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第二章 闘技会編

11話 幸福な明日へ

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沸き上がる場内を後に、アルも選手控室の方に向かって行く‥

「ん?‥
なんだアルのやつ?

こっちに戻って来ねぇのか?」


ザドルが不思議そうにアルの後ろ姿を見た


「次はお前とだ‥

気持ちを落ち着けるためにに控室で準備するんじゃないか?」

「そうか‥」

ルイスの言葉に納得しつつ、ザドルはアルの姿が見えなくなっても控室入口を見つめたままだった


暫くすると、アレンが主賓席の方にやってきた。その表情には微かに焦りが見える。


「どうした?アレン‥」

「アルが決勝戦を棄権したいと―――💧」



「棄権──!?‥で、アルはどこにいる?」


「はぃ、医務室に居るようで私の元には係員が知らせにきたものですから‥」


「医務室!?・・・」


ルイスはアレンの報告を聞き、席にいたみんなと目を合わせた


「あと、子供達と話しがしたいから呼んできてほしいと‥」


「わかった。俺が連れて行こう!  ルイスはパレードの準備があるだろうからよ」


ザドルが立ち上がり子供達を促す




「そうだな‥俺も後れて様子を見に行くよ。じゃあアレン、決勝戦はザドルの不戦勝って事で進めてくれ!」


「はぃ、ではそのように」







医務室の前まで来ると子供達はドアをノックした。

カチャッと軽いドアが開く。

「アル! 大丈夫!?」

子供達が医務室に入ると患者用の白いベッドに腰掛けて、足首に包帯を巻いているアルがいた


「なんだ💧足、捻っちまったのか?」


「ははっ、ちょっとね!レオとの闘いで足滑らした時にやっちゃったみたい…」

後から入ってきたザドルにアルは苦笑いしながら返した


「‥ちょっと子供達とだけで話したいんだけど、いいかな?」

「あぁ、 いいぜっ俺は外で待ってらぁ」


ザドルはアルの頼みを快く受け止め保健室のドアを締める。それを確認してティムが不安な表情を浮かべた


「アル、足痛いのか!?」

「全然っ!♪」

「全然って……じゃ、その包帯は?」

「決勝戦を棄権する為の口実だよ‥」

「こうじつ?💧」

心配そうに取り巻く子供にアルは笑顔を向けると、驚く子供達をもっと傍に来るように手招きした



「これを見て・・・」



アルはそう言うと子供達に自分の胸元を開けて見せた


「──あ!?」

「さっきのレオとの闘いでね💧ちょっと切られた後に思っきり走り回ったから余計に裂けちゃって……

これ以上激しい動きしたら絶対もたないと思ったから…」


子供達は破れかけた胸当てに驚きう~んと頷く

そう、さっきのレオの必殺技のお陰で切れ目の入った胸当ては、その後のアルの作戦A、B実行のせいでギリギリのいちまで切れかけていた💧


今もなお、ピリピリッと少しずつ切れ目の範囲が広がってきている

「せっかくここまで来れたのに、あたしが女だってバレたら今までの努力が水の泡だから‥

それに、準優勝の賞金だってかなりの物だし、仕事も隊長さんが世話してくれるっていうから・・・
棄権すること、みんなも賛成してくれる?」

「うん!もう、充分だよっ!アル、スゲー頑張ったもんな」

「そうよっ綺麗な顔にキズまで作ったんだもの!これ以上アタシ見てられないっ」

「アルっ!ボクも仕事見つけて働くから大丈夫だよっ」


―――…💧

「ありがとう‥マーク」

頼もしいことを言ってくれる。



力を込めて語る子供達にアルは微笑みながら、

“ありがとう”

その一言だけを言ってみんなの頭を撫でる


「ザドルっ!!ありがとう、もういいよ!」


ドア越しにアルの了解を得るとザドルとルイスが部屋に入ってきた

「足、捻ったんだって?
大丈夫か?」

ルイスが容態を気遣い、聞いてくる

「うん、ごめんなさい💧

せっかくの大会の見せ場を・・・決勝戦を棄権する奴って中々いないよねっ?」

「何、気にするな。賭けだってみんなザドルが優勝するほうにのってるんだから。

それに今回は今までにないくらい、観客も楽しんだと思うしな!

お前は充分盛り上げてくれたよ」

ルイスはアルの頭を撫でてニッコリ微笑む

「さぁ!もう少ししたらパレードが始まる。優勝者は街道を愛想振り撒きながら通るからお前も参加しろ!

ザドルじゃ絵にならないからなっ!」


「なにぃっ!?」

ザドルは鼻息を荒げた


「お前はパレードの常連だろっ💧観光客も見飽きてる―――そうだ、アル!
お前のネーミングが決まったぞっ」


「ネーミング!?💧」


「あぁ、
《暁の勇者》だとっ💧

よかったじゃないか……
なかなか、まともで」


「暁の勇者・・・💧

ねぇ‥気になってたんだけど、そのネーミングは誰が考えるの?」

「―――ジュリアだよ💧
お前をえらく気に入ってる。お前の絵がほしいらしい…暇を見てモデルにでもなってくれ」


「モデル!?」

「ジュリアは究極のミーハーだからなぁ‥
お前ぇのファンクラブでも作っちまうかもしんねぇぞっ」


ザドルはアルをちゃかしながら豪快に笑った


「じゃあ、主賓席で待ってるから閉会式の準備もあるし、足が痛いなら後からゆっくりこいよ」

ルイスはそう言って先に医務室を出て行く…
そしてザドルが何か言いたげにアルを見た


「なに?‥」

「あぁ、パレード済んでから言おうと思ったんだが……せっかくだから今言っちまう‥💧」

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