38 / 312
第一章 出会い編
18話 アルの決心
しおりを挟む
◇◇◇
数日がたち
大会前日の夜だった──
食事も風呂も済ませ、先に子供達を寝かしつけたアルは、広場の庭に夜涼みに出ていた‥‥
「‥とうとう、ここの食事も風呂もベットも今日で最後か‥‥‥
そして、ここで優しくしてくれた皆とも・・・」
アルは広場中央の噴水に腰掛け周りを見渡した‥
「二週間前、ここでザドルに絡まれたんだな‥‥ふふっ‥」
アルは思い出す‥
あの日、切り立ての髪で男の子のフリをし受付に来た時の事を‥
他に術がなかった‥
生きて行く為の最後の切り札だとも‥思った‥‥
そして‥隊長さんに諭(さと)された‥
“君は、生きて勝ち進む自信があるのか?”
はっきり言って、そんな事一つも考えてなかった‥
一か八かの賭だった‥
後の事など何も‥‥
あの人はそれを気付かせてくれたっけ‥‥
「やっぱり、ちゃんと謝ってお礼言わなきゃな💧」
アルは静かな月を見上げた‥最近、あの不思議な夢もみない‥‥
そう‥まばゆい光りの中から呼び掛けてくるあの夢‥
もの心ついた時からずっと見てきた‥
すごく優しく、でも威厳に満ちた声で呼び掛けてくる‥‥‥
・
‥ただ、今だに何を言ってるのか聞き取れなくて…
いつも必死に聞き返してるんだけどそこで終わっちゃうんだよな‥‥あの夢。
ティム達に聞けばうなされてるって言う‥でもあの夢を怖いと思った事は一度もない‥
むしろ、あの夢を見た後は不思議なくらい心が穏やかで体が軽く感じられる‥‥‥
どちらかと言えばはっきり言って自分にはあの、村の宝剣の方が恐怖だった‥‥
あの日、祠でティム達を助けるために、初めて宝剣を手にした時のあの感覚‥‥
アルは自分の手を眺めた‥
吸い付くように自分の手に納まったかと思えば身体中から力が漲(みなぎ)り、自分が自分では無くなるような‥そんな気さえした‥
森の主を仕留めた事もはっきりいって覚えていない‥
長に宝剣を持って村を出ろと言われ、再び祠に宝剣を取りにいったが相変わらず手には吸い付いてきても森で狩をしたときも‥
あの主とやり合った時の感覚とは違っていた‥‥
ただ錆びきってはいるが、切れ味だけは異様に鋭い‥
それに見た目が悪いからと何度となく研いではみたが錆びはまったく落とせなかった‥‥‥
・
『お前は、選ばれし者だ‥
今の我にはそれしか言えぬ
‥‥すまぬ‥アルよ‥』
長が最後に付け加えた一言だった…
今だに意味が理解できない──
ただ、解っているのは自分にしかあの宝剣は扱えないことだけ‥‥‥‥
『宝剣が必ずや守り導いてくれるだろう…』
ほんとに、守り導いてくれるのだろうか……
運命は明日に託された……
「…よしっ、明日のために今夜はもう休もうっ!」
アルはぽんっと膝を叩くと気合いを入れて部屋に戻る
そしてザドルは部屋の窓からアルのその姿を見届けると、自分も眠りにつくのだった──
~天地を捧げよ~
第一部 出合い編 完
数日がたち
大会前日の夜だった──
食事も風呂も済ませ、先に子供達を寝かしつけたアルは、広場の庭に夜涼みに出ていた‥‥
「‥とうとう、ここの食事も風呂もベットも今日で最後か‥‥‥
そして、ここで優しくしてくれた皆とも・・・」
アルは広場中央の噴水に腰掛け周りを見渡した‥
「二週間前、ここでザドルに絡まれたんだな‥‥ふふっ‥」
アルは思い出す‥
あの日、切り立ての髪で男の子のフリをし受付に来た時の事を‥
他に術がなかった‥
生きて行く為の最後の切り札だとも‥思った‥‥
そして‥隊長さんに諭(さと)された‥
“君は、生きて勝ち進む自信があるのか?”
はっきり言って、そんな事一つも考えてなかった‥
一か八かの賭だった‥
後の事など何も‥‥
あの人はそれを気付かせてくれたっけ‥‥
「やっぱり、ちゃんと謝ってお礼言わなきゃな💧」
アルは静かな月を見上げた‥最近、あの不思議な夢もみない‥‥
そう‥まばゆい光りの中から呼び掛けてくるあの夢‥
もの心ついた時からずっと見てきた‥
すごく優しく、でも威厳に満ちた声で呼び掛けてくる‥‥‥
・
‥ただ、今だに何を言ってるのか聞き取れなくて…
いつも必死に聞き返してるんだけどそこで終わっちゃうんだよな‥‥あの夢。
ティム達に聞けばうなされてるって言う‥でもあの夢を怖いと思った事は一度もない‥
むしろ、あの夢を見た後は不思議なくらい心が穏やかで体が軽く感じられる‥‥‥
どちらかと言えばはっきり言って自分にはあの、村の宝剣の方が恐怖だった‥‥
あの日、祠でティム達を助けるために、初めて宝剣を手にした時のあの感覚‥‥
アルは自分の手を眺めた‥
吸い付くように自分の手に納まったかと思えば身体中から力が漲(みなぎ)り、自分が自分では無くなるような‥そんな気さえした‥
森の主を仕留めた事もはっきりいって覚えていない‥
長に宝剣を持って村を出ろと言われ、再び祠に宝剣を取りにいったが相変わらず手には吸い付いてきても森で狩をしたときも‥
あの主とやり合った時の感覚とは違っていた‥‥
ただ錆びきってはいるが、切れ味だけは異様に鋭い‥
それに見た目が悪いからと何度となく研いではみたが錆びはまったく落とせなかった‥‥‥
・
『お前は、選ばれし者だ‥
今の我にはそれしか言えぬ
‥‥すまぬ‥アルよ‥』
長が最後に付け加えた一言だった…
今だに意味が理解できない──
ただ、解っているのは自分にしかあの宝剣は扱えないことだけ‥‥‥‥
『宝剣が必ずや守り導いてくれるだろう…』
ほんとに、守り導いてくれるのだろうか……
運命は明日に託された……
「…よしっ、明日のために今夜はもう休もうっ!」
アルはぽんっと膝を叩くと気合いを入れて部屋に戻る
そしてザドルは部屋の窓からアルのその姿を見届けると、自分も眠りにつくのだった──
~天地を捧げよ~
第一部 出合い編 完
0
お気に入りに追加
730
あなたにおすすめの小説
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界ライフは山あり谷あり
常盤今
ファンタジー
会社員の川端努は交通事故で死亡後に超常的存在から異世界に行くことを提案される。これは『魔法の才能』というチートぽくないスキルを手に入れたツトムが15歳に若返り異世界で年上ハーレムを目指し、冒険者として魔物と戦ったり対人バトルしたりするお話です。
※ヒロインは10話から登場します。
※火曜日と土曜日の8時30分頃更新
※小説家になろう(運営非公開措置)・カクヨムにも掲載しています。
【無断転載禁止】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる