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第一章 吸収期女子編
第十六話 あの男とアルバイト
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リキと一緒に校門を出かけたところでリキが忘れ物に気づく
「やべっ!夏休みの課題忘れたかも・・千秋さん、すぐ取ってくるからここで待ってて!」
そう言って走っていってしまうリキ
またしてもボクを一人にしたな?人さらいにでも遭ったらどう責任を取ってくれるんだ?
そうなったらもうボクを貰ってもらうしか道はなくなるぞ?
ひねくれた不完全体女子の囁きにリキに貰ってもらったボクを妄想してニヤッとほくそ笑んでやる
そんなボクのニヤつきを見ていたのか、覚えのある声がボクの耳に届いた
「嬉しそうだね?いい顔だ、キミ松元千秋さんだよね?」
ふと我に返り声の主の方へと視線をやるとあの時の助けてくれた男が立っていた
あっ・・アンナさんの言う通りやっぱり近々来やがったか・・
そう思い返したところであの男の名刺が脳裏に浮び、思わず声を出してしまう
「若槻直樹!カメラマン!彼女なし!独身!」
知らない情報も適当に口から出てしまったが、それを聞いた若槻は少し動揺している
「な・・なかなかユニークな性格の娘だな・・確かに独身だが・・彼女はいるぞ?」
別にいらん情報なのに勝手に個人情報を開示してきた若槻
それを聞いてほくそ笑むボク
そんなボクをみて若槻が続けて話してきた
「キミにも恋人がいるようだから手短に話す、俺は今人生で最高の被写体に遭遇している、それはキミだ、そこで相談なんだがキミに俺の作品を作る手助けをしてほしい」
そう言って真剣な眼差しでボクを見ている
確かに手短だな、だがそんな貴様の作品作りにこのボクが手を貸すと思っているのか?寝言は寝て言え!
と男のプライドが出しゃばってきたところで若槻はもう一言付け足して話してきた
「タダとは言わないよ?これも仕事だからね、協力してくれるなら今回の仕事、3万でどうかな?」
その言葉にさっき紗良に言われた「おばさんにお金だしてもらって」が頭をよぎり、男のプライドが頭の中で囁く
手伝っちゃいなよ?それで3万は美味しいぞ?
紗良に一泡吹かすチャンスだぜ!ボクが働かないと思ってるからな!
そんなことを思っているとボク女子も脳内に現れ男のプライドに言い返す
あんたバカ?ホイホイついてってどうするの?被写体とか言ってるし、いかがわしい仕事だったらどうするのよ!?お金貰ったら逃げられないし、リキになんて説明するの!?
仕事はしたい・・でもいかがわしいのはイヤだ・・リキには褒められたい・・
そんな脳内の喧嘩と葛藤をえて、ボクは若槻に静かに言った
「あの・・仕事はお手伝いしてもいいですよ・・アンナさんの顔もあるし・・ただ・・お金はいりません!それと・・嫌だったらその場でボク帰りますから・・」
両方の意見とボクの気持ちも混ざったなんともあやふやで適当な答え
そんなボクの答えを聞いて若槻がニコッと笑顔になって話しだした
「いい返事と取っていいかな?まぁ、断られてもまたお願いしようと思ってたんだよね、それと心配するような変な仕事じゃないから安心してくれ、だから報酬は渡すよ」
キョトン、としてしまうボクに若槻は続けて話す
「早速だけど、月末の一大イベントの夏祭り、キミも知ってるだろ?そこで【夏の日の彼に向ける可憐な彼女の笑顔】っていう雑誌社主催のフォトイベントがあるんだ、そこでだ、キミにそのイベントに出てほしい」
夏祭り・・?リキと一緒に行く予定のやつか・・
でもボク、リキと約束しちゃったんだけど・・
断ってもいいかな?
リキとの大事なイベントと夏祭りのイベント、天秤にかけるより先にボクはリキとのイベントを優先に考える
そんなボクに若槻が付け足して話してきた
「もちろん彼も一緒で頼むよ?彼に向けてのフォトイベントだからね、それと当日はキミの知っているアンナにヘアメイクをお願いしてあるから、美容室に寄ってから来るといい」
へっ?専属のスタイリストさんのアンナさんがボクの髪いじってくれるの?
なんか・・モデルみたいじゃん・・
リキも一緒でもいいみたいだし、断る理由がないな、それにしてもボクなんかにそんな大盤振る舞いしていいのか?
でも、アンナさんに髪をいじってもらえるのは魅力的だ・・
女子にとっては嬉しいであろうこの提案、もちろんボクにとってもイベントを同時に出来るのでありがたい
安堵したボクは無意識にニヤッと若槻に微笑んでやっている
「その笑顔、当日も頼むよ?気になることがあればアンナに聞いてくれ、それじゃ俺はこれで失礼するよ、彼が戻ってきたみたいだからね」
若槻はクルッとボクに背を向け歩いていき街路樹に紛れ見えなくなった
「千秋さん!待たせてすまん、さっきの男なんだ?大丈夫?何もされてない?」
ボクの心配をしてくれているリキ、ボクは若槻の話をリキにも説明する
「そうか、てっきり千秋さんナンパされてるのかと思って、夏祭りのそのイベントなら知ってるな、地方開催にしちゃ全国的に有名だし、さっきも智秋とその話してたんだ、紗良さんと千秋さん誘って観ようってさ」
なんだか話がズレてるな・・ボク観るんじゃなくて観られる方になっちゃったんだけど・・
ボクが困った顔をしてリキを見ていると不思議に思ったのかリキが聞いてくる
「どうした?イベント観るの嫌か?それなら俺達はパスして夏祭りだけ楽しむ?」
リキ、優しいのはいいんだが違うんだ・・
ボクは少し笑いながらリキにもう一度話す
「あははっ・・うまく伝わってないね、あのね、ボクさっきの人に誘われたのは観る方じゃなくて観られる方に誘われたの、だからリキもボクと一緒にそのイベント出るんだよ?」
ボクの言葉にリキは少し固まってしまったが、ボクがお腹をつついてやるとビックリして喋りだした
「ま・・マジか千秋さん!?そのイベント一般の人も出れるけど、その枠とは別に選考で選ばれた読者モデルの娘とかセミプロの娘が毎年出るやつだよ?!千秋さん観られる方ってもしかして・・」
リキのその話を聞いて、そうなの?とか思ってしまったボク
何故かいつも持ち歩くようにしていた若槻の名刺をリキに見せてやった
するとリキが驚愕の表情をした
「千秋さん・・俺、姉ちゃんいてファッション系の情報は網羅してるんだけど・・この若槻ってカメラマン、業界じゃ有名な人だぞ?!えっ・・この人に誘われたって・・千秋さん・・モデル・・?」
なんだか話が大きくなってきた・・
普通に写真撮って終わりかと思ってたのに
セミプロ?読モ?そんなところにボクが出たら・・・
無駄に目立ってしまうじゃないか!?
そしたらどっかにボクの事知ってるやつがいて、元男だとバレるかもしれない!
ヤバい・・田舎のイベントでただのひよっこカメラマンかと思ってたのに!?
ちくしょう・・若槻のアホカメラマンにハメられた・・!
なにが最高の被写体だ!女の子なんかそこら中にいるじゃないか!
完全に公開処刑だな・・
脳内でうなだれる男のプライド、ボクはリキに揺すられる中、校門前で呆然と立ち尽くした
「やべっ!夏休みの課題忘れたかも・・千秋さん、すぐ取ってくるからここで待ってて!」
そう言って走っていってしまうリキ
またしてもボクを一人にしたな?人さらいにでも遭ったらどう責任を取ってくれるんだ?
そうなったらもうボクを貰ってもらうしか道はなくなるぞ?
ひねくれた不完全体女子の囁きにリキに貰ってもらったボクを妄想してニヤッとほくそ笑んでやる
そんなボクのニヤつきを見ていたのか、覚えのある声がボクの耳に届いた
「嬉しそうだね?いい顔だ、キミ松元千秋さんだよね?」
ふと我に返り声の主の方へと視線をやるとあの時の助けてくれた男が立っていた
あっ・・アンナさんの言う通りやっぱり近々来やがったか・・
そう思い返したところであの男の名刺が脳裏に浮び、思わず声を出してしまう
「若槻直樹!カメラマン!彼女なし!独身!」
知らない情報も適当に口から出てしまったが、それを聞いた若槻は少し動揺している
「な・・なかなかユニークな性格の娘だな・・確かに独身だが・・彼女はいるぞ?」
別にいらん情報なのに勝手に個人情報を開示してきた若槻
それを聞いてほくそ笑むボク
そんなボクをみて若槻が続けて話してきた
「キミにも恋人がいるようだから手短に話す、俺は今人生で最高の被写体に遭遇している、それはキミだ、そこで相談なんだがキミに俺の作品を作る手助けをしてほしい」
そう言って真剣な眼差しでボクを見ている
確かに手短だな、だがそんな貴様の作品作りにこのボクが手を貸すと思っているのか?寝言は寝て言え!
と男のプライドが出しゃばってきたところで若槻はもう一言付け足して話してきた
「タダとは言わないよ?これも仕事だからね、協力してくれるなら今回の仕事、3万でどうかな?」
その言葉にさっき紗良に言われた「おばさんにお金だしてもらって」が頭をよぎり、男のプライドが頭の中で囁く
手伝っちゃいなよ?それで3万は美味しいぞ?
紗良に一泡吹かすチャンスだぜ!ボクが働かないと思ってるからな!
そんなことを思っているとボク女子も脳内に現れ男のプライドに言い返す
あんたバカ?ホイホイついてってどうするの?被写体とか言ってるし、いかがわしい仕事だったらどうするのよ!?お金貰ったら逃げられないし、リキになんて説明するの!?
仕事はしたい・・でもいかがわしいのはイヤだ・・リキには褒められたい・・
そんな脳内の喧嘩と葛藤をえて、ボクは若槻に静かに言った
「あの・・仕事はお手伝いしてもいいですよ・・アンナさんの顔もあるし・・ただ・・お金はいりません!それと・・嫌だったらその場でボク帰りますから・・」
両方の意見とボクの気持ちも混ざったなんともあやふやで適当な答え
そんなボクの答えを聞いて若槻がニコッと笑顔になって話しだした
「いい返事と取っていいかな?まぁ、断られてもまたお願いしようと思ってたんだよね、それと心配するような変な仕事じゃないから安心してくれ、だから報酬は渡すよ」
キョトン、としてしまうボクに若槻は続けて話す
「早速だけど、月末の一大イベントの夏祭り、キミも知ってるだろ?そこで【夏の日の彼に向ける可憐な彼女の笑顔】っていう雑誌社主催のフォトイベントがあるんだ、そこでだ、キミにそのイベントに出てほしい」
夏祭り・・?リキと一緒に行く予定のやつか・・
でもボク、リキと約束しちゃったんだけど・・
断ってもいいかな?
リキとの大事なイベントと夏祭りのイベント、天秤にかけるより先にボクはリキとのイベントを優先に考える
そんなボクに若槻が付け足して話してきた
「もちろん彼も一緒で頼むよ?彼に向けてのフォトイベントだからね、それと当日はキミの知っているアンナにヘアメイクをお願いしてあるから、美容室に寄ってから来るといい」
へっ?専属のスタイリストさんのアンナさんがボクの髪いじってくれるの?
なんか・・モデルみたいじゃん・・
リキも一緒でもいいみたいだし、断る理由がないな、それにしてもボクなんかにそんな大盤振る舞いしていいのか?
でも、アンナさんに髪をいじってもらえるのは魅力的だ・・
女子にとっては嬉しいであろうこの提案、もちろんボクにとってもイベントを同時に出来るのでありがたい
安堵したボクは無意識にニヤッと若槻に微笑んでやっている
「その笑顔、当日も頼むよ?気になることがあればアンナに聞いてくれ、それじゃ俺はこれで失礼するよ、彼が戻ってきたみたいだからね」
若槻はクルッとボクに背を向け歩いていき街路樹に紛れ見えなくなった
「千秋さん!待たせてすまん、さっきの男なんだ?大丈夫?何もされてない?」
ボクの心配をしてくれているリキ、ボクは若槻の話をリキにも説明する
「そうか、てっきり千秋さんナンパされてるのかと思って、夏祭りのそのイベントなら知ってるな、地方開催にしちゃ全国的に有名だし、さっきも智秋とその話してたんだ、紗良さんと千秋さん誘って観ようってさ」
なんだか話がズレてるな・・ボク観るんじゃなくて観られる方になっちゃったんだけど・・
ボクが困った顔をしてリキを見ていると不思議に思ったのかリキが聞いてくる
「どうした?イベント観るの嫌か?それなら俺達はパスして夏祭りだけ楽しむ?」
リキ、優しいのはいいんだが違うんだ・・
ボクは少し笑いながらリキにもう一度話す
「あははっ・・うまく伝わってないね、あのね、ボクさっきの人に誘われたのは観る方じゃなくて観られる方に誘われたの、だからリキもボクと一緒にそのイベント出るんだよ?」
ボクの言葉にリキは少し固まってしまったが、ボクがお腹をつついてやるとビックリして喋りだした
「ま・・マジか千秋さん!?そのイベント一般の人も出れるけど、その枠とは別に選考で選ばれた読者モデルの娘とかセミプロの娘が毎年出るやつだよ?!千秋さん観られる方ってもしかして・・」
リキのその話を聞いて、そうなの?とか思ってしまったボク
何故かいつも持ち歩くようにしていた若槻の名刺をリキに見せてやった
するとリキが驚愕の表情をした
「千秋さん・・俺、姉ちゃんいてファッション系の情報は網羅してるんだけど・・この若槻ってカメラマン、業界じゃ有名な人だぞ?!えっ・・この人に誘われたって・・千秋さん・・モデル・・?」
なんだか話が大きくなってきた・・
普通に写真撮って終わりかと思ってたのに
セミプロ?読モ?そんなところにボクが出たら・・・
無駄に目立ってしまうじゃないか!?
そしたらどっかにボクの事知ってるやつがいて、元男だとバレるかもしれない!
ヤバい・・田舎のイベントでただのひよっこカメラマンかと思ってたのに!?
ちくしょう・・若槻のアホカメラマンにハメられた・・!
なにが最高の被写体だ!女の子なんかそこら中にいるじゃないか!
完全に公開処刑だな・・
脳内でうなだれる男のプライド、ボクはリキに揺すられる中、校門前で呆然と立ち尽くした
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