上 下
20 / 255
6章 伝説マン

2

しおりを挟む

そして、チラッと夏目を見ると再び苗に話しかける

「何?苗、バレーに出るのか?」


「うん、兄さんは何やるの?」

「俺はバスケだよ‥」


「バスケだけ!?」

苗は確認した

「あぁ‥なんで確認するんだ?」


「だって、兄さん噂によると伝説のプレイヤーらしいじゃん!!
バレーに出られたら困るからさっ、今回はなんとしても勝ちたいんだょ!!」


「なんで?」


熱弁する苗に晴樹は聞いた

「だって、各種目ごとに優勝したらノート貰えるんだって!!
だから今、絶対勝つための秘策を練ってるとこ!」


親しそうに話す二人を夏目は驚きながら見つめていると苗の裏切り行為が始まった…


「なんだ‥ノートが欲しいのか?
それで、あの気合いの入れようだったのか?」

晴樹はさっきのGOーGOー言ってた苗の姿を思い出した。

「てやんでぃ!だって、
ノート10冊だよ!?
その上、鉛筆1ダースがついてきやがるんだ!ちきしょぅめっ!!
勝たずにいられるかってんだ!!!」



‥なんで江戸弁なんだよっ?

興奮気味の苗に晴樹は一瞬たじろぎ言った

「‥ノートが欲しいんなら俺が手に入れてやるよ」

そんな晴樹の余裕の言葉に夏目は少しムッとしている



そして苗は素直に喜んでいた

「えっ!?兄さん、ほんと!?マジで手に入れたら苗にくれる!?」

「ああ、どうせならたくさんほしいんだろ?」

「うん!あればあるだけ、欲しっ‥」

「…っ…ちょっと待てよ苗!」


晴樹の言葉にウンウン頷く苗を見て夏目が口を出した

「皆で頑張って優勝しようって苗が言ったんだぜ!?
何、他力本願してんだよっ」


‥なんだ、この1年‥
しかも苗?‥‥
なに呼び捨てしてくれてんだ?このガキ!?
そして、明らかに俺に喧嘩売ってきてやがる!!


そう‥確かに夏目の態度は晴樹に喧嘩を売っている…


「別に他力本願じゃないょもちろん自分達でも頑張るに決まってんじゃん!!
バレー部門は男子も女子も1年が勝ち取ればいいんだよっ
だから、兄さんはバスケで優勝してね!!」



密かに威嚇し合う二人の雰囲気にも気づく事なく
苗は悪びれずに語る…
もう、頭の中にはノートをどっさりと手に入れた自分の姿しか思い浮かばなかった‥‥



「晴樹さーん‥いい加減に戻ってきて下さいっ」


遠くから直哉が呼んでいる。晴樹は仕方なしに戻り、そして直哉に言った‥

「やっぱ、さっきの却下!今回も各種目に出れるだけ出るって伝えてくれ!」



そして次の日から大会に向けて各自練習が毎日行われている‥


練習をするようになってから数日がたった昼休み‥

屋上でのランチタイムにはなぜか夏目も交ざっていた‥


実は最初の話し合いの時に“練習なんか必要ない”
といいだした、やる気のない夏目を苗は弁当作ってくるから一緒に頑張ろう!!
そう言って口説き落としていたのだった


女の子の手作り弁当…

これは男子学生の永遠の憧れではないだろうか?

夏目はついつい“弁当”
と言う響きに惹かれてしまっていた‥


夏目は手作り弁当を広げ苗達と昼を過ごす‥


「ねぇ、なんで夏目君、最近田中サン達と一緒にいるの!?」


「わかんない‥でも、田中サン夏目君にお弁当作ってきてるじゃん‥‥
付き合ってるのかも‥」

「うそ、やだぁ
あたし夏目君狙ってたのに!!」



他のテーブルでランチしてる女子達は苗達の様子をみながらボソボソと話している



「由美はバスケどんな?
あんまり練習してなさそうだけど‥」


バレー部門は朝練と放課後も練習してるのに対し、由美達のバスケ部門はなんだか余裕を持て余していた‥



「それがさぁ、結城先輩がバスケ部門だって解ってからみんな諦めモードなんだよね~
あたし、まさか伝説の1年生プレイヤーが結城先輩だとは思わなかったょ‥

19歳なら大人なはずだよね~、アメリカに留学かぁ…やっぱりセレブなんだよなぁ経営学勉強に行くなんてさぁ!なんか、期待された次期若社長って感じ!!」


由美はホゥ~とため息をついた‥


「‥‥見てみろよ、噂をすればなんとやら。だぜ?」

夏目がそう言いながら顎をしゃくった方を見ると、屋上のドアから晴樹が現れた…手には何やら大きな紙袋を下げている。


そして、こっちに向かってくる晴樹の目が一瞬、夏目の方に注がれ足が止まった‥‥‥




「兄さん!どーしたの?」

晴樹の複雑な表情にも気づかず苗は無邪気に手を振ってくる


「昨日、拓海さんから連絡があって制服を‥‥」


晴樹はそう 言いながら隣のテーブルから余ってた椅子を引き寄せ苗の隣に腰掛けた‥


「みんなでいつも弁当食ってんのか?」

晴樹は夏目をチラッと見る‥その視線には“なんで
お前もいるんだ!?”そんな思いが込められているようだった。



そして、夏目もその雰囲気を感じ取っている。夏目の晴樹を見る目も鋭くなっていた‥

二人の雰囲気に気づかず鈍感な苗は火に油を注ぎ始める


「試合で勝てるように今、朝も放課後も練習してるから、大ちゃんの分も弁当作ってきてんだよ‥大ちゃん自分の弁当早弁するからさぁ」


「弁当作ってきてる!?」


苗の言葉に晴樹は目を向いて聞き返した。
覗いて見ると確かに同じ弁当箱に中身も同じおかず‥‥


「へえ‥」

晴樹の声のトーンが下がると同時にその場の雰囲気も変わってきた‥‥


そして、晴樹はいきなり夏目の弁当の玉子焼きを盗み食いする!!


「ちょっ、あんた何すんだよ!?」

「あんた!?お前、俺に向かってあんたたぁイイ度胸してるな!?え!?」

「──っ…(しまった‥ついっ…)」


椅子から立ち上がって睨み合う二人を苗はなだめる。

「まぁまぁ、落ち着いて‥兄さんも玉子焼き欲しいんだったら苗のを取ればいいんだよ。
はぃ、大ちゃんには苗のをあげるからこれで兄さんを許してあげて!」


苗はそう言いながら自分の玉子焼きをフォークでさして、はぃ、ぁ~んして‥
そう言い夏目に玉子焼きを差し出した。




──!?っ
‥っ…なんだそれっ!?


目を見開き額に青筋を立てる晴樹をよそに、夏目は赤くなりながら苗に向けて口をぁ~んと開けた…



「‥ぁ~ん…」



パクっ!













!?・・・・・なにっ!!



夏目は目を剥く!!



「サンキュ!やっぱり旨いな!苗の料理は!!」








身を乗り出して玉子焼きを頬張ったのは晴樹の口だった……。


「兄さんてば‥」

知らなかった‥兄さんそんなに玉子焼き好きなんだ‥


晴樹の行動が誤解を招いた瞬間だった‥‥‥


「俺っ!知らなかったな!!案外、結城先輩って大人げないんですね!!」


横から割り込まれ奪われた玉子焼きの恨みも兼ねて夏目は皮肉った。


「‥‥う」


確かに、今の行動は自分でも大人げないと思う‥‥

でも仕方ない‥‥
ムカつくものはムカつく‥‥
なんでムカつくのかわからないが、晴樹はなんだか苛々してしょうがなかった


「じ‥じゃあ…制服ここに置いておくから忘れずに持ってかえれよ!
あと、拓海さんの事務所のTel番書いてあるからお礼の電話して‥」


晴樹はそれだけ言い残し自分の大人げない行動に違和感を感じながら、ムカつく思いを堪え屋上を後にした‥‥‥


自分の教室に足を向けて晴樹はいろいろ考える。



‥あいつら毎日、一緒に練習してるのか?



体育館で楽しそうに夏目と話していた苗を思い出した‥



‥くそ!なんかムカつく!!


晴樹はキリキリと痛む胸を抑えた‥‥

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

処理中です...