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── 1章 アルト編 ──
007.就寝前のあれこれ
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夕食を食べた後は宿に戻って解散した。
まずセイソンが一人部屋に入っていって、次にアリアとノーアが別の部屋に。そしてその奥の部屋にアルトが入っていく。
アルトとアリア、ノーアは同じ部屋なのかなと思ったけど違うみたい。3人部屋がなかったのかな?
ドアを開けると、控えめな照明に照らされた。自動照明? この世界は実は結構発展してたり? いやそれはないか。街並みとか目の前の部屋の中とか中世風な感じだもの。多分魔道具ってやつかな? あるのかどうか知らないけど。
部屋の中は手作りの簡易的な机や椅子が配置され、奥の方にベットや収納やらが置かれている。うん。だいぶシンプルだね。
『アルト?』
「あっセイさん! 全く喋らなかったのでいなくなっちゃったかと思いました」
『あーごめんね。でも今みたいに声に出して喋られちゃうと困るなーって思って』
「あっ! ごめんなさい」
『これでいいですか?』
『うんオッケー。少し話してもいい?』
『いいですけどお風呂と着替えしてからでもいいですか?』
あ、お風呂とかもあるんだ。いいなーわたしも入りたい。
汚れないだろって? それとこれとは話が違うんです! お風呂入ると体だけじゃなくて心もリフレッシュされるんです!
そうだ、アルト目線でいたらお風呂入った風な気持ちになれないかな。
『もちろんいいよ』
『それじゃあ一回部屋から出てもらえますか?』
『え? なぜに?』
『え? セイさんに見られるのは恥ずかしいからです』
『そ、ん、な』
アルトと一緒にお風呂入る作戦が……。お風呂に入れるかと思ったのに。儚い夢だった。
『それじゃ出ていってください。絶対覗かないでくださいね』
『わかったよ』
はいはい。わかりましたよ。邪魔者は部屋の外に出ていますとも。
◇◇◇
『もう戻ってきていいですよ』
アルトから念話が届いた。
部屋に戻ってみてみるとアルトが寝巻き姿でベットに座ってる。
ちなみにアルトがお風呂に入ってる間暇だったので、いろいろ街でもみていようと思ったんだけど、途中で引っ張られるような感覚におちいってダメだった。多分、アルトから50メートル以上離れようとするとブレーキがかかるみたい。なので早々に切り上げてぼーっとしてたよ。
『戻ったよ』
『お帰りなさい』
そこからは、さっきの喋らなかった時に気になったこととか、個人的に気にかかったこととかを話した。
ちなみに、今は向かい合うようにしてアルトを見ている。普通に話すときは目を見て話したいよね? いや、目は合わないけども。
まずは、門番に見せていたカードみたいなもの。あれはやっぱり冒険者カードというもので冒険者ギルドで発行しているものらしい。
冒険者カードには冒険者の実力や冒険の経験を示すランクが記載されていてアルトはEランクみたい。ランクは下から、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、と順番に上がっていくみたいだからアルトは下から3番目だね。
だけど、登録してから1ヶ月弱でランクが2つも上がるのは結構異例のことだとか。ちょっと誇らしげにしているアルトがかわいい。
『まあ、パーティーメンバーがすごいと言うのもあるんですけどね』
とも言っていたけど。すごいことはすごいでいいんじゃないかな。
ちなみにパーティーランクというのもあるみたい。パーティーのリーダーのランクが反映されるそうで、〈アークライト〉のランクはC。アリアがパーティーリーダーらしい。
次に、通貨の話。
わたしの想像通り、銀貨1枚で1000ニクル、銅貨1枚で100ニクルだった。
レートとしては、
・青銅貨1枚=1ニクル
・鉄貨1枚=青銅貨10枚=10ニクル
・銅貨1枚=鉄貨10枚=100ニクル
・銀貨1枚=銅貨10枚=1,000ニクル
・金貨1枚=銀貨10枚=10,000ニクル
・白金貨1枚=金貨10枚=100,000ニクル
・聖金貨1枚=白金貨100枚=10,000,000ニクル
と言う感じだ。
ざっと相場を聞いてみた感じだと、鉄貨1枚で10円、くらいの価値基準っぽい。
他に気になったのは食事、というより、カレーとかパエリアとかの料理の出どころ。つまり異世界人だね。
前世にある食事と似ているのが多いなーって思って聞いてみると案の定、前世からの転移者がいるみたい。
迷い人、と呼ばれているみたいだけど多分転移者。だって見た目変な格好で前世の食事とか技術とかを広めてるって言われちゃうとね。そうとしか考えられないでしょ。
ちなみに迷い人たちは技能や魔法は使えないみたい。それで見つかるとすぐに保護という名の鹵獲作業が始まるみたいだよ。一応、新しい技術を教えてくれる人たちだからひどい扱いをされることはないみたいだけど、国で技術を囲うために半分軟禁みたいな扱いになるとか。ちょっとかわいそう……。
あとは教会で勇者として召喚されるパターンもあるみたいだね。
このパターンでも迷い人と同じような服装をしてるみたいだけど技能や魔法は使えるみたい。
召喚勇者は特殊な技能を授かることが多いから教会からは重宝されるそう。でも召喚には膨大な魔力が必要になるみたいで、現在は去年召喚されたリサと言う勇者しかいないらしい。
異世界人の話はそれくらい。
後は、自動でついた照明。これはやっぱり魔道具だった。
アルトもそんなに詳しくはなかったけれど光魔法と感知魔法を使って魔道具師が作り上げたものだとか。これにも迷い人が関わっているという話もあるけれど詳しくはわからない。
以上、魔道具の話。
これで知りたかったことは大体知り終えた。あとは個人的に気にかかったことを聞くだけだ。
『パーティーのメンバーとは仲良くないの?』
わたしはそう切り出した。なぜそう聞いたのかというとメンバーとの距離が遠い気がしたからだ。話し方がわたしに対してより丁寧な気がしたし、なんか遠慮しているような、いや、違うかな、とにかく少し距離を置いて話している、そんな気がする。
『……なんでそう思ったんですか?』
『いやなんとなくかな。ちょっと気になっただけだから言いたくなければ言わなくていいよ。わたしの勘違いならそれはそれでいいし』
アルトは少し考えるような仕草をしてからポツポツと話し始めた。
『ぼくは忌子だっていう話はしましたよね?』
『うん。聞いたね』
確かそういう話だった。忌子に対する教会の扱いに嫌な思いをした覚えがある。
でも今はその話何か関係あるのかな?
『それで、その忌子なんですけど……通常、奴隷に落とされます』
『はい?』
今なんて言った?
『技能や魔法が使えないと能力が劣りますから。教会が言うには忌子は人ではないそうです』
『……ひどい』
教会側の勝手な論理で人扱いしないで道具、つまり奴隷として扱うってこと?
それって、あんまりじゃない? 如何ともしがたい怒りが湧いてくる。
……あれ? でもそれっておかしくない?
『失礼かもしれないけど。アルトは奴隷じゃないよね?』
『はい』
『どう言うこと?』
『〈全剣技〉が歴史上の勇者が持っていた技能なんだそうです。それで教会側がどうするべきか扱いかねていたところに……〈アークライト〉の皆さんがぼくを拾ってくれました』
なるほど。そこにつながるわけか。そんな、通常奴隷の扱いを受ける人をパーティーに誘うなんて勇気がある、というかいい人たちだね。そう考えるとアリアたちはアルトの恩人みたいな感じになるのかな?
『でもぼくは、ぼくが〈アークライト〉に誘われたことに少し違和感を感じてるんです』
『そうなの?』
『アリアさんもセイソンさんもノーアさんも皆、Cランクの冒険者なんです』
『そうなんだ?』
Cランクといえば自分の知識で言えばまあまあすごいと思う。いっぱしの冒険者、というイメージだ。だけど確かに、教会の意向を覆すまでの権力があるものなのかな?
『それに、皆さんぼくが冒険者になる前まで王都にいたみたいなんですよね』
『なるほど。それで?』
『このエーテルウッドの街は〈アークライト〉が受けるような美味しい依頼はないんです』
少し読めてきたかも。
『それなのに〈アークライト〉がわざわざこの街にまできてアルトを勧誘したと』
『はい。それでぼくは何か違和感を感じてしまって』
なるほどね。それで距離ができているように感じたのか。
『もちろん〈アークライト〉に誘ってもらえたことは嬉しいんです。この街でも一番のパーティーですから。でもぼくは通常奴隷として扱われる忌子で。なのにアリアさんとノーアさんはぼくがパーティーに入るように勧めてくれて。それなのに疑ってしまっているなんてぼくはダメな人間なんでしょうか?』
暗い雰囲気だ。こういう時は一旦話を少しそらす。
『セイソンは歓迎してない?』
『セイソンさんは、どうなんでしょう? でもセイソンさんはぼくに短剣しか使わせてくれないですね。お前の背丈に丁度いいからって言われましたけど』
ちょっと自嘲気味にアルトが笑う。
『他には何か感じることはある?』
『あとは、アリアさんはぼくのこといつも見ていてちょっと監視されてるように感じますね』
それはただ可愛がっているだけのような気もするけど。だけどここはアルトを肯定しておくことにする。
『疑問を持つことはいいことだと思うよ? 本当ならわたしのことも疑ってかかった方がいいくらいだし』
『そんな! セイさんに疑問を持つだなんて烏滸がましいです』
それは買い被りすぎじゃないかな。というか聖霊様補正?
『疑問に思うってことは考えてるってことだからね。逆に信頼してるっていうのは聞こえはいいけど、思考停止しているとも言える。だから納得するまで疑ってみてもいいと思うよ』
『……それでいいんでしょうか?』
『多分ね。 わたしの言葉も信用ならないかもしれないから』
最後は、少し冗談めかして言ってみた。
『……少し、気が紛れた気がします』
アルトは少し付き物が取れたような顔している気がした。
『じゃあそろそろ寝ようか?』
『そうですね。明日も早そうですし』
『そうだね。じゃあおやすみ。アルト』
『はい。おやすみなさい』
◇◇◇
そして……
アルトが寝た。
あれ? わたしは一向に眠くならないんですがどうしたらいいですか?
まずセイソンが一人部屋に入っていって、次にアリアとノーアが別の部屋に。そしてその奥の部屋にアルトが入っていく。
アルトとアリア、ノーアは同じ部屋なのかなと思ったけど違うみたい。3人部屋がなかったのかな?
ドアを開けると、控えめな照明に照らされた。自動照明? この世界は実は結構発展してたり? いやそれはないか。街並みとか目の前の部屋の中とか中世風な感じだもの。多分魔道具ってやつかな? あるのかどうか知らないけど。
部屋の中は手作りの簡易的な机や椅子が配置され、奥の方にベットや収納やらが置かれている。うん。だいぶシンプルだね。
『アルト?』
「あっセイさん! 全く喋らなかったのでいなくなっちゃったかと思いました」
『あーごめんね。でも今みたいに声に出して喋られちゃうと困るなーって思って』
「あっ! ごめんなさい」
『これでいいですか?』
『うんオッケー。少し話してもいい?』
『いいですけどお風呂と着替えしてからでもいいですか?』
あ、お風呂とかもあるんだ。いいなーわたしも入りたい。
汚れないだろって? それとこれとは話が違うんです! お風呂入ると体だけじゃなくて心もリフレッシュされるんです!
そうだ、アルト目線でいたらお風呂入った風な気持ちになれないかな。
『もちろんいいよ』
『それじゃあ一回部屋から出てもらえますか?』
『え? なぜに?』
『え? セイさんに見られるのは恥ずかしいからです』
『そ、ん、な』
アルトと一緒にお風呂入る作戦が……。お風呂に入れるかと思ったのに。儚い夢だった。
『それじゃ出ていってください。絶対覗かないでくださいね』
『わかったよ』
はいはい。わかりましたよ。邪魔者は部屋の外に出ていますとも。
◇◇◇
『もう戻ってきていいですよ』
アルトから念話が届いた。
部屋に戻ってみてみるとアルトが寝巻き姿でベットに座ってる。
ちなみにアルトがお風呂に入ってる間暇だったので、いろいろ街でもみていようと思ったんだけど、途中で引っ張られるような感覚におちいってダメだった。多分、アルトから50メートル以上離れようとするとブレーキがかかるみたい。なので早々に切り上げてぼーっとしてたよ。
『戻ったよ』
『お帰りなさい』
そこからは、さっきの喋らなかった時に気になったこととか、個人的に気にかかったこととかを話した。
ちなみに、今は向かい合うようにしてアルトを見ている。普通に話すときは目を見て話したいよね? いや、目は合わないけども。
まずは、門番に見せていたカードみたいなもの。あれはやっぱり冒険者カードというもので冒険者ギルドで発行しているものらしい。
冒険者カードには冒険者の実力や冒険の経験を示すランクが記載されていてアルトはEランクみたい。ランクは下から、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、と順番に上がっていくみたいだからアルトは下から3番目だね。
だけど、登録してから1ヶ月弱でランクが2つも上がるのは結構異例のことだとか。ちょっと誇らしげにしているアルトがかわいい。
『まあ、パーティーメンバーがすごいと言うのもあるんですけどね』
とも言っていたけど。すごいことはすごいでいいんじゃないかな。
ちなみにパーティーランクというのもあるみたい。パーティーのリーダーのランクが反映されるそうで、〈アークライト〉のランクはC。アリアがパーティーリーダーらしい。
次に、通貨の話。
わたしの想像通り、銀貨1枚で1000ニクル、銅貨1枚で100ニクルだった。
レートとしては、
・青銅貨1枚=1ニクル
・鉄貨1枚=青銅貨10枚=10ニクル
・銅貨1枚=鉄貨10枚=100ニクル
・銀貨1枚=銅貨10枚=1,000ニクル
・金貨1枚=銀貨10枚=10,000ニクル
・白金貨1枚=金貨10枚=100,000ニクル
・聖金貨1枚=白金貨100枚=10,000,000ニクル
と言う感じだ。
ざっと相場を聞いてみた感じだと、鉄貨1枚で10円、くらいの価値基準っぽい。
他に気になったのは食事、というより、カレーとかパエリアとかの料理の出どころ。つまり異世界人だね。
前世にある食事と似ているのが多いなーって思って聞いてみると案の定、前世からの転移者がいるみたい。
迷い人、と呼ばれているみたいだけど多分転移者。だって見た目変な格好で前世の食事とか技術とかを広めてるって言われちゃうとね。そうとしか考えられないでしょ。
ちなみに迷い人たちは技能や魔法は使えないみたい。それで見つかるとすぐに保護という名の鹵獲作業が始まるみたいだよ。一応、新しい技術を教えてくれる人たちだからひどい扱いをされることはないみたいだけど、国で技術を囲うために半分軟禁みたいな扱いになるとか。ちょっとかわいそう……。
あとは教会で勇者として召喚されるパターンもあるみたいだね。
このパターンでも迷い人と同じような服装をしてるみたいだけど技能や魔法は使えるみたい。
召喚勇者は特殊な技能を授かることが多いから教会からは重宝されるそう。でも召喚には膨大な魔力が必要になるみたいで、現在は去年召喚されたリサと言う勇者しかいないらしい。
異世界人の話はそれくらい。
後は、自動でついた照明。これはやっぱり魔道具だった。
アルトもそんなに詳しくはなかったけれど光魔法と感知魔法を使って魔道具師が作り上げたものだとか。これにも迷い人が関わっているという話もあるけれど詳しくはわからない。
以上、魔道具の話。
これで知りたかったことは大体知り終えた。あとは個人的に気にかかったことを聞くだけだ。
『パーティーのメンバーとは仲良くないの?』
わたしはそう切り出した。なぜそう聞いたのかというとメンバーとの距離が遠い気がしたからだ。話し方がわたしに対してより丁寧な気がしたし、なんか遠慮しているような、いや、違うかな、とにかく少し距離を置いて話している、そんな気がする。
『……なんでそう思ったんですか?』
『いやなんとなくかな。ちょっと気になっただけだから言いたくなければ言わなくていいよ。わたしの勘違いならそれはそれでいいし』
アルトは少し考えるような仕草をしてからポツポツと話し始めた。
『ぼくは忌子だっていう話はしましたよね?』
『うん。聞いたね』
確かそういう話だった。忌子に対する教会の扱いに嫌な思いをした覚えがある。
でも今はその話何か関係あるのかな?
『それで、その忌子なんですけど……通常、奴隷に落とされます』
『はい?』
今なんて言った?
『技能や魔法が使えないと能力が劣りますから。教会が言うには忌子は人ではないそうです』
『……ひどい』
教会側の勝手な論理で人扱いしないで道具、つまり奴隷として扱うってこと?
それって、あんまりじゃない? 如何ともしがたい怒りが湧いてくる。
……あれ? でもそれっておかしくない?
『失礼かもしれないけど。アルトは奴隷じゃないよね?』
『はい』
『どう言うこと?』
『〈全剣技〉が歴史上の勇者が持っていた技能なんだそうです。それで教会側がどうするべきか扱いかねていたところに……〈アークライト〉の皆さんがぼくを拾ってくれました』
なるほど。そこにつながるわけか。そんな、通常奴隷の扱いを受ける人をパーティーに誘うなんて勇気がある、というかいい人たちだね。そう考えるとアリアたちはアルトの恩人みたいな感じになるのかな?
『でもぼくは、ぼくが〈アークライト〉に誘われたことに少し違和感を感じてるんです』
『そうなの?』
『アリアさんもセイソンさんもノーアさんも皆、Cランクの冒険者なんです』
『そうなんだ?』
Cランクといえば自分の知識で言えばまあまあすごいと思う。いっぱしの冒険者、というイメージだ。だけど確かに、教会の意向を覆すまでの権力があるものなのかな?
『それに、皆さんぼくが冒険者になる前まで王都にいたみたいなんですよね』
『なるほど。それで?』
『このエーテルウッドの街は〈アークライト〉が受けるような美味しい依頼はないんです』
少し読めてきたかも。
『それなのに〈アークライト〉がわざわざこの街にまできてアルトを勧誘したと』
『はい。それでぼくは何か違和感を感じてしまって』
なるほどね。それで距離ができているように感じたのか。
『もちろん〈アークライト〉に誘ってもらえたことは嬉しいんです。この街でも一番のパーティーですから。でもぼくは通常奴隷として扱われる忌子で。なのにアリアさんとノーアさんはぼくがパーティーに入るように勧めてくれて。それなのに疑ってしまっているなんてぼくはダメな人間なんでしょうか?』
暗い雰囲気だ。こういう時は一旦話を少しそらす。
『セイソンは歓迎してない?』
『セイソンさんは、どうなんでしょう? でもセイソンさんはぼくに短剣しか使わせてくれないですね。お前の背丈に丁度いいからって言われましたけど』
ちょっと自嘲気味にアルトが笑う。
『他には何か感じることはある?』
『あとは、アリアさんはぼくのこといつも見ていてちょっと監視されてるように感じますね』
それはただ可愛がっているだけのような気もするけど。だけどここはアルトを肯定しておくことにする。
『疑問を持つことはいいことだと思うよ? 本当ならわたしのことも疑ってかかった方がいいくらいだし』
『そんな! セイさんに疑問を持つだなんて烏滸がましいです』
それは買い被りすぎじゃないかな。というか聖霊様補正?
『疑問に思うってことは考えてるってことだからね。逆に信頼してるっていうのは聞こえはいいけど、思考停止しているとも言える。だから納得するまで疑ってみてもいいと思うよ』
『……それでいいんでしょうか?』
『多分ね。 わたしの言葉も信用ならないかもしれないから』
最後は、少し冗談めかして言ってみた。
『……少し、気が紛れた気がします』
アルトは少し付き物が取れたような顔している気がした。
『じゃあそろそろ寝ようか?』
『そうですね。明日も早そうですし』
『そうだね。じゃあおやすみ。アルト』
『はい。おやすみなさい』
◇◇◇
そして……
アルトが寝た。
あれ? わたしは一向に眠くならないんですがどうしたらいいですか?
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