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第四章 伝説編
18話 神の祈り
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もう、レオったら、あんな奴になんてこと頼むんだろ!?
カインが現れたせいで、何だか面倒事が起きる気がするのは思い過ごしか?
石の廊下を歩き、アルは、はぁ…とため息を溢しながらルイスの執務室に向かっていた。
扉の前にたどり着くと、アルは緊張気味に深く息を吐く。そして、扉をノックした。
「アル? どうしたんだ?」
少し驚き気味に、ルイスは瞳を開きアルを見る。
「あの、ちょっと話したいことが…」
「……話し?」
ルイスは表情を和らげ、アルを部屋へと迎え入れた。
向かいに座るアルを見つめると、
「で…どんな話し?」
何故だか緊張気味のアルを、落ち着かせるようにルイスは優しく微笑んで尋ねた。
「あの、今回の件でのことなんだけどね…」
「従者のことか?」
アルは頷く。
「実は、あたしずっと小さい頃から夢を見てたの…」
「夢?」
「うん…ずっと…同じ夢。何度も姿の見えない誰かに呼びかけられて」
「何度も、ね…それが従者のことと関係があると?」
片手で頬杖をつき、ルイスはため息をつきながら聞き返す。
・
ずっと幼い頃から見ていた夢。
威厳に満ちた優しき声…
そして、その夢の中で聞いた声をあの、神の降りる泉で耳にしたことを。
アルは今までの夢の事を全部ルイスに話した。
「神の降りる泉でも聞いた?―――」
「うん。
《我が信愛なる従者よ
よくぞ参られた‥
だが、まだ力を与えられぬ
集めるのです―――
そなたに忠誠を誓う者達を
赤の輝き‥
青の輝き‥
緑の輝き‥
何をも恐れぬ心‥
そなた自身を信じなさい
さすれば三つの光りがそなたの元へ集うでしょう‥》
…って、光の柱の奥からそう呼びかけてきた」
「赤 青 緑…三つの光り、か…」
ルイスはアルの言葉を呟きん、と眉を潜めた。
「ちょっと待て…それ、確かマークが言ってたことが―――」
ルイスは資料を棚から急いで取り出すとパラパラと捲った。
「あった! ああ、やっぱり。古の地図に書かれていた言葉だ…」
§‥愛を秘めし情熱の使者‥赤の守護神と共に従者に使え§
§‥力ある勇気在る使者
‥青の守護神と共に従者に使え§
§‥優れし知恵を備える使者‥緑の守護神と共に従者に使え§
・
ルイスはマークが書き出したメモを見せた。
「たしか、石板にもそれと共通するようなことが書いてあったよな…」
「うん…」
「赤 青 緑、そして…天 地 海…今、マークに翻訳して貰ってる本に何らかのことが書いてある筈だ」
「うん…昨日も徹夜で頑張ってたみたいだよ」
ルイスはそうか、とだけ声に出した。
これ以上、急げというのは酷だろう…アルの事を思ってマークも必死にやっているに違いないのだから。
ルイスは瞼を伏せると静かに息をついた。
「アル…また、何かあったら直ぐに教えてくれ…お前の夢には何らかのヒントが隠されてる可能性もあるだろうから」
そう言ったルイスにアルは真っ直ぐに顔を向けて頷いていた。
アルを見送ってからルイスはどかっと椅子に腰掛けた。
三人の勇者にガーディアンか……
湖の遺跡にもガーディアンらしき絵が描かれていたんだよな…
ちょっと…もう一度様子を見に行ってみるか…
ルイスは口元に手を添えると、まとめた資料をまた、ぱらりと捲っていた…
・
「くそっ何故だ!?
切り分けても切り分けても前に進めん! 酋長! これは一体!?」
──南の国
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「酋長!! どうやら我らは同じ所を歩いて居るようです!!」
歩き易い道を探すと言って別行動を取った筈の部族の片割れが、向かい側から酋長に向かって叫んでいた。
酋長は進もうとしていた先に、自分達が目印代わりに木に彫り込んだキズを見つけ手でなぞる。
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