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20章 仁義!

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「では、どうぞこちらの部屋です‥」



武はそう言い部屋の襖を開けると入り口で部屋の中に向かって頭を下げ、ここの主に声をかけた



「親父サン!

貴志サンをご案内致しました」


そう言って部屋に入る武の後から、貴志達も床につく程に頭を下げて顔を上げる。向かいには鬼頭組が勢力をつける前にこの世界を操っていた男の顔がそこにはあった

その名も鬼神の藤代‥

今でこそ歳を取り、自分の席を息子へと譲り隠居生活を静かに送っているが、それでも雰囲気から放たれるオーラは鋭いものがある









そして、その隣では鋭く険しい表情で自分を睨みつけてくる晴樹にカタカタ‥と脅え震える、お苗の姿が‥‥




「よく来てくれたな‥


まぁ、今回はうちの若い衆が迷惑をかけちまったが‥

そのお詫びと言ってはなんだが、宴の用意をさせてもらった‥‥

是非、受けてはもらえんか?


‥って‥‥ん?どうしたお苗?

何を脅えとるんだ?」



御大は自分の隣で楽しく料理をつつきながらお酌をしていた苗の、酒を注ぐ手が突然カタカタ‥と震えだしていることに気づき声をかけた





‥ひっ〰

兄さんが睨んでるっ
ごっつぅ睨んどるぅ〰!




極道の親分にも恐れをなさなかった苗も晴樹の睨みだけには勝てなかった


険しい表情のまま苗を凝視し見据えてくる晴樹から苗は脂汗をかきながら必死に目を反らす──













‥ヒィ〰っ


コレじゃあエビに睨まれたカエルだょ〰



エビに睨まれたっちゃぁ恐かない……

苗なりに心を落ち着ける策だった‥








どうしよう‥

あの様子じゃ絶対に兄さん怒ってるょっ

やっぱりバレてる!?
あたしが、松島の姐さんに兄さんの裏画像売ったのがッ!?


うあぁぁ〰〰〰っ


終わりだぁ〰〰っっ


地球滅亡だょお〰〰〰っ!






「いってぇ、どうしたってんだお苗ッ!!?」


御大は自分の隣で突然、頭を抱え、悶絶する苗の肩を支えて必死に声をかける


「ジョージィ〰

もう、苗は終わりだょ〰っ

夢のコラボももぅこれっきりだょっ!!」


「あにぃ!?

なんて冷てぇことゆーんだお苗ッ!!?」






‥ジョージ?ってなんだ

なんなんだコイツら…?



貴志はアホ二人を見つめ怪訝な顔をしていた



‥それにあの隣のガキ‥

たしか、あの時の‥




マシュマロっ!??





‥まさか、コイツじゃないよな・・・


晴樹の大切な女って‥‥っ












貴志は恐る恐る隣の晴樹に目を向けた──




―ビクッ‥



‥こ、いつっ

なんちゅ〰睨み効かしてんだよっ!?





晴樹の顔を見た貴志もその睨みに一瞬脅える──



‥なんだ、この女じゃねぇのか!?

ここまで睨み着けるんなら違うよな?


じゃあ、あの女は元々、藤代の親父と知り合いって事かよ?


‥そうかもな…
あれだけ親しそうなんだから・・・






貴志はアホ二人と晴樹を交互に眺めながら考えを巡らせていた‥‥‥




‥じゃあ‥


預かってる女はどこに居るんだ?



貴志は上座で騒いでいるアホ二人を無視して近くにいた武に聞いた‥






「武サン、
預かってるって女‥
早く返して欲しいんだけど‥

今、どこに居るんだ?」



貴志の質問に武はゆっくりと苗を指差しそして言った

「御大が偉いお気に入りで‥‥‥‥」




‥やっぱりあの女かっ?



貴志は苗に視線を向けそして晴樹を見た‥



ただ、やっぱり、大切な人を見る目と何か違う


「‥?」

貴志は首を傾げた



「じゃあ、こちらの部屋へ‥」


宴の食事を済ませ貴志と晴樹は別の部屋に通される。


そして苗は晴樹の視線から逃れるべく、組の若い衆らと宴の片付けをせっせと行なっていた‥



「お嬢、やめて下さい!!

お嬢に片付けなんかさせたら俺っちが親父に叱られちゃいますっ

お嬢は鬼頭の方達と奥の部屋で話でもっ」


「いやだ〰っ
苗に片付けさせてぇ〰っ」


「そんなっ」


二人で膳の盆を奪い合う。苗はなるべく晴樹の近くに居たくなかったのだ



‥だって兄さん宴の間もずっと怒ってるんだも゙っ



そぅ、睨みは途中で緩和されたが異様なオーラは相変わらず纏ったままだった。












「まぁ、その辺に腰掛けて楽にしてくれ‥」


御大の勧めで貴志達は高級ソファに腰掛ける


「今回の件は
ほんとに悪い事しちまったなぁ‥‥

鬼頭の方にもお苗にも‥

恥ずかしい話だがこれで、うちが統率取れてねぇのが一目瞭然だろ‥」


御大は静かに語ると武に目配せした。


―ガチャ!!

「オラッ!早く入れっ!」

武に怒鳴られ、蹴りを喰らい連れて来られたのは苗を拉致した、血だらけになった3人の男達──



「辰治から連絡を受けてな…

うちの若いのが何かしでかしたってんでよ、
すぐに武に動いてもらったんだ…
なんとか間に合ったみてぇで幸い大事にはならずに済んだが──


こうなったのは全部俺の責任だ…
どうか詫びを入れさせてくれっ──」




「──!?」


御大はそう言うとソファから立ち上がり、床に頭をこすりつけて土下座を始めた


「ほんっとに‥
すまなかった──!!


これから世話になろうってぇお方に多大な迷惑をかけちまってッ‥
自分のふがいなさをただ、恥じるしか出来ねぇッ‥!」


『『親父ぃ──!!』』 


御大のその姿に部屋に集まっていた幹部達が声をあげて駆け寄る!



「テメェら放せッ──


こうでもしなきゃ俺の気が治まらねぇんだ!!」



「いや、御大…


御大にそこまでされると俺が叔父貴に何言われるかわかったもんじゃねぇ‥‥


だったら今すぐ、顔を上げてもらえるように、俺も土下座して頼むしかねぇかな‥‥‥‥ニヤ」


貴志はこれならどうだとばかりに笑みを浮かべた。


「‥うむ…

さすが、跡目だな‥

頭が切れる。


そう言われちゃ俺は頭を上げるしかねぇ…」

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