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1章 鍛冶屋の加治屋
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しおりを挟む加治屋「ところでお前、自分自身の適性属性は何だ?」
この世界では職業で冒険者を選択した際、その冒険者に適性のある属性を言い渡される。
勿論実力を付けて行けば、今後も様々な属性を取得する事が可能ではあるが、
最初に取得した属性、その属性の使い方によっては後の冒険にも大きく影響する。
冒険者「確か・・・風属性だけど。魔法も使えて無いからあまり気にしてなかった。」
加治屋「そりゃあ運が良いな?お前の持っているそのダガーも風属性との相性が良い。」
そして加治屋は岩の壁をポンポンと叩きながら言葉を続けた。
加治屋「じゃあお前、この壁に向かって風属性の剣技を使ってみろ。」
冒険者「ここに風属性の・・・?それに何の意味があるんだよ?」
加治屋「良いから良いから、お前でも簡単な剣技は出来るだろ?基本的な技術は教習済みだろうからな。」
冒険者「さっきから・・・俺を舐めるなよ。やってやる・・・やってやるよ!」
そう言いつつ冒険者は、加治屋に修理してもらったダガーの刃を手に、そして前岩壁に向かって構えた。
加治屋「・・・・・・・・・。」
冒険者は暫く集中した後・・・。
冒険者「はあぁぁぁぁぁぁ、疾風斬りぃぃ!」
気合いの入れながら技の名を言った冒険者のダガーは、刃先に風の様な物を纏い、
そして刃を高々と上げ、壁に向かって一気に振り下ろした。
加治屋「・・・・・・・・・。」
加治屋は終始その様子を無言で見つめ、そして岩の壁には数センチほどの小さな傷に目を移していた。
冒険者「ど・・・どうだ!?これが俺の本気だ!」
冒険者はどこか得意げに加治屋に向って問いかけたが・・・。
加治屋「・・・え?もう終わり?」
冒険者「・・・はあ?・・・あんた・・・今何て言った?」
加治屋「いや、あれで終わりかって言ったんだが?・・・まぁ、初心者にしてもこれじゃあなぁ・・・」
冒険者「そりゃあそうだろ!?俺はまだ初心者なんだぞ!?
それにこれで俺は・・・何体も魔物を倒して来たんだ!弱い事は無いはずだろ!?」
加治屋「ここいらの魔物ならそれでも倒せるだろうよ。だけどな、俺は武器の使い方を教えると言ったんだ。
さっきの様なダガーの使い方だと、刃が直ぐに欠けてまた俺の世話になるぞ?」
冒険者「俺の武器の使い方が・・・間違っているって事か?!」
冒険者は若干声を荒げていた。それだけ自分が誇っていた力にケチを付けられた事が許せなかったのだろう。
加治屋「だから・・・今から俺が使い方を教えてやる。そのダガーを貸せ。」
そう言った加治屋の言葉に若干の不満を覚えながらも、冒険者は渋々ダガーを加治屋に渡した。
加治屋「よく見てろ?今から放つのはお前がさっきやった疾風斬りだ。」
そう言いながら加治屋は、持っていたダガーを逆手に持ち、腰を低く落とし刃を後ろに回した。
加治屋「・・・・・・はっ!!」
短い掛け声と共に、刃を回転させるように壁に向かって振った瞬間、加治屋の背後から後を追う様に、
突風が突き抜けた。
冒険者「うわぁっ!!?」
そして突然襲って来た突風に、冒険者は驚きを隠せなかった。まるで全く別の技を見せ付けられたかの様に。
加治屋「・・・おいおい、驚くのはまだ早いぞ?」
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