47 / 51
46
しおりを挟む
馬車に乗って殿下に、帝都内を案内してもらう。
アーガスト領の街しか見たことがなかったので、帝都の街中は、とても見応えがあった。
キョロキョロと周りを見ながら歩く私を見て、殿下はクスリと笑う。
「ルナリア嬢、行ってみたい所はあるかい?」
殿下にそう言われて、私は前々から気になっている所を告げた。
「あります! 最近流行りの舞台があるとか。ぜひわたくしも見たいと思っておりましたの!」
そう告げると、殿下は笑顔のまま固まった。
「あ、あぁ~……それかぁ。急だから席が取れるかな~?」
「あら? デューカス様に聞きましたけど、その舞台の監修はルイジアス殿下だそうですね? なのでルイジアス殿下は何時でも顔パスで入れるとお聞きしましたが?」
それを聞いたルイジアス殿下が小声で
「あの野郎、シメる」
と、ボソッと言っていたが、聞こえないフリをした。
「それにしても、凄く人気のある舞台の監修をなさるなんて、殿下は多才でいらっしゃいますのね。とても興味がありますわ」
そう言った私に、ルイジアス殿下は
「また! また今度! ちゃんと説明してからで! それより、この後、美味しいと評判の店を予約してあるんだ!
そろそろ時間だから、そこに行こう!」
そう言って、私の肩を押して向きを変えさせる。
「そうなのですか? 予約してあるなら仕方ありませんわよね。また今度、別の日に舞台は見に行ってみますわ」
「いや! 舞台は私が案内するまで行かないでくれ! 頼む!」
必死にそう言う殿下に吹き出しそうになる。
舞台の事をデューカス様に聞いた時、ルイジアス殿下が、私のこの国での基盤を築く為に、私の事情に寄せて貴婦人が好みそうな物語に作らせた舞台である事を聞いた。
冤罪で国外追放された1人の女性が、森で精霊に出会い、精霊王の愛し子として精霊たちに助けられながら、隣国で運命の人と出会う。その人と共に試練を乗り越え、そして2人は結ばれ幸せになる……。
大体の話の流れは聞いていたが、ちゃんと観たくてつい殿下を困らせてしまったようだ。
本当に殿下には、感謝の気持ちでいっぱいだ。そこに隠れている殿下の気持ちにも本当は気付いている。
殿下は、私の気持ちを聞いたらどう思うだろう。
臆病な私は、まだ殿下に自分の気持ちを表せないでいた。
食事も終わり、楽しい街巡りもそろそろ終わりの時間が近づいてきた。
「ルナリア嬢、この後もう少しだけ私に時間をくれないか?」
少し寂しい気持ちになっていた私に、ルイジアス殿下は、そう伝えてきたので、もちろん了承する。
ルイジアス殿下が最後に連れてきてくれた場所は、帝都が一望出来る小高い丘の上だった。
そこは山茶花に似た花が咲き乱れており、精霊達が楽しそうに飛び回っている。
『あ! ルナだ!』
『やっほーい、ルナ~』
『ルナ、ここに来るの初めてだね~』
私に気づいた精霊達が、近寄ってきて私に挨拶をしてくれた。
「こんにちは。ここは貴方達のお気に入りの場所なのかな?」
精霊達に問うと、一斉に
『『『『『『そうだよ~!』』』』』』
と、返事が返ってくる。
「やっぱり。ここは精霊達がいっぱいいるんだね」
その様子を見ていたルイジアス殿下がそう聞いてきたから頷いた。
「昔からよくここで、小さな光を見かけていたんだ。でも、他の人には見えていないみたいだったから、私だけの秘密の場所として、ここを管理している」
「ここは、殿下の土地だったのですね」
「あぁ、この光を守らないといけない気がしてね。何かあるとここに来て気持ちを慰めてもらっていた場所なんだ」
そう言って、光を眩しそうに見ている。
そんな大切な場所に連れて来てくれたんだ。
そう感じると、どうしようもなく気持ちが溢れる。
「殿下……あの、わたくし……」
そう言いかけた私を制し、ルイジアス殿下は真剣な眼差しで私を見つめた。
「ルナリア・シュナイダー侯爵令嬢。
私は貴方のことを出会った時から今までずっと想っていました。
貴方が他の人と婚約しても諦められなかった。
どうかお願いです。私とこれからの人生を一生、共に歩んではもらえませんか」
そう言って、私の前で跪き手を差し伸べる。
その姿に私は自然と涙を零していた。
「はい。わたくしも貴方様を想っております。どうか、わたくしを貴方の生涯のパートナーにしてくださいませ」
そう言って私は殿下の手を取る。
殿下は立ち上がって、そっと私の涙をぬぐってくれた。
「ありがとう。一生大切にすると誓う」
そう言って、ゆっくりと私を殿下の腕の中に閉じ込める。
周りを飛んでいた精霊達が祝福するように、私達を包んで花びらが舞った。
アーガスト領の街しか見たことがなかったので、帝都の街中は、とても見応えがあった。
キョロキョロと周りを見ながら歩く私を見て、殿下はクスリと笑う。
「ルナリア嬢、行ってみたい所はあるかい?」
殿下にそう言われて、私は前々から気になっている所を告げた。
「あります! 最近流行りの舞台があるとか。ぜひわたくしも見たいと思っておりましたの!」
そう告げると、殿下は笑顔のまま固まった。
「あ、あぁ~……それかぁ。急だから席が取れるかな~?」
「あら? デューカス様に聞きましたけど、その舞台の監修はルイジアス殿下だそうですね? なのでルイジアス殿下は何時でも顔パスで入れるとお聞きしましたが?」
それを聞いたルイジアス殿下が小声で
「あの野郎、シメる」
と、ボソッと言っていたが、聞こえないフリをした。
「それにしても、凄く人気のある舞台の監修をなさるなんて、殿下は多才でいらっしゃいますのね。とても興味がありますわ」
そう言った私に、ルイジアス殿下は
「また! また今度! ちゃんと説明してからで! それより、この後、美味しいと評判の店を予約してあるんだ!
そろそろ時間だから、そこに行こう!」
そう言って、私の肩を押して向きを変えさせる。
「そうなのですか? 予約してあるなら仕方ありませんわよね。また今度、別の日に舞台は見に行ってみますわ」
「いや! 舞台は私が案内するまで行かないでくれ! 頼む!」
必死にそう言う殿下に吹き出しそうになる。
舞台の事をデューカス様に聞いた時、ルイジアス殿下が、私のこの国での基盤を築く為に、私の事情に寄せて貴婦人が好みそうな物語に作らせた舞台である事を聞いた。
冤罪で国外追放された1人の女性が、森で精霊に出会い、精霊王の愛し子として精霊たちに助けられながら、隣国で運命の人と出会う。その人と共に試練を乗り越え、そして2人は結ばれ幸せになる……。
大体の話の流れは聞いていたが、ちゃんと観たくてつい殿下を困らせてしまったようだ。
本当に殿下には、感謝の気持ちでいっぱいだ。そこに隠れている殿下の気持ちにも本当は気付いている。
殿下は、私の気持ちを聞いたらどう思うだろう。
臆病な私は、まだ殿下に自分の気持ちを表せないでいた。
食事も終わり、楽しい街巡りもそろそろ終わりの時間が近づいてきた。
「ルナリア嬢、この後もう少しだけ私に時間をくれないか?」
少し寂しい気持ちになっていた私に、ルイジアス殿下は、そう伝えてきたので、もちろん了承する。
ルイジアス殿下が最後に連れてきてくれた場所は、帝都が一望出来る小高い丘の上だった。
そこは山茶花に似た花が咲き乱れており、精霊達が楽しそうに飛び回っている。
『あ! ルナだ!』
『やっほーい、ルナ~』
『ルナ、ここに来るの初めてだね~』
私に気づいた精霊達が、近寄ってきて私に挨拶をしてくれた。
「こんにちは。ここは貴方達のお気に入りの場所なのかな?」
精霊達に問うと、一斉に
『『『『『『そうだよ~!』』』』』』
と、返事が返ってくる。
「やっぱり。ここは精霊達がいっぱいいるんだね」
その様子を見ていたルイジアス殿下がそう聞いてきたから頷いた。
「昔からよくここで、小さな光を見かけていたんだ。でも、他の人には見えていないみたいだったから、私だけの秘密の場所として、ここを管理している」
「ここは、殿下の土地だったのですね」
「あぁ、この光を守らないといけない気がしてね。何かあるとここに来て気持ちを慰めてもらっていた場所なんだ」
そう言って、光を眩しそうに見ている。
そんな大切な場所に連れて来てくれたんだ。
そう感じると、どうしようもなく気持ちが溢れる。
「殿下……あの、わたくし……」
そう言いかけた私を制し、ルイジアス殿下は真剣な眼差しで私を見つめた。
「ルナリア・シュナイダー侯爵令嬢。
私は貴方のことを出会った時から今までずっと想っていました。
貴方が他の人と婚約しても諦められなかった。
どうかお願いです。私とこれからの人生を一生、共に歩んではもらえませんか」
そう言って、私の前で跪き手を差し伸べる。
その姿に私は自然と涙を零していた。
「はい。わたくしも貴方様を想っております。どうか、わたくしを貴方の生涯のパートナーにしてくださいませ」
そう言って私は殿下の手を取る。
殿下は立ち上がって、そっと私の涙をぬぐってくれた。
「ありがとう。一生大切にすると誓う」
そう言って、ゆっくりと私を殿下の腕の中に閉じ込める。
周りを飛んでいた精霊達が祝福するように、私達を包んで花びらが舞った。
236
お気に入りに追加
4,121
あなたにおすすめの小説
実家を追放された名家の三女は、薬師を目指します。~草を食べて生き残り、聖女になって実家を潰す~
juice
ファンタジー
過去に名家を誇った辺境貴族の生まれで貴族の三女として生まれたミラ。
しかし、才能に嫉妬した兄や姉に虐げられて、ついに家を追い出されてしまった。
彼女は森で草を食べて生き抜き、その時に食べた草がただの草ではなく、ポーションの原料だった。そうとは知らず高級な薬草を食べまくった結果、体にも異変が……。
知らないうちに高価な材料を集めていたことから、冒険者兼薬師見習いを始めるミラ。
新しい街で新しい生活を始めることになるのだが――。
新生活の中で、兄姉たちの嘘が次々と暴かれることに。
そして、聖女にまつわる、実家の兄姉が隠したとんでもない事実を知ることになる。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のマーガレットは、最近婚約者の伯爵令息、ジェファーソンの様子がおかしい事を気にして、親友のマリンに日々相談していた。マリンはいつも自分に寄り添ってくれる大切な親友だと思っていたマーガレット。
でも…
マリンとジェファーソンが密かに愛し合っている場面を目撃してしまう。親友と婚約者に裏切られ、マーガレットは酷くショックを受ける。
不貞を働く男とは結婚できない、婚約破棄を望むマーガレットだったが、2人の不貞の証拠を持っていなかったマーガレットの言う事を、誰も信じてくれない。
それどころか、彼らの嘘を信じた両親からは怒られ、クラスメイトからは無視され、次第に追い込まれていく。
そんな中、マリンの婚約者、ローインの誕生日パーティーが開かれることに。必ず参加する様にと言われたマーガレットは、重い足取りで会場に向かったのだが…
婚約破棄していただき、誠にありがとうございます!
風見ゆうみ
恋愛
「ミレニア・エンブル侯爵令嬢、貴様は自分が劣っているからといって、自分の姉であるレニスに意地悪をして彼女の心を傷付けた! そのような女はオレの婚約者としてふさわしくない!」
「……っ、ジーギス様ぁ」
キュルルンという音が聞こえてきそうなくらい、体をくねらせながら甘ったるい声を出したお姉様は。ジーギス殿下にぴったりと体を寄せた。
「貴様は姉をいじめた罰として、我が愚息のロードの婚約者とする!」
お姉様にメロメロな国王陛下はジーギス様を叱ることなく加勢した。
「ご、ごめんなさい、ミレニアぁ」
22歳になる姉はポロポロと涙を流し、口元に拳をあてて言った。
甘ったれた姉を注意してもう10年以上になり、諦めていた私は逆らうことなく、元第2王子であり現在は公爵の元へと向かう。
そこで待ってくれていたのは、婚約者と大型犬と小型犬!?
※過去作品の改稿版です。
※史実とは関係なく、設定もゆるく、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観や話の流れとなっていますのでご了承ください。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる