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腐男子くんの◯◯◯◯不可避待ったナシ⁉
しおりを挟む某、腐男子である。
ビーからはじまってエルで終わるジャンル大好物。もちBL以外にも朝番の魔法少女キャルルンちゃんにもビッグ・ラブな某。
名は阿南 祥太朗と申す。キャルルンちゃんにショウちゃんと呼ばれたい人生だった。
まぁ某? 現実を生きてるヲタクなので? キャルルンちゃんが現実ではなく魔法の国キャラメルワールドにいるって知ってるので? キャルルンちゃんに名前を呼んでもらうのは来世の楽しみにとっておく所存。
デキるヲタクは来世まで待てるヲタクなのだよチミ~!
と、まぁキャルルンちゃんとの逢瀬は来世に持ち越しとして、某の今の楽しみはバードウォッチングならぬヒューマンウォッチング? いやボーイズウォッチングである。
イケメンは世界の宝。イケメンはイケメンとくっつくのが世界の常識!
と、お姉たまが言っていたのだが某も全面的同意。全肯定待ったナシでおすし。
今も、某は風景の一部とかしクラスメイトのイケメン二人組のイチャイチャをみているのでござる。
黒髪の筋肉ムンムンスポーツマンの佐久間 雄二氏と、いつもニコニコ爽やかな汐月 穂波氏。昼休みになると机を突き合わせて二人でほぼ毎日ランチを食べてるのって、付き合ってる証拠では?
めっちゃラブラブしてるのではでは?
いや~某のメガネは欺けないぞよ! 二人は付き合っている! 多分!
やはり女子に超絶人気王子様である汐月氏が受けに某ファイナルアンサー? 男子高校生でありながら完成された筋肉を体育時に披露した佐久間氏に組み敷かれる優しい皆の王子様。おお! めっちゃ滾るんだが?
いや。いやいやしかし待つでござる。キラキライケメン王子様に組み敷かれる、野獣系イケメンも捨て難し。普段攻め攻めオーラムンムンな佐久間氏が、ドS王子様に言葉攻めされて涙目快感絶頂コースもめっちゃ滾るしヤバヤバなんだが?
ハァ~~! 萌え海尊死待ったナシでござる~~!
どっちも某大好物である。汐月氏受けは王道で良きだし、佐久間氏受けは意外性とエロスの狭間で良き。
つまり、どっちもす・き♡
某はムフムフとイケメン二人を見つめながら、ハァ~~と息を吐き出した。手に持った弁当箱を箸でつつき、チラチラと二人を盗み見ながら口に白米を運ぶ。
イケメンカップルを見ながら食べる米、最高に美味し。
佐久間氏が何かを話し、汐月氏が頷く。二人の会話は全く聞こえないのであるが、二人が会話をしているという姿だけで某大満足。
え、会話に混ざりたくないのかって? ハァ~~、わかっていませんな。イケメン二人に割って入るモブなど不要! 某がBLをしたいのではなく、某は壁となりイケメン二人のラブを見届けたいのである。
なので、某は教室の窓際最後尾という至高の席から、廊下側最前列の席でいちゃつく佐久間氏&汐月氏というベストカップルを陰ながら見守っているのである。
ぶっちゃけ、某二人と会話したこと皆無でして。腐海という海を流離う某にキラキライケメンオーラ全開の陽キャはちと厳しい。メガネ陰キャ代表の某をそもそも二人が人間として認知しているかもわからんという現実。しかしそこが良き。会話を重ねてしまえば某の思うベストカップル像との齟齬が生まれるやもしれんが、話さなければ無問題。
モブらしく壁となりベストカップルを見守れるというもの。
「ショウくん」
落ち着いたハニーボイスが親しげに某の名前を呼ぶ。
「おお! 和久井氏おつでござる」
我が唯一無二の友である和久井氏が、いつの間にか某の席の前に立っていた。いや~某ったらイケナイ子! ベストカップルウォッチングに魂を持っていかれ友に気が付かないとは不覚!
「うん、お疲れ様。……また見てるの?」
ほんの一瞬だけ和久井氏は佐久間氏&汐月氏の二人に目を向け、呆れたように息をついた。
「推しは推せるときに推すが某のモットー! つまり、ベストカップルウォッチングは某の推し活であり人生」
「人生……」
「そう。イケメン二人のベストカップルを見守ることこそ、腐海を生きる某の定め」
「……ショウくん、無表情なのに声だけ生き生きしてるね」
「仕方なし。某は腐男子の擬態を得る為、表情筋と別れを告げた所存」
いや~某の表情筋いつの間にか死亡しちゃったのマジ謎。お姉たまにニヤニヤしながらのボーイズウォッチングはマジ通報案件と言われて無表情をキープしてたせいかしら……?
まぁしかし? 壁となりベストカップルを見守る某。無表情の方が誰も某を気にしないし? 良くない?
萌えの為なら表情筋の一つや二つ死滅しちゃっても無問題ですな!
「ショウくんもさ、喋らなかったらイケメンなんだけどね……」
ふっむ~? なんだかめちゃんこかわいそうな生き物を見るような目で和久井氏に見られているが、某がイケメンとは一体どこ情報でござるか~?
某、鏡で自分の顔を見ても平凡代表壁メガネぐらいにしか見えないんだが?
某に言わせれば和久井氏の方が儚げ美少年で某の百億倍イケメンなのだがだが。明るめの茶髪はサラッサラだし、お目々もパッチリ睫毛ビシバシのめちゃんこキュートな美少年♡はぁ~~! 某の親友がこんなにもイケメン!
唯一の心残りは和久井氏が独り身なことでござるな。理想のBとLのお相手が現れないなんて……! キーッ! お相手は一体何をしているのかしら!
「和久井氏にもきっと良きお相手が見つかるはずでござる! なので暫し待たれよ!」
「いやいらないから」
即効お断りなんて和久井氏ったら恥ずかしがり屋さんなんだから♡某知ってる~。コレってフリってやつでござるな?
押すな押すなが押せの合図。つ・ま・り♡いらないいらないはいるの合図という事実!
友よ! 某に任せておけ! 某が立派なお相手をば……!
あ、大事なことを聞いておかねばならん。
「和久井氏の好みのタイプはどんなタイプでござるか~?」
「性別女性で好きになった子がタイプかな」
う~ん、BとLにトマトをくっつけたような解答……! 我が友そんなツレナイとこもす・き♡
「っていうか、ショウくん……すっごく見られてるよ」
「ふむ~?」
見られてる? え、某誰に見られてるんでござる?
キョロキョロと周囲を見渡してみれば、なんと噂のベストカップル佐久間氏とおめめがバッチリ合った。
「おおっ、なんと!」
まさかの佐久間氏とアイコンタクトを交わしてしまったでござる。コレはあれですな? 嫉妬イベント発生ですな? 俺の穂波を何見てんだコラっという嫉妬によるアイコンタクトに間違いなし。
ならば某も佐久間氏に送るしかないでござるなこのアイメッセージ!
行け某のアイメッセージ! 某はベストカップルを見守る壁でござる~~!
目にめちゃんこメッセージと気持ちを込めて佐久間氏を見つめる。佐久間氏まるで人形のように動かなくなったでござるが何故? 某のアイメッセージ受信エラーに佐久間氏動作不良の可能性あり?
某の眼が悪かったんでござるか?
瞼をパチパチ動かして再度佐久間氏に視線を向ける。あんれ~? なんで佐久間氏急に立ち上がったんでござるか?
しかも何やらコチラに向かってきているような……?
「ん~? 某の気の所為の可能性」
「ゼロパーセントだね。佐久間くんこっちに来てるよ」
「さすが心友! 某の気持ちが伝わるとはさすが心の友!」
和久井氏と某は前世からの縁に間違いなし。前世で某と和久井氏は血をわけた兄弟姉妹または母と子だった可能性二百パーセントぉ~~! ふっむ~? 某今からでも和久井氏をブラザーと呼ぶべきべき? またはマミー?
「ブラザーとマミー、和久井氏はどっちが良き?」
「なにがなんでそうなったのかわからないけど、どっちもイヤかな」
「秒でフラレたの草生えるでござるが恥ずかしがり屋な和久井氏にビックラブ☆」
某のハートビーム、和久井氏に届け! と某の胸辺りで両手でハートを作って和久井氏に差し出す。和久井氏は頭を軽く左右に振って呆れたような声音で呟いた。
「僕、腐ったハートは受け取れないかな」
「が、ガーン! 某のガラスのハートに今ヒビが入ったでござる! 耐久性残り一ポイントぉ!」
「そんな事より、来たよ」
めちゃんこ小さな声で和久井氏に言われ、某お口にチャックした。
「おい、阿南。ちょっとツラ貸せ」
重低音のバリバリ男らしい声が頭上から降り注ぎ、某の視界いっぱいに筋肉が映る。和久井氏と並ぶと美少女と野獣ぐらい体格差あるのめちゃんこ萌えなんですが? 某のセンサーでは和久井氏身長一六〇センチ、佐久間氏一八九センチぐらいと出てるんだがファイナルアンサー?
肩幅も広くて身体も厚みがあって、しかもイケメン! あと和久井氏をスッポリ包める体格差ってめちゃんこシコリティが高いんだが? ただ残念~! 佐久間氏には汐月氏というお相手がいるんだな~! 汐月氏がいなかったら和久井氏のお相手に某めっちゃ佐久間氏猛プッシュしたのに~! 世は無常なり~!
「おい、聞いてんのか?」
イラチなお声に某気を引き締めて佐久間氏を見上げる。鼻高~! 彫り良し~! やっぱし佐久間氏攻めに某一票投票しちゃう?
「おい、阿南」
「ショウくん、いい加減戻っておいで」
いつの間にか某の真横にいた和久井氏に肩を叩かれ、某ハッとした。はじめて佐久間氏に話しかけられたと言うのに某腐海で平泳ぎしていたわ。
「すまない」
対人用の皮を装着して佐久間氏に慌てて頭を下げる。すると佐久間氏はさっきまでのイラチなお声から一転、落ち着いた声に変わった。
「いや、いい。俺もいきなり悪かったな」
謝る推し尊し。推しの片割れとはじめて会話した記念日、心のカレンダーにメモっとくでござる。
「あー……なァ、ちょっとついてきて欲しいんだけど良いか?」
さっきのツラ貸せからずいぶんマイルドになったセリフに某首を捻る。
ベストカップルの片割れからの呼び出し……つまり、さっきのアイメッセージまたもやエラー? 某知ってるんだから~。この呼び出しって某にアイツに手を出すなっていう攻めからの警告でござるよね? 某壁なのに嫉妬イベントに巻き込まれるとは……ナニソレめちゃんこ萌える♡
嫉妬イベントを生体験デキるとは、もう乗るしかないこのビッグウェーブに!
「ああ、わかった」
内心狂喜乱舞し、椅子から立ち上がると某の手首を佐久間氏が何故か鷲掴みにした。
はて? 何故某のおててを?
「……逃げねぇように、な」
某に背中を向けた佐久間氏がめちゃんこ小さい声で呟くのが耳に入る。
ムムム、これは心外でござるな。某萌の為なら火の中腐海の中どんとこいでござるのに。嫉妬イベント生体験ツアーから逃げ出すなんて腐男子の風上にもおけないわ。
「逃げるわけないだろう」
某心外よ! って気持ちを声にこめると、某の手首を握った佐久間氏の手に何故かまた力が入る。
「だといいがな」
微かに笑いを含んだ声音で佐久間氏がボソリと言い、某の手を引っ張った。
……え、これまさかの警告嫉妬イベントから殴り合い嫉妬イベントに変更とかないでござるよね?
なんか佐久間氏の雰囲気が不穏なんでござるが。
某、暴力はちょっと……。
モヤシな某、佐久間氏のパンチをいただいたら中身のアンコが飛び出るでござるよ!
暴力反対~~! 警告嫉妬イベント希望なり~~!
◇◇◇
「ハイヤ~~!?」
驚いたら馬の掛け声でちゃったでござる! 某の対人用擬態もスッポリ脱げちゃったけどしょうがないよね!
某、ワクドキ嫉妬イベント全裸待機待ったなしの状況で佐久間氏に空き教室に連れて行かれたでござる。よくある展開に某のバロメーターめちゃんこアップアップ! ここから俺の穂波に手を出すなイベント発生待ったなし、と某の期待マックスで某ドアを閉めたでござる。
そしたら佐久間氏が突然某の手首を引っ張って佐久間氏の胸に某ダ~~イブ! からのギュギュッと何故かホールドされた所存。
「佐久間くん……?」
やけにガッチリホールドされて某身動きできないんだが? がしかし胸板厚! コレが噂の雄っぱいでござるな? 柔らかくてフカフカとは噂には聞いておりましたが、最高にフカフカでござるな! 某の大好きな肉まんみたいな柔らかさに某のハートトキメキマックス♡
「好きだ」
…………。
ん? ん~~?
某、ちょこっとお耳の調子が悪いでござるな。幻聴が聞こえたでござる。
「えっと、佐久間くんなんて?」
あ、穂波が好きだって某にライバル宣言? も~さすがの某も主語がないとわからないでござるよ~!
「阿南、お前が好きだ」
「ハイヤ~~!?」
ここで上の馬の掛け声が出ちゃったんでござるよ。阿南誰それ、あ、某の名字阿南だった~! てへペロ~なんて脳内逃避しても、筋肉ホールドされてる某逃亡不可。
「お前、ずっと俺のこと見てただろ」
「はわ~」
見てた、見てましたぞ~! 正確には佐久間氏だけじゃなくて汐月氏も見てましたがね! ベストカップルウォッチングしてましたがなにか?
「最初はお前無表情だしガンつけてきてんのかと思ったんだけどよ」
佐久間氏が某の身体をギュッギュッしながら耳元に顔を近づけてきて某のお肌ちょこっとチキンになっちゃった。
「お前が独り言言ってんの聞いてから気になってしょうがなかった」
Why? 某の独り言~? 身に覚えがあり過ぎてどの独り言がわかりませんな。
「佐久間氏と汐月氏マジベストカップルなり~佐久間氏ガチ攻めすぎて某大歓喜、だっけか?」
「おっふ」
某のガラスのハートにクリティカルヒット!
推しバレしちゃうとは某大失敗!
「無表情になに言ってんだコイツって思ったんだけどよ、よくよくお前見てみたら俺と穂波が一緒にいるだけで目ぇ輝かせてんしほっぺた赤くしてんの可愛いなって思った」
「は、はいや~……そ、それは気の所為では?」
「まぁ俺も変わってるとは思うんだが、特段仲良くもねー穂波を捕まえてお前の為に一緒にいるくらいにはお前が気になって仕方なかった」
衝撃の事実! え、佐久間氏って汐月氏と仲良くなかったんでござるか?
あんなに一緒にランチしてたのに~?
「穂波とは幼馴染なんだが、まぁそれだけだな。お前の為に嫌がるあいつを捕まえて一緒に昼メシ食ってたんだが、ついにアイツキレてな。俺は女の子とメシが食いたい、迷惑だからさっさと告白してこいって言われちまった」
「おっふぅ」
もうやめて! 某のライフはもう一よ!
某のベストカップルが泥棒猫によって破局を迎えたでござる~~! どこの泥棒猫よ! あ、某が泥棒猫だったわ。
「とは言え、お前は俺のことそういう意味で好きじゃねぇだろ?」
唸れ某のヘッド! 高速縦フリを今こそ披露するべし! と、某めっちゃ肯定したでござる。某BLは好きだけど恋愛対象はキャルルンちゃんみたいな女の子が好きなんでござる~! BLでの某は壁、またはモブなんでござるよ!
「そう肯定されると傷つくなァ。ま、いいわ」
傷つくと言いながらそんな様子皆無な佐久間氏のお手々が某の背中をスルリと撫で、徐々に下に下がっていく。
「お前にガチ攻めとか言われたし、身体から落とすことにするわ」
「はぎゃっ!?」
佐久間氏のお手々が某のお尻をぎゅうっと鷲掴みにして、モミモミしたり左右に開いたりしてくる。
こそばゆいでござる~!
「じゃ、まずは身体から俺を好きになろうな?」
めちゃんこイケメンな笑みを浮かべた佐久間氏のお顔が間近に迫り、某おめめを思わずギュッとした。
ちゅっ、と仄かなあたたかさと柔らかな感触が唇に触れる。
ハムハムと唇を優しい食まれ、某の身体にゾクゾクとチキン肌になる前みたいな感覚が湧き上がってくる。
そ、某知ってる~……これ、アレだわ。フラグがたったんじゃあなぁい?
噂の、ほら……メス堕ちフラグたっちゃったのでは……?
某メス堕ち不可避待ったナシ~~!?
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