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第1章 虚偽と欺瞞の中の真実
勇者、強制召喚されました。
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『夜宵!?』
「………はぃ。」
怒気を孕んだ声にびくびくしながら返事を返す。
『無事?!無事なのね!?』
「はい、無事で『なら、今すぐきなさい』…ぁ、はい。」
最後まで言わせて貰えない…
「でも、今魔王領で…直ぐには…っ」
『その腕輪で来れるから、早くいらっしゃい!』
「でも、1人じゃな…『2人位なら大丈夫よ!』…はぃ…。」
早く!!と言う声と共に腕輪は回り始め、あっという間に足元にゲートが出来たと思ったら、そのまま闇の中に落とされた。
◇
地面に激突する痛みを覚悟していたが、予想を裏切り僅かな浮遊感に包まれる。
風が私とルークスを包んでいた。
ゆっくりと地面に下ろされると、眼前に翠の玉座と私達の姿を認めて立ち上がった人物が視界に入った。
美しいシャンパンブロンドの髪はストレートで長く、切れ長の深いアメジストの瞳は今は驚きに見開かれて居る。
ルークス同様、大変整った顔立ちだが美人という言葉がしっくりくる中性的な人物だ。
「…………………夜宵…?」
「はい、夜宵です。」
姿が変わってるせいで半信半疑だったのか、たっぷりと間を取ってから名前を呼ばれた。
「は?何、その姿!」
ツカツカと眼前迄歩いてくると、遠慮など知らないとばかりにペタペタと触ってくる。
「説明はするから、少し離れて…瘴気が移る。」
そう言うと、吃驚した様に手を離した。
「えっと、湯浴みさせてもらっても良い?」
「えぇ、後ろのあなたも行ってらっしゃい。」
「あぁ、そうさせてもらう。」
誰か、と声が掛かるとわらわらと人が集まってきて、あっという間にルークスと別々に湯殿に連行された。
もう一度言う…連行された。
身体を、髪を丁寧に洗われ、瘴気もろとも洗い流される。
薔薇の湯船に身を沈めて人心地付いていると、蜂蜜と薔薇の滴で作ったトリートメントで髪を更にケアされていた。
めいいっぱい隅々までケアされ、用意してくれていたドレスを丁重に断って長袖のカットソーとホットパンツ、ニーハイソックスとブーツを用意してもらって身に付けると、玉座の間…ではなく中庭の東屋に案内された。
ルークスはまだの様で、美人が1人で蜂蜜酒の入ったグラスを傾けていた。
植物を模した白い柱だけのそこは、色とりどりの薔薇が絡まってとても美しく、そこに置かれた柔らかそうなソファーにしどけなく腰かける美人はとっても絵になる。
「お待たせ、精霊王様。」
そう、この人は精霊王である。
ちなみに更に言うと、男性です。
「その呼び方は止めてちょうだい。」
「ルシオラ様?」
「…よろしい。」
そう満足そうに頷きながら、またグラスを傾ける。
その様子に苦笑しながら、運ばれてきた果実水のグラスを受け取って隣に腰かけた。
「それで?」
「まぁ、彼が来るまで待ってください。」
グラスに口を付けて笑う。
それに精霊王…ルシオラ様は不機嫌な顔をする。
「散々心配させといて…」
「………ごめんなさい…」
これに関しては、本当に申し訳なく思う。
「……皆、泣いてたのよ…」
「ルシオラ様も…?」
「当たり前でしょう」
申し訳なく思いながらも、躊躇無く言ってくれるのをとても嬉しく思ってしまう。
「本当に愛されているな。」
声に視線を向けると、ルークスが精霊さんに案内されてやってきた所だった。
シンプルな黒のローブ姿…イケメンは何を着ても似合う、得だ。
ルークスは私とルシオラ様の正面に腰かけて、蜂蜜酒を受け取った。
ルシオラ様は値踏みするような目でルークスを見ている。
「……この男、誰なの?」
「魔王」
「そう、魔お…」
グラスに口を付けながら相槌を打っていたルシオラ様は見事に蜂蜜酒を吹き出した。
「魔王?!!」
「ルシオラ様、汚ない。」
「お黙り!」
私達のやり取りに正面でルークスが肩を震わせて笑っている。
本当に笑いの沸点が低いんだなぁ。
「どういう経緯でそんな事になるのよ!?」
「順を追って説明するから。」
魔王を倒したこと、仲間に殺されたこと、復活する場で魔王と再会したこと、復讐に巻き込むことにしたこと…
「あ、んの…人間共っ…!!」
ぶわりと怒りを孕んだ空気が膨れ上がる。
「どうしてくれよう…私の愛し子に…」
「……ルシオラ様、美人が台無しだよ?」
激怒するルシオラ様の手に触れる。
周りに居た精霊さん達も怒りに空気を震わせている。
口元が嬉しさに笑ってしまいそうになりながら止める。
「……嬉しそうな顔してんじゃないわよ。」
「だってー」
嬉しいんだもの、と隠さずに笑えばぎゅうぎゅうに抱き締められた。
「それにしても、魔王を巻き込むなんて…常識外れなことしたわねぇ。」
宿敵でしょう?
「お互いが望んで戦った訳では無いからな。」
いつの間にか復活したルークスが蜂蜜酒を傾けながら答える。
「……………………ふぅん…」
じぃっとルークスを見たルシオラ様は、また不機嫌そうな顔をした。
「貴女達が1度死んで…生き返ったことをは解ったわ。」
私を解放してグラスをテーブルに置くと、目を細めて私達を見据える。
「それで、なんで貴女達から強い精霊の気配がするのか教えてくれるかしら?」
「あー…それについては、謝らなきゃいけない事があるの。」
「どういうこと?」
「直接見てもらった方が早いかな。」
そう言ってステータスを表示させる。
この世界は、オンラインゲームのようにステータス等を表示することが出来る…恐らく神様の作った仕様だ。
「ルーのも見せてあげて。」
「あぁ」
2人分のステータスウィンドウをルシオラ様の前に差し出す。
「…………ん?…ちょと、陽光と月影って…!」
陽光と月影…それは、私達の種族名に付いたものだ。
私か陽光の精霊竜でルークスが月影の精霊竜である。
精霊には序列がある。
一番下が多岐に渡る属性の精霊、その上に火、水、地、風の四大元素と太陽、月の大精霊、その上が光と闇の大精霊、そして頂点に座すのが精霊王ルシオラ様だ。
で、何が問題かと言うと…私達の序列が光と闇の大精霊の上、精霊王の直ぐ下になってしまってると言うことだ。
実は、数代前までは光と闇の大精霊の名前は陽光と月影の大精霊だったそうだ。
それが、徐々に力が弱まって光と太陽、闇と月に別れて現在の形になってしまったらしい。
これと時を同じくして現れたのが魔族らしいが…その事は置いておこう。
「神様が種族を選んで良いって言うから、竜と精霊の掛け合わせにしてもらったの。」
「それで精霊竜、ね。」
因みに精霊は実体を持たないので、他の種族との間に子を設けることはまず出来ない。
「でも、まさか陽光と月影になるとは思わなくて…」
眉根を下げるとルシオラ様は呆れた、と言わんばかりの溜息を付いた。
「なってしまったものは仕方がないけど…お仕置きは必要ね。」
ひくり、と顔が引き攣った。
「今後の事はその後で話しましょう?」
にっこりと笑ってルシオラ様は指を鳴らす。
待ってました、と言わんばかりに大勢の精霊さんに囲まれ、あっという間に担がれる。
「る、ルシオラ様…っ…」
「後で私も行くから」
「「「はい、精霊王様っ!」」」
良い笑顔で精霊さんは答えると、私は強制連行された。
「いーーーやーーーーーっ!!!!」
その後、陽が暮れるまでたぁーーーーっぷり私は着せ替え人形と化すことになった。
――――――――――――――――――――――――――
精霊王様登場です。
オネェで、着せ替え狂ですwww
夜宵にとっては姉的な存在で、無条件に信じられる、甘えられる数少ない人です。
ルークスにとっては、一番の壁かもしれませんww
「………はぃ。」
怒気を孕んだ声にびくびくしながら返事を返す。
『無事?!無事なのね!?』
「はい、無事で『なら、今すぐきなさい』…ぁ、はい。」
最後まで言わせて貰えない…
「でも、今魔王領で…直ぐには…っ」
『その腕輪で来れるから、早くいらっしゃい!』
「でも、1人じゃな…『2人位なら大丈夫よ!』…はぃ…。」
早く!!と言う声と共に腕輪は回り始め、あっという間に足元にゲートが出来たと思ったら、そのまま闇の中に落とされた。
◇
地面に激突する痛みを覚悟していたが、予想を裏切り僅かな浮遊感に包まれる。
風が私とルークスを包んでいた。
ゆっくりと地面に下ろされると、眼前に翠の玉座と私達の姿を認めて立ち上がった人物が視界に入った。
美しいシャンパンブロンドの髪はストレートで長く、切れ長の深いアメジストの瞳は今は驚きに見開かれて居る。
ルークス同様、大変整った顔立ちだが美人という言葉がしっくりくる中性的な人物だ。
「…………………夜宵…?」
「はい、夜宵です。」
姿が変わってるせいで半信半疑だったのか、たっぷりと間を取ってから名前を呼ばれた。
「は?何、その姿!」
ツカツカと眼前迄歩いてくると、遠慮など知らないとばかりにペタペタと触ってくる。
「説明はするから、少し離れて…瘴気が移る。」
そう言うと、吃驚した様に手を離した。
「えっと、湯浴みさせてもらっても良い?」
「えぇ、後ろのあなたも行ってらっしゃい。」
「あぁ、そうさせてもらう。」
誰か、と声が掛かるとわらわらと人が集まってきて、あっという間にルークスと別々に湯殿に連行された。
もう一度言う…連行された。
身体を、髪を丁寧に洗われ、瘴気もろとも洗い流される。
薔薇の湯船に身を沈めて人心地付いていると、蜂蜜と薔薇の滴で作ったトリートメントで髪を更にケアされていた。
めいいっぱい隅々までケアされ、用意してくれていたドレスを丁重に断って長袖のカットソーとホットパンツ、ニーハイソックスとブーツを用意してもらって身に付けると、玉座の間…ではなく中庭の東屋に案内された。
ルークスはまだの様で、美人が1人で蜂蜜酒の入ったグラスを傾けていた。
植物を模した白い柱だけのそこは、色とりどりの薔薇が絡まってとても美しく、そこに置かれた柔らかそうなソファーにしどけなく腰かける美人はとっても絵になる。
「お待たせ、精霊王様。」
そう、この人は精霊王である。
ちなみに更に言うと、男性です。
「その呼び方は止めてちょうだい。」
「ルシオラ様?」
「…よろしい。」
そう満足そうに頷きながら、またグラスを傾ける。
その様子に苦笑しながら、運ばれてきた果実水のグラスを受け取って隣に腰かけた。
「それで?」
「まぁ、彼が来るまで待ってください。」
グラスに口を付けて笑う。
それに精霊王…ルシオラ様は不機嫌な顔をする。
「散々心配させといて…」
「………ごめんなさい…」
これに関しては、本当に申し訳なく思う。
「……皆、泣いてたのよ…」
「ルシオラ様も…?」
「当たり前でしょう」
申し訳なく思いながらも、躊躇無く言ってくれるのをとても嬉しく思ってしまう。
「本当に愛されているな。」
声に視線を向けると、ルークスが精霊さんに案内されてやってきた所だった。
シンプルな黒のローブ姿…イケメンは何を着ても似合う、得だ。
ルークスは私とルシオラ様の正面に腰かけて、蜂蜜酒を受け取った。
ルシオラ様は値踏みするような目でルークスを見ている。
「……この男、誰なの?」
「魔王」
「そう、魔お…」
グラスに口を付けながら相槌を打っていたルシオラ様は見事に蜂蜜酒を吹き出した。
「魔王?!!」
「ルシオラ様、汚ない。」
「お黙り!」
私達のやり取りに正面でルークスが肩を震わせて笑っている。
本当に笑いの沸点が低いんだなぁ。
「どういう経緯でそんな事になるのよ!?」
「順を追って説明するから。」
魔王を倒したこと、仲間に殺されたこと、復活する場で魔王と再会したこと、復讐に巻き込むことにしたこと…
「あ、んの…人間共っ…!!」
ぶわりと怒りを孕んだ空気が膨れ上がる。
「どうしてくれよう…私の愛し子に…」
「……ルシオラ様、美人が台無しだよ?」
激怒するルシオラ様の手に触れる。
周りに居た精霊さん達も怒りに空気を震わせている。
口元が嬉しさに笑ってしまいそうになりながら止める。
「……嬉しそうな顔してんじゃないわよ。」
「だってー」
嬉しいんだもの、と隠さずに笑えばぎゅうぎゅうに抱き締められた。
「それにしても、魔王を巻き込むなんて…常識外れなことしたわねぇ。」
宿敵でしょう?
「お互いが望んで戦った訳では無いからな。」
いつの間にか復活したルークスが蜂蜜酒を傾けながら答える。
「……………………ふぅん…」
じぃっとルークスを見たルシオラ様は、また不機嫌そうな顔をした。
「貴女達が1度死んで…生き返ったことをは解ったわ。」
私を解放してグラスをテーブルに置くと、目を細めて私達を見据える。
「それで、なんで貴女達から強い精霊の気配がするのか教えてくれるかしら?」
「あー…それについては、謝らなきゃいけない事があるの。」
「どういうこと?」
「直接見てもらった方が早いかな。」
そう言ってステータスを表示させる。
この世界は、オンラインゲームのようにステータス等を表示することが出来る…恐らく神様の作った仕様だ。
「ルーのも見せてあげて。」
「あぁ」
2人分のステータスウィンドウをルシオラ様の前に差し出す。
「…………ん?…ちょと、陽光と月影って…!」
陽光と月影…それは、私達の種族名に付いたものだ。
私か陽光の精霊竜でルークスが月影の精霊竜である。
精霊には序列がある。
一番下が多岐に渡る属性の精霊、その上に火、水、地、風の四大元素と太陽、月の大精霊、その上が光と闇の大精霊、そして頂点に座すのが精霊王ルシオラ様だ。
で、何が問題かと言うと…私達の序列が光と闇の大精霊の上、精霊王の直ぐ下になってしまってると言うことだ。
実は、数代前までは光と闇の大精霊の名前は陽光と月影の大精霊だったそうだ。
それが、徐々に力が弱まって光と太陽、闇と月に別れて現在の形になってしまったらしい。
これと時を同じくして現れたのが魔族らしいが…その事は置いておこう。
「神様が種族を選んで良いって言うから、竜と精霊の掛け合わせにしてもらったの。」
「それで精霊竜、ね。」
因みに精霊は実体を持たないので、他の種族との間に子を設けることはまず出来ない。
「でも、まさか陽光と月影になるとは思わなくて…」
眉根を下げるとルシオラ様は呆れた、と言わんばかりの溜息を付いた。
「なってしまったものは仕方がないけど…お仕置きは必要ね。」
ひくり、と顔が引き攣った。
「今後の事はその後で話しましょう?」
にっこりと笑ってルシオラ様は指を鳴らす。
待ってました、と言わんばかりに大勢の精霊さんに囲まれ、あっという間に担がれる。
「る、ルシオラ様…っ…」
「後で私も行くから」
「「「はい、精霊王様っ!」」」
良い笑顔で精霊さんは答えると、私は強制連行された。
「いーーーやーーーーーっ!!!!」
その後、陽が暮れるまでたぁーーーーっぷり私は着せ替え人形と化すことになった。
――――――――――――――――――――――――――
精霊王様登場です。
オネェで、着せ替え狂ですwww
夜宵にとっては姉的な存在で、無条件に信じられる、甘えられる数少ない人です。
ルークスにとっては、一番の壁かもしれませんww
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