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── 2章 ミニック編 ──
091.ゴダック商会の崩壊と旅立ち
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次の日の昼、アイリスとボーダン、ミニックは再度、警備隊の控えている詰所に向かった。
表向きはゴダックに賠償を払うためという理由だ。だけど裏の理由はもちろん違う。ゴダックを嵌めるためだ。
ゴダックの罠に嵌まったあと、ミニックはアイリスに無理を言った。冒険者ギルドのギルドマスターという権限をフルに使ってクリウス教会を問い詰めてもらうことにしたのだ。
ちなみにクリウス教会は創造神クリウスを崇拝する教会のことで、ミニックが祝福を受けたのもクリウス教会。ルナも3年前にカタノヴァのクリウス教会で祝福を受けている。
つまり二人の忌子判定が間違いであることを盾に、きちんと祝福を行なっていないんじゃないかと問い詰めるということだね。
ルナにはアイリスについて行ってもらうことにした。ルナはミニックについて行きたがったけど、ルナには自身が忌子ではないことの照明をしてもらう必要があった。だから我慢してもらった形だ。
また、ミニックにもやることがあったためボーダンとリアナ、ホークにはゴダックを監視してもらうことにした。逃げることはないと思うけど一応ね。ボーダンたちにやってもらうことが他になかったという理由もあるけど。
「それで、賠償金は持ってきてくださったのですかな?」
ゴダックがそうアイリスにそう言葉を切り出した。ゴダックの横には例の警備隊の隊長もいる。またゴダックに有利になるようにことを進めるつもりでいるのだろう。
「もちろんです。こちらお受け取りください」
「……確かに受け取りましたぞ。それではわしはこれで失礼しますぞ」
「いえ。まだこちらの話は終わっていません」
「……まだ何かあるのですかな?」
ゴダックが疑問の声をあげると法衣を着た50代くらいの男が詰所に入ってきた。白い布地に金の装飾が施されたミトラを被り、十字架の胸飾りを身につけている。高位の聖職者の格好だ。
「どちら様ですかな?」
「この方はクリウス教会のマルカル様です」
「ごきげんよう、ゴダック卿。紹介に預かりましたマルカルです。クリウス協会にて司教の座を賜わっております」
「……その司教様がなんの御用ですかな?」
目だけ笑った顔でそう問いかけるゴダック。平静を装ってるようだけど内心困惑しているというところかな。口元が笑えていない。
「実はカタノヴァで祝福を担当している司祭がゴダック卿と繋がっているという通報がありましてね。その真偽を確かめにきたのですよ」
「……そのような事実はありませんな」
「なるほど。卿はそのようにおっしゃるのですね? 司祭はルナ嬢の祝福時の鑑定の間違いを指摘するとすぐに白状したのですが。どちらにせよ教会で不正が行われているという疑惑がある以上調査をしなければなりません」
「もちろんですな。そのような疑惑は払拭しなければいけませんからな。そうであるなら警備隊に調べさせるのが良いのではないですかな?」
そう言いながら歪な笑みを浮かべるゴダック。また隊長にもみ消してもらう気でいるのだろう。
「それではその調査は我々警備隊が請け負いましょう」
案の定隊長が前に歩み出てくる。
だけどそうは問屋が卸さないんだよね。
「いいえ。あなたには任せませんわ。その調査はわたくし達が行いますの」
「あ、あなたは!」
出てきたのはコーネリア。ミニックがこの前命を助けたアラバ州の州長その人だ。後ろには筆頭騎士のイザベラの姿もある。
まあ、そういうことだよね。ミニックがコーネリアに頼んで調査してもらうようにお願いしたのだ。コーネリアはミニックの力になると言っていたのでちょうどよかったよね。
えっ? 他力本願? うるさいな! 体もない凡庸なわたしに自力での救済なんて求めないでよね!
それはともかく焦った様子を見せるゴダックと隊長の男。まさか州長が出張ってくるとは思わなかったんだろうね。
「ですが州長の手を煩わせるわけにはいきませんので私どもにお任せいただければ」
「今現在に至るまで手を煩わせているのはゴルドさん。あなたですわ。ゴルドさんには護衛隊隊長の座を退いてもらう予定ですのでそのつもりでいらして?」
「そんな、州長! ご再考を!」
「お嬢様に近づかないでください」
コーネリアに近づいて懇願してくる隊長の男をイザベラが止める。
今更だけどこの隊長はゴルドというらしい。すごいどうでもいいけど。
「イザベラ。もう準備はできていまして?」
「はい、お嬢様。騎士達を動員してすでにゴダック商会に向かわせています。すぐにでも調査を行わせられます」
「ということですのでゴルドさん。あなたの出る幕はありませんわ。そしてゴダックさん。あなたはここでおとなしくしているのですわ」
黙っていたゴダックだったがしばらくして項垂れるように肩を落とした。どうやら観念したみたいだね。これで一件落着かな?
◇◇◇
その後、騎士達の調査はつつがなく進行した。案の定ゴダックと司祭は通じていたようで、ゴダック商会で教会により忌子と判定された違法奴隷が複数人見つかった。
今回の奴隷の違法所持によってゴダックはゴダック商会の会頭の座から退くことになった。商会には他にも違法所持に関わっていた人たちがそれなりにいたらしく、現在はコーネリアが指揮をとって監査が行われているようだ。しばらくはコーネリアの監視のもと商会を存続させ、今後どうするかは経過を見てから決めることになるらしい。
そして現在ミニックはカタノヴァの街の城門近くにいた。ミニックが次の州に向かうからだ。ボーダンとリアナとホーク、そしてコーネリアと別れの挨拶をしている。
ちなみにアイリスはすでにスタリアの街に戻っている。流石にギルドマスターが何日もギルドを離れるわけにはいかなかったようで肩を引かれながら帰っていった。
「では行ってくるのです」
「ああ、今度こそお別れだな」
「元気でね」
「無茶するんじゃないぜ?」
「またカタノヴァに来てくださいですわ」
「きっとまた会いにくるのです」
別れの挨拶をすますとミニックは城門の外へ向かう。
「待っていました。ミニック様」
城門を出るとルナがいた。どうやらミニックがくるのを待っていたようだ。
「どうしたのです? ルナはもう自由なのです」
「はい。ですのでミニック様のお供をさせていただきたく思います」
「ぼくのお供なのです?」
「ダメでしょうか?」
耳と尻尾をしゅんとさせながらルナがミニックの様子を伺っている。
「もちろんいいのです! よろしくなのです。ルナ!」
「ありがとうございます!」
ルナがとびっきりの笑顔を向けてミニックの手をとった。ミニックのほおが赤く染まっていく。もしかしてルナのことが好きになっちゃった? からかってやろうかな?
『もふもふ美少女と2人旅とはいいですな』
『悪魔さんは黙ってるのです!』
ミニックは恥ずかしさを隠すように次の州であるシーピア州へ向かうのだった。
表向きはゴダックに賠償を払うためという理由だ。だけど裏の理由はもちろん違う。ゴダックを嵌めるためだ。
ゴダックの罠に嵌まったあと、ミニックはアイリスに無理を言った。冒険者ギルドのギルドマスターという権限をフルに使ってクリウス教会を問い詰めてもらうことにしたのだ。
ちなみにクリウス教会は創造神クリウスを崇拝する教会のことで、ミニックが祝福を受けたのもクリウス教会。ルナも3年前にカタノヴァのクリウス教会で祝福を受けている。
つまり二人の忌子判定が間違いであることを盾に、きちんと祝福を行なっていないんじゃないかと問い詰めるということだね。
ルナにはアイリスについて行ってもらうことにした。ルナはミニックについて行きたがったけど、ルナには自身が忌子ではないことの照明をしてもらう必要があった。だから我慢してもらった形だ。
また、ミニックにもやることがあったためボーダンとリアナ、ホークにはゴダックを監視してもらうことにした。逃げることはないと思うけど一応ね。ボーダンたちにやってもらうことが他になかったという理由もあるけど。
「それで、賠償金は持ってきてくださったのですかな?」
ゴダックがそうアイリスにそう言葉を切り出した。ゴダックの横には例の警備隊の隊長もいる。またゴダックに有利になるようにことを進めるつもりでいるのだろう。
「もちろんです。こちらお受け取りください」
「……確かに受け取りましたぞ。それではわしはこれで失礼しますぞ」
「いえ。まだこちらの話は終わっていません」
「……まだ何かあるのですかな?」
ゴダックが疑問の声をあげると法衣を着た50代くらいの男が詰所に入ってきた。白い布地に金の装飾が施されたミトラを被り、十字架の胸飾りを身につけている。高位の聖職者の格好だ。
「どちら様ですかな?」
「この方はクリウス教会のマルカル様です」
「ごきげんよう、ゴダック卿。紹介に預かりましたマルカルです。クリウス協会にて司教の座を賜わっております」
「……その司教様がなんの御用ですかな?」
目だけ笑った顔でそう問いかけるゴダック。平静を装ってるようだけど内心困惑しているというところかな。口元が笑えていない。
「実はカタノヴァで祝福を担当している司祭がゴダック卿と繋がっているという通報がありましてね。その真偽を確かめにきたのですよ」
「……そのような事実はありませんな」
「なるほど。卿はそのようにおっしゃるのですね? 司祭はルナ嬢の祝福時の鑑定の間違いを指摘するとすぐに白状したのですが。どちらにせよ教会で不正が行われているという疑惑がある以上調査をしなければなりません」
「もちろんですな。そのような疑惑は払拭しなければいけませんからな。そうであるなら警備隊に調べさせるのが良いのではないですかな?」
そう言いながら歪な笑みを浮かべるゴダック。また隊長にもみ消してもらう気でいるのだろう。
「それではその調査は我々警備隊が請け負いましょう」
案の定隊長が前に歩み出てくる。
だけどそうは問屋が卸さないんだよね。
「いいえ。あなたには任せませんわ。その調査はわたくし達が行いますの」
「あ、あなたは!」
出てきたのはコーネリア。ミニックがこの前命を助けたアラバ州の州長その人だ。後ろには筆頭騎士のイザベラの姿もある。
まあ、そういうことだよね。ミニックがコーネリアに頼んで調査してもらうようにお願いしたのだ。コーネリアはミニックの力になると言っていたのでちょうどよかったよね。
えっ? 他力本願? うるさいな! 体もない凡庸なわたしに自力での救済なんて求めないでよね!
それはともかく焦った様子を見せるゴダックと隊長の男。まさか州長が出張ってくるとは思わなかったんだろうね。
「ですが州長の手を煩わせるわけにはいきませんので私どもにお任せいただければ」
「今現在に至るまで手を煩わせているのはゴルドさん。あなたですわ。ゴルドさんには護衛隊隊長の座を退いてもらう予定ですのでそのつもりでいらして?」
「そんな、州長! ご再考を!」
「お嬢様に近づかないでください」
コーネリアに近づいて懇願してくる隊長の男をイザベラが止める。
今更だけどこの隊長はゴルドというらしい。すごいどうでもいいけど。
「イザベラ。もう準備はできていまして?」
「はい、お嬢様。騎士達を動員してすでにゴダック商会に向かわせています。すぐにでも調査を行わせられます」
「ということですのでゴルドさん。あなたの出る幕はありませんわ。そしてゴダックさん。あなたはここでおとなしくしているのですわ」
黙っていたゴダックだったがしばらくして項垂れるように肩を落とした。どうやら観念したみたいだね。これで一件落着かな?
◇◇◇
その後、騎士達の調査はつつがなく進行した。案の定ゴダックと司祭は通じていたようで、ゴダック商会で教会により忌子と判定された違法奴隷が複数人見つかった。
今回の奴隷の違法所持によってゴダックはゴダック商会の会頭の座から退くことになった。商会には他にも違法所持に関わっていた人たちがそれなりにいたらしく、現在はコーネリアが指揮をとって監査が行われているようだ。しばらくはコーネリアの監視のもと商会を存続させ、今後どうするかは経過を見てから決めることになるらしい。
そして現在ミニックはカタノヴァの街の城門近くにいた。ミニックが次の州に向かうからだ。ボーダンとリアナとホーク、そしてコーネリアと別れの挨拶をしている。
ちなみにアイリスはすでにスタリアの街に戻っている。流石にギルドマスターが何日もギルドを離れるわけにはいかなかったようで肩を引かれながら帰っていった。
「では行ってくるのです」
「ああ、今度こそお別れだな」
「元気でね」
「無茶するんじゃないぜ?」
「またカタノヴァに来てくださいですわ」
「きっとまた会いにくるのです」
別れの挨拶をすますとミニックは城門の外へ向かう。
「待っていました。ミニック様」
城門を出るとルナがいた。どうやらミニックがくるのを待っていたようだ。
「どうしたのです? ルナはもう自由なのです」
「はい。ですのでミニック様のお供をさせていただきたく思います」
「ぼくのお供なのです?」
「ダメでしょうか?」
耳と尻尾をしゅんとさせながらルナがミニックの様子を伺っている。
「もちろんいいのです! よろしくなのです。ルナ!」
「ありがとうございます!」
ルナがとびっきりの笑顔を向けてミニックの手をとった。ミニックのほおが赤く染まっていく。もしかしてルナのことが好きになっちゃった? からかってやろうかな?
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