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第三章 恋愛編

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ロイドはついアルに差し伸ばしかけた手をすぐに引っ込めた‥



‥アルは俺に触れられると脅える‥‥‥さっき引き止めた時もそうだった‥‥



ロイドはやりきれない思いのまま拳に力を入れた…




ただ、馬に乗る時は手を貸さないわけにはいかない‥ロイドは馬に跨るとアルの手を引いた…


小さくて華奢な白い手‥
この手を俺は握りしめ指を絡めた‥‥‥でも今はそれは赦されない‥‥


ロイドはアルを自分の前に抱きかかえ馬に乗せると足早に馬を走らせた。


今は早く家まで送りたい!

少しでもアルに触れてしまえばまた、抑えがきかなくなるのは解ってる!!


ロイドは目の前のアルからなるべく視線を外し家路を急いだ‥‥













そしてロイドの馬は勢いよくスタンレー家の門の前を通り過ぎる──













‥あれ?‥あ、‥あれ💧!?



お家‥‥‥が‥‥‥💧💧




突然の出来事にアルは声もでず、後ろを振り返ったまま遠ざかって行く我が家を見つめるしかなかった💧




そして馬は、アルの来たこともないような場所でスピードを緩めた‥‥‥




「ぅ‥‥‥わぁ‥‥スゴイ‥‥‥‥///‥


なに‥‥‥ここ‥‥///‥」



アルは目の前の光景に心を奪われる‥‥

辺り一面に星の屑を散りばめた様に光り輝く景色に息を飲んだ…


「すごく綺麗‥‥‥‥」


吸い込まれそうな夜の闇に無数に光り輝く蛍の群れ。

足元には発光色の白い綿毛の花が絨毯を敷きつめたように埋め尽くしていた‥‥



…………夢の世界…………


そぅ、まさにそんな表現がぴったりの場所だった‥


馬に乗ったままうっとりとそれを眺めるアルにロイドは語りかけた‥


「ごめんな‥‥‥


何も言わずに連れてきて‥

ほんとはちゃんと誘いたかったんだが‥‥‥」




今の状態で誘っても絶対に断られる‥ロイドはそう思っていたのだ…



「真っ直ぐ家に送るつもりだったんだけど‥

どうしても、今日‥
アルと二人きりで見たかったから‥‥‥


誕生日なんだ……俺の…」



「‥‥今日が!?」


アルの言葉にロイドはゆっくりと頷き微笑んだ…




「ここは昔からよく、気分が乗らない時とか色々あった時に来てたからな‥
いいところだろ?‥‥‥」




ロイドの問いかけにアルも無言で頷く。




「あんまり、人には教えたくなかったんだが‥
お前とだけは一緒に来たいって思ってたから‥‥‥
別に男だから、この歳になって誕生日だとかは関係なかったんだけど‥‥」





ロイドは語り続けながら馬から降りるとアルに手を伸ばした‥‥‥
そしてアルも自然にロイドの手を取り抱きかかえられるように地面に降ろされる


そして、アルの両手を自分の両手で包み込むように優しく握りしめて言った―





「好きな人となら‥‥‥

アルと過ごしたなら‥

特別になるような気がして‥‥

アル…
ほんの少しでいいから‥
一緒にいて欲しい…」



ロイドの優しい眼差しに捕らえられアルは無意識のままに頷いていた‥‥



周りの景色に癒されアルの警戒心もほぐれたのか、
手を握ってもアルは脅えた表情をみじんも見せなかった――




「もう少し先に行くと湖がある‥‥行ってみるか?」


ロイドはアルの気持ちを優先したいと思った‥‥
ここまでは有無を言わさず強引にさらってきてしまっている‥‥
やっと自分の顔を見てくれるようになったのに、また、無理強いしてしまえば同じ事の繰り返しになる…



だが、そんな心配をよそにアルははっきりと‥行ってみたい‥‥そう答えた。


そして、片手で馬を引きながらもう片方の手でアルの手を取るとアルはしっかりと握り返してくる‥




――!‥‥‥///‥

きゅっと力の込められた感触にロイドは胸が疼いた…




嬉しくて言葉がでない‥






「ロイド‥‥‥」




「ん?‥」



「‥ハッピーバースデー‥」


無言で湖の方に向かうロイドにアルがコソッと言った



その言葉に驚くロイドにアルはえもいわれぬ最高の微笑みをプレゼントする…






「ごめんね‥急で何も用意してないから言葉だけになっちゃったけど‥‥‥
また、家の食事に招待する!ロイドの食べたい物言って!
‥‥頑張って作るからさ」



アルのその言葉にロイドは今までの表情を一気に崩した―――





「アルッ――‥‥!」



名前を呼ぶと同時に自分の胸に掻き抱く―――


「なんでお前はっ‥‥」



切なく狂おしい程の感情がほとばしる!

愛しても愛しても愛し切れない!!

身を裂きそうなほどの痛みをコイツは解ってるのか!?

俺の気持ちを受け入れる気もないくせに、なんでこんなに俺の心を掻き乱す!?






熱過ぎる想いにロイドの瞳から涙が溢れた――


ただ、‥‥アルはもう驚かない‥‥‥
急に強く抱きしめられてもアルの心は何だか穏やかな心地良さに包まれていた…


なんだろう‥‥この感覚‥‥‥


何だかすごく久しぶりな気が‥‥‥




周りの草木の香りに鼻孔がくすぐられる‥‥‥

アルはロイドを抱きしめながら自分の身の回りを取り巻く空間にうっとりとしていた‥‥‥



そして、ロイドは自分の背中に優しく回されたアルの腕に驚き涙で濡れた顔を上げて息を飲んだ――

この世の者とは想えぬ微笑を讃え、自分を見つめる優しい眼差しに魂を抜かれる‥
そしてふわりと柔らかく微笑む艶やかな唇に、ロイドは吸い込まれるようにゆっくりと唇を落とした‥‥‥

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