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1章 危険な幼馴染み
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しおりを挟む白くてしっとりした肌の感触を晴樹の指先が味わいながら這い回る。
相変わらずくびれのない腰を撫でると、たぷんとした肉を晴樹はからかうように指で摘んだ。
「なえ……」
晴樹は笑みを含みながら苗の耳元でこっそり囁く。
「少し太っただろ?」
「……っ…」
苗のクリ目が見開いた。
「ふ、…っ…」
「ふ?」
大きな目を向けて口にした苗の言葉を晴樹は繰り返す。
「冬支度のなごりだょっ…」
「………」
苗の咄嗟の言い訳に晴樹は呆れた顔を見せていた。
晴樹と離れていた間、財閥御曹司の奥様となってしまった苗は何気に贅の限りを尽くしていたのだ。
スーパー丸一の「黒糖饅頭(見切り品)」
そして週に一度のケンチキ大盤振る舞い。
例え金持ちになったとしても、苗の銭の使い方はたかが知れている……。
安上がりな食生活で蓄えたお腹の浮き輪。
それは確かに冬には湯タンポよりも暖が取れそうだった。
苦しい言い訳をした苗を無言で見つめ、晴樹はまたプッと吹き出した。
やっぱり嫌いにはなれない──
何を言っても、何をしでかしても許せてしまう。
「なごりか……」
「…う…っ…」
腹を摘みニヤリとした晴樹に苗はそれ以上の言葉が思い浮かばない。
「なら、そろそろ溶け出してもいい頃だよな?──…春だし……」
「……っ…」
「ダイエットするか、今から」
「今からっ!?…っ…」
妖しい笑みを浮かべる晴樹の意図に気が付いた。そんな苗の絶叫顔を両手で挟むと晴樹は離れていた時間を取り戻すように長い長いキスをする。
その口付けが物語る──
今夜はきっと眠れない。
いや……
寝かせて貰えない──
「うっ!?……あっ…ちょっ…兄さ…っ!」
「しっ……」
「……っ…」
何かを言い掛けた苗の唇を軽く手で塞ぐと晴樹の指は苗の下腹部へ潜りこんでいた。
・
「うぁ…っ…うっ…」
晴樹の指先が苗のおパンツを横に避けて擽るように動き回る。
奥をまさぐり表面を軽く撫で、そして時おり摘んでは甘く揺さぶる。
苗はその度につい漏れる声を堪えて強く目を閉じていた。
晴樹は声を我慢する苗を見つめた。
「なえ……」
名前を甘く囁く。
動きを止めた指を目の前に晒すと、晴樹は苗に見せ付けるように濡れたその指を口に含んで魅せた。
「……っ!…」
苗は晴樹のその仕草に真っ赤になって目を見開いた。
まだまだこの行為に不慣れな苗に刺激を与えるように、晴樹は苗を煽り始める。
「なんでこんなになってる?…」
「…し…っ知らないだょっ…」
「知らない? なんで?」
「な…っ…なんでって…っ」
晴樹は青ざめながらも顔を赤らめる苗を意地悪く責めていた。
ネクタイを緩めながら戸惑う苗を見つめ、瞳の端に晴樹は笑みを浮かべて口にする。
「じゃあ…知らないなら確かめてみるか…」
「た……確かめるって…っ…何を!?…」
「どうしたらこんなになるか……」
「ぬぁっ!?…!っ…」
驚いた声を上げた瞬間、苗はまた強く目を閉じて口を結ぶ。そして思わず大きく仰け反った。
・
奥深くにするりと潜り込んだ晴樹の指がゆっくりと苗の熱い所を回游する。
苗はその動きに今にも泣きそうな表情を晴樹に見せていた。
「あっ…っ…」
「……っ…」
晴樹は大きく喉を鳴らした。
何時もの笑わせてくれる泣き顔ではなく、思いきり感じた女の顔を覗かせる苗のその表情に晴樹は眉根を寄せて喉元を熱くした。
感じた仕草に興奮させられる。垣間見えた苗のその顔。からかう筈が自分の方が堪えられなくなっていく。
晴樹は悔しげに顔を歪め苗を抱き締めた。
「なえ…っ…」
久し振りに苗を抱いて我慢する方が無理な話だ。余裕の愛撫なんてできる筈もなく、キスをして軽く触れただけで苗の体がこんなにも自分を求めてくれている。
それを知れただけで想いが溢れかえる。
晴樹は苗の首筋に顔を埋めて身体を重ねる。
制服はいまだ着たままだ。脱がす余裕もないって一体どういうことだ?──
晴樹は自問自答しながらも自分を止めることができなかった。
まるで剥ぎ取るようにして苗からパンツを奪うと晴樹はそれを勢いよくドアに向けて放り投げる。
その途端にカチャリと音がした──
「姉ちゃ…っ…」
顔を出した田中家長男坊。陸の顔に白い三角の布切れが張り付く。
位置が一歩間違えば、三途の川で渡し舟を待つあの世の人だ。
思わぬタイミングで現れた三つ子の登場に、苗の両膝を抱えた晴樹は固まったままだった……。
・
「なんだ姉ちゃん達プロレスやってんのか!兄ちゃんの帰国祝いでごちそう作るから母ちゃんが早く来いって言ってるぞ!」
ベッドの上の晴樹と苗を見て三つ子はそう叫んでいた。
服を着たままで良かった……
晴樹はそう思いながら抱えていた苗の足を解放した。
しかし、何故にウチの鍵を持ってる?
晴樹は疑問を浮かべ、空の手に握られたマンションの鍵を見つめながら緩めたネクタイを首から外した。
「みのりのオムツと洗剤持っていくからなー!」
勝手知ったる我が家のように、奥の部屋から荷物を運び叫んでいる。
晴樹達のマンションは、田中家に仕舞いきらない買い貯めた品の備品庫となっている。いつでも取りに来れるよう、スペアの鍵は田中家にも常備されていた。
苗は慌てて先に実家に向かう。
これじゃ、おちおちヤることもヤれねえぞ……
晴樹は額に焦りを浮かべ普段着に着替えを済ませると、荷物を抱える三つ子の後ろ姿を追いながらマンションを後にした。
・
先に実家に向かった苗より一足遅く部屋を出て、三つ子達とエレベーターを待つ。
そんな晴樹の背後に悟も普段着に支度を整え立っていた。
「手は大丈夫か…」
「………」
嫌味を含んで背中越しに尋ねた晴樹を悟は冷めた目でちらりと見る。
「なんのことですか」
「さっき壁殴っただろ」
「……ああ、…あれ…ふ…」
「……っ」
惚けた返事の後に鼻で笑った悟を晴樹は咄嗟に振り返っていた。
目があった晴樹に悟は薄く笑って見せる。
「竹刀握るにせよ、筆を握るにせよ手は大事ですからね…」
「………」
「壁は足で蹴りました」
「──……」
笑みを向けて言った悟の言葉に晴樹は思わず目を見開いていた。
優等生顔のすました作り笑みに晴樹はムカつきを覚える。
到着したエレベーターに二人無言で乗り込むと、一緒に着いてきた三つ子は重苦しい空気を纏う背高な二人を下から見上げ、首を傾げていた。
「悟兄ちゃん!後でゲームしにいってもいいか!?」
玄関ロビーに着いたエレベーターから降りながら、陸が悟の服の裾を摘みおねだりする。
せがまれて頷く悟を晴樹は後ろから上下にゆっくり眺めていた。
日増しに大人っぽくなっていってる気がする。その速度はやっぱり成長期に入った健康体の少年の身体だ。
スポーツ万能、成績優秀…そして、名家の御坊っちゃん。
晴樹と互角の物を持っている──
そして晴樹が今思うことは……
苗の好みが普通と一風変わっていることに大笑いで感謝したい。そんなところだった。
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