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第8章 何処へ行っても目立つ様だよ⁈

104話 快楽の共有

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 訓練が終わり、簡易シャワー室を亜空間収納から取り出して、1人ずつ体を洗っていく。
 この簡易シャワー室は、電話ボックス並の大きさだ。取り出している姿を側から見ると、某アニメの未来から来たロボット、ドラ○もんみたいだと言われかねない。 
 構造は屋根部分が貯水槽になっていて、室内の上部に固定してあるシャワーへと繋がっている。シャワーの蛇口の根元には、ヒートアップの魔鉱石が設置してある。
 手前にあるボタンに魔力を流すと、お湯が流れ出る仕組みで、横にある摘みで温度調節も可能だ。
 ただ、流れ出た排水の処理先を、毎回掘って溜めなければならないのが難点で、サクションの設置場所と使うタイミングを今は検討中の段階だ。

 みんなが入った後、最後にアラヤが入ると、外で何やら言い合いが聞こえる。

「ちょっと、今日は私とクララの日でしょう?貴女達は馬車で大人しく寝てるべきだわ」

 内容から察するに、夫婦の営みの番で揉めているようだ。
 嫁が4人に増えた事で、公平を期す為に日による当番制が決まっていた。
 月神日はアヤコとサナエ、火神日はカオリとクララ、水神日はアヤコとカオリ、というように日による組み合わせが変わるローテーションが組まれ、日曜日に当たる天神日は休みと決まっていた。
 決まりは守られていて、今日はカオリとクララの筈なんだけど…

「それはマイホームでの話です。このような馬車の旅では、部屋が分かれていないので寝れませんよ。私達に悶々としても耐えろというのですか?」

「だって、それじゃあアラヤとの甘い時間が減るじゃない」

「馬車での移動期間の夜だけです。街や村に着いたら戻しますから、野営時の夜は全員でのお相手という事でお願いします」

「ブフッ⁉︎」

 アラヤは思わず吹き出していた。いくら即席巨大かまくらで敵からの襲撃が無いといえ、いろんな意味でそれはあまりに危険ではないだろうか?
 アラヤは恐る恐るシャワー室から出て着替える。既に話し声は聞こえない。しかし、魔導感知で出口を包囲されていることが分かる。

「アラヤ君、聞いていたのでしょう?出て来てください」

「はい…」

 アラヤが観念して出てくると、4人は寝間着姿でアラヤを取り囲む。湯上がりのほのかに残る湿っぽさが、4人の色っぽさを引き立てている。

「アラヤ君、これは強制ではありません。気が乗らない場合は、当然断って構いません」

 いや、この状況でそれは無理じゃないかな?既に胸の感触が背中や腕に押し付けられているのだから。多過ぎる据え膳食わぬは何の恥になるの…?




「はぁ…今回はまた長かったな…」

 アラヤはゆっくりと上半身を起こす。周りには嫁達が、意識を失ったように熟睡している。カオリに至っては仮死状態デスタイムのようだ。
 途中から記憶が欠落している。こんな事は今までには無かった。原因は、途中でカオリと感覚共有してしまった事にある。
 彼女の色欲魔王としての極上の快楽は、性的な行為で得られる。つまりは、アラヤの捕食で得られる快楽と同等の快楽を、みんなが共有してしまったのだ。しかも、共有により効果は何倍にも跳ね上がる。
 常人ならば、先端に触れただけで達してしまうだろう。
 もはや理性は壊れて、皆んなは意識を失ったのだ。
 唯一、精神耐性を持つアラヤだけが、いち早く立ち直れたのだ。

「カオリさんとだけは、感覚共有は危険だと分かってたのに、まさか彼女自体がコピーした感覚共有を使うとは考えて無かった。次からは絶対に禁止だな」

 アラヤは、彼女達の体を綺麗にしてから馬車の寝床に寝かせた。
 はぁ、今日はなんか疲れだけが残ったなぁ。アラヤはそのまま寝込んでしまう。

 翌朝、アラヤが目を覚ますと、アラヤより先にカオリが起きていた。彼女自身、まだアラヤの全技能コピーが続いているのだろう。精神耐性が働いていたらしい。

「おはよう、にいや。みんなはまだ起きないね」

「おはよう。みんなは…」

 アラヤは、その原因がカオリさんにあると説明した。

「…だって、みんなだけ感覚繋がってて羨ましかったんだもの。私の快楽をみんなにもあげたいって思ったのよ」

「うん、次からは注意しなきゃね」

 とりあえず、みんなが起きるまでの間、カオリと魔鉱石の製作をしながら話をしていた。

「うう…、少し頭が痛いです」

 やがて、みんなが起き出したので、ようやく出発の準備に取り掛かる事ができる。
 馬達の準備も終わり、アラヤはカオリと2人で、アースクラウドでかまくらの片方を持ち上げる。

「さぁ、再び出発だ」

 持ち上げて出来た隙間から、馬車を外に走らせる。

「うわぁ、真っ白だな!」

 外の世界は、雪が積もって銀世界になっていた。これだと、馬車が上手く走らせる事ができない。

「クララ、銀狼になって馬の前でホットブローを頼む!」

「分かりました!」

 クララは銀狼に変身すると、衣服を脱ぎ捨てて表へと飛び出した。
 銀世界に銀狼って、似合い過ぎてるね。

「ホットブロー!」

 馬が進む道の雪を、馬車が無理なく走れる程度に溶かしながら先行して走る。
 クララの魔力が尽きそうになると、アヤコとサナエが先頭の馬に乗馬して、ホットブローの魔鉱石を使用する。この繰り返しを続けながら、夕方前にインガス領の関所へと到達した。

 魔導感知には反応があるのだが、扉が閉まっているままなので、大声で呼びかけてみる。

「すいませーん‼︎門を開けてもらえませんかー⁉︎」

 返事は返ってこない。もう一度、魔導感知に更に熱感知を兼用してみる。

「反応が微弱で体温が低い。低体温症か⁈」

「どうするの?」

「クララと俺で門の上から中に入る。直ぐに閂を外すから、少し待っていてくれ」

 アラヤは両足をバルクアップして、クララと共に門の上へと跳躍する。
 門の上へと降り立った2人は、目下の状態を見て状況を理解した。
 つい先刻まで戦闘があったようで、消えたばかりの松明の煙や、雪に飛び散る血痕が見える。

「クララは閂を頼む。俺は生存者の元に行く」

「分かりました」

 アラヤは、魔導感知に反応した者の場所へと急ぐ。そして守衛室らしき場所に、その者達が居た。

「おい、大丈夫か⁉︎」

 そこには、2人の守衛が怪我を追った状態で倒れていた。直ぐに2人にヒール(中)を掛ける。怪我は治っても、意識は朦朧としているようだ。2人の脇の下に触れて、ヒートアップの最弱の強さで体の中心から温めていく。
 やがて、虚だった目も光が戻り、アラヤの姿を見据えている。
 皆んなも直ぐに駆け付けて来て、サナエさんが温かい白湯を飲ませる。

「ああ…助かったよ。礼を言う」

「いえ、間に合ったのは貴方達の体力があったからだ。他の方々は、残念だけど…」

 クララが、門の付近で亡くなっていた3人の守衛達を発見していた。

「…そうか」

「何があったのか、教えていただけませんか?」

「…君は見た目と違い、随分と大人のようだな。……2時間程前に、領内から動物や魔物の群れがやってきた。それ等は何から逃げて来ているようだった。俺達はを迎え撃とうと構えていたが、逆に返り討ちにあってしまったという訳さ」

「それで、その正体は何なのですか?」

「冥界の魔物、シルバーレイスだよ」

 どうやら彼等を襲ったのは、死霊系魔物のようだ。初アンデットが、中級死霊系魔物とは、これは厄介なタイミングで来てしまったのかもしれない。
 死霊系って、武器は通用するんだったっけ?良く考えたら、アラヤは対処法を知らなかったのだ。
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