65 / 76
第五章
7
しおりを挟む
「お前もあの二人が許せないんだな?」
「当たり前でしょう! 初めて会いましたが、あそこまでひどい性格だとは……。きっとアイリーン様も苦労してきたことでしょう」
「ああ、そうだな。あの二人にはきちんと罪を償わせる。もちろん、アイリーンの許可はとった」
「もちろんそうしたい気持ちは山々ですが、一体どうするおつもりですか?」
「俺に考えがある。証拠が揃うまでは、あえて泳がせておこう。すぐに尻尾を出すはずだ」
「私にもなにか協力させてください。シーナに誤解された恨み、晴らすべし!」
ルシアンの怒りの矛先は間違ったところへ向かっている気がしたが、そのままにしておこう。
「それで、アイリーン様にすべてお話されたのですか?」
「ああ、俺の気持ちは全て伝えた。あの日、彼女を守れなかった俺に……共に助け合って生きていこうと言ってくれた」
思い出すだけで心の中が喜びで満たされる。
「エドガー様は命がけでアイリーン様を守られたではありませんか」
「そんなことはない、彼女に傷を負わせてしまった」
「あなたという人は本当に……自分の方が重症だというのに……」
ルシアンは呆れたような表情で肩を竦めた。
「エドガー様の剣の腕前ならば、敵が四人いたとしても圧勝だったでしょう? なのに、あなたはあの時、彼らを切り殺さなかった。アイリーン様に残酷な場面を見せたくなかったからでしょう?」
確信を持ったように言うルシアンにエドガーは帰す言葉が見上がらない。長年一緒にいるせいで、エドガーの考えていることはすべてルシアンに筒抜けだった。
「エドガー様の選択は正解です。目の前で人が切り殺されるところを見たら、アイリーン様の心の傷になってしまわれたことでしょう。それに、四人の男達の狙いは最初からお二人だったようですし、全員を殺してしまえば黒幕に辿り着けなくなってしまいますしね」
「ああ。あの男達の言動には最初から違和感を覚えていたんだ。俺たちを襲う様に指示を出した人間がいるはずだ」
アイリーンの話では、襲ってきた四人の男達の中に、エマを攫いアイリーンの顔に傷を負わせた男がいたのだという。
「早く黒幕を探し出さないと、再びアイリーン様が危険にさらされてしまいます」
「ああ」
エドガーはテーブルの上の写真立てに目を向ける。笑顔のエマが頑張れと応援してくれている気がする。
(任せろ、エマ。お前の恩人……アイリーンのことは俺が必ず守る)
エドガーは両方の拳を固く握りしめた。
「当たり前でしょう! 初めて会いましたが、あそこまでひどい性格だとは……。きっとアイリーン様も苦労してきたことでしょう」
「ああ、そうだな。あの二人にはきちんと罪を償わせる。もちろん、アイリーンの許可はとった」
「もちろんそうしたい気持ちは山々ですが、一体どうするおつもりですか?」
「俺に考えがある。証拠が揃うまでは、あえて泳がせておこう。すぐに尻尾を出すはずだ」
「私にもなにか協力させてください。シーナに誤解された恨み、晴らすべし!」
ルシアンの怒りの矛先は間違ったところへ向かっている気がしたが、そのままにしておこう。
「それで、アイリーン様にすべてお話されたのですか?」
「ああ、俺の気持ちは全て伝えた。あの日、彼女を守れなかった俺に……共に助け合って生きていこうと言ってくれた」
思い出すだけで心の中が喜びで満たされる。
「エドガー様は命がけでアイリーン様を守られたではありませんか」
「そんなことはない、彼女に傷を負わせてしまった」
「あなたという人は本当に……自分の方が重症だというのに……」
ルシアンは呆れたような表情で肩を竦めた。
「エドガー様の剣の腕前ならば、敵が四人いたとしても圧勝だったでしょう? なのに、あなたはあの時、彼らを切り殺さなかった。アイリーン様に残酷な場面を見せたくなかったからでしょう?」
確信を持ったように言うルシアンにエドガーは帰す言葉が見上がらない。長年一緒にいるせいで、エドガーの考えていることはすべてルシアンに筒抜けだった。
「エドガー様の選択は正解です。目の前で人が切り殺されるところを見たら、アイリーン様の心の傷になってしまわれたことでしょう。それに、四人の男達の狙いは最初からお二人だったようですし、全員を殺してしまえば黒幕に辿り着けなくなってしまいますしね」
「ああ。あの男達の言動には最初から違和感を覚えていたんだ。俺たちを襲う様に指示を出した人間がいるはずだ」
アイリーンの話では、襲ってきた四人の男達の中に、エマを攫いアイリーンの顔に傷を負わせた男がいたのだという。
「早く黒幕を探し出さないと、再びアイリーン様が危険にさらされてしまいます」
「ああ」
エドガーはテーブルの上の写真立てに目を向ける。笑顔のエマが頑張れと応援してくれている気がする。
(任せろ、エマ。お前の恩人……アイリーンのことは俺が必ず守る)
エドガーは両方の拳を固く握りしめた。
847
お気に入りに追加
2,384
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

【完結】西の辺境伯令嬢は、東の辺境伯へと嫁ぐ
まりぃべる
ファンタジー
リューリ=オークランスは十七歳になる西の辺境伯の娘。小さな体つきで見た目は大層可憐であるが、幼い頃より剣を振り回し馬を乗り回していたお転婆令嬢だ。
社交場にはほとんど参加しないリューリだが一目見た者は儚い見た目に騙され、見ていない者も噂で聞く少女の見た目に婚約したいと願う者も数多くいるが、少女はしかし十七歳になっても婚約者はいなかった。
そんなリューリが、ある事から東の辺境伯に嫁ぎ、幸せになるそんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実世界でも同じような名前、地名、単語などがありますが関係ありません。
☆現実世界とは似ていますが、異なる世界です。現実ではそんな事起こる?って事も、この世界では現象として起こる場面があります。ファンタジーです。それをご承知の上、楽しんでいただけると幸いです。
☆投稿は毎日する予定です。
☆間違えまして、感想の中にネタバレがあります…感想から読む方はお気をつけ下さい。
地味令嬢は結婚を諦め、薬師として生きることにしました。口の悪い女性陣のお世話をしていたら、イケメン婚約者ができたのですがどういうことですか?
石河 翠
恋愛
美形家族の中で唯一、地味顔で存在感のないアイリーン。婚約者を探そうとしても、失敗ばかり。お見合いをしたところで、しょせん相手の狙いはイケメンで有名な兄弟を紹介してもらうことだと思い知った彼女は、結婚を諦め薬師として生きることを決める。
働き始めた彼女は、職場の同僚からアプローチを受けていた。イケメンのお世辞を本気にしてはいけないと思いつつ、彼に惹かれていく。しかし彼がとある貴族令嬢に想いを寄せ、あまつさえ求婚していたことを知り……。
初恋から逃げ出そうとする自信のないヒロインと、大好きな彼女の側にいるためなら王子の地位など喜んで捨ててしまう一途なヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
扉絵はあっきコタロウさまに描いていただきました。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる