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第3章 地下宮殿

決定、マリの職種

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 タケル達と別れた後、シャルロットとマリはギルドの奥にある個室で待機していた。やがて、ギルド職員の女性達が三人入って来た。

「それではシャルロットさん、彼女の身体検査を行いますね?」
「ええ、お願いね」

 ギルド職員達によって、マリは丸裸にされていく。

「ええええ~っ??ちょっ、シャルロットさん?!」
「ふふふ。冒険者の登録の際には皆んな、この検査を受けるのよ」

 身長、体重、体型(3サイズ)、髪、爪、血液の検査を終えた後も、マリは顔を真っ赤にしていた。

「うぅ、事前に教えて下さいよ~。シャワー浴びてからが良かったなぁ~」
「まぁ、下着は着衣したままで良かったんだけどね」
「~~~~っ!!!?」

 マリはシャルロットの肩をポカポカ叩く。シャルロットはゴメンと笑顔で謝り、マリの黒髪をよしよしと優しく撫でる。(あぁ、可愛いわ!妹って、こんな感じなのかしら?)シャルロットは、タケルとは違う感情を、マリに抱きつつあった。
 二人は、今度は冒険者の初期登録をする為に受け付けに来た。

 マリ=エノキダ    人間
黄色人  年齢 17歳  身長158cm   体重 45kg   

職種  無職フリーター

記入できる部分だけを、羊皮紙に書いていく。出生地って、日本とか書けないし、どうしよう?と悩んでいると、シャルロットが隣りから覗き込む。

「そこは、トーキオと記入すれば良いわよ。記入は大体終わりね。後はバッジ作りね」

 シャルロットは、マリの記入台の前に大きな羊皮紙を広げる。職種の簡易早見表だ。生産消費系、支援供給系、破壊工作系の下級職種がズラリと載っている。

「こんなにあるんですね!あぁ、どうしよう?」
「一度選んだら、簡単には変更出来ないから、よく考えて決めなさい。私はその間に、検査の際に採取した貴方の爪を、バッジ製作科に持って行くわ」

 シャルロットが席を離れたのも気付かない程、夢中になって表を見ていた。各職種には、隣りに簡単な仕事の説明が書いてある。それを一つずつ確認するように見ていた。
 シャルロットが帰ってくると、マリが目を輝かせながら待っていた。
(何?小動物みたいなんだけど!あぁ!可愛いわ!)
 抱きしめたい衝動を抑えて、シャルロットは尋ねる。

「やりたい職種が決まったの?」
「はい!私、コレがやりたいです!」

 マリが指差した職種を見て、シャルロットの笑顔が固まる。

「え?これ?本当にいいの?」
「はい!あの、駄目でしょうか…?」

 (あぁ、そんな目で見られたら駄目と言えないじゃない!)思いとは違う言葉を選んでしまう。

「きっと、貴女に向いてると思うわ。私も応援する」

そうして、二人はバッジ製作科に足を運び、希望する職種を伝えた。

「え、その職種でいいんですか?」

 職員ですら、思わず聞き返してしまう。だけど、マリの期待している目を見て、本気なんですねと理解したようだ。
 職員は、小さな鋳型と、マリ=エノキダと書かれたフラスコを持ってきた。中には半透明で煙が上がる液体が入っている。その液体を、台の上に置かれていた鋳型の中に少量流し込む。そして、その中に今度は、ドロドロに溶かされた銅の液体を流し込む。
 待つこと5分。(本来なら一日待たないと駄目。ただし、別料金で時間促進ヘイストの魔法を施して短縮できるサービス)
 出来上がったバッジが、マリへと手渡された。銅製のバッジに刻まれたシンボルは、電球である。その職種の名はーーー

生産消費系   発明家   

 あらゆる発明、開発、発源を行う仕事。

転職ジョブチェンジと違って、貴女は初めての職種だから、特に条件は無いんだけれど、この発明家に必要な心構えは、前向き思考ポジティブと強欲よ」

 シャルロットに説明され、マリは初めて自分が間違えたかもと気付いた。
(前向き思考ポジティブと強欲なんて、私と真逆じゃない!?)

「どうせなら、見学していく?ギルド内に開発部があるんだけど、そこに発明家の職人が何人か居るわよ」
「はい、見たいです」

選んだからには、確認したい。そう、前向き思考ポジティブにならなきゃと、シャルロットに付いて行く。二階へと上がり、通路奥の一室、扉を開ける。

「失礼しま~す」

部屋に入ると、マリには想像通りの部屋だった。フラスコに顕微鏡。製図板に重なる設計図。そう、研究室!

「あれ~?シャルロットちゃん、何の用~?」

部屋の隅から1人の白衣姿の女性職員がやって来た。瓶ぞこ眼鏡にお下げ髪の彼女は、大欠伸をしながら手に持っているフラスコを見せる。

「コーヒーだけど、飲む?」
「いいえ、遠慮するわマギー。今日は貴女に紹介したい娘を連れて来たの」

 シャルロットはマリを前に出させた。緊張しながらマリは頭を下げる。

「マリ=エノキダです!発明家の職種にこの度成りました。いろいろと、ご教授お願いします!」
「あら、新人?ご教授なんてするわけ無いでしょ。発明家は、自分以外は好敵手ライバルなのよ」

 言葉とは裏腹に、笑顔でフラスココーヒーを手渡された。

「良い好敵手ライバルになる事を願うわ、マリ」
「はい、頑張ります!」

二人は、同時にコーヒーを飲んだ。そして同時に吐き出した。中身のそれは、コーヒーと呼ぶには疑わしい代物だった。どうやら、開発品の一つだったのだろう。
 分からない事だらけだけど、マリは発明家の職に期待が膨らむのを実感していた。
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