上 下
63 / 312
第二章 闘技会編

11話 幸福な明日へ

しおりを挟む

沸き上がる場内を後に、アルも選手控室の方に向かって行く‥

「ん?‥
なんだアルのやつ?

こっちに戻って来ねぇのか?」


ザドルが不思議そうにアルの後ろ姿を見た


「次はお前とだ‥

気持ちを落ち着けるためにに控室で準備するんじゃないか?」

「そうか‥」

ルイスの言葉に納得しつつ、ザドルはアルの姿が見えなくなっても控室入口を見つめたままだった


暫くすると、アレンが主賓席の方にやってきた。その表情には微かに焦りが見える。


「どうした?アレン‥」

「アルが決勝戦を棄権したいと―――💧」



「棄権──!?‥で、アルはどこにいる?」


「はぃ、医務室に居るようで私の元には係員が知らせにきたものですから‥」


「医務室!?・・・」


ルイスはアレンの報告を聞き、席にいたみんなと目を合わせた


「あと、子供達と話しがしたいから呼んできてほしいと‥」


「わかった。俺が連れて行こう!  ルイスはパレードの準備があるだろうからよ」


ザドルが立ち上がり子供達を促す




「そうだな‥俺も後れて様子を見に行くよ。じゃあアレン、決勝戦はザドルの不戦勝って事で進めてくれ!」


「はぃ、ではそのように」







医務室の前まで来ると子供達はドアをノックした。

カチャッと軽いドアが開く。

「アル! 大丈夫!?」

子供達が医務室に入ると患者用の白いベッドに腰掛けて、足首に包帯を巻いているアルがいた


「なんだ💧足、捻っちまったのか?」


「ははっ、ちょっとね!レオとの闘いで足滑らした時にやっちゃったみたい…」

後から入ってきたザドルにアルは苦笑いしながら返した


「‥ちょっと子供達とだけで話したいんだけど、いいかな?」

「あぁ、 いいぜっ俺は外で待ってらぁ」


ザドルはアルの頼みを快く受け止め保健室のドアを締める。それを確認してティムが不安な表情を浮かべた


「アル、足痛いのか!?」

「全然っ!♪」

「全然って……じゃ、その包帯は?」

「決勝戦を棄権する為の口実だよ‥」

「こうじつ?💧」

心配そうに取り巻く子供にアルは笑顔を向けると、驚く子供達をもっと傍に来るように手招きした



「これを見て・・・」



アルはそう言うと子供達に自分の胸元を開けて見せた


「──あ!?」

「さっきのレオとの闘いでね💧ちょっと切られた後に思っきり走り回ったから余計に裂けちゃって……

これ以上激しい動きしたら絶対もたないと思ったから…」


子供達は破れかけた胸当てに驚きう~んと頷く

そう、さっきのレオの必殺技のお陰で切れ目の入った胸当ては、その後のアルの作戦A、B実行のせいでギリギリのいちまで切れかけていた💧


今もなお、ピリピリッと少しずつ切れ目の範囲が広がってきている

「せっかくここまで来れたのに、あたしが女だってバレたら今までの努力が水の泡だから‥

それに、準優勝の賞金だってかなりの物だし、仕事も隊長さんが世話してくれるっていうから・・・
棄権すること、みんなも賛成してくれる?」

「うん!もう、充分だよっ!アル、スゲー頑張ったもんな」

「そうよっ綺麗な顔にキズまで作ったんだもの!これ以上アタシ見てられないっ」

「アルっ!ボクも仕事見つけて働くから大丈夫だよっ」


―――…💧

「ありがとう‥マーク」

頼もしいことを言ってくれる。



力を込めて語る子供達にアルは微笑みながら、

“ありがとう”

その一言だけを言ってみんなの頭を撫でる


「ザドルっ!!ありがとう、もういいよ!」


ドア越しにアルの了解を得るとザドルとルイスが部屋に入ってきた

「足、捻ったんだって?
大丈夫か?」

ルイスが容態を気遣い、聞いてくる

「うん、ごめんなさい💧

せっかくの大会の見せ場を・・・決勝戦を棄権する奴って中々いないよねっ?」

「何、気にするな。賭けだってみんなザドルが優勝するほうにのってるんだから。

それに今回は今までにないくらい、観客も楽しんだと思うしな!

お前は充分盛り上げてくれたよ」

ルイスはアルの頭を撫でてニッコリ微笑む

「さぁ!もう少ししたらパレードが始まる。優勝者は街道を愛想振り撒きながら通るからお前も参加しろ!

ザドルじゃ絵にならないからなっ!」


「なにぃっ!?」

ザドルは鼻息を荒げた


「お前はパレードの常連だろっ💧観光客も見飽きてる―――そうだ、アル!
お前のネーミングが決まったぞっ」


「ネーミング!?💧」


「あぁ、
《暁の勇者》だとっ💧

よかったじゃないか……
なかなか、まともで」


「暁の勇者・・・💧

ねぇ‥気になってたんだけど、そのネーミングは誰が考えるの?」

「―――ジュリアだよ💧
お前をえらく気に入ってる。お前の絵がほしいらしい…暇を見てモデルにでもなってくれ」


「モデル!?」

「ジュリアは究極のミーハーだからなぁ‥
お前ぇのファンクラブでも作っちまうかもしんねぇぞっ」


ザドルはアルをちゃかしながら豪快に笑った


「じゃあ、主賓席で待ってるから閉会式の準備もあるし、足が痛いなら後からゆっくりこいよ」

ルイスはそう言って先に医務室を出て行く…
そしてザドルが何か言いたげにアルを見た


「なに?‥」

「あぁ、パレード済んでから言おうと思ったんだが……せっかくだから今言っちまう‥💧」

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...