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7章 クインス再訪編
7. 越境
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「聖女様、ご無沙汰しております。クインスへのご来訪誠にありがとうございます」
「レイさん、お久しぶりです」
「レイ君、元気だった?」
「マサコさんもお元気そうで何よりです」
国境に迎えに来てくれたのはイケメン騎士のレイ君だった。相変わらず爽やかな笑顔で挨拶が様になるわ。
まずはこれからの予定を紹介しますので、とすぐそばの建物に案内された。ここは国境警備の兵士たちの拠点らしい。
私たちのクインスへの不信感もあって、今回はトルゴードの護衛騎士だけでなく、ジェン君率いる第二騎士団が国境を越えてクインスに入っている。これはかなり異例のことらしい。
私たちはトルゴードの護衛騎士、トルゴードの第二騎士団、クインスの騎士団の三段構えで守られている。
会議室に入ると、そこにいたのは会えるかなと期待していた人だった。
「ローズ!」
「リサ様、お久しぶりです」
「ローズ、久しぶりね。元気だった?」
「はい。マサコ様もお久しぶりです。これからはリサ様のおそばでお世話をさせていただきます」
「え、トルゴードでも?」
「はい、これからよろしくお願いいたします」
ローズにできれば理沙のそばにいてほしいと言ったのを聞いてくれたのだ。
クインスに入って少し緊張していた理沙に笑顔が戻ったので、それだけでも有難い。
ローズの所属がどうなっているのかよく分からないけど、その辺りはレイ君がきちんとしてくれているだろう。
ローズとの再会の喜びが落ち着いたところで、地図が置いてある机へと案内された。
会議室にいるのは、護衛騎士の外に、ジェン君とシーダ君、クインス側のレイ君ともう一人騎士の人だ。見たことがある気がするので、理沙の護衛をしていた騎士だろう。
シーダ君が疲れた顔をしているけど大丈夫かしら。瘴気を感じるという特殊能力のせいで忙しいのかもしれない。
「これからの予定ですが、北の森のこの辺りの浄化をお願いしたいと思っています。トルゴードでは、瘴気の濃さで浄化場所を決めていらっしゃるということで、こちらでも同じように場所を決めていただく予定です」
地図を指さしながら、この辺りの浄化はこの街から、この辺りはこちらの街からと、どこを拠点にして向かう予定かを説明してくれる。
ときどき理沙に、これとこれならどっちがよいか、と意見を聞いてくれている。
それを見ながら、なんだかちょっとため息が出てしまった。
最初からクインスがこういう対応をしてくれていれば、クインスを出る必要もなかったのに。
私たちが逃げ出して、宰相がレイ君のお父さんになったからこその対応かもしれないし、私がもっと気づければよかったんだけど。
たらればを言ってもどうにもならないから、今はこれからのことに集中しよう。
「移動には馬を使いますので、聖女様のみお出ましいただいて、マサコさんは街に残っていただく予定です」
「理沙、大丈夫?」
「ローズは同行いたします」
「分かりました。お母さん、大丈夫」
今回は、北の森の近くで兵士の拠点となっている砦に泊ったりはしない。
後からターシャちゃんが教えてくれたけど、砦という逃げ場のない空間に泊まるほどクインスを信用していないから、という理由だった。
元々聖女を召喚したのはクインスなので、今でも聖女はクインスに所属するべきだと思っている人もいる。
もし砦にいる兵士がそう思って理沙を奪いに来た時に、今のトルゴードの戦力では応戦が難しい。さすがにそこまでの戦力を他国に送り込むことは、両国の関係に亀裂を入れかねない。
ましてや周りに魔物がいる場所となれば慎重にならざるを得ない。
今の宰相であるレイ君のお父さんはその辺りを割り切って、トルゴードに頭を下げて聖女様の手を貸してもらえばいいと考えている人だそうだ。自分の失敗じゃないからというのも大きいんだろう。
けれど、失脚した前の宰相の支援者たちは、理沙を自分たちの陣営に引き入れて、返り咲きを狙っているという情報がある。
この国を逃げ出して原因を作った私に言えることじゃないかもいしれないけど、政治的なあれこれに巻き込まないでほしい。
大体の予定を立てて、後は臨機応変に対応することにして、まずは今日泊まる街へと移動した。
クインスでの予定は長くても20日だ。その間何もないことを祈るしかない。
「ロニア、これから理沙の世話をしてくれるローズよ。ローズ、こっちは私の世話係のロニア。世話と言っても、ほとんど話し相手だけど」
「ロニア様、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。ロニアと呼んでいただいて構いませんよ」
クインスにいる間は、理沙と私は同じ部屋だ。これは私が言うよりも先に、理沙が希望した。
「今日のお食事は、リサ様がお好きだったものをご用意いたしました」
「もしかして、料理人も連れてきたの?」
「料理長と数名だけですが」
なんだかものすごく気を遣われている気がする。
そう呟いたら、聖女様でしたら当然の対応ですよ、とロニアに呆れたように言われてしまった。
最近ロニアが私に慣れたからか、ツッコミに容赦がない気がする。
「レイさん、お久しぶりです」
「レイ君、元気だった?」
「マサコさんもお元気そうで何よりです」
国境に迎えに来てくれたのはイケメン騎士のレイ君だった。相変わらず爽やかな笑顔で挨拶が様になるわ。
まずはこれからの予定を紹介しますので、とすぐそばの建物に案内された。ここは国境警備の兵士たちの拠点らしい。
私たちのクインスへの不信感もあって、今回はトルゴードの護衛騎士だけでなく、ジェン君率いる第二騎士団が国境を越えてクインスに入っている。これはかなり異例のことらしい。
私たちはトルゴードの護衛騎士、トルゴードの第二騎士団、クインスの騎士団の三段構えで守られている。
会議室に入ると、そこにいたのは会えるかなと期待していた人だった。
「ローズ!」
「リサ様、お久しぶりです」
「ローズ、久しぶりね。元気だった?」
「はい。マサコ様もお久しぶりです。これからはリサ様のおそばでお世話をさせていただきます」
「え、トルゴードでも?」
「はい、これからよろしくお願いいたします」
ローズにできれば理沙のそばにいてほしいと言ったのを聞いてくれたのだ。
クインスに入って少し緊張していた理沙に笑顔が戻ったので、それだけでも有難い。
ローズの所属がどうなっているのかよく分からないけど、その辺りはレイ君がきちんとしてくれているだろう。
ローズとの再会の喜びが落ち着いたところで、地図が置いてある机へと案内された。
会議室にいるのは、護衛騎士の外に、ジェン君とシーダ君、クインス側のレイ君ともう一人騎士の人だ。見たことがある気がするので、理沙の護衛をしていた騎士だろう。
シーダ君が疲れた顔をしているけど大丈夫かしら。瘴気を感じるという特殊能力のせいで忙しいのかもしれない。
「これからの予定ですが、北の森のこの辺りの浄化をお願いしたいと思っています。トルゴードでは、瘴気の濃さで浄化場所を決めていらっしゃるということで、こちらでも同じように場所を決めていただく予定です」
地図を指さしながら、この辺りの浄化はこの街から、この辺りはこちらの街からと、どこを拠点にして向かう予定かを説明してくれる。
ときどき理沙に、これとこれならどっちがよいか、と意見を聞いてくれている。
それを見ながら、なんだかちょっとため息が出てしまった。
最初からクインスがこういう対応をしてくれていれば、クインスを出る必要もなかったのに。
私たちが逃げ出して、宰相がレイ君のお父さんになったからこその対応かもしれないし、私がもっと気づければよかったんだけど。
たらればを言ってもどうにもならないから、今はこれからのことに集中しよう。
「移動には馬を使いますので、聖女様のみお出ましいただいて、マサコさんは街に残っていただく予定です」
「理沙、大丈夫?」
「ローズは同行いたします」
「分かりました。お母さん、大丈夫」
今回は、北の森の近くで兵士の拠点となっている砦に泊ったりはしない。
後からターシャちゃんが教えてくれたけど、砦という逃げ場のない空間に泊まるほどクインスを信用していないから、という理由だった。
元々聖女を召喚したのはクインスなので、今でも聖女はクインスに所属するべきだと思っている人もいる。
もし砦にいる兵士がそう思って理沙を奪いに来た時に、今のトルゴードの戦力では応戦が難しい。さすがにそこまでの戦力を他国に送り込むことは、両国の関係に亀裂を入れかねない。
ましてや周りに魔物がいる場所となれば慎重にならざるを得ない。
今の宰相であるレイ君のお父さんはその辺りを割り切って、トルゴードに頭を下げて聖女様の手を貸してもらえばいいと考えている人だそうだ。自分の失敗じゃないからというのも大きいんだろう。
けれど、失脚した前の宰相の支援者たちは、理沙を自分たちの陣営に引き入れて、返り咲きを狙っているという情報がある。
この国を逃げ出して原因を作った私に言えることじゃないかもいしれないけど、政治的なあれこれに巻き込まないでほしい。
大体の予定を立てて、後は臨機応変に対応することにして、まずは今日泊まる街へと移動した。
クインスでの予定は長くても20日だ。その間何もないことを祈るしかない。
「ロニア、これから理沙の世話をしてくれるローズよ。ローズ、こっちは私の世話係のロニア。世話と言っても、ほとんど話し相手だけど」
「ロニア様、よろしくお願いいたします」
「こちらこそよろしくお願いします。ロニアと呼んでいただいて構いませんよ」
クインスにいる間は、理沙と私は同じ部屋だ。これは私が言うよりも先に、理沙が希望した。
「今日のお食事は、リサ様がお好きだったものをご用意いたしました」
「もしかして、料理人も連れてきたの?」
「料理長と数名だけですが」
なんだかものすごく気を遣われている気がする。
そう呟いたら、聖女様でしたら当然の対応ですよ、とロニアに呆れたように言われてしまった。
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