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第一章
第一話
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「マチルダ=スチュアート公爵令嬢!!お前との婚約は破棄することをここに申し渡す!!」
マグナス王国の王家主催の夜会の始まる直前、この国の王太子パトリック=マグナスが声高らかに宣言するのだった。
そんな王太子パトリック=マグナスの横に寄り添うのは、マチルダに勝ち誇った表情を見せるマチルダの父と継母の間に生まれた同じ歳の妹アリス=スチュアートだった。
この国の公爵令嬢でありながらこの国には珍しい銀色の髪と紫の瞳を持つマチルダ=スチュアートは王太子パトリック=マグナスに公の場で婚約破棄を宣言されたことに唖然としながらも、婚約者であるはずの王太子パトリックに問わずにはいられなかった。
「殿下、私たちの婚約は先王と私の祖父との間に成された政略結婚。勝手に破棄できるものではありませんが……」
婚約破棄できないと言うマチルダに汚いものを見るかのような視線を向ける王太子パトリック=マグナス。
「すがろうとするのは見苦しいわ!! 何を言うか!! 次の王となる俺がお前のような卑劣な者と婚姻することは国のためにならん」
マチルダを卑劣なものと決めつけるパトリックにマチルダは驚きを隠せない。
と言うのも、パトリックはマチルダを嫌い、会いに来ることもなく、マチルダはマチルダで王妃教育に励むあまり、自由な時間を持つ事が出来なかったので、王宮に王妃教育に行ったとしても、パトリックに会うことがなかったからだ。
一方的に卑劣と言われるほど、お互いを知ることもなかったのである。
「……卑劣とは?その様な行為を私がすると?」
マチルダは思わず尋ねずにはいられなかった。パトリックはマチルダを悪と決めつけているからか、鋭い目をマチルダに向ける。
「そうだ。お前はアリスに数々の虐げを行っていたであろう」
否定するマチルダの言葉を聞かず、決めつけるようにパトリックは告げるのだった。
「そのような恥ずべき事は致しておりません」
マチルダは全く身に覚えのない、寧ろ、公爵家で自分の身に起こっている事を問われ、きっぱりと否定した。
「お姉様。自分の罪をお認めになって」
パトリックにしがみつきながら、自分が被害者のような顔で会場に集まっていた者に嫌でも聞こえるように訴えるアリス。
アリスを守るように支えるパトリックとその周りを取り囲むパトリックの側近の者たち。
その中にはマチルダの父と継母の間に生まれた弟のダニエル=スチュアートも含まれていた。
対して、マチルダは一人、誰にもエスコートもされず佇んでいる。
心が折れそうになるのを必死で堪えつつ一人ぽつんと立つマチルダは予想をしていたとはいえ来るべき時が来たのかと思う。
ダニエルがマチルダに束にした書類を見えるように持ち上げる。
「お前がアリス姉様にした数々の虐げの証拠はここにある。これが白日の元にさらされる前に婚約を破棄の上、スチュアート家の為にも家を出ていけ!!」
マチルダは周りを見回す。
周りの貴族たちは意地悪そうにニヤニヤとマチルダを見つめる者ばかり。
この国にはない母譲りの銀髪と紫色の瞳を持つ故に辛い事がこれまでも多々あった。
この場はマチルダの無き罪を断罪するために仕組まれた場であると理解するのに時間は掛からなかった。
マチルダは王妃教育を国の為、婚約者の為と寝る間も惜しんで取り組んでいたが、そんなにしても周りから認められ褒められる事はなかった。
寧ろ、王太子にも実の父にも継母にも血の半分繋がった兄弟たちにも虐げられるばかりだった。
マチルダの実の母は竜の国のドラガニア出身。
先王がぜひとも自分の国にも竜の国ドラガニアの血を入れたいと言う事で、乞われてこの国に嫁いできた。
その時、王家には独身の者が居なかったため、スチュアート公爵家の嫡男で、婚約者が病死していたため婚約者がいなかったマチルダの父クリフと結婚し、生まれた子と王家の者とを結婚させ、ドラガニアの血を王家に入れる手筈となっていた。
マチルダの実の母エリザがマチルダ五歳の時にお腹にいた子と共に亡くなった一か月後、父が元子爵令嬢の継母エマとマチルダと同じ年の妹アリス、一つ下のダニエルをスチュアート公爵家へと招き入れた。
マチルダの居場所が無くなったスチュアート家の中で肩身の狭い思いをしながらも、自分の存在意義を見出すため、王家へ嫁ぐため遊ぶ間もなく、勉学に勤しみつづけた11年だった。
――やはり、この国に私の居場所はなかったのか……。
そんな11年を振り返って、なんのためだったのかと急に馬鹿らしくなったマチルダは会場を確認するように見回すのだった。
マグナス王国の王家主催の夜会の始まる直前、この国の王太子パトリック=マグナスが声高らかに宣言するのだった。
そんな王太子パトリック=マグナスの横に寄り添うのは、マチルダに勝ち誇った表情を見せるマチルダの父と継母の間に生まれた同じ歳の妹アリス=スチュアートだった。
この国の公爵令嬢でありながらこの国には珍しい銀色の髪と紫の瞳を持つマチルダ=スチュアートは王太子パトリック=マグナスに公の場で婚約破棄を宣言されたことに唖然としながらも、婚約者であるはずの王太子パトリックに問わずにはいられなかった。
「殿下、私たちの婚約は先王と私の祖父との間に成された政略結婚。勝手に破棄できるものではありませんが……」
婚約破棄できないと言うマチルダに汚いものを見るかのような視線を向ける王太子パトリック=マグナス。
「すがろうとするのは見苦しいわ!! 何を言うか!! 次の王となる俺がお前のような卑劣な者と婚姻することは国のためにならん」
マチルダを卑劣なものと決めつけるパトリックにマチルダは驚きを隠せない。
と言うのも、パトリックはマチルダを嫌い、会いに来ることもなく、マチルダはマチルダで王妃教育に励むあまり、自由な時間を持つ事が出来なかったので、王宮に王妃教育に行ったとしても、パトリックに会うことがなかったからだ。
一方的に卑劣と言われるほど、お互いを知ることもなかったのである。
「……卑劣とは?その様な行為を私がすると?」
マチルダは思わず尋ねずにはいられなかった。パトリックはマチルダを悪と決めつけているからか、鋭い目をマチルダに向ける。
「そうだ。お前はアリスに数々の虐げを行っていたであろう」
否定するマチルダの言葉を聞かず、決めつけるようにパトリックは告げるのだった。
「そのような恥ずべき事は致しておりません」
マチルダは全く身に覚えのない、寧ろ、公爵家で自分の身に起こっている事を問われ、きっぱりと否定した。
「お姉様。自分の罪をお認めになって」
パトリックにしがみつきながら、自分が被害者のような顔で会場に集まっていた者に嫌でも聞こえるように訴えるアリス。
アリスを守るように支えるパトリックとその周りを取り囲むパトリックの側近の者たち。
その中にはマチルダの父と継母の間に生まれた弟のダニエル=スチュアートも含まれていた。
対して、マチルダは一人、誰にもエスコートもされず佇んでいる。
心が折れそうになるのを必死で堪えつつ一人ぽつんと立つマチルダは予想をしていたとはいえ来るべき時が来たのかと思う。
ダニエルがマチルダに束にした書類を見えるように持ち上げる。
「お前がアリス姉様にした数々の虐げの証拠はここにある。これが白日の元にさらされる前に婚約を破棄の上、スチュアート家の為にも家を出ていけ!!」
マチルダは周りを見回す。
周りの貴族たちは意地悪そうにニヤニヤとマチルダを見つめる者ばかり。
この国にはない母譲りの銀髪と紫色の瞳を持つ故に辛い事がこれまでも多々あった。
この場はマチルダの無き罪を断罪するために仕組まれた場であると理解するのに時間は掛からなかった。
マチルダは王妃教育を国の為、婚約者の為と寝る間も惜しんで取り組んでいたが、そんなにしても周りから認められ褒められる事はなかった。
寧ろ、王太子にも実の父にも継母にも血の半分繋がった兄弟たちにも虐げられるばかりだった。
マチルダの実の母は竜の国のドラガニア出身。
先王がぜひとも自分の国にも竜の国ドラガニアの血を入れたいと言う事で、乞われてこの国に嫁いできた。
その時、王家には独身の者が居なかったため、スチュアート公爵家の嫡男で、婚約者が病死していたため婚約者がいなかったマチルダの父クリフと結婚し、生まれた子と王家の者とを結婚させ、ドラガニアの血を王家に入れる手筈となっていた。
マチルダの実の母エリザがマチルダ五歳の時にお腹にいた子と共に亡くなった一か月後、父が元子爵令嬢の継母エマとマチルダと同じ年の妹アリス、一つ下のダニエルをスチュアート公爵家へと招き入れた。
マチルダの居場所が無くなったスチュアート家の中で肩身の狭い思いをしながらも、自分の存在意義を見出すため、王家へ嫁ぐため遊ぶ間もなく、勉学に勤しみつづけた11年だった。
――やはり、この国に私の居場所はなかったのか……。
そんな11年を振り返って、なんのためだったのかと急に馬鹿らしくなったマチルダは会場を確認するように見回すのだった。
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