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第3章 花火の夜
#命令
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天頂から高く長く白く地上まで枝垂れる花火。
オクトが顔を上げると、ディセは肩にもたれかかり、浅い呼吸を繰り返している。短い銀髪を撫で、ディセの耳にささやく。
「Come」
命令をくれたオクトの唇に、唇をディセは重ねた。びっくりしすぎてオクトは顔を退き、がこっ!と、バルコニーの柵に後頭部を、思いっきりぶつけた。
「痛!――ディセ、『おいで』って、いきなし来すぎだろっ。んぐゅっ」
オクトはディセに両肩を掴まれ、バルコニーの柵に押し当てられて、唇を押し当てられ、受け止めきれずに、ずるずる、横倒しになる。
「Come」って命令で、抱き締め合おうと思っただけなのにっ!!
ディセはオクトの体に体を重ね、キスを続ける。オクトは何をどうしたらいいのかわからず、閉じていた口を
「ふ、はっ、」
息が苦しくして、開くと、
「んぐ、ぁ、」
ディセの熱い舌が入って来る。
「Come」って、口の中まで来ちゃうのかよっ?!
「ん、は、…ぅ、っ、」
「ぁふ、ぅ、ん、ぅ、」
ぬちゅぬちゅ、舌と舌が絡まる濡れた音と、繋ぎ合うオクトの唇とディセの唇の隙間から漏れる吐息と声が混ざり合う。
オクトが命令をくれたことがディセはうれしくて、命令をくれた唇に、かじりついてしまった。
「嫌なんだよ!!」
ひどい言葉で拒絶された時には、心臓が止まってしまいそうだった。でも、今、オクトに受け入れてもらえた安心感に、ディセは心も、体も満たされていた。
「支配」は、自分を奪われることでも、自分を差し出すことでも、自分を失くすことでもない。Subの心と体が全部、Domに満たされることだった。
ディセは、オクトに聞いた。
「オクトも、気持ちいい?」
溶ろけた舌は回らない。
「うん。気持ちいい」
ちゃんとオクトには伝わった。オクトは自分の体の上のディセを抱き締める。
「暴力」じゃなく、この両腕の中に包み込んで、ディセを支配しているという実感に、オクトは満足していた。
突然、真っ白な光に照らされて、オクトとディセは見上げた。中空から幾筋も隙間なく白い光が降り注ぐ。
よろよろと、お互い支え合いながら、オクトとディセは立ち上がり、花火を見上げる。
降り注ぐ白い光は、やがて一筋、一筋と消えてゆき、暗くなる。
指と指を絡めて、二人は手をつないでいた。
王都の空を覆い尽くして、最後の花火が開く。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫、次々に色を変えながら、幾重にも花弁を重ねる。
「俺、ディセのDomになりたい」
最後の花火が闇に消えると、オクトはディセの横顔に言った。
今さらディセは、オクトが「嫌なんだよ!!」と拒絶したのに、命令させて、キスをして、押し倒して、深い長いキスをしてしまった自分が恥ずかしくなった。
「少し、考える」
横顔を見せたまま、それしか言えなかった。
「Look」
Domの命令に、Subは逆らえず、オクトをディセは見つめる。
「こんな時に命令なんて、ずるい…」
「『何でもいいから、命令して』って言っただろ?ディセ」
オクトがディセの唇に唇を押し当てる。少し唇から外れている不器用なキスに、ディセは笑ってしまった。
オクトが顔を上げると、ディセは肩にもたれかかり、浅い呼吸を繰り返している。短い銀髪を撫で、ディセの耳にささやく。
「Come」
命令をくれたオクトの唇に、唇をディセは重ねた。びっくりしすぎてオクトは顔を退き、がこっ!と、バルコニーの柵に後頭部を、思いっきりぶつけた。
「痛!――ディセ、『おいで』って、いきなし来すぎだろっ。んぐゅっ」
オクトはディセに両肩を掴まれ、バルコニーの柵に押し当てられて、唇を押し当てられ、受け止めきれずに、ずるずる、横倒しになる。
「Come」って命令で、抱き締め合おうと思っただけなのにっ!!
ディセはオクトの体に体を重ね、キスを続ける。オクトは何をどうしたらいいのかわからず、閉じていた口を
「ふ、はっ、」
息が苦しくして、開くと、
「んぐ、ぁ、」
ディセの熱い舌が入って来る。
「Come」って、口の中まで来ちゃうのかよっ?!
「ん、は、…ぅ、っ、」
「ぁふ、ぅ、ん、ぅ、」
ぬちゅぬちゅ、舌と舌が絡まる濡れた音と、繋ぎ合うオクトの唇とディセの唇の隙間から漏れる吐息と声が混ざり合う。
オクトが命令をくれたことがディセはうれしくて、命令をくれた唇に、かじりついてしまった。
「嫌なんだよ!!」
ひどい言葉で拒絶された時には、心臓が止まってしまいそうだった。でも、今、オクトに受け入れてもらえた安心感に、ディセは心も、体も満たされていた。
「支配」は、自分を奪われることでも、自分を差し出すことでも、自分を失くすことでもない。Subの心と体が全部、Domに満たされることだった。
ディセは、オクトに聞いた。
「オクトも、気持ちいい?」
溶ろけた舌は回らない。
「うん。気持ちいい」
ちゃんとオクトには伝わった。オクトは自分の体の上のディセを抱き締める。
「暴力」じゃなく、この両腕の中に包み込んで、ディセを支配しているという実感に、オクトは満足していた。
突然、真っ白な光に照らされて、オクトとディセは見上げた。中空から幾筋も隙間なく白い光が降り注ぐ。
よろよろと、お互い支え合いながら、オクトとディセは立ち上がり、花火を見上げる。
降り注ぐ白い光は、やがて一筋、一筋と消えてゆき、暗くなる。
指と指を絡めて、二人は手をつないでいた。
王都の空を覆い尽くして、最後の花火が開く。赤・橙・黄・緑・青・藍・紫、次々に色を変えながら、幾重にも花弁を重ねる。
「俺、ディセのDomになりたい」
最後の花火が闇に消えると、オクトはディセの横顔に言った。
今さらディセは、オクトが「嫌なんだよ!!」と拒絶したのに、命令させて、キスをして、押し倒して、深い長いキスをしてしまった自分が恥ずかしくなった。
「少し、考える」
横顔を見せたまま、それしか言えなかった。
「Look」
Domの命令に、Subは逆らえず、オクトをディセは見つめる。
「こんな時に命令なんて、ずるい…」
「『何でもいいから、命令して』って言っただろ?ディセ」
オクトがディセの唇に唇を押し当てる。少し唇から外れている不器用なキスに、ディセは笑ってしまった。
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