イレンシ～壱～

case3 山の熊さん 後編

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与作「確か・・・家に帰る途中で・・・小熊と戯れていたら猟師に撃たれて・・・。」


そして与作は、死ぬ間際に聞いたあの声の事を思い出した。


『お礼に僕が助けてあげるよ』


与作「助けるって・・・まさかあいつ！自分の身体を俺に・・・。」


その途中与作はある事に気付く。


与作「体は・・・どこだ？」


熊になる前、肝心の与作の本体がどこにも見当たらなかった。


与作「消えた・・・？雪に中にでも・・・埋まってるのか・・・？」


すると・・・。


村人「・・・確かにこの辺りで銃声が聞こえたんだが・・・。そっちは何かないか？」


与作「！！！・・・誰か来る！いや・・・このままだと・・・まずい！」


熊の与作は４足歩行でもたつきながら、山の斜面を滑り下り草むらの中に身を隠した。


村人1「・・・ありや？ここだけ赤いな・・・血か？何の血だ？」


与作「まずい・・・！俺の・・・。」


草むらに身を隠しながら、与作の目には２人の人間の姿が確認できた。


村人2「おい・・・血がこっちに続いてるぞ！」


２人の村人は血の跡を辿っているようであったが、

何故か与作がいる方向とは逆の方へ向かって行った。


与作「・・・どこに行っているんだ・・・？」


与作が警戒して見えなくなった2人の動向を、耳を澄まして待っていると。


村人1「ん？おい！・・・誰かいるぞ！おいっ！大丈夫か？」


・・・・・・・・・・・・


何者かの安否を確認していた村人の声が、急に聞こえなくなった。


与作:どうしたんだ・・・？


村人2「おっ、おいっ！お前与作じゃないのか！？どうしたんだその傷？誰にやられ・・・。」


与作「あいつら・・・俺と話してんのか？」


するともう１人の村人の声も突然消え再び静けさを取り戻していた。


与作「あそこに・・・何かいる・・・。」


与作は何か良くない事が起こった、そう感じ、草むらの奥に入り込んで行った。


そしてしばらくして、何者かの雪を踏む音が聞こえ・・・。


与作「・・・な・・・！！」


するとその目に映った人間・・・それは、紛れもない与作そのものであった。


与作「何で・・・俺・・・が？いや、でも・・・何かおかしい！」


その与作の腹部には明らかに先程の猟銃で撃ち抜かれた跡があり、

着ている服にも大量の血がにじんでいた・・・だが、それを意に介していないかの様に

平然と立ち尽くし、顔を動かし何かを探していた。


与作「お・・・俺の体に、・・・悪霊が・・・。」


その時、与作は熊の与作と目が合った


与作(まずい・・・！見つかった！)


そしてお互い睨み合うように動きを止め・・・。


・・・・・・・・・・・・