、それかな。陛下がきっとお喜びになられる」
兎ももふもふだもんね。国王の激務の疲れを兎に癒されているのかな。親近感が湧くね。
王様と言えば、前回王様と会ったときは、部隊長さんと近衛団長さんとの手合わせがすごく楽しかったのを思い出した。
『ウィオ、部隊長さんとの魔法ありの模擬戦を見たいな』
「私はかまわないが」
「そういえば一度も本気でやったことはありませんでしたね。やりますか」
あれ、なんか部隊長さんが好戦的な感じ? オレがスイッチ押しちゃった?
「騎士団の敷地が吹き飛びそうなので辞めてもらえませんかね」
『オレが結界張るよ!』
副隊長さんが騒動の予感に嫌そうな顔をしているけど、すごい戦いが見られそうで、今から尻尾が振れちゃう。火の子も喜ぶよね。楽しみ!
「字の読み書きから教えるとなると、どれくらいかかるのでしょうか」
子どもたちと土の子の家族がいなくなったサロンで、部隊長さんたちと話をしている。この家の人たちだけだと、意見が偏っちゃうからね。
部隊長さんがもう平民だからって遠慮してるけど、ここは無礼講で意見をバンバン出して。
この国の貴族は十歳から十七歳まで学校に行くが、入学する時点で字の読み書きができることが前提になっている。
庶民は十歳から十五歳くらいの間に教会付属の学校に一、二年通って、字の読み書きと簡単な計算を習うだけだ。
土の子は例外だけど、今後読み書きを教わる機会のない村に魔力量の多い子が生まれた場合、学園に入学する前に補習が必要になってしまう。
「十歳から二年間を予科として読み書きや計算、魔力操作を教え、本科を十二歳からにするのはどうでしょう。国によっては貴族でも学校は十二歳からです」
「貴族学校のようにダンスや剣など幅広く教えず魔法や薬学に特化すればそれも可能か」
トゥレボルも十二歳からだったよね。さすが二番目のお兄さんは、あちこちの国に赴任しているだけあって詳しい。
貴族は自前で家庭教師を雇えるのだから、十歳からの予科に貴族は入学させない。そうすれば貴族学校との差別化も図れるから、オレとお近づきになりたいだけの目的でウィオの学園に入学する人も減りそうだ。
土の子は年下の子と一緒に学ぶことになっちゃうけど、最初の数年は魔力量の多い子に限っては入学年齢を超えていても入学させる案が出ている。
「目に属性が出ている子どもが生まれた場合はどうすることになったのですか?」
「ルジェくんに精霊が入れない結界を張ってもらった家を用意して、貸し出す予定です」
部隊長さんはやっぱり精霊に愛されている子が生まれたときが気になるようだ。
一家で引っ越しとなったら、学園か街の中の仕事をあっせんする予定だ。もし子どもだけ引き取ってほしいと言われたら、それから考えようと棚上げになっている。今までの感じだと五年から十年に一人くらいのはずなので、今考えても状況が変わっているかもしれない。
「先ほどの土属性の子は、フォロン侯爵家で後見されるのですか?」
「ウィオラスもリュカもいるので、偏りすぎるのもよくないだろう」
「でしたらイリファス様がご当主となられる新しい家が後見されてはどうでしょう。トゥレボルの教会のように学園に所属するという意味合いで」
学園所属、いいかも。
今までのように貴族の養子になってもいいし、土の子のように貴族に取られたくないというなら学園所属ということで二番目のお兄さんの家が後見についてもいい。そんな風に選択肢が広がるのはいいことだろう。
部隊長さんは本当にいろいろと考えてくれている。今すぐ学園のお手伝いをしてほしいくらいだ。
と思ったら、お兄さんも同じことを思っていた。
「カエルラ殿が騎士団に所属していなければ、ぜひ学園を手伝ってもらいたいところです」
「イリファス様、私はもう平民ですので」
『部隊長さんと副隊長さんは、騎士を引退したら学園の先生って決まってるよ』
決めたのはオレだ。独断だけど、これ以上の適任はないのだから雇わない手はない。
「私に務まるでしょうか」
『魔力操作の取得方法を聞かれて、ある朝なんとなくって言うウィオよりは向いてるでしょ』
副隊長さんが分かるわーって顔をしている。以前に騎士団で上級魔法の使い方を聞かれて、対象に向けて撃つだけだと答えたらしい。そんなことはみんな知ってるって。聞きたかったのはコツだよ。まあ天才肌のウィオにはコツなんてないんだろう。
でもウィオだって多すぎる魔力に振り回された経験は、今後同じようなことで悩むだろう子どもたちの役に立つはずだ。
「ところでルジェくん、今度騎士団に行くときに、王太子殿下がいらっしゃったら嫌かな?」
「父上」
「陛下から執り成しを依頼されていてね。無理は言わないよ」
『いいよ』
「ルジェ」
ウィオが反対しているけど、オレは問題ないよ。前は突然でちょっと驚いただけだよ、多分。
第二王子の事件のときにはウィオを助けようとしてくれたらしいし、火の子へのちょっかいも止めようとしてくれていたみたいだし。王様みたいに会うだけなら構わないよ。また訓練を見に来ましたっていう感じでしょう。
オレは神獣になって、細かいことはあんまり気にしない性格になったみたいだ。
それよりも土の子の家族が倒れないかのほうが心配だよ。
「あの家族には知らせないほうがいいだろう。殿下には事前に無礼があるかもしれないことは伝えておこう」
「そうなると、服を用意しないといけませんね」
明日午前中に服屋さんに来てもらえるようにと執事さんに言っている。土の子の家族は驚くだろうけど、心を強く持って頑張って。
そういえば、ずっと気になっていることがあったんだ。
『王様って動物飼ってる? なでなでが上手だったんだけど』
「兎を可愛がっていらっしゃるので、それかな。陛下がきっとお喜びになられる」
兎ももふもふだもんね。国王の激務の疲れを兎に癒されているのかな。親近感が湧くね。
王様と言えば、前回王様と会ったときは、部隊長さんと近衛団長さんとの手合わせがすごく楽しかったのを思い出した。
『ウィオ、部隊長さんとの魔法ありの模擬戦を見たいな』
「私はかまわないが」
「そういえば一度も本気でやったことはありませんでしたね。やりますか」
あれ、なんか部隊長さんが好戦的な感じ? オレがスイッチ押しちゃった?
「騎士団の敷地が吹き飛びそうなので辞めてもらえませんかね」
『オレが結界張るよ!』
副隊長さんが騒動の予感に嫌そうな顔をしているけど、すごい戦いが見られそうで、今から尻尾が振れちゃう。火の子も喜ぶよね。楽しみ!
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