上 下
197 / 312
第四章 伝説編

2

しおりを挟む


その頃馬小屋では──


「なぁーロイ兄ちゃん!」

「あぁ?」

「コイツのお腹なんだか動いてるぞ」


ティムは大きくなった馬のお腹を撫でながらロイドに話かけた


「たぶん、もうそろそろだろ。藁を多めに注文した方がいいかもな‥‥」

「もうそろそろか‥
マークやアル達にも教えてやらなきゃ!!」


目をキラキラさせながら興奮しているティムを見て、ロイドは笑みを溢した


「今日から俺はここに泊まり込むからティムはもう仕事は上がっていいぞ。
一旦、家に帰って準備をするからティムも送っていくよ」


「わかった!」


支度を済ませると、ロイドはティムを馬に乗せた。


「なぁ、ロイ兄ちゃん」


「ん?なんだ?」


馬の背に揺られながらティムは問いかける


「子馬が生まれそうになったらオイラ達も泊まっていいか?!」


「あぁ‥そのかわり、静かにしなきゃダメだぞ。
馬は大きいわりにデリケートだ。
ストレスで死んじまうことだって珍しくない‥
いいな‥」

ロイドはティムに釘をさす

「おぅ、わかってる。みんな楽しみにしてるんだ!
アルも絶対、一緒に泊まり込むって言うと思うぞ!!」



‥アルも?

‥‥‥そうか‥
それは楽しみだな‥/// 



ティムの言葉にロイドはついつい顔がほころぶ


「でもその日は馬小屋で藁の上に寝るんだぞ💧それでもいいのか?野宿みたいなもんだが‥‥‥」


‥アルやユリアは女の子なのに藁のベッドで眠れるんだろうか?


「兄ちゃん何を心配してんだ?
オイラ達、野宿みたいなじゃなくて完全な野宿経験者だぞ!」


「‥そういやそうだったな💧」


ティムの指摘でロイドはハッとする‥

そう、アルやちび達はこの国にたどり着くまでに過酷なサバイバルを経験している‥

馬小屋での野宿もどき?


そんなもの、アル達にはなーんてことないことだった


「じゃあ、明日も迎えに来てやるよ。」


ティムを家まで送り、ロイドはその足で藁の注文をするため問屋に向かった。






そして、彼は見てしまう‥


見てはいけないものを‥


見てしまうのだった……。





「ちょうどパンケーキを焼いてる間に家を出てきたとこだったの! ハチミツをきらしちゃって買いに行ったんだけど‥
まさかディーアに会えるなんて思っても見なかったわ‥//」


モニカは緊張のあまり勢いで喋りまくる。

「ん~いい香りがするね」

モニカの家に着き、扉を開けた途端にふんわりとした甘くて優しい香りに包まれる
アルは胸いっぱいに香りを吸い込んだ

「あ、ちょうどよかったみたい。
ディーアはここに座ってて」


モニカはそう言いながら奥の部屋へ行く
そして一人の女性を支えながら戻ってきた。

「母さん‥この人がディーアよ」


「まあ…この方が…
この度は娘が大変世話になりまして‥ゴホッ
すみません、この通りワタシがこんな体になったばっかりに」


「いえ‥困った時はお互い様です。
僕らの村ではそれが当たり前でしたから」


アルはそういいながら微笑み返した

‥ああ‥そう言えば母親が病気だって言ってたよね‥


アルはモニカに聞いていた事を思い出した

蒼白い顔‥
そして苦しそうに呼吸する姿…
見てると痛々しくて胸が締め付けられる。

『母の薬を買うために父が借金を‥』


‥モニカはたしかそう言ってた‥てことは母親の病気が治ってないからまた、借金をしなきゃいけなくなるんじゃ──


昼食にできたてのパンケーキを食べながら、アルはずっと気になっていたことを帰り際にモニカに尋ねた。

「ねえ、モニカ‥お母さんはなんで病気に?」


家の外まで見送ってくれるモニカをアルは見つめる。

モニカはアルの問いかけに口を開き掛けてうつ向いた。

「ごめん…話難いことだった?

力になれればって思ったから‥」

「ぅうん大丈夫‥//」


モニカはアルの優しい心使いに胸を疼かせながら語り始めた


「母さん‥前はすごく元気だったの‥。それが、2年前に弟が亡くなって‥
たった一人の男の子で可愛いがってたから‥‥‥

それから急に体調が‥。
お医者に行っても原因がわからなくて‥胸が苦しくて呼吸困難になるみたい‥‥‥」


「‥呼吸困難‥か‥どんな薬飲んでるの?」


「お医者様は咳止めをくれるわ。でも、根本を絶てないから結局効き目が‥‥」

‥咳止めか‥‥


アルはその場で一呼吸おいて言う


「わかった‥うちに優秀な博士がいるから聞いてみるよ」

「……//…」
ディーア‥あなたってどうしてそんなに優しいの?


微笑むアルをモニカは見上げる。


「じゃあ今日はご馳走様。また、近いうちに」


「あ、待って──!」


手を振るアルをモニカは急に引き止めた。

「なに?」

「あ…あの~‥//

お別れの…キス…は、してくれないのかしらっ…///」



「──キス?💧‥//」


‥モニカって‥‥‥

ロイドみたい💧‥//


見た目は可愛いらしいのに案外、積極的なモニカを見てアルはロイドを思い出しモニカを見つめていた。




…ん!?
あれはアルじゃ…
一緒に居るのは誰だ?



ロイドは藁の卸売問屋に向かう途中、小さな家の前で小柄な女の子と話込んでいるアルを見つけた



‥真っ赤になって何してんだ💧?


なんだか二人して頬を染めて見つめあっている


ロイドは訝しげな表情でその様子を目に止める。




「……じゃ…あ、ほっぺでもいい?💧‥///」

そういいながら頬に手を添えるアルにモニカは首が千切れんばかりに頷き返した。





――っ‥な、なに?!💧



そしてロイドはアルのとった行動に目を見開いた



「じ、じゃあ‥///」

アルは何気に緊張しながらゴクリと喉を鳴らす。

‥だ、大丈夫だよね?💦
あたし今は男の子なんだから‥💧
でもなんか変な感じ///


アルは自分に言い聞かせながらモニカの頬に手を添えてそっとキスをした…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...