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 その頃、カルステイン帝国に、ロックウェル王国に潜り込ませていた諜報員より伝達が届いた。
  その報告によると、ロックウェル王国の災害は、国外追放したルナリアの呪いであり、シュナイダー公爵家も関与しているとの噂が国内に広がっているとの事。
 それにより国がシュナイダー家の者を拘束し、呪いに関係した何かを見つけ出すために家宅捜索をしようとしているとの事だった。


「そんなバカな! 呪いだなんて、何でそんな事になっているんだ!」

 皇城に戻ったルイジアスが、その報告を受け、憤りを感じて叫んだ。

「多分、国に向いていた民衆の不満を、他所に向けさせるのが目的だ。
 それが一時しのぎにしかならない事は明白だが、こんな事は考えていないのだろう。
 すでにロックウェル王国に向かっているシュナイダー殿には、伝えておいた」
と、陛下が説明した。

「無事にルナリアの母君達を救出出来ればいいのだが」

 陛下のその言葉に、
「私もシュナイダー殿の手伝いに向かわせて下さい。」
と、ルイジアスは志願した。

 「帝国との関係を今は知られるべきではない。下手に知られれば、こちらが災いの誘導をルナリア嬢にさせたと難癖をつけてくる可能性があるからな。今はまだ表立って動くときでは無い。時期を待て」

 陛下に窘められて、ルイジアスは何も出来ない自分を不甲斐なく思う。

 せめて、この事をルナリアに伝えなければと、また魔物の森の入り口まで、ルナリアを迎えに行く事にしたのだった。





 一方、精霊王様から話を聞いたルナリアは、
「最近、ロックウェル王国の気象が荒れて、災害被害も出始めたそうですが、今回の件でそのような事態に?」
と、尋ねた。

『我の力を返してもらっただけ。あの自然災害は、なるべくしてなったものだ』

 精霊王様がそのように述べた。
 それに関して、ルナリアはどうにも出来ず、あの国に残っている親しい者たちの安否を祈るばかりだ。なので、もう1つ聞かなければならないと思っていた事を尋ねる。

「精霊王様の愛し子だと言われましたが、それは何なのですか?」

 そう問いかけた私に、精霊王様はゆっくりと眩しいのもを見る様な目で私を見る。

『我の力を授けし者だ。我が気に入った者に祝福を与え、我の力の一部が使えるようになった者。昔、アリアに祝福をした。
 同じ魂を持つお前もまた、同じ力が使える。前にここに来た時、木の枝を斧に変えたことがあるだろう? お前は我の力を植物を媒体にして使うことが出来るのだ。
 その力は自身を守る力となり、盾にも鉾にもなる』

「私の周りに居た精霊たちも祝福してくれましたが、それとは違うのですか?」

『あれらは、お前に癒しの力を授けた。植物を通して、自他共に癒せる力が使える。
 病気の娘を治したことがあるだろう?』

 なるほど。あの町で噂になってたのは、あながち嘘でもなかったというわけか……。
 でも……。

「精霊王様たちは、わたくしにそのような力を授けてくださいましたが、何か訳でもあるのでしょうか? 何故そのような力を授けてくださったのか分からないんです」
と、伝えた。
 私がすべき事は何なのか。それが分からなければ、無闇に力を持つべきではないのではないか? これから自分はどうすべきなのか……。
 
 精霊王様は、そんな私の心を読み取ったかのように優しく言った。

『気負う必要はない。ただ、ルナリアにもアリアと同じように幸せになってもらいたいだけだ。祝福を授けたのは、ただ我らがルナリアと繋がりを持っていたかったに過ぎない。
 だから、何かしなければならないとか、難しく考えないでいい』

 その言葉に、自分が変に警戒していたのだと自覚し、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。こんなにも、自分を心配してくれている存在に、改めて感謝したいと思った。

「ありがとうございます、精霊王様。そして、いつもわたくしの傍に居てくれる精霊たちも、本当にありがとう。
 あなた方が授けてくれた力を、その気持ちに恥じないように、どのように使っていくか、自分なりに考えてみますね」

 私がそういうと、周りにいた精霊たちも嬉しそうに光を強めて周囲を飛び回る。

『そうだな。さぁ、我の話は終わった。
 森の外で、あの王子が待っておるぞ。
 もう行くがいい』

 えっ!

 そう思った時には、すでに魔物の森の出口に立っていた。
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