上 下
10 / 10

白い結婚と田舎暮らしが足りません

しおりを挟む
この国の王族には、定期的に『試練』が訪れるらしい。
その理由は、王族が腐敗していないことを確認する為等言われているが、詳細は不明である。ただ解るのは、初代が神と契約し、数代に一度『試練』は訪れる度に王族の主流が変わっているということであった。『試練』が訪れている時は誰も解らず、王族が入れ替わると彼らが『試練』を受けたことが解る。そういうものだと皆理解しているから、王族が入れ替わっても誰も気にしない。定期的に『試練』が彼らに訪れるのは建国時に神と契約しているからと言われているが、呪いとしか思えない。

神に試されているとは言われているものの、巻き込まれた方はどう考えても悪魔の誘惑にしか思えない。特に、『伯母様』を奪われて泣き寝入りするしかなかったお爺様や伯父様やお母様にとっては、災難と言うしかないだろう。

今回は、『試練』が亡き王妃様で、かの男爵令嬢の姿をしていただけのこと。知らず知らずの間に『試練』になった彼女たちは、王様を堕落させ、王子様を堕落させた。

だから、国には相応しくなくなった彼ら彼女らは処分される。

「こんなこともあろうことかと、スペアは沢山いるんだよ」

と、お父様が苦笑したのは、全てが終わって私のところに来た時のこと。

スペアが沢山いることを知らないのは、『試練』を受ける王族のみで。『試練』が終わったことにより状況が解った脳筋なお兄様やお爺様や伯父様は、後始末に駆り出されて大変らしい。一段落ついたら、可哀想な伯母様のお葬式を身内だけでやるとのこと。可哀想な伯母様は、骨も何も残っていなかったので、お墓の中は今までと変わらず空っぽのままなのだけど。一歩間違えば、自分も同じ目に合ったかもしれなかったと思うと、当時お助けできなかったのは残念すぎる。
旦那様はいつの間にか子爵位を手に入れていて、今までもなかったも同然な王族の身分はなかったことにするらしい。今まで領地経営等の経験がなかった為、偶に脳筋なお兄様と従兄にダンジョンに拉致されながら、お父様とお母様にびしばししごかれているとのこと。お爺様と伯父様は王子様にうり二つなお顔に伯母様の目と髪の色を持っていることに心中複雑のようだが、その内和解するだろう。いつだって、結局お二人はお母様の掌の上で躍らされてしまうのだから。
王子様で元婚約者と言えば、私がのした後どこかへ連れて行かれてしまったが、今頃どうしているのだろうか。王様が溺愛している王妃様を殺してしまったのだから、王子様とはいえ無罪放免にはならないだろう。

とはいえ、私は彼らの行き末にさして興味があるわけではない。気になる所か、全くこれっぽっちも気にならない。

なぜなら、田舎暮らしを満喫しているからである。

毎朝、鶏と競争するように起床して、侍女姿で朝から動き回るのは性にあっていたらしい。仕事を手伝おうとすると、旦那様の乳兄弟を始めとして、もの凄い形相でおとなしくしていて下さいと言われるのは解せぬのだけど。その昔、とある王族が田舎の農家を再現した離宮を作って農婦の生活を満喫したという話があるけれど、その気分は解らなくもない。
アニーと屋敷を抜け出して村に遊びに行ったり、物売りと会話をしたり細々としたものを買ったり、厨房で盗み食いをしたりと、今までしたことがないことが新鮮で毎日が面白くてたまらない。それなのに旦那様の乳兄弟である執事は、何故か毎日ため息をついている。そんなにため息をついていると幸せが逃げると教えてあげたら、悪いものでも食べた顔になったけれど、何かおかしいことを言っただろうか。

それにしても旦那様、何でそんなに毎日のように必死に帰宅して白い結婚は辞めようと仰るのでしょうか。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

兎月
2022.11.29 兎月

R-15とホラータグがあった方が良いと思います。

解除
Helloworld
2022.02.15 Helloworld
ネタバレ含む
ツカノ
2022.02.16 ツカノ

Helloworld様

コメント、ありがとうございます!!

面白いと仰っていただけて嬉しいです。
元(仮or偽)王子様の努力次第ですが、きっと努力は報われる日が来ると思います。

お読みいただき、ありがとうございました!!

解除
おゆう
2021.11.06 おゆう
ネタバレ含む
ツカノ
2021.11.06 ツカノ

おゆう様

お言葉、ありがとうございます!!嬉しいです。無事、完結することができました。
旦那様、いつかは本懐を遂げられると思いますが、いつになることやらです。(笑)

最後まで、お読みいただきありがとうございました!!!

解除

あなたにおすすめの小説

「おまえを愛している」と言い続けていたはずの夫を略奪された途端、バツイチ子持ちの新国王から「とりあえず結婚しようか?」と結婚請求された件

ぽんた
恋愛
「わからないかしら? フィリップは、もうわたしのもの。わたしが彼の妻になるの。つまり、あなたから彼をいただいたわけ。だから、あなたはもう必要なくなったの。王子妃でなくなったということよ」  その日、「おまえを愛している」と言い続けていた夫を略奪した略奪レディからそう宣言された。  そして、わたしは負け犬となったはずだった。  しかし、「とりあえず、おれと結婚しないか?」とバツイチの新国王にプロポーズされてしまった。 夫を略奪され、負け犬認定されて王宮から追い出されたたった数日の後に。 ああ、浮気者のクズな夫からやっと解放され、自由気ままな生活を送るつもりだったのに……。 今度は王妃に?  有能な夫だけでなく、尊い息子までついてきた。 ※ハッピーエンド。微ざまぁあり。タイトルそのままです。ゆるゆる設定はご容赦願います。

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

僕の好きな人。

風雅ありす
BL
僕が好きになったのは、彼女の兄でした。 友人に紹介してもらって友達になった女の子。 付き合うことになるが、彼女の兄に惹かれていく自分に気付いて……。

【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜

高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。 フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。 湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。 夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

屋敷侍女マリーヌの備忘録

恋愛
顔も家柄も平均以下である私マリーヌが唯一自慢できること、それはドルトイット公爵家の屋敷侍女であることだけだった。 穏やかでイケメンな旦那さま、かわいくて天使のような奥さま、賢くて両親思いの坊っちゃん、高給料で人手も足りた職場環境はまさに天国のようなだった。 ────ユキと呼ばれる、完璧な侍女頭が辞めるまでは。 彼女の退職をきっかけに王国最高貴族“ドルトイット公爵家”の秘密が暴かれる。 ざまぁ必須、後半ほんのり恋愛要素。 ※第三者視点で物語が進みます。苦手な方はお控えください。 ※誤字脱字にご注意下さい。

傍若無人な姉の代わりに働かされていた妹、辺境領地に左遷されたと思ったら待っていたのは王子様でした!? ~無自覚天才錬金術師の辺境街づくり~

日之影ソラ
恋愛
【新作連載スタート!!】 https://ncode.syosetu.com/n1741iq/ https://www.alphapolis.co.jp/novel/516811515/430858199 【小説家になろうで先行公開中】 https://ncode.syosetu.com/n0091ip/ 働かずパーティーに参加したり、男と遊んでばかりいる姉の代わりに宮廷で錬金術師として働き続けていた妹のルミナ。両親も、姉も、婚約者すら頼れない。一人で孤独に耐えながら、日夜働いていた彼女に対して、婚約者から突然の婚約破棄と、辺境への転属を告げられる。 地位も婚約者も失ってさぞ悲しむと期待した彼らが見たのは、あっさりと受け入れて荷造りを始めるルミナの姿で……?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。