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第二章

第四話

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 6人の訓練生が講堂に入り、入学式がおごそかに始まった。

 校長の長めの挨拶、来賓としてドラガニア国王の挨拶が続く。

 マチルダはこれから竜騎士になるための訓練が始まるんだと思うと教室で難癖をつけられたことなどすっかり忘れて期待で胸をふくらませた。



 そうしているうちに入学式が終わり、教室には戻らず、自己紹介するため、大きなトレーニング場に案内された。

 担任のテオドール・ハイゼが声をかける。

「それでは、 6人ともここで自己紹介をしようと思います。まず、連れている竜達を本来の大きさにしてください」

 ハイゼが命じると6人の連れている竜たちは小型になっていたものがそれぞれ大きくなる。

 リラと同じサイズの竜もいれば、リラより小さい竜もいて大きさはバラバラだった。

「では、紅一点から自己紹介をお願いしよう。その次はそこから時計回りでまわすように」

 ハイゼから指名されたマチルダは一礼をする。

「マグナス王国から参りましたマチルダと申します。連れている竜はリラと申します。よろしくお願いいたします」

 自己紹介が終わり改めて、一礼をした。何人かは拍手をするものの先ほどもめたダニエルとフランクは拍手をしなかった。


 次に、マチルダの左手の方にいた水色の髪に青い瞳のかわいい感じの男の子が一礼をする。彼が連れている水色の竜はリラよりも小さい。

「エルマーと言います!! 13歳です。憧れの竜騎士になれて嬉しいです!! 連れているのはシュトルムです!! よろしくおねがいします!!」

 張り切りすぎと言いたくなるほど、前のめりの自己紹介をするエルマーに暖かい拍手が送られた。

 
 その左手には先ほどマチルダともめたダニエル・シェーファーだった。彼の連れている青い竜イグニースはリラと同じぐらいの大きさだ。

「ダニエル・シェーファーだ。連れている竜はイグニースだ。シェーファー公爵家の嫡男だ。俺がこの中で一番であることをわからせてやるから、覚悟をしておけ!!」

 横柄な物言いに、拍手は無理やり送られている。


 その左手にはダニエルの腰巾着とも言うべきフランク・ベッカー。彼の連れている竜はリラより少し小さい。

「フランク・ベッカーと申す。連れている竜はブラウと言います。ダニエル・シェーファー様の盾となるために頑張ります!!」

 ありえない自己紹介の内容に、取り合えずしましたと言わんばかりの雑な拍手が送られる。

 困ったように担任のハイゼが言葉を挟む。

「ベッカー君、竜騎士は特定の人のためじゃあなくて、困っている人のために命を懸けて戦っているので、一人のためと言うなら訓練はできませんよ。」

「え?」

 ベッカーは予想していなかったのか、驚いて固まっている。彼にとって幼き頃より仕えていると言っていいダニエル・シーファーのために命を投げ出すことは当然のことであるから、それを否定された事に驚いてしまっていた。

 その様子を見ていたダニエルは慌てて、フランク・ベッカーをフォローする。

「フランクはそんなことないよな。困っている人のために戦うんだよな」

 ダニエルにフォローされてフランク・ベッカーは慌てて言い直す。

「はい、そうなんです。 ダニエル様と一緒に竜騎士になりたいのです。言葉の表現を間違えました。」

 フランク・ベッカーはそう言って謝った。ハイゼは軽くため息をついた。

「今はそういう事にしておきましょうか。 ただし、今後、竜騎士の素質がないとみなされないような行動をお願いしますよ。先ほど言ったように竜騎士は対等です。戦いの中で仲間に命を預けなければいけない場面にも出会います。その時、身分差が邪魔になることがあるからです。そのことを覚えておいてください」

「「わ、わかりました!!」」

 ダニエル・シェーファーとフランク・ベッカーはうなずく。

「フランク、俺の事はダニエルと呼ぶんだぞ」

 ハイゼに言われて、ダニエルは慌てて様付けをやめさせようとする。

「わかりました。ダニエルさ……ダニエル……」

 ベッカーは言いにくそうにダニエルを呼び捨てにした。


 「では、気を取り直して、次の人、自己紹介をどうぞ」

 ハイゼに言われて、ベッカーのその左手にいた茶色い髪に茶色い瞳をして、眼鏡をかけていていかにもできそうな感じの青年が挨拶をしようとした。彼はリラより大きい茶色い竜を連れている。

「私の名前はユリアン・マイスナーと言います。私の竜の名前はチョコ。よろしくお願いします」

 マイスナーと言う名前にマチルダ以外の者はギクッとした。マイスナーと言うのはこの国で一二を争う商会の出身者をしめしているからだった。

 この国で一二を争う商会の者と言うことでしっかり拍手を送られる。

 その左手、マチルダの右手に薄い茶色の髪に薄い茶色の瞳で陰のある感じのひょろっとした青年がリラと同じ大きさぐらいの黄緑の竜を連れていた。自己紹介をしようとした。

「……ハンスと、言います。この子はブリュンと言います。よろしくお願いいたします」

 ハンスの紹介が終わり、しっかりとした拍手を送られた。



 自己紹介が終わったところで担任のハイゼが6人を確認するように見回す。

「これから1年、この6人で訓練をやっていく。もめ事もあるかと思うが、問題が大きくなる前に早めに私に報告をお願いします」



 ハイゼが訓練生たちに話をしていると入学式にやってきていた国王アレクサンダーが銀色の竜 ガンクを従えやってくる。

 皆が敬意を表そうとするとそれを片手を上げて止める。

「改めて挨拶に来ただけだ。」

 そう言ってマチルダの横にやってくる。アレクサンダーはマチルダに微笑みかけてから、あたりを見回す。

「私の姪のマチルダだ。この国に不慣れなことも多い。よろしく頼む」

 アレクサンダーは訓練生たちに念押しとばかりに鋭い目を向ける。目障りなマチルダがアレクサンダーと親しげなのが気に入らないのかダニエルは国王の前なのでマチルダが嫌そうな素振りを隠そうとしても隠しきれない。

 そんなダニエルの様子をアレクサンダーは見逃なかったが、あえて何も言うことはなかった。

 そんな微妙な空気の中、竜騎士訓練学校の初日は終わっていった。
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