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王立学園編~前編
25.エマの力②
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魔法学の授業が終わり、エマはさっそくグレイに先程の事を報告した。
「聞いてグレイ! 私、やったわ! 無詠唱でヒールをかけたの!」
「そうか」
「もう! もっと驚いてよ! アリアも無詠唱では魔法が放てないのよ! みんな驚いてたわ!」
私が興奮しながら話していると、グレイは微妙な表情で私を見る。
「なに?」
私がそう聞くと、グレイは呆れた表情をする。
「まさかとは思ってたんだ。でもそのまさかなのか?」
「何が?」
グレイはため息を吐いた後、私に質問してきた。
「なぁ。お前、魔力はいくつだ?」
「え? ああ、この前の魔力測定では38に上がってたわよね。アリア様は46になってたけど!」
「……アリア嬢は聖属性と火属性だよな。お前は?」
「何馬鹿な事を今更聞いてくるのよ。私は聖属性……」
あれ? なんか私、忘れてない?
「魔力測定の度に、俺が改ざんしてきたのだが……まさか、そう思い込むとは……」
ん……? 改ざん?
あ────!!
「ちょっとグレイ! 本来の属性と魔力を見たのが12歳の時以来なんだから忘れてたって仕方ないんじゃない!? やだ! 本来の私の属性って何々だった!? 現在の魔力ってどれだけあるの!?」
慌てる私にもう一度グレイは大きくため息を吐く。
「今日の夜、学園内にある魔力測定器に乗れ。夜なら誰もいないからバレないだろう」
そうして私とグレイは夜遅く、学園に行く事になった。
学園から帰宅後、家で父母と弟だけが楽しそうに話している中、黙々と食事を終え、早々に自分の部屋に戻る。
入浴を終えた後ベッドに入り、みんなが寝静まるのをジッと待つ。
夜も更けて来た頃、久しぶりにケット・シー姿になったグレイが私の部屋に入ってきた。
「準備はいいかにゃ?」
「ええ、行きましょう!」
私とグレイは静かに屋敷を抜け、予めグレイが用意していた目立たない馬車に乗り込んだ。
「グレイ、その姿のまま行くの?」
私が聞くと、グレイは嫌そうな表情で背中を丸めて座席に座っている。
「万が一誰かに見られた時、こんな夜更けにお前が男と一緒にいるのはマズイと思ったからにゃ」
「あ、そうね。ありがとう、グレイ。余計な心配かけちゃったね」
「ふん、今更だにゃ」
グレイはそっぽ向きながらも、しっぽは揺れている。
分かりやすいグレイの久しぶりのケット・シー姿に癒されるばかりだ。
そうこうしているうちに、学園に辿り着く。
グレイと共にこっそり学園に入り、魔力測定器のある場所に向かう。
魔力測定器は、魔法学の教室に置かれている。
年度末に毎年魔力測定を行ない、実力が上がっているかを確認するのだ。
「さぁ、エマ。乗ってみるにゃ」
「うん」
そうしてそっと体重計のような魔力測定器に乗ってみる。
【⠀魔力: 206 】
【⠀属性: 聖 】
【⠀属性: 光 】
【⠀属性: 空間 】
【⠀属性: ? 】
そこには有り得ない数値と属性が記されていた。
「魔力206!? 属性が4つ!? え…………何これ」
私が驚いていると、グレイが測定器の画面に記された表記を見ながら言う。
「改ざんしないと、これが表立ってしまうにゃ。だから何度かあった魔力検査の都度、改ざんしていたのだがにゃ……。まさか本気で忘れていたとはにゃ」
「うっ……。本来のもちゃんと後で教えてくれたら良かったのに」
「表記される前に改ざんするのだから、我にも実際の魔力は分からなかったにゃ。属性はさすがに変わらないとは思っていたがにゃ。
お前がアリアをライバル視する必要が無いことがこれで分かったにゃ?
その魔力では無詠唱出来て当たり前にゃ」
はい、グレイの言う通りです。
ぐうの音も出ないとはこの事だわ。
反省しながらも、ふと気になる事を聞いた。
「ねぇ、12歳の時も思ったんだけど、この?属性は何?」
そういえば、前にも聞いたけど結局答えを聞きそびれてたんだった。
「それは、ディオーネ様からの贈り物属性だにゃ」
「ん? この属性だけディオーネ様からなの?」
「あぁ。お前、転生する前にお願いしたんだろ? 困らない程度の能力が欲しいってにゃ。でも具体的な希望がなかったからと、お前が必要だと思う魔法が使えるようにって、それを授けたんだにゃ。それはいわゆる、想像魔法だにゃ」
「想像魔法!?」
「そうだにゃ」
ちょっと待って。まさかそれって、私が考えた事全てが出来る魔法なのでは?
「凄いじゃない! 何でもっと早く教えてくれなかったの!?」
私が食いつくようにそう言うと、
「だ~か~ら! 属性まで忘れてるとは思っていなかったんだにゃ!」
と、グレイに逆ギレされてしまった。
でも、これは凄い!
想像するのは得意よ!
前世ではベッドの住人をしながら色々と想像していたし、携帯で色々と異世界ものの漫画も楽しんでいた。
ここは定番のあれを使う時では!?
「グレイ。帰りの馬車はいらないわ」
「ん? どうやって帰るんだにゃ?」
「ふふふ。もちろんテレポートよ!」
「テレポートにゃ?」
「まぁ、見てて」
初めて使う魔法だ。
万が一って事もあるから、私はまず、今の位置から魔法学教室のドアまで一瞬でテレポートする事にした。
まずは心の中で行きたい場所を思い浮かべる。
そこに辿り着いた自分を想像しながら魔力を動かす。
魔力測定器の近くに立っていた私は、次の瞬間、魔法学教室のドアの前まで移動していた。
「ほぅ! それは凄い便利な魔法だにゃ!」
「でしょう? これで家の私の部屋まで飛んでみるわ」
「距離があるけど、大丈夫かにゃ?」
そう言われると少し怖いが、夜中にまた馬車に乗って見つからないように戻るほうが恐い。
「だ、大丈夫! 何とかなるわ!」
そう言って頭の中で自室を思い浮かべ、そこに戻る自分を想像しながら念じる。
すると次の瞬間には自室に戻っていた。
「やった。成功だわ!
これで宝玉も探しやすくなるわ!」
それに、今日のヒールの時に放った無詠唱。
あれは本来の私のヒールだ。
そうよ。何もはなからアリアに合わせる必要はない。
自分らしさを出しながら、大好きな魔法に向き合っていこう。
悪役令嬢、上等だ!
静かな生活はとっくに諦めているもの。
宝玉を回収し、大好きな魔法を色々試しながら面白可笑しく長生きしてやるわ!
「聞いてグレイ! 私、やったわ! 無詠唱でヒールをかけたの!」
「そうか」
「もう! もっと驚いてよ! アリアも無詠唱では魔法が放てないのよ! みんな驚いてたわ!」
私が興奮しながら話していると、グレイは微妙な表情で私を見る。
「なに?」
私がそう聞くと、グレイは呆れた表情をする。
「まさかとは思ってたんだ。でもそのまさかなのか?」
「何が?」
グレイはため息を吐いた後、私に質問してきた。
「なぁ。お前、魔力はいくつだ?」
「え? ああ、この前の魔力測定では38に上がってたわよね。アリア様は46になってたけど!」
「……アリア嬢は聖属性と火属性だよな。お前は?」
「何馬鹿な事を今更聞いてくるのよ。私は聖属性……」
あれ? なんか私、忘れてない?
「魔力測定の度に、俺が改ざんしてきたのだが……まさか、そう思い込むとは……」
ん……? 改ざん?
あ────!!
「ちょっとグレイ! 本来の属性と魔力を見たのが12歳の時以来なんだから忘れてたって仕方ないんじゃない!? やだ! 本来の私の属性って何々だった!? 現在の魔力ってどれだけあるの!?」
慌てる私にもう一度グレイは大きくため息を吐く。
「今日の夜、学園内にある魔力測定器に乗れ。夜なら誰もいないからバレないだろう」
そうして私とグレイは夜遅く、学園に行く事になった。
学園から帰宅後、家で父母と弟だけが楽しそうに話している中、黙々と食事を終え、早々に自分の部屋に戻る。
入浴を終えた後ベッドに入り、みんなが寝静まるのをジッと待つ。
夜も更けて来た頃、久しぶりにケット・シー姿になったグレイが私の部屋に入ってきた。
「準備はいいかにゃ?」
「ええ、行きましょう!」
私とグレイは静かに屋敷を抜け、予めグレイが用意していた目立たない馬車に乗り込んだ。
「グレイ、その姿のまま行くの?」
私が聞くと、グレイは嫌そうな表情で背中を丸めて座席に座っている。
「万が一誰かに見られた時、こんな夜更けにお前が男と一緒にいるのはマズイと思ったからにゃ」
「あ、そうね。ありがとう、グレイ。余計な心配かけちゃったね」
「ふん、今更だにゃ」
グレイはそっぽ向きながらも、しっぽは揺れている。
分かりやすいグレイの久しぶりのケット・シー姿に癒されるばかりだ。
そうこうしているうちに、学園に辿り着く。
グレイと共にこっそり学園に入り、魔力測定器のある場所に向かう。
魔力測定器は、魔法学の教室に置かれている。
年度末に毎年魔力測定を行ない、実力が上がっているかを確認するのだ。
「さぁ、エマ。乗ってみるにゃ」
「うん」
そうしてそっと体重計のような魔力測定器に乗ってみる。
【⠀魔力: 206 】
【⠀属性: 聖 】
【⠀属性: 光 】
【⠀属性: 空間 】
【⠀属性: ? 】
そこには有り得ない数値と属性が記されていた。
「魔力206!? 属性が4つ!? え…………何これ」
私が驚いていると、グレイが測定器の画面に記された表記を見ながら言う。
「改ざんしないと、これが表立ってしまうにゃ。だから何度かあった魔力検査の都度、改ざんしていたのだがにゃ……。まさか本気で忘れていたとはにゃ」
「うっ……。本来のもちゃんと後で教えてくれたら良かったのに」
「表記される前に改ざんするのだから、我にも実際の魔力は分からなかったにゃ。属性はさすがに変わらないとは思っていたがにゃ。
お前がアリアをライバル視する必要が無いことがこれで分かったにゃ?
その魔力では無詠唱出来て当たり前にゃ」
はい、グレイの言う通りです。
ぐうの音も出ないとはこの事だわ。
反省しながらも、ふと気になる事を聞いた。
「ねぇ、12歳の時も思ったんだけど、この?属性は何?」
そういえば、前にも聞いたけど結局答えを聞きそびれてたんだった。
「それは、ディオーネ様からの贈り物属性だにゃ」
「ん? この属性だけディオーネ様からなの?」
「あぁ。お前、転生する前にお願いしたんだろ? 困らない程度の能力が欲しいってにゃ。でも具体的な希望がなかったからと、お前が必要だと思う魔法が使えるようにって、それを授けたんだにゃ。それはいわゆる、想像魔法だにゃ」
「想像魔法!?」
「そうだにゃ」
ちょっと待って。まさかそれって、私が考えた事全てが出来る魔法なのでは?
「凄いじゃない! 何でもっと早く教えてくれなかったの!?」
私が食いつくようにそう言うと、
「だ~か~ら! 属性まで忘れてるとは思っていなかったんだにゃ!」
と、グレイに逆ギレされてしまった。
でも、これは凄い!
想像するのは得意よ!
前世ではベッドの住人をしながら色々と想像していたし、携帯で色々と異世界ものの漫画も楽しんでいた。
ここは定番のあれを使う時では!?
「グレイ。帰りの馬車はいらないわ」
「ん? どうやって帰るんだにゃ?」
「ふふふ。もちろんテレポートよ!」
「テレポートにゃ?」
「まぁ、見てて」
初めて使う魔法だ。
万が一って事もあるから、私はまず、今の位置から魔法学教室のドアまで一瞬でテレポートする事にした。
まずは心の中で行きたい場所を思い浮かべる。
そこに辿り着いた自分を想像しながら魔力を動かす。
魔力測定器の近くに立っていた私は、次の瞬間、魔法学教室のドアの前まで移動していた。
「ほぅ! それは凄い便利な魔法だにゃ!」
「でしょう? これで家の私の部屋まで飛んでみるわ」
「距離があるけど、大丈夫かにゃ?」
そう言われると少し怖いが、夜中にまた馬車に乗って見つからないように戻るほうが恐い。
「だ、大丈夫! 何とかなるわ!」
そう言って頭の中で自室を思い浮かべ、そこに戻る自分を想像しながら念じる。
すると次の瞬間には自室に戻っていた。
「やった。成功だわ!
これで宝玉も探しやすくなるわ!」
それに、今日のヒールの時に放った無詠唱。
あれは本来の私のヒールだ。
そうよ。何もはなからアリアに合わせる必要はない。
自分らしさを出しながら、大好きな魔法に向き合っていこう。
悪役令嬢、上等だ!
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