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大罪覚醒

龍と獣01

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「くらえ!ビーストネイル!」

銀色に輝く長いボサボサの髪の狼族ウルフェンの少女が巨大な白い龍に爪を突き立てる。

「カーン!」

しかし、少女の爪は龍の硬い鱗によって弾かれてしまう。

『ふむ…前よりは格段に威力は上がったようじゃな。』

白い龍が光に包まれると小さくなり、15歳くらいの少女の姿になる。

「今日こそは傷の一つくらいはつけてやれると思ったんだがな…」

「仕方ないのじゃ。ウルカはまだまだ経験値も技術も足りないからのう。」

ウルカが自分の爪を見ながら言うとクレアがフォローするように言う。

「クレア…来て…ウルカも…」

そう言って、ソルが洞窟の中とは思えない様な森の中へと歩き始める。

二人は顔を見合わせて首を傾げながら、ソルの後をついて行く。

「止まって」

ソルがそう言って立ち止まると同時にクレアとウルカも立ち止まる。

「ギャオオ!」

「ギャア!」

少し先で2体の小型のトカゲのB級モンスター、ブレイズリザードが縄張り争いをしていた。

「アレは…ブレイズリザード…だっけか?」

ウルカがそう言うとソルが小さく頷く。

ブレイズリザードがブレイズリザードにブレスを吐く。

「よく見てて…」

ブレイズリザードのブレスがブレイズリザードに直撃するが、ブレイズリザードには全くダメージが無さそうだった。

「吐いた方がA…受けた方がB…AとB、よく見てて…」

ブレイズリザードBがブレイズリザードAに鋭く尖った尻尾を叩きつける。

「ギャオオ!」

ブレイズリザードAの身体に明らかに傷がついたのが見える。

「ギャオオ!」

ブレイズリザードAが怒ってブレイズリザードBにブレスを吐く。

「ギャア!」

ブレイズリザードBが避ける動作をしてブレスを躱すと反撃の尻尾攻撃を行う。

「ギャオオ!」

ブレイズリザードAの額から血が出る。

「ギャア!」

ブレイズリザードBが吠えるとブレイズリザードAはそそくさと逃げ去って行った。

「同じ種でも学習して戦うものとそうでないものが居る…ソルたちも同じ…」

ソルが残ったブレイズリザードの目の前に出るとブレイズリザードが警戒した様子でソルを見る。

「ギャア…」

明らかに先程とは様子が違うのが目に見えて分かる。

ウルカが出ようとするが…

「大丈夫…」

ソルがウルカを止める。

ブレイズリザードはウルカの方を見てソルを見る。

「ギャア!」

ブレイズリザードが火球を吐き出す。

ソルが軽く裏拳を使って、それを空に向かって弾き飛ばす。

ブレイズリザードはそれを見るとウルカの方をチラッと見た。

「気をつけて」

ソルが短く言うと同時にブレイズリザードがウルカに向かって火球を吐く。

「うおっ!」

ウルカが驚いた様子を見せながら避けるとブレイズリザードの目線がウルカに向けられる。

「ギャア!」

ブレイズリザードは短く吠えるとウルカに向かって突進を始める。

「そりゃ!」

ソルが通り過ぎる瞬間にブレイズリザードの尻尾を掴んで投げ飛ばす。

「ギャア!?」

ブレイズリザードは自分の重たい身体が投げ飛ばされたのを受けて驚いた様に鳴く。

「まだ…やる?」

ソルが威圧感を出して言うとブレイズリザードはそそくさと逃げ去って行く。

「ん…ここなら良さそう…」

ソルはそう言うと手招きでウルカとクレアを呼ぶ。

ソルは二人が来たのを確認して結界を貼る。

「クレア…ウルカ…同時…来る…」

クレアとウルカは互いに顔を見て頷き、ウルカは獣化で腕が銀色の毛で覆われて爪を狼の爪に変える。

クレアは龍化によって龍の翼が生え、真っ赤な龍の鱗が全身に浮かび上がる。

「先手必勝なのじゃ!龍帝牙焼りゅうていがしょう!」

クレアが燃え盛る牙のような爪を振るってソルに攻撃する。

「甘い」

ソルはクレアの攻撃の隙を見て、クレアの胸部に拳をぶち当てる。

クレアは吹っ飛びながらも空中で体勢を立て直す。

「次は俺が行くぜ!ビーストネイル!」

ウルカは荒々しく強靭な爪を使ってソルに攻撃をしかける。

「竜波!」

しかし、ソルの竜波オーラによって、ウルカの爪は簡単に弾かれてしまう。

「そこじゃ!龍帝炎熱波りゅうていえんねつは!」

クレアの炎ブレスがソルの竜波と激しくぶつかり合い、灼熱が広がる。

「…温い」

ソルはそう言うと竜波を解放してクレアのブレスを無効化し、ウルカの身体を吹き飛ばす。

「今度はこっち…」

ソルはそう言うと一瞬でウルカの前に現れる。

「しまっ…!」

ウルカが体勢を立て直す間もないまま防御の姿勢をとる。

「せいっ!」

ソルの右ストレートがウルカのガラ空きの腹に突き刺さる。

「ぐっ…」

ウルカは苦悶の表情を浮かべながらも何とか耐えて、反撃する。

「ビーストネイル!」

だが、力があまり入ってないせいか、ソルが軽く左手で払って軌道をずらす。

「こっちを忘れてもらっちゃ困るのじゃ!」

クレアがソルの背後に現れる。

「忘れてない…」

ソルはクレアの飛び掛りを半身で避ける。

そのままクレアがウルカにぶつかる瞬間。

「なんてな!初めからこれが狙いなのじゃ!」

クレアはそのままウルカの身体を抱きしめるように持って、クルクルと回ると遠心力とクレアの力で魔力を込めながら、ウルカの身体をソルに向けて投げ飛ばす。

「これでどうだ!フレアビーストクロウ!」

ウルカが両手をクロスさせて燃え盛る爪をソルの目の前で引き裂くようにクロスさせた両腕を開く。

「今のはなかなか…」

ソルは左腕を龍の鱗で覆って受け止めながら、ウルカの身体を弾き飛ばす。

「ぐっ…今のは反動もデカイな…」

「回復するまでの間は私に任せるのじゃ!」

「すまねぇ…」

クレアとウルカのやり取りを見て、ソルはクレアの方を見る。

「力技でゴリ押したわりには上出来。もっと効率化をすれば、反動も無くせるかも。」

「当然じゃ!私はじゃからな!」

嬉しさが溢れんばかりの力強い声音と全身から発せられる喜びを抑える事のないドヤ顔が言う。

「それに…ウルカも優秀じゃからな。私の魔力はアリスほど強くは無いが、それでも扱うには技量と体力を消耗する。力の差が大きければ大きいほど代償が大きくなるとは言え、少しの間動けなくなる程度に抑える技量は天才のそれじゃろうな。」

クレアは胸を張って堂々とした姿勢で言うと拳を構える。

「さてと…ウォーミングアップは終わりじゃ、そろそろ本気で行くぞ!」

ソルはヤレヤレと言いたげに肩を竦める。

「手間のかかる人…」

ソルは一見すると隙だらけの無防備な状態でクレアを見る。

「わはは!お主、そんな隙だらけな状態で大丈夫なのか?」

クレアは言葉とは裏腹に慎重に隙を伺っているように見える。

「なら…早く来ると良い…」

そういった瞬間、クレアがソルの背後に現れる。

「なら、時間も無いし、先手必勝なのじゃ!」

クレアの振り下ろされた燃え盛る爪を全てを凍てつかせる様な激しい冷気を纏った爪でソルが受け止める。

温度差により、周囲に水蒸気が発生し、視界が真っ白になる。

「そこじゃ!龍帝豪熱斬りゅうていごうねつざん!」

燃えるような紅の線が白を切り裂く。

「凍えよ!魔女の冷獣コキュートス!」

白に紛れて姿が見えにくくなっている氷の獣が紅の合間を縫って鋭い牙を突き立てる。

「私の熱に負けない氷は初めてじゃ!じゃが…」

氷の獣は視界を覆い尽くしていた白と共に一瞬蒸発する。

「私の熱はそれを上回る!」

クレアは全身を龍の鱗で覆い、さらに熱を高める。

「もっと熱く!もっと早く!もっと強く!」

クレアの赤い鱗が白く輝き始める。

上限突破リミットバースト!今の私にはこの力を扱うには体力の消耗は激しいが、これならお主も本気で戦うしかなかろう?」

ソルはそれを見て少し楽しそうに微笑む。

「そうね…50%くらいは本気出せそう!」

ソルの腕が水色の龍の鱗に覆われる。

ソルが軽く構えた瞬間、二人が拳をぶつけて凄まじい熱気と冷気と衝撃波が発生する。

白龍帝之煉獄はくりゅうていのれんごく!」

凄まじい熱量の白い炎のブレスがクレアの口から放射状に放たれる。

「果ての星は光を受けど、熱は無く、ただの一つの鼓動すら遠い銀の世界…凍てつかせなさい!明静の銀フリーズ!」

ソルの詠唱と共に炎すらも凍りつかせてしまいそうな冷気がソルの身体から放射される。

「王の力…見せてやろう…煉獄龍帝の波動ティアフレア!」

クレアのブレスが一点に集束し、計り知れぬ熱量となってソルの冷気を灼熱に変えながら突き進む。

「全てを…氷河に…」

ソルの冷気が一瞬収まると同時に全てが停止するほどの冷気がソルの周りを漂い始める。

絶対零度ぜったいれいど!」

ソルから放たれた冷気がクレアのブレスを完全に凍らせて無力化する。

「ぐっ…」

クレアが左膝を地面に着くと同時にクレアの鱗が元の赤い鱗に戻る。

「少し…長く持った…成長したね…」

ソルが静かにそう言うとクレアは力が入らない様子で見上げながら言う。

「こんなんじゃダメなのじゃ…もっと強く…もっと白く…なら…な…い……と………」

クレアが地面に倒れると同時にクレアの鱗が消えて、ヒトの身体になる。

「龍の力…とても強い…でも…代償も大きいの…」

ソルの水色の鱗が消え、ヒトの身体に戻る。

「ウルカ、貴方も休む?」

ウルカは立ち上がる。

「いや、もう少しだけ、付き合ってもらうぜ。俺はお前の龍波ですら、越えられてないからな。あいつよりも修行しなくちゃ、追いつくことすら出来ねぇしな!」

ウルカが拳を構える。

「そう…」

ソルは短くそう返すと手の平を前にして構える。

「行くぜ!ビーストクロウ!」

ウルカが腕をクロスさせて突撃しながら爪の間合いで腕を振り払う。

八卦掌はっけしょう!」

「パァン!」と大きな音を立てて、ウルカの身体が吹っ飛ぶ。

ソルは左手を突き出したまま低い姿勢のまま言う。

「もっとわかりにくくしなさい。これでは威力はあっても当たりませんよ!」

「わかってらぁ!ビーストクロウ!」

ウルカはそう言うとそのまま腕をクロスさせて突っ込む。

「…わかってない。」

ソルが同じように腰を低くしようとした瞬間。

「そこだぁ!」

「ッ?!」

ウルカが勢いそのままに強靭な爪を出した左足で回し蹴りを放つ。

ソルはそれを当たる直前で避ける。

「まだだぜ!」

ウルカはそのまま軸にした右足でジャンプして、そのまま空中で身体を捻りながらの左足の踵落としをする。

「でやぁ!」

ウルカが雄叫を上げると共にソルの頭に踵落としが炸裂する。

「…」

ソルは微動だにせずに固まっていた。

「な、なんだ?」

ウルカが怪しんで飛び退くもソルは動かないままだった。

「どうしたんだよ」

ウルカが心配してソルに近づこうと足を踏み出した瞬間。

「今のは…効いた…」

そう言って、顔を上げて不気味に微笑むソルの額からは血が流れていた。

「だ、大丈夫なのかよ?」

ウルカはソルの様子がおかしいと感じながらも状態を心配する。

「この程度なら…気にしなくてもいいわ…それよりも…」

ソルの口角が上がって、青く輝くとてつもなく冷たい炎が口から漏れる。

「ウルカの力が上がった事…そして…」

ソルの身体が水色の鱗で覆われ、指先から青みがかった白銀の龍の鉤爪が伸びる。

「ソルに傷をつけたのは貴方が3人目であるという事!その力!その成長!その身体!その全てが我が悦び!ウルカ!今の貴方は力の使い方を覚えればパリスと同程度の実力はある。だから、徹底的に力の使い方を教えるから覚悟しなさい!」

ソルは言い終わると同時にウルカの目の前に現れて、右足で回し蹴りを放つ。

「おわっ!?…っぶねぇ…」

ウルカが咄嗟にしゃがんで避ける。

頭上をとてつもない衝撃が駆け抜け、背後で爆裂音と共に刺々しい氷の剣山が形成されていた。

「ウルカ!」

ソルが少し間合いを取って右足を上げた構えを取る。

「今からソルは本気を出す。3分間、ソルの攻撃を耐え凌ぎなさい。もちろん、隙を見て反撃する事も許可する!」

そう言うと、ソルはウルカが体勢を立て直すのを待って攻撃を開始する。
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