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メガネスーツ女子とジャガイモとトイレ問題
頁52:試練の結果とは 2
しおりを挟む審判者が高らかに宣言した。けれど…
「仮…」
「ゴウ…」
「格…??」
雪之進君、神々廻さんに続き私も乗せられてしまった。仲良しか。
いや、仲が良くてもいいんですけどね…。
『左様。未熟な心と突き抜けた実力が混在するヌシだからこそ慎重に見極めなければならぬ。赦される者か、赦されざる者か』
何だかおかしな事になってきた。初めて立ち会う儀式でまさか仮処分が下されるとは。
「神々廻さん、こういう展開と言うのは良くあるんですか?」
一応この手の知識を持っていそうな彼に聞いてみる。
「なんでオレちゃんに聞くのヨ!? いや、でも、うーーーーん………あんまり見た事無い展開かなァ」
やっぱりそうなのか。
「仮合格って事はまだ僕に何かさせようって事だろ。それで? 何をすればいいんだ」
早くも回復したらしい雪之進君が通常運転なテンションで詰め寄った。
『せっかちな小童じゃのう。いいか、良く聞け。本当の意味で戦闘職になりたくば、ヌシの復讐を果たすがよい。だが───復讐に呑まれてはならん。呑まれればヌシは炎に焼かれ命を落とすであろう』
「…? どういう事? 意味が分からないんだけど」
復讐してもいいけど復讐に呑まれるな…。分かりそうだけどあと一歩分からない。心の持ち様が関係しているのは確かだろうけれど。
『ンホホホホ…頭が悪いのう…。ま、せいぜい足掻くがよい。簡単に歩める程戦闘職の道は甘くはないのでな』
「なんだよエロじーさん、意地悪だナ。でもまあ良かったジャンかユッシー、仮だろうが合格は合格なんだし。仇の敵対生物をバシッと全滅させてパパっと本合格貰っちゃおうゼ!」
この仮合格の真意を全く考えていない無責任カミサマが軽く励ます。はぁ…。
「うん。その……ありがとう、シシバ。それとミサキ」
「えっ」「えっ」
頬っぺたをポリポリ掻きながら我々から目線を外して雪之進君がまさかのお礼を述べる。そしてプイッとそっぽを向いてしまった。か……カワイイ……。いけないいけない。落ち着け自分。
『何を他人事みたいに言うておるんじゃおんしらは』
「はい?」
クールな子の見せるギャップの良さが分からなさそうなお爺さんが呆れた声で漏らす。
呆れられる理由が分かりませんが。
『小童が本当の赦しを得られるかどうか、見届けるのはおんしら【綴り人】の役目ぞ?』
「は?」
「え…それは一体どういう…」
おかしな展開がまさかの飛び火してきた。見届けるって? 我々が? 雪之進君を?
『儂は見ての通りプリチーな祭壇じゃからの。この場所から離れる事は出来ん』
なんだプリチーな祭壇って。怪しい通販商品か。
『よって、儂の代わりとして星の使命を背負いしおんしらが小童の後見人となるのじゃ!』
「ちょ…!? いきなりそんな事言われましても…!」
一人っ子だった上異性と付き合った経験も無いというのに突然こんな大きな子の後見人だなんてあらやだどうしましょう。
いえ、ウキウキなんてしてませんよ? ukuk。
「そうだよエロじい、ユッシーが合格かどうかなんてオレらにゃ分かんねーし」
呼び名がまた変化した。より失礼に。
『案ずるな。あくまでも見届けるだけじゃ。最後の審判はこの星が下す。おんしらはおんしらの思う様に小童と行くがよい。復讐に手を貸そうが止めようが結果は変わらん』
うーーーん…。思わず神々廻さんと目を見合わせる。向こうも困惑した顔だ。そりゃそうか。
私達自身、自分らの使命がまだまだ不明瞭であるというのにここにきて更に新たな役目を負わされたのだし。
ただ、やはりこういう時に閉塞空間をこじ開けるのは彼だった。
「ま、それならムズかしく考えてもしゃーないか! こうしてみんな無事だったワケだし。分かんないなら後はやるべき事をやるだけっショ♪」
「まあ、そうだね」
ニャハハと軽薄に笑い飛ばすカミサマ。そして無表情の雪之進君。
『ありゃ何も考えておらんの…。おんしも苦労するの』
「…全く仰る通りで」
『だが、嫌いではない。そうじゃろ?』
小さな祭壇様が片目を閉じてニヤッとした。この星でもウィンクってあるんだな。
「別に…そういうアレでは…」
嫌いじゃない。それはまあ、うん、そうかもしれないけれど。
『おや、そういうアレとはどういうアレじゃろな? ンホホホ』
「なっ…、もう、からかわないで下さい!」
思わず平手で叩いてしまったけれどパリっと『壁』に受け止められてしまった。音的に手が痺れるのかと思いきや、さらっとした肌触りで結構気持ち良かった。思わず撫でたくなる。祭壇だし。
『さてと。小童よ、ここに参れ』
お爺さんが緩んだ空気を再び引き締め宣う。
(次頁/52-3へ続く)
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