【完結】一夜限りのはずが、ハイスぺ御曹司に熱烈求愛されて一途な愛を刻み込まれました

第七章 忍び寄る影

７

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頭の中で声がした。
『フミ！！起きろ！！』その低い声に聞き覚えがあった。

ぼんやりと浮かび上がってくる情景。
見覚えのない古びた畳の上に私は寝ころんでいた。
どうやら古民家のようだ。視線の先には床の間や囲炉裏もある。
私は吐血していた。口元の血は乾き始め、畳と頬がくっついてしまっている。
苦しさに喘ぎ、息も絶え絶えになる私の体を必死に揺する人影がある。

視線を向けると、そこには智哉さんがいた。
いや、違う。智哉さんと顔は同じだけど髪型も着ているものも今とは違う。

『フミ、大丈夫だ！今医者のところへ連れて行くから！』
『アキト……さん……』

自然と言葉が零れ落ちた。
その瞬間、走馬灯のように私の知らない記憶が次々に蘇った。
智哉さんと同じ顔をしているアキトさんへの恋心も、アキトさんの妹であるウメちゃんを妹のように可愛がっていたことも。

幼いころからずっと抱えていた恋心を彼に伝えられずにいたことも……。

意識が遠くなる。アキトさんが泣いていた。
『ごめん、フミ。俺はずっとお前のことが――』
言葉の途中で、私の意識はプツリと途絶えた。