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第26章 楽しいばかりが人生ではないそうですよ⁉︎
387話 実力差
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月の庭内で隠されていた羅針盤通信機は、公国入り口門にあと1つあり、全部で3箇所仕掛けらていた。
「おいおい、俺らの情報ダダ漏れかよ⁉︎見つからない筈だぜ」
早速、話を聞いて戻ってきたニイヤ達が、管制室の椅子に腰を下ろすなり探索の愚痴をこぼし出す。
「各領土を入念に捜索したけど、なんの手がかりも無し。ラエテマ王国には居ないっぽいね」
「連邦はどう?」
「あー、ダメダメ。どこの国も代表国王選挙で騒いでいるから、まともな捜索はできなかったよ」
「ゴーモラでも、毎日ネガトが捜索に出てくれてるらしいけど、成果無しみたい」
結果的には、みんな同じ成果無しという事だ。
アシヤだけならまだしも、ベルフェルとダフネの痕跡すらも見つけ出せなかったのだ。
「…それで、発見された通信機は、アシヤが仕掛けた物で間違い無い?」
「ああ、残念だけど…」
アラヤは、アシヤと話した事をみんなに伝えるかを迷っていた。
増殖分身のメリット。それは、いわゆる死亡時の身代わり効果。
ただ、意識がどちらになるかをアラヤは知らない。
本体が死んだ後で、分身体が本体となるのなら、分身体に初めからあった感情と記憶は消えてしまうのだろうか?
簡単に検証できない事だし、ベルフェルという経験者がいるあちら側は、詳細を知っているに違いない。
やはり、黙っていても解決はしない。アシヤの狙いが自分だという事は伏せて話すことにしよう。
「…実は、アシヤと少しだけ話したんだ」
「ホントに⁉︎」
「じゃあ、もう戻って来るのか?」
「いや、今から約1年の間に、準備ができ次第、月の庭に戦争を仕掛けると言ってきた」
「「「はぁ⁉︎」」」
みんなの目が点になっている。
「な、なんでそうなるんだよ⁉︎」
「ええっ⁉︎その為の家出⁉︎というか、家出でもなかったって事⁉︎」
「まさか、ダクネラに唆されて⁉︎いや、そうに違いない!」
「だからって、アシヤが従うわけないでしょう!」
しばらく、みんなは混乱で事実を否定している。
『アシヤは、それ程までに私達を憎んでいるというのか?』
「エアリエル⁉︎」
管制室の壁を擦り抜けて、エアリエルが帰ってきていた。
「いや、おそらくは俺に対してだと思う。契約者であるエアリエルには危害を加える事は不可能だし、加えるつもりもないと思う。もちろん、みんなにも」
アシヤの狙いは俺との入れ替わりなわけだから、大事な家族には手出ししたくない筈だ。
「だけど、アシヤにはベルフェル司教とダフネが居る。それと寛容の勇者のゴーレムも。他にも勢力を用意するかもしれない。アイツもこのモーントガルテンの勢力は知ってる。それでも、戦争を仕掛けると言ったんだろ?なら、生半可な覚悟じゃないだろう。俺には、アラヤに対してだけの恨みじゃない気がするけど…?」
アー君の冷静な意見に、みんなの困惑した気持ちも若干落ち着いた。
「確かにそうだな…」
「俺らも嫌われていたのか?」
「あながち無いとも言い切れないよね?」
「とにかく、アシヤは本気で攻めて来る気だって事だね?」
「わざわざ、攻める期日を1年後と教えている辺り、通信機が見つかる事も想定内だったのでしょう。敢えて、私達にも準備する期間を与えているみたいです」
(アシヤ君は、クララの出産も私が妊婦なのも知っている。まさか、その期間も配慮しているのかしら?それとも油断させて奇襲する為のフェイク?)
アヤコには、アシヤの意図が読めずに引っかかっていた。
「今更公平な戦いをって事?バカじゃないの⁉︎それなら初めから争うなんて事するんじゃないわよ!」
サナエは耐えきれず泣き出し、アヤコがそれを宥める。
「私達にできる事は、アシヤ君をギリギリまで説得することではないでしょうか?」
みんなが納得する結論としては、それが一番な気はする。
「説得するにしても、周りにはベルフェル司教とダフネが居るわ。対策はしなきゃいけないんじゃない?」
「アシヤ以外は叩き潰せば良いじゃないか。司教だって、覚悟の上で来ると思うぜ?」
ニイヤがやってやるよと拳を鳴らすと、彼の後頭部をカオリが軽く叩いた。
「アシヤ達はコッチの勢力を知ってるけど、コッチは向こうが用意する勢力を知らないのよ?それに、私達には守るべき子供達も居る。防衛戦ってのは、ただ迎え撃てば良いってわけじゃないのよ?」
「子供達は避難させれば良いだろ?」
確かに、タオ達は避難すれば良いだろう。だが、新生児達は簡単じゃない。
新生児を避難させるなら、母親達も同伴するのが当然だろう。
そうなると、大幅な戦力ダウンだと言える。
「少なくとも、アシヤはアラヤの次に強い筈よ?だから、防衛の戦力ダウンは避けたいわ」
「あ、あの、ニイヤ様達は同じ分身体なのに、力が違うのですか?」
オードリー達は、同じ分離分身体であるニイヤ達は、同等の強さに違いないと思っていたようだ。
「全く違うよ。そりゃあ、分離した時は同等の強さだったけども、それぞれが違う努力や実戦を重ねているんだ。同じな訳はないさ」
「簡単に言うと、アラヤ君本体は別格として、増殖分身であるアシヤ君が、そのままの強さを引き継いでいるに等しいの。一方で、分離分身体は本体の強さが分離した強さから始まっている。しかも、10等分に別れてから今までに討伐した魔物や得た技能に違いがあるの。本体に融合で戻らなくなってから、技能の共有も無くなったから、それが強さの差となっているのよ」
分身体の強さの順位としては、
1位 アシヤ (増殖分身で、最後にアラヤ本体のステータスと技能を同等の状態で産まれた。厄災の悪魔マンモンも捕食している)
2位 ニイヤ (戦闘数、捕食数が分身体の中で最も多い。戦闘センスは1番)
3位 主様 (分身体の中で一番の努力家で、あらゆる武技の技能を磨いている)
4位 アグリ (戦闘訓練、魔術訓練共に良く参加していて、苦手な分野が無い)
5位 アー君 (無駄な事を嫌う面があり、必要性が低いと判断したものは排除したがる。戦闘面でも効率的な戦いを好む)
6位 あらや (普段は温厚だが、努力は怠ってはいない。1番に、回りの仲間の状況を見ている)
7位 ソルテ (深く考えない性格の為か、身の危険に鈍感な攻め方をする。本能的に行動するタイプ)
8位 ノア (自分からは滅多に動かない。漁夫の利を狙うことが多い。その為に戦闘数は少ないが捕食数はそれなりにある)
9位 ネガト (自分に自信が無いことで諦めが早い。ゴーモラ王国に婿入りしてからは、妻のコウサカにより、魔物達の自衛訓練に無理矢理付き合わされている)
10位 アゲノル (海底神殿に住み始めてからは、戦闘数も捕食数も無く個人訓練のみ。生活に必要な鍛冶だけは熟練度が上がっている)
という結果になっている。
「アラヤ様が別格とは何故ですか?」
『アラヤが、アシヤを生み出した後に何をしたか覚えていないか?』
「あっ!大陸全土の…!」
『そう、アラヤは捕食数があの一件で桁外れに増えた。もはや、私達大精霊以外には敵無しと言える』
スニス大陸全土の生命体から、記憶を捕食した。それは、血肉とは違う圧倒的な経験値の捕食。
『私は鑑定できるわけではないが、その体に秘めたる力は分かる。アシヤを生み出した時とは、雲泥の差になっている』
「アラヤ君、…私達に公表できますか?」
今までのアヤコと違い、公表できるかを聞くあたり、仲間達の萎縮を考えているのだろう。
「技能だけなら…」
実はあの後、今まであった技能のほとんどが統廃合されていた。
前)身体強化、自己再生、五感超感覚等 → 現)神体能力
前)各耐性 → 現)不動使者
前)各戦技 → 現)闘聖
前)全属性魔法各級 → 現)魔導王
「「「技能の簡略化⁉︎」」」
ステータスも桁が上がっているのだが、みんなの驚き具合から公表しなくて正解だと分かる。
「…ありがとうございます。それ以上は充分です」
みんなとの差が、明確になり過ぎるのは危険だと理解したようだ。
「アラヤ君自体は、1人でも大丈夫だと分かりましたが、アシヤ君がこの事を理解していないとも思えません。だから、1年後という期日に保証はありません。アシヤ君の説得はアラヤ君とエアリエル様にお願いして、私達は防衛対策に専念しましょう」
みんなは黙って頷いた。アラヤの規格外さにそれぞれが刺激されたようで、自分が何をすべきかを相談を始めるのだった。
『アラヤ、…私はどうすれば良い?』
エアリエルは、暗い表情を見せている。アシヤが本当に恨んでいるのは自分ではないかと、彼女も不安を感じているのだろう。
アラヤは彼女をただ抱き寄せ、大丈夫と優しく言い聞かせるしかできなかった。
「おいおい、俺らの情報ダダ漏れかよ⁉︎見つからない筈だぜ」
早速、話を聞いて戻ってきたニイヤ達が、管制室の椅子に腰を下ろすなり探索の愚痴をこぼし出す。
「各領土を入念に捜索したけど、なんの手がかりも無し。ラエテマ王国には居ないっぽいね」
「連邦はどう?」
「あー、ダメダメ。どこの国も代表国王選挙で騒いでいるから、まともな捜索はできなかったよ」
「ゴーモラでも、毎日ネガトが捜索に出てくれてるらしいけど、成果無しみたい」
結果的には、みんな同じ成果無しという事だ。
アシヤだけならまだしも、ベルフェルとダフネの痕跡すらも見つけ出せなかったのだ。
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増殖分身のメリット。それは、いわゆる死亡時の身代わり効果。
ただ、意識がどちらになるかをアラヤは知らない。
本体が死んだ後で、分身体が本体となるのなら、分身体に初めからあった感情と記憶は消えてしまうのだろうか?
簡単に検証できない事だし、ベルフェルという経験者がいるあちら側は、詳細を知っているに違いない。
やはり、黙っていても解決はしない。アシヤの狙いが自分だという事は伏せて話すことにしよう。
「…実は、アシヤと少しだけ話したんだ」
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「じゃあ、もう戻って来るのか?」
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「まさか、ダクネラに唆されて⁉︎いや、そうに違いない!」
「だからって、アシヤが従うわけないでしょう!」
しばらく、みんなは混乱で事実を否定している。
『アシヤは、それ程までに私達を憎んでいるというのか?』
「エアリエル⁉︎」
管制室の壁を擦り抜けて、エアリエルが帰ってきていた。
「いや、おそらくは俺に対してだと思う。契約者であるエアリエルには危害を加える事は不可能だし、加えるつもりもないと思う。もちろん、みんなにも」
アシヤの狙いは俺との入れ替わりなわけだから、大事な家族には手出ししたくない筈だ。
「だけど、アシヤにはベルフェル司教とダフネが居る。それと寛容の勇者のゴーレムも。他にも勢力を用意するかもしれない。アイツもこのモーントガルテンの勢力は知ってる。それでも、戦争を仕掛けると言ったんだろ?なら、生半可な覚悟じゃないだろう。俺には、アラヤに対してだけの恨みじゃない気がするけど…?」
アー君の冷静な意見に、みんなの困惑した気持ちも若干落ち着いた。
「確かにそうだな…」
「俺らも嫌われていたのか?」
「あながち無いとも言い切れないよね?」
「とにかく、アシヤは本気で攻めて来る気だって事だね?」
「わざわざ、攻める期日を1年後と教えている辺り、通信機が見つかる事も想定内だったのでしょう。敢えて、私達にも準備する期間を与えているみたいです」
(アシヤ君は、クララの出産も私が妊婦なのも知っている。まさか、その期間も配慮しているのかしら?それとも油断させて奇襲する為のフェイク?)
アヤコには、アシヤの意図が読めずに引っかかっていた。
「今更公平な戦いをって事?バカじゃないの⁉︎それなら初めから争うなんて事するんじゃないわよ!」
サナエは耐えきれず泣き出し、アヤコがそれを宥める。
「私達にできる事は、アシヤ君をギリギリまで説得することではないでしょうか?」
みんなが納得する結論としては、それが一番な気はする。
「説得するにしても、周りにはベルフェル司教とダフネが居るわ。対策はしなきゃいけないんじゃない?」
「アシヤ以外は叩き潰せば良いじゃないか。司教だって、覚悟の上で来ると思うぜ?」
ニイヤがやってやるよと拳を鳴らすと、彼の後頭部をカオリが軽く叩いた。
「アシヤ達はコッチの勢力を知ってるけど、コッチは向こうが用意する勢力を知らないのよ?それに、私達には守るべき子供達も居る。防衛戦ってのは、ただ迎え撃てば良いってわけじゃないのよ?」
「子供達は避難させれば良いだろ?」
確かに、タオ達は避難すれば良いだろう。だが、新生児達は簡単じゃない。
新生児を避難させるなら、母親達も同伴するのが当然だろう。
そうなると、大幅な戦力ダウンだと言える。
「少なくとも、アシヤはアラヤの次に強い筈よ?だから、防衛の戦力ダウンは避けたいわ」
「あ、あの、ニイヤ様達は同じ分身体なのに、力が違うのですか?」
オードリー達は、同じ分離分身体であるニイヤ達は、同等の強さに違いないと思っていたようだ。
「全く違うよ。そりゃあ、分離した時は同等の強さだったけども、それぞれが違う努力や実戦を重ねているんだ。同じな訳はないさ」
「簡単に言うと、アラヤ君本体は別格として、増殖分身であるアシヤ君が、そのままの強さを引き継いでいるに等しいの。一方で、分離分身体は本体の強さが分離した強さから始まっている。しかも、10等分に別れてから今までに討伐した魔物や得た技能に違いがあるの。本体に融合で戻らなくなってから、技能の共有も無くなったから、それが強さの差となっているのよ」
分身体の強さの順位としては、
1位 アシヤ (増殖分身で、最後にアラヤ本体のステータスと技能を同等の状態で産まれた。厄災の悪魔マンモンも捕食している)
2位 ニイヤ (戦闘数、捕食数が分身体の中で最も多い。戦闘センスは1番)
3位 主様 (分身体の中で一番の努力家で、あらゆる武技の技能を磨いている)
4位 アグリ (戦闘訓練、魔術訓練共に良く参加していて、苦手な分野が無い)
5位 アー君 (無駄な事を嫌う面があり、必要性が低いと判断したものは排除したがる。戦闘面でも効率的な戦いを好む)
6位 あらや (普段は温厚だが、努力は怠ってはいない。1番に、回りの仲間の状況を見ている)
7位 ソルテ (深く考えない性格の為か、身の危険に鈍感な攻め方をする。本能的に行動するタイプ)
8位 ノア (自分からは滅多に動かない。漁夫の利を狙うことが多い。その為に戦闘数は少ないが捕食数はそれなりにある)
9位 ネガト (自分に自信が無いことで諦めが早い。ゴーモラ王国に婿入りしてからは、妻のコウサカにより、魔物達の自衛訓練に無理矢理付き合わされている)
10位 アゲノル (海底神殿に住み始めてからは、戦闘数も捕食数も無く個人訓練のみ。生活に必要な鍛冶だけは熟練度が上がっている)
という結果になっている。
「アラヤ様が別格とは何故ですか?」
『アラヤが、アシヤを生み出した後に何をしたか覚えていないか?』
「あっ!大陸全土の…!」
『そう、アラヤは捕食数があの一件で桁外れに増えた。もはや、私達大精霊以外には敵無しと言える』
スニス大陸全土の生命体から、記憶を捕食した。それは、血肉とは違う圧倒的な経験値の捕食。
『私は鑑定できるわけではないが、その体に秘めたる力は分かる。アシヤを生み出した時とは、雲泥の差になっている』
「アラヤ君、…私達に公表できますか?」
今までのアヤコと違い、公表できるかを聞くあたり、仲間達の萎縮を考えているのだろう。
「技能だけなら…」
実はあの後、今まであった技能のほとんどが統廃合されていた。
前)身体強化、自己再生、五感超感覚等 → 現)神体能力
前)各耐性 → 現)不動使者
前)各戦技 → 現)闘聖
前)全属性魔法各級 → 現)魔導王
「「「技能の簡略化⁉︎」」」
ステータスも桁が上がっているのだが、みんなの驚き具合から公表しなくて正解だと分かる。
「…ありがとうございます。それ以上は充分です」
みんなとの差が、明確になり過ぎるのは危険だと理解したようだ。
「アラヤ君自体は、1人でも大丈夫だと分かりましたが、アシヤ君がこの事を理解していないとも思えません。だから、1年後という期日に保証はありません。アシヤ君の説得はアラヤ君とエアリエル様にお願いして、私達は防衛対策に専念しましょう」
みんなは黙って頷いた。アラヤの規格外さにそれぞれが刺激されたようで、自分が何をすべきかを相談を始めるのだった。
『アラヤ、…私はどうすれば良い?』
エアリエルは、暗い表情を見せている。アシヤが本当に恨んでいるのは自分ではないかと、彼女も不安を感じているのだろう。
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