転生?いいえ。天声です!

Ryoha

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── 2章 ミニック編 ──

095.ボス周回

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 次の日、ルナが十分戦えることがわかったので、さらに奥の階層へと進むことになった。

 昨日はミニックがほとんど戦闘に参加できなくて手持ちぶたさだったこともあり、今日はミニックも戦闘に参加して1~10階層の道を素早く進んでいた。
 初めて戦う魔物の場合はルナが一人で、そうでない場合はミニックとルナが共闘をするという役割分担だ。
 だけどミニックは魔物が現れるとすぐに弾丸で倒してしまうためルナの出番がない状況が続いていた。

「ミニックの武器は便利ですよね。接近しなくても攻撃できるのはちょっとずるいです。わたしの出番がなくなってしまいます」

 ミニックが10階層のエコーフェリスという魔物を弾丸で倒したときそう言ったルナは、両手を後ろにやって片手で手首を掴んで歩いていてちょっと不満げだ。

「ルナも魔法を覚えれば遠距離攻撃できるのです」
「うっ。頑張ります……」

 ルナの耳がしょぼんとしおれたように力なく折れ曲がる。

 ルナは自分のことを忌子だと思い込んでいたため魔法を使ったことがなかった。だから今使えるのは風の初期魔法のウインドフローだけなんだよね。

 昨日宿屋に帰った後はノーアがよく使っていたウインドブロウの魔法を練習していたけどまだ習得はできていない。

 ちなみにミニックも魔法の練習をしている。ヴォイドアウェイクという魔法だ。起きている状態を無くす、簡単にいうと相手を強制的に眠らせる魔法だね。

「それにぼくは接近戦は苦手なのです。接近してくる敵がいたときにはルナが頼りなのです」
「っ! わかりました! 任せてください!」

 尻尾をふりふりと揺らしてご機嫌に戻るルナ。

『ミニックも憎い男だね』
『何がなのです?』

 ミニックは首を傾げているけど無意識にやっているならなおさらタチが悪い。
 下げて持ち上げてルナの心を揺さぶっているからね。ミニックが将来悪い男にならないか今から心配になるよ。

『それよりボス部屋に着くのです。〈天眼〉をお願いするのです』
『わかったよ』

────────────────────
 種族:ミスリルニャンコイン
 状態:通常
 ミスリルのコインを扱う猫型の魔物。Dランク。念動力でミスリルコインを飛ばしたり、ミスリルコインから魔法を発動したりする。防御力は大して強くないが常に距離をとって戦おうとするため近づいて倒すまでが至難の業。
 ミスリルコインと稀にミスリル塊をドロップする。
────────────────────

「ルナは待機なのです。相性が悪いのです。今の防具だとちょっと不安なのです」
「わかりました。残念ですけど挑戦するのは防具が揃ってからですね」
「なのです。すぐに終わらせるのです」

 バン!

 ミニックがボス部屋に入った途端、ミスリルニャンコインに弾丸を浴びせた。かわいそうなニャンコは何も気がつかないままに黒い霧となって消えていった。
 黒い霧の後にはミスリル塊と魔石だけが残される。今回もレアドロップが落ちたみたいだ。〈天運〉さんはいい仕事をするね。

「あっけなかったです」
「今までで一番弱いDランクの魔物かもしれないのです」

 まあ、安全に倒せることはいいことだ。しかもドロップ品はどちらもミスリルなので高価に買い取ってもらえるはず。
 ここのボスはドロップの割に敵が弱くて穴場なんじゃないかな? あっ!

『ちょっと待って!』

 いいことを思いついたわたしはミスリル塊と魔石を拾いに行こうとしているミニックの足を止めさせた。

『なんなのです?』
『ボス周回しようか!』
『ボス周回? なのです?』

 簡単に倒せるボスと美味しいドロップアイテムと言ったら周回しかないよね?


 ◇◇◇


 わたしは魔石を拾わない状態でボス部屋の入り口に戻る方法を教えた。もちろんその理由はボスを復活させて周回をさせるためだね。

 今は何度もミスリルニャンコインを倒してドロップアイテムのミスリルコインやミスリル塊を拾うを繰り返している。すでに数百回くらい繰り返しているんじゃないかな。なんて言ったってミスリルニャンコインは弾丸1発で沈むので1サイクル10秒くらいで終わってしまうのだ。これだったら千回だって繰り返せてしまいそうだよね。

「ちょっとかわいそうになってきました」
「なのです」

 何度も瞬殺されるミスリルニャンコインにちょっと同情し始めたルナとミニック。だけどこれは二人のためでもあるんだけど。ミスリルを売ればルナの防具を買えるだろうからね。

 まあでも十分にミスリルは集めることができたし、二人の指揮が下がるのは良くないからここらへんで終わりにしてもいいのかもしれない。

『じゃあそろそろ終わりにしようか』
「……次で終わりにするのです」

 次で終わり。それはフラグになるのだろうか?

 バン!
 キィン!

 ミニックがニャンコに飛ばした弾丸が甲高い音を立てて弾かれた。

『あれ? 弾かれた?』
『どういうことなのです?』
『ちょっと確認してみる』

────────────────────
 種族:アダマンタイトニャンコイン
 状態:怒り
 アダマンタイト特有の光沢を持つ猫型の魔物。Aランク。高い物理攻撃と魔法攻撃に対する耐性を持ち、普通の武器や魔法では傷つけることが困難。アダマンタイトのコインの弾丸を飛ばして敵を殲滅する。
 体から重力波を放出し、敵を地面に押し付け、動きを遅らせる能力を持つ。
 アダマンタイトコインと稀にアダマンタイト塊をドロップする。
────────────────────

『ミニック! さっきまでの魔物じゃないみたい! 普通の攻撃は効かないみたいだから一旦退避するよ!』
『ダメなのです。外に出られなくなってるのです!』

 なんで? さっきまでは普通に出られてたのに?

 部屋の外ではルナが何事かを叫んで部屋に入ろうとしているのが見える。しかし見えない何かに阻まれて入ることができない。

 アダマンタイトニャンコインがコインの弾丸を飛ばしてくる。ミニックがその弾丸をかわしながら逃げていく。

「ヴォイドイレイサーなのです!」

 バンバン!

 ミニックの魔法の弾丸がアダマンタイトニャンコインにヒットする。しかしそれは表皮を削ることなく普通に弾かれてしまう。

「なぜなのです!?」

『わからない! もしかするとあいつの表皮が硬すぎてさっき込めた魔力量じゃ足りないのかも!?』

「ウニャア!!」

 こちらの会話を断ち切るように、唸り声を上げたアダマンタイトニャンコインが前足を地面に打ち付けた。するとその場から青緑色の光が波紋のように広がり始めてミニックが地面に膝をつく。

『何があったの!?』
『急に重くなったのです。押さえつけられているのです』
『重力波か!』

 その間にもアダマンタイトのコインの弾丸がミニックに迫ってくる。

「ヴォイドグラヴィティなのです!」

 ミニックが自身に無重力の魔法を発動する。これで重力波を中和したのだ。ミニックがアダマンタイトの弾丸を避ける。だけどこのままではジリ貧だ。なんとかしてあいつを倒さないと。

『どうすればいいのです!?』
『一か八かだけど──』

 頷いたミニックは少しずつ魔力を弾丸に込めていく。当たったらおしまいの攻撃を避けながら一撃を確実に当てるためアダマンタイトニャンコインに近づいていく。

「ヴォイドイレイサーなのです!!!」

 特大のヴォイドイレイサー弾を放った。その魔力量は今までで一番多く、ミニックの魔力がなくなるまで込めた。これで倒せなければもう打つ手はない。

 それはアダマンタイトニャンコインの顔面を捉えて顔を消失させる。

 どさ!

 アダマンタイトニャンコインとミニックが倒れ込むのは同時だった。

<天命ポイントが更新されました>
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はら
2024.02.07 はら

天の声に転生は草

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