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社交にも力を入れだし、忙しく過ごしていたある日、我が家にルイジアス殿下が訪ねてきた。
「やぁ、ルナリア嬢。少しはこの国に慣れたかい?」
そう言って私に花束をプレゼントしてくれる。
「ありがとうございます? この花束は?」
「今日はようやく時間が取れたんだ。せっかくだからルナリア嬢にこの国を案内したくてね。その花束は、その挨拶代わりだよ」
うん、よく分からない理屈だ。
でも、気遣ってくれる殿下の気持ちが嬉しい。
「ありがとうございます。出掛ける準備をしたいのですが、少しお待ち頂いても?」
「もちろんだ。いつも急に来て、こちらこそ申し訳ない」
応接室で殿下に待っててもらい、私は慌てて侍女に手伝ってもらいながら、外出着に着替える。
暫くしてから、応接室に入ろうとドアをノックしかけると、中から弟たちと楽しくお話をしている殿下の声が聞こえた。
「殿下も精霊が見えるのですか?」
「いや、普通は光が見えるくらいだ。精霊王様を見たのも、あの時が初めてだったし」
ルアンの質問にルイジアス殿下が答える。
それを聞いたルディックが嬉しそうに手を挙げて言った。
「光! 僕もうっすらと姉様の周りの光、見えるよ!」
「え? ルディック、それ本当?」
「うん! だから姉様がいつも光ってて女神様みたいに見えるんだ~」
そう言ったルディックに、ルイジアス殿下が身を乗り出して目を輝かせる。
「分かるぞ! ルナリア嬢は本当に女神だ! 出会った時から、私もずっとそう思ってたんだ!」
えっ、ちょっとやめて。
これ、私、中に入れないんだけど。
ドアの前で固まっている私を見て、使用人達が笑っている。
ここの使用人達はみんな、ロックウェル王国でシュナイダー公爵家に仕えてくれていた者たちだ。
ルイジアス殿下の計らいで、何とか連絡を取って連れて来てもらっていた。
先程着替えを手伝ってくれた侍女も前から私付きだった者だ。
おかげで、この国でも心穏やかに過ごす事が出来ている。
本当にルイジアス殿下の心配りには、頭が下がるばかりだ。
いつか、その気持ちに答えられる時があればいいのにな……。
って、いやいや、今はこの状況をどうにかしなければ。
中で盛り上がってるところに、ドアの外から軽く咳払いをしてみる。
言葉が途切れたところで、ドアをノックし中に入った。
「殿下、お待たせ致しました。
ルアン、ルディック、貴方達もありがとうね」
私がそう言うと、ルディックが楽しそうに言ってくる。
「姉様! ルイジアス殿下が姉様の事、女神だって!」
「あっ! ルディ! それは内緒だって、先程殿下に言われただろう?」
ルアンが慌ててルディックの口を塞いだが、もう遅い。
それを聞いた私も、殿下も顔を真っ赤にして、次の句を繋げないでいた。
「あ、あぁ~、その、何だ。ゴホッゴホッ
可愛い弟達で羨ましいよ。私には兄弟がいないからね」
何とか殿下が持ち直し、話しかけてきた。
「は、はい。わたくしには過ぎた弟達でございます」
何とか私も返事する。
「何で2人とも、お顔が赤いのですか?」
ルディックの発言に、ルアンがまた慌てて口を塞ぎ直す。
「ルディ! 僕達はこれで失礼しよう!
殿下、姉様、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
そう言って、そのままルディックを連れて部屋を出る。
「…………」
残された私達は、暫く目を合わせられない状態だったけど、ルイジアス殿下が赤い顔のまま、私を誘った。
「る、ルナリア嬢、ではそろそろ出掛けようか」
そう言って私に手を差し伸べる。
「はい。よろしくお願いいたします」
私はその手を取って、殿下のエスコートで外出した。
「やぁ、ルナリア嬢。少しはこの国に慣れたかい?」
そう言って私に花束をプレゼントしてくれる。
「ありがとうございます? この花束は?」
「今日はようやく時間が取れたんだ。せっかくだからルナリア嬢にこの国を案内したくてね。その花束は、その挨拶代わりだよ」
うん、よく分からない理屈だ。
でも、気遣ってくれる殿下の気持ちが嬉しい。
「ありがとうございます。出掛ける準備をしたいのですが、少しお待ち頂いても?」
「もちろんだ。いつも急に来て、こちらこそ申し訳ない」
応接室で殿下に待っててもらい、私は慌てて侍女に手伝ってもらいながら、外出着に着替える。
暫くしてから、応接室に入ろうとドアをノックしかけると、中から弟たちと楽しくお話をしている殿下の声が聞こえた。
「殿下も精霊が見えるのですか?」
「いや、普通は光が見えるくらいだ。精霊王様を見たのも、あの時が初めてだったし」
ルアンの質問にルイジアス殿下が答える。
それを聞いたルディックが嬉しそうに手を挙げて言った。
「光! 僕もうっすらと姉様の周りの光、見えるよ!」
「え? ルディック、それ本当?」
「うん! だから姉様がいつも光ってて女神様みたいに見えるんだ~」
そう言ったルディックに、ルイジアス殿下が身を乗り出して目を輝かせる。
「分かるぞ! ルナリア嬢は本当に女神だ! 出会った時から、私もずっとそう思ってたんだ!」
えっ、ちょっとやめて。
これ、私、中に入れないんだけど。
ドアの前で固まっている私を見て、使用人達が笑っている。
ここの使用人達はみんな、ロックウェル王国でシュナイダー公爵家に仕えてくれていた者たちだ。
ルイジアス殿下の計らいで、何とか連絡を取って連れて来てもらっていた。
先程着替えを手伝ってくれた侍女も前から私付きだった者だ。
おかげで、この国でも心穏やかに過ごす事が出来ている。
本当にルイジアス殿下の心配りには、頭が下がるばかりだ。
いつか、その気持ちに答えられる時があればいいのにな……。
って、いやいや、今はこの状況をどうにかしなければ。
中で盛り上がってるところに、ドアの外から軽く咳払いをしてみる。
言葉が途切れたところで、ドアをノックし中に入った。
「殿下、お待たせ致しました。
ルアン、ルディック、貴方達もありがとうね」
私がそう言うと、ルディックが楽しそうに言ってくる。
「姉様! ルイジアス殿下が姉様の事、女神だって!」
「あっ! ルディ! それは内緒だって、先程殿下に言われただろう?」
ルアンが慌ててルディックの口を塞いだが、もう遅い。
それを聞いた私も、殿下も顔を真っ赤にして、次の句を繋げないでいた。
「あ、あぁ~、その、何だ。ゴホッゴホッ
可愛い弟達で羨ましいよ。私には兄弟がいないからね」
何とか殿下が持ち直し、話しかけてきた。
「は、はい。わたくしには過ぎた弟達でございます」
何とか私も返事する。
「何で2人とも、お顔が赤いのですか?」
ルディックの発言に、ルアンがまた慌てて口を塞ぎ直す。
「ルディ! 僕達はこれで失礼しよう!
殿下、姉様、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
そう言って、そのままルディックを連れて部屋を出る。
「…………」
残された私達は、暫く目を合わせられない状態だったけど、ルイジアス殿下が赤い顔のまま、私を誘った。
「る、ルナリア嬢、ではそろそろ出掛けようか」
そう言って私に手を差し伸べる。
「はい。よろしくお願いいたします」
私はその手を取って、殿下のエスコートで外出した。
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