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第三章 東宮女御と斎宮女御
東宮女御と斎宮女御 -2
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「実は、以前、星詠みという言葉を偶然聞かれてしまったので、空の星に詳しい方とお伝えしたのでございます」
納得した。と同時に、未来が視える星詠みのことは知られていないようで、ほっとした。宿曜師である老師から一通り教えられているから、一応嘘ではない。
「宿曜師から教えを受けておりますが、きちんと陰陽師や宿曜師の職についていないものが、星の示す結果を口にしてはならないと言われております」
その職につき深く究めた者以外が、天文を見て吉凶を判断すると、天罰が下ると言われている。嘘か本当か、そのせいで亡くなった人までいるとか。それはむやみに素人が手を出さないように、という注意喚起な気はするけれど。
星詠みに関しては、宵子にしか視えていないものだし、空の星ではないから例外と思っている。
「そうなのね……でも、何か、きちんとしたものでなくてもいいの。ないかしら?」
口元で両手を合わせて、おねだりをしている様子が、わざとらしくなく可愛らしい。帝の寵愛も納得である。
宵子は、記憶を辿っていって、ちょうどいいものを引っ張り出した。
「では、十二宮のお話などはいかがでしょう」
「十二宮?」
「生まれた時に空にあった星で、その人の性格を占うものでございます。ままごとのようなものですが」
幼い宵子が星を嫌いにならないように、楽しませるために、老師が教えてくれたものだ。生まれた時の星だけで性格を言い当てるなんて、宿曜師であっても難しい。ただのお遊びだけれど、だからこそ楽しかった。
「ぜひ、聞かせてちょうだい」
淑子も興味津々のようで助かった。ついでに、仲子もわくわくした表情を浮かべている。
「では、紙にお生まれの日付を書いていただけますか」
淑子は傍にあった紙へさらさらと日付を書いてくれた。宵子はそれを受け取ると、老師から教えられた十二宮と照らし合わせて答える。
「斎宮女御様は、白羊宮でございます」
「白羊宮?」
「空に浮かぶ星を線でつなぎ合わせると、羊に見えることから、そう呼ばれます」
「面白いわね。それで、性格はどうなのかしら?」
「白羊宮の方は、純粋な心をお持ちで、素直で嘘が付けない。何事にも一生懸命に取り組まれる。と言ったところでしょうか」
失礼になることは言っていないと思うが、それでもそわそわしてしまう。淑子の表情を窺うと、幼い少女のように目を輝かせていた。
「まあ! 当たっているわ。わたくし嘘が付けないのよ、主上にもすぐばれてしまうの。この前、少し体調が優れなくてね。でも何ともありません、って主上に申し上げたら休んでいなさいと言われてしまったの」
それは、帝が淑子のことを大事にしていて、よく見ているからなのでは、と思ったけれど、口にはしない。
「ねえ、主上はどうなのかしら。教えてちょうだい」
「それは……不敬にあたりませんか」
「あら、大丈夫よ。妻が夫のことを聞くだけですもの」
確かにそう言われれば、問題ないように思えるが、ままごととはいえ帝の性格を、帝の妃に言うなんて、恐れ多い気もする。
淑子がさっそく紙に帝の生まれた日付を書き、宵子が見るのを待っている。
納得した。と同時に、未来が視える星詠みのことは知られていないようで、ほっとした。宿曜師である老師から一通り教えられているから、一応嘘ではない。
「宿曜師から教えを受けておりますが、きちんと陰陽師や宿曜師の職についていないものが、星の示す結果を口にしてはならないと言われております」
その職につき深く究めた者以外が、天文を見て吉凶を判断すると、天罰が下ると言われている。嘘か本当か、そのせいで亡くなった人までいるとか。それはむやみに素人が手を出さないように、という注意喚起な気はするけれど。
星詠みに関しては、宵子にしか視えていないものだし、空の星ではないから例外と思っている。
「そうなのね……でも、何か、きちんとしたものでなくてもいいの。ないかしら?」
口元で両手を合わせて、おねだりをしている様子が、わざとらしくなく可愛らしい。帝の寵愛も納得である。
宵子は、記憶を辿っていって、ちょうどいいものを引っ張り出した。
「では、十二宮のお話などはいかがでしょう」
「十二宮?」
「生まれた時に空にあった星で、その人の性格を占うものでございます。ままごとのようなものですが」
幼い宵子が星を嫌いにならないように、楽しませるために、老師が教えてくれたものだ。生まれた時の星だけで性格を言い当てるなんて、宿曜師であっても難しい。ただのお遊びだけれど、だからこそ楽しかった。
「ぜひ、聞かせてちょうだい」
淑子も興味津々のようで助かった。ついでに、仲子もわくわくした表情を浮かべている。
「では、紙にお生まれの日付を書いていただけますか」
淑子は傍にあった紙へさらさらと日付を書いてくれた。宵子はそれを受け取ると、老師から教えられた十二宮と照らし合わせて答える。
「斎宮女御様は、白羊宮でございます」
「白羊宮?」
「空に浮かぶ星を線でつなぎ合わせると、羊に見えることから、そう呼ばれます」
「面白いわね。それで、性格はどうなのかしら?」
「白羊宮の方は、純粋な心をお持ちで、素直で嘘が付けない。何事にも一生懸命に取り組まれる。と言ったところでしょうか」
失礼になることは言っていないと思うが、それでもそわそわしてしまう。淑子の表情を窺うと、幼い少女のように目を輝かせていた。
「まあ! 当たっているわ。わたくし嘘が付けないのよ、主上にもすぐばれてしまうの。この前、少し体調が優れなくてね。でも何ともありません、って主上に申し上げたら休んでいなさいと言われてしまったの」
それは、帝が淑子のことを大事にしていて、よく見ているからなのでは、と思ったけれど、口にはしない。
「ねえ、主上はどうなのかしら。教えてちょうだい」
「それは……不敬にあたりませんか」
「あら、大丈夫よ。妻が夫のことを聞くだけですもの」
確かにそう言われれば、問題ないように思えるが、ままごととはいえ帝の性格を、帝の妃に言うなんて、恐れ多い気もする。
淑子がさっそく紙に帝の生まれた日付を書き、宵子が見るのを待っている。
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