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第一章

第九話

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 そう言っている所へ再び誰かが駆け寄ってくる音が聞こえる。


「父上、お呼びでしょうか?」

 そういいながら、アレクサンダーの前へ走ってやってきたのは、アレクサンダーを若くしたような瓜二つの美少年だった。

「遅いぞ、ルードルフ!! エリザの娘のマチルダが我が国にやってきてくれたのだ!!」

 アレクサンダーの言葉にアレクサンダーの息子のルドルフはマチルダの方に顔を向ける。

 が、マチルダの格好が公爵令嬢にはありえないパンツにローブを羽織っている服装のため驚きを隠せない。

 しかし、マチルダの髪の色と瞳の色を見ると、納得したように頷くのだった。

「父の妹のエリザ様の娘のマチルダ嬢ですね。私は、この国の王子であなたの従兄にあたるルドルフ・ドラガニアです。やっとお会いできましたね」

 そう言って、ルドルフはマチルダに微笑みかけた。

「マチルダ・スチュアートです。お目にかかれて嬉しく思います」

 と言って、マチルダはパンツスタイルにもかかわらず、カーテシーをしようとする。

 しかし、ルドルフが面白いものを見たように笑う。

「その格好で、カーテシーもないよね。なかなか国から出してもらえなかった君と初めて会えてうれしいよ。そんな他人行儀じゃあなくて、仲良くしてね。マチルダ」

 優しく微笑みかけてくるルドルフにマチルダも嬉しそうに微笑み返すのだった。






 こうして、マチルダはドラガニアにて生活を始めることとなった。

 竜騎士訓練学校を受験するまでにはまだ時間があると言う事で、一先ず、この国の事を学びながら、竜騎士訓練学校受験の勉強を平行して行うことになった。

 竜騎士になるためにはリラは同調力が大事と言っていたが、実際は剣の腕がそこそこ必要なようで、これまでしたことのない剣の訓練をすることとなった。

 マチルダは剣を触るのが初めてなのにあっという間に使いこなせるようになった。

 リラに言わせれば、ドラガニア王家の血ゆえのことらしい。

 またある時は、リラとルドルフとルドルフの乗る黒い竜と一緒に飛行訓練をしたりして過ごしたのだった。




☆☆☆

 ドラガニアの竜騎士訓練学校は王都の外れの竜の森と呼ばれる竜たちが暮らす森の横に作られている。もちろん竜騎士の詰所もその森の横にある。

 マチルダは受験の前から、リラと森に行っては他の竜と遊んだりしたのだった。




 マチルダの受験の当日、国中から入学希望者が竜騎士になるために集まってきた。受験できるのは10歳から20歳までの者と決められている。

 まずは、騎士として剣術試験を受ける。

 くじ引きによって選ばれた三人と戦い、二勝すれば一次試験合格となる。

 その後、二次試験として竜の森にて一週間のうちに騎竜できる竜に出会えれば、試験に合格となる。

 しかし、自分と相性の良い竜に出会えるかどうかは運の面もあり、剣が強いからと言って合格できるわけではなく、何回も受験する者がいる狭き門でもあった。

 試験会場には竜をつれた受験生もいるが、ほとんど竜を連れずやってきていた。

 マチルダはと言うと、試験会場で受験生の多さに怯み、受験生の中に女子がほとんどいないことに自分がやっていけるのか心配になった。

 しかし、マチルダの心を落ち着ける間もなく、くじ引きによって当たる三人が決まる。

 マチルダを含む四人のグループ内での総当たり戦となった。

 そのグループはマチルダ以外は男子で貴族のような服を来た15才ぐらいの男子、平民のような男子二人だった。

 竜をつれたマチルダに貴族のような男子はおもしろくなさそう。

「お前、竜を連れてるからって女の癖にいい気になるな!! 俺様が倒してやるからな!!」

 そう言い捨てて去っていく男子に何も言えず、マチルダは見送るのだった。



 剣術試験が始まり、マチルダたちのグループの順番がやってきた。

 最初はマチルダ対貴族の男子であった。男子だけあり、マチルダよりも体格がよく、周りで見学している者たちは、男子の勝利を確信していたのだった。

 審判が試合開始を促した。

 開始とほぼ同時にマチルダは軽い細い剣を持って相手に向かって駆け出し、あっという間に相手の懐に入り込み、相手に当たる寸前で止めるのだった。

 それは目にも止まらない速さで見学していた者が息を飲むのだった。

 相手が女だと油断していたにしても、あまりに早い決着に思わず見ていた者たちはマチルダへ拍手を送る。



 その後、マチルダはほかの二人にも勝利して、マチルダはなんとトップタイで一次試験をクリアしたのだった。

 二次試験はリラを連れているため、マチルダは無条件で合格だった。

 
 竜騎士訓練学校に入学したら困難なことが待ち受けているかもしれないが、成せばなる ではないけれど、頑張って乗り越えて行こうと誓うとマチルダだった。


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