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第8章 何処へ行っても目立つ様だよ⁈

106話 ポッカ村の魔物

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「本当にこの関所に残る気ですか?」

 馬車の御者台にいるアラヤは、見送るという守衛達に今一度聞いてみる。

「ああ、関所に誰も居無いという訳にはいかないからな。だから、君達に頼みがあるのだが、オモカツタの街に行くのなら、その時にこの手紙を街にある衛兵駐屯地に届けて欲しいんだ。内容は主に今回の件と、人員の増員要請だ」

「そういう事でしたら、分かりました。預かりましょう。ただ、先にポッカの村に寄るので、直ぐにとはいきませんけど」

「ああ、それで構わない。食料や魔鉱石も分けて貰ったし、気長に関所を守りながら待つさ」

「タダではありませんよ?兵舎には魔鉱石代を請求させてもらいますからね?」

 アラヤ達は勇者では無い。なので慈善事業をしているわけじゃ無いのだ。貰える分はもらっておかないと、人命救助したなら当たり前だと思われたくないからね。
 アラヤ達は2人に手を振って、関所を後にした。
 カオリは今仮死状態デスタイムだけれども、昨晩はあまり積雪は無かったようで、道の雪を溶かすのも昨日よりは容易だった。
 今、目指しているのはポッカ村だ。守衛は、昨日のシルバーレイスは、村の方から来たみたいだと言っていたが、シルバーレイスを倒した今でも、村の現状を知る必要がある。村への距離は、アラヤ達なら半日以内に着く距離にある(通常の馬車なら1日半程度)。

「アラヤ君、次に魔物を見かけたら、私にも武器の試し撃ちをさせてくださいね?」

「分かった。クララも狼人ライカンスロープで試してみるといいよ」

 実は2人にも、ゴードンさん製作の新しい武器を用意してたんだよね。
 アヤコにはグレートボウ(長弓)と吹き矢の改良型だ。
 グレートボウには、アラヤの竜鱗防御の脱皮した欠片が使用されている。矢には、鏃部分が魔鉱石になっていて、誘爆性付与やアイス等の矢がある。刺さる相手の魔力に反応して、魔鉱石の魔法が発動する仕組みだ。
 吹き矢の筒にはムーブヘイストの魔鉱石が付いている。吹いた時に矢が加速するのだ。  
 今まで、刺突威力自体は無かった吹き矢だが、今回はボウガン並みの威力になっていて、毒の効果無しでも武器として使えるようになった。
 クララには、ミスリル製ナイフ(グリップ部に魔鉱石用の穴1つ有り)と魔力粘糸製のハーフフィンガーナックルガードグローブを渡してある。手甲側に魔力粘糸と竜鱗が施されていて、魔法(魔力弾系)を殴ることも可能である。

「その際、練習の成果、お見せします」

 除雪で先頭を走るクララも、やる気を見せている。ただ、肝心の魔物なんだけど、積雪のせいか見当たらないんだよね。このままだとポッカ村に着いてしまいそうだ。

「ご主人様、血の臭い」

 直ぐにアラヤの超嗅覚にも、その血の臭いが届いた。臭いの出元は、方角的にはポッカ村からになる。

「各自、戦闘の準備を。村に魔物が居る可能性がある」

 魔導感知で辺りを警戒しながら、ポッカ村の入り口へと辿り着いた。
 村からは、あちこちから白煙が出ていて、血の臭いが濃くなっている。
 魔導感知に反応がある。複数の敵意の赤と微弱な青の反応。まだ生存者がいるようだ。

「生存者の反応がある。魔物を手早く倒して救助しよう」

 アラヤは馬車を固定すると、直ちに村へと足を踏み入れた。

「魔物、居た!倒す!」

 いち早く魔物を見つけたクララが、狼人ライカンスロープへと姿を変える。
 見つけた魔物は2種類、トロール(オークよりも大柄の人型。自己再生を持つ厄介な魔物)と羅刹鳥(鉤の様な嘴と白い大きな爪を持つ灰色の鳥の魔物)だ。

「鳥の方は任せて!」

 アヤコはグレートボウを構えて、フレイム魔鉱石の矢を放つ。
 風下だった事もあり、事前に羅刹鳥に気付かれる事なく命中した。魔鉱石が羅刹鳥の魔力に反応して発火する。

 ピギャァッ⁉︎

 羅刹鳥は燃えながら地面へと落ちた。仲間がやられた事に気付いた羅刹鳥達が、集まってくる。

「アヤコさん、一羽は捕食用に麻痺させてね?サナエさんは、戦士達の鼓舞で皆んなをサポートして。俺とクララは、村にいるトロール退治だ」

「「了解!」」

 クララは、既にトロールとの戦闘を始めている。大振りな攻撃を躱して、ミスリルナイフで斬り付けているが、その傷が直ぐ塞がる。自己再生が割と早いな。

「クララ、アイスの魔鉱石を付けて関節の腱を狙うんだ」

「ん!分かりました!」

 クララは、素早くアイスの魔鉱石をグリップに嵌め込むと、再びトロールの脇や股関節などの弱い場所を斬り込んだ。

『ウガッ?カラダガウゴカナイ⁈』

 あらゆる関節を凍らされたトロールは、動けずに倒れた。アラヤがその首を斬り落としてトドメをさした。

「クララ、本来ならアイスだけで倒せるだろうけど、練習も兼ねてこのやり方でいこうか」

「分かりました」

 アラヤとクララは二手に分かれ、村に居るトロールを掃討してまわる。クララは、魔鉱石をフレイムやエアカッターなどにも変えてみながら使用していた。うん、いろいろと試す事は大事だよね。

「アラヤ君、こっちも終わりました。麻痺した羅刹鳥はこちらに」

 ピクピクと痙攣している羅刹鳥を、アラヤの前に差し出す。

「うん、ありがとう」

 弱肉強食用に残してもらったものだ。早速技能スキルを使用して食奪獲得イートハントする。

『弱肉強食により、羅刹鳥の全ての技能を食奪獲得イートハントしました。技能、擬態LV 1、眼突きLV 1、暗視眼LV 1は経験値として吸収されLV 2に昇華しました』

 擬態とは、この魔物姿を変える事ができたのか⁉︎やった、これは便利な技能を手に入れたな。

「ご主人様、魔物の反応は全て片付いたと思います」

「うん、ならばクララは銀狼に再び変身していてくれ。今から生き残りを助けに向かう」

 村の殆どの家が半壊していたが、反応は地下から感じられる。どうやら、家の地下に保管庫があり、そこへ避難した住民がいたのだろう。アラヤはアヤコと、気配感知を持つクララとサナエの二班に分かれて救助に当たる。

「扉の入り口が瓦礫で塞がっている。先ずは退かさないと」

 アラヤとアヤコは、グラビティで素早く瓦礫を退かして、地下室の扉を開けた。

「だ、誰⁈」

 地下には、ランプの薄っすらな明かりに映る少女が居た。少女は手に農具のフォークを持ち、震える手で構えていて、側には幼い弟らしい子がグッタリとしている。

「大丈夫だ、今助けるから」

 アラヤは男の子の元に駆け寄り、状態を見る。致命的な外傷は無いが、どうやら熱がある様だ。傷口から菌が入ったのかもしれない。

「ヒール、クリーン」

 アラヤは応急処置をして、男の子を担ぎ上げる。

「あ、アントンを連れてかないで!」

「上の安全な場所に連れていくんだよ。君もついて来て」

「上の安全な場所…?」

 少女は上には魔物が居て、安全な場所など無い筈だ。少女はアラヤの後ろにいた女性に気付いた。彼女は変わった弓を持ち、こちらを見て微笑んでいる。弟を担いだ自分と変わらないくらいの少年より、俄然頼り甲斐がある。

「クララの方でも、4人の生存者が居たみたいです」

「そうか、とりあえず皆んな集まろうか」

 村の中央に集合をかけ、皆んなが集まった。生存者は全員で6名、内3名が子供で残りは年寄りだ。全員に、一応ヒールとクリーンは掛けてある。

「村に居た魔物は全て退治しました。皆さんに、この村に何があったか教えていただけませんか?」

「おお、確かに魔物がいないぞ⁈」

「すまない、我々も突然の事で、何が起きたのか分からないのじゃ」

「私達は、見ました」

 先程の少女が手を上げてそう答える。

「村の上空に現れた変な黒い渦から、魔物がいっぱい出てきたの!そこに翼の生えた女性の人が居て、魔物に指示を与えている様に見えたわ」

「リズ、それは本当か⁈」

 翼の生えた女性?それは魔物ではなく悪魔の類かな?どちらにせよ、レイスに続いて厄介な事になりそうだな。
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