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「ルイジアス皇太子殿下、シュナイダー侯爵家ルナリア侯爵令嬢、共に入場されます!」

 パーティ会場のアナウンスで会場内の人々が一斉に入口に視線を向ける。

「誰?」
「シュナイダー侯爵家? 先程入ってきた?」
「最近隣国から来た貴族の娘か」
「あのドレス、殿下の色?」


 精霊王の愛し子であると高位貴族らには周知されていても、まだこの国に社交デビューが出来ていなかったルナリアへの視線は厳しいものが殆どだ。
 しかも、同世代の令嬢やご婦人方の視線は刺すように痛い。

 しかし、その視線を遮るようにルイジアス殿下は、ルナリアへ優しく微笑みながら話しかける。

「大丈夫。みんな戸惑っているだけだ。貴方を知ればみんなすぐに貴方を受け入れてくれるよ。私が今日は皆に紹介するから、大丈夫だよ」

「はい、ありがとうございます。
 この国の方々に受け入れてもらえるよう、わたくしも精一杯頑張りますわ。
 それに、今日はマーク王子との対峙もありますもの。気を引き締めませんと」

 私がそう言うと、「流石だね」と、ルイジアス殿下は笑う。
 その笑顔に、また周りの方々が驚いてどよめくのだ。

 なんでルイジアス殿下の笑う顔に、一々反応するのか分からない。
 基本、ルイジアス殿下はいつもにこやかだし、私よりも貴女方の方がよっぽど殿下を見慣れているのでは?

 そんな事を思っていると、デューカス様が近寄ってきた。

「ルイジアス殿下、今日は一段と笑顔が弾けてますね。いつもと違って。
 ルナリア嬢もご機嫌麗しく。そのドレスよくお似合いですよ」

「デューカス様、ご機嫌よう。ありがとうございます」

「デューカス、お前はいつも一言余計だ」


 三者三様の挨拶を終えた頃、皇帝陛下と皇后様が入場する。


「皆の者、今宵は急な催事にも関わらず、集まってくれた事を感謝する。
 本日はロックウェル王国より来訪したマーク王子を歓迎するパーティだ。
 皆にマーク王子を紹介しよう」

 陛下の挨拶のあと、マーク王子が入場した。

「ただいまご紹介にあずかりました、マーク・ド・ロックウェルです。
 帝国の皆さんと交流が図れる場を設けて頂いた事を深く感謝致します」

 珍しく低姿勢で挨拶したマーク王子は、見た目は流石に乙女ゲームの攻略対象者。
 金髪碧眼のザ・王子様!を地でいく容姿だ。
 会場内のご婦人方や令嬢達からの熱い視線を受けており、本人もご満悦の様子だった。


 
 王族への挨拶が高位貴族から始まり、ルイジアス殿下も、王族席に一旦戻らなくてはならなくなった。

「ルナリア嬢、私が戻るまで一旦シュナイダー侯爵と一緒に居てほしい。
 1人にするのは不安だからね」

 そう言って、父の所に連れて行く。

 父と並んで挨拶を待っていると、すぐに順番が回ってきた。

「帝国の太陽、皇帝陛下並びに光り輝く帝国の月、皇后様にご挨拶申し上げます」

 父と共に両陛下に挨拶をする。

「やぁ、侯爵。今宵は楽しんでいってくれ。  
 ルナリア嬢は今宵がこの国での初めての社交であるな。
 ルイジアスがしっかりとサポートするだろうから、気を張りすぎず楽しんでくれ」

「貴女がルナリア嬢ね。初めまして。
 貴女にお会いするのをとても楽しみにしておりましたのよ。
 執着の凄い息子だけれど、よろしくね」

「母上!」
 
 皇后陛下のお言葉に、殿下が慌てて反応する。
 
「ルナリア嬢、他の者の挨拶が終わったらすぐに行くから、それまで侯爵と待っていてほしい」

 ルイジアス殿下の言葉にしっかりと頷き、その場を辞する。
 その時、マーク王子がこちらを見て叫んだ。

「ルナリア! やはりこの国に居たのか!」
 
 そう言って、私の元に駆け寄ろうとする。
 そんなマーク王子のその動きを、ルイジアス殿下が素早く制した。

「マーク王子。挨拶の途中だ。退席は控えていただこう」

 眼光鋭くルイジアス殿下に言われたマーク王子は、悔しげにこちらを睨むが、他国の大勢の貴族たちの前で騒ぐのは悪手と思ったのか、それ以上は近寄ってこなかった。

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