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第22章317話 背徳の先にあるもの

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 再び海底神殿に戻った水の大精霊アーパス、アゲノル(静観的なアラヤの分身体)、ハウンの3名は、空中公国月の庭モーントガルテンとの差に改めてショックを受けていた。

『うーん、私だけなら住みやすい環境なんだけどねぇ…』

 大きさで言っても、浮遊邸の時よりも小さいこの神殿は、海流を考えるとこれ以上は大きくするのは難しいだろう。

『アゲノル、あの食事を体験するには大地の食材も必要なのでしょう?』

「はい。魚介類でも体験はできますが、せっかくですので、地上の食材も食べたいですよね?ですので、宜しければ神殿内に畑を作りたいと考えてます」

『できるの?』

「はい。黒土や苗は分けて貰いました。私が、土の大精霊ゲーブ様と光の大精霊ミフル様の加護を持っていますので、光の届かない海底でも植物は育ちます」

『良かったわ!それなら、ブーちゃんが遊びに来た時におもてなし出来るわね!』

 とは言っても、量的には全くモーントガルテンには及ばないけど。本音はやはり広い土地が欲しいところだ。

『後は…外装と内装も進めないとね?でも、貴方達2人じゃ大変ね…』

「簡単な作業はゴーレムを作ってやらせます」

 ハルが居れば、事細かな指示を与えたゴーレムが作れるのだが、こればかりは仕方がない。

『貴方達、早いとこ子供を作りなさい』

「「ええっ⁉︎」」

『4~500人程産めば、一気に問題解決じゃない?』

 いや、魚達の様な感覚で言われても…。
どうやらアーパスは人間の出産を知らないらしい。
 簡単に説明して教えると、納得いかなそうに口を尖らせた。

『じゃあ、頑張って6つ子でも産みなさい。私は他にもこの神殿に住みたい子が居ないか探すとするわ』

 無理な注文をして、アーパスは神殿から出て行った。
 当てがあるのだろうか?
 まさか、人間を攫ってきたりしないだろうな?ちょっと不安だ。

「まぁ、何にせよ、やる事はいっぱいあるね。ハウン、気合いを入れて頑張ろう!」

「は、はひっ‼︎」

 ハウンは何故か緊張して顔を赤らめていた。
 2人は先ず畑を作るスペース作りから初めて、土壌作りと苗植えが済んでからは外装と内装に分かれて作業した。
 初日にしては、かなり捗ったと言えるだろう。
 流石に疲れて部屋に戻ってきたアラヤは、用意してあった料理に目を輝かせる。

「お疲れ様でした、アゲノル様」

 部屋ではハウンが取り皿と葡萄酒ワインを準備していた。

「アーパス様がいつ戻られるか不明なので、軽く刺身盛り合わせとデビルパス(魔タコ)の墨パスタを用意しました」

 食事の感覚共有を楽しみにしているアーパスが居ないので、腹一杯になるわけにはいかない。なので、これでも軽食の量なのである。

「流石ハウンだね!食べたい品が分かってる!」

 貪る様に食べるアゲノルを、ハウンは暖かく見守る。
 思えば以前は、料理上手なサナエ様やコルプスが居た。
 その実力にハウンが勝てる筈もなく、2人きりなった時も、味に不満があるんじゃないかと不安で堪らなかった。
 そんな彼が、不満を漏らす事は一度も無かった。
 優しさ故に、我慢していてくれているのかもしれない。しかし、その食べっぷりを見る事で、ハウンはとても救われた気分になれた。

「フゥ~、なんとか小腹は落ち着いたよ。ハウンは人一倍気が効くし、料理も美味いから良いお嫁さんになれるよ!…って、ハハハ…今は俺の嫁さんだったね」

「わ、わわ、私何かが滅相もない!じ、自分の立場は弁えてまひゅっ⁉︎」

 ハウンはいきなり後退り土下座をする。

「ちょ、ちょっと、ハウン⁉︎」

 アゲノルは、ハウンを優しく立ち上がらせるが、彼女は顔を赤らめて下を見ている。

「みんなは、君を俺のパートナーになる事を、認める以上に勧めたんだ。その意味は分かるよね?」

「わ、私は、あくまでも貴方様の配下でございます。身の回りの世話であれば如何様な事にも従いますが、伴侶と位置付けされるのは畏れ多くて…」

 例え体を許そうとも、あくまでも配下の立場を変えないというつもりらしい。それは余りにも哀しいと思う。
 アゲノルは姿を竜人ドラッヘンからアラヤへと戻した。この姿の方がきっと伝わりやすい。

「ああ、言い方が悪かったね。嫁達の推薦なんて、本当は関係無いんだ。俺自身が、君を必要としている。君に惹かれているのは事実だから」

「え…?ええっ⁉︎」

「俺はずっと我慢してたんだよね。君は彼女達と違う魅力の持ち主だ。だが、俺には嫁達が居る手前、不貞行為を働く訳には当然いかない。だけど内心じゃ、ハウンの事を堪らなく知りたかったよ?」

「はわわわ…」

 もはや言葉にならないハウンは、感情が滅茶苦茶になり目が潤んでいる。

「回りは認めた。もう、背徳感を感じる事無く、君を俺のものにして良いんだ。でも、君にも俺を望んで欲しい。そんなに、俺と人生を共にするのは嫌かい?」

 人生を共にするという点では、あまり変わりが無いかもしれないが、立場が伴侶では意味が全く違ってくる。

「…わ、私で宜しいのですか?」

「君だから良いんだよ」

 アゲノルは、彼女の顎を上げ強引に唇を奪う。彼女の迷いを断ち切る為だ。
 アゲノルのリードで舌を絡める濃厚なキスにより、ハウンは目をトロつかせた。
 キスをしたまま椅子へと彼女を座らせると、服の上から胸を愛撫し始めた。

「あ、アゲノル様、わ、私はまだ汚れています!せ、せめて体を綺麗にっ…!」

「汚れているのは俺もだよ。綺麗にしたいなら、俺が拭いてあげるよ」

 首筋や耳裏を舐め上げると、彼女は堪えきれずに喘ぎを漏らした。
 調子づいたアゲノルは、彼女の服をたくし上げて綺麗で整った双丘を露出させた。

「ああっ、恥ずかしいです…皆様に比べたら、私のものなど…」

「そんな事は無いよ?これは君だけの個性だ。他人と比べる事自体が間違っているんだ。理想の体より、好きな相手の体を抱きしめたいに決まっているだろう?」

 抱きしめて再び濃厚なキスをする。

「し、幸せ過ぎて怖いです」

「俺は、もっと君を知りたいよ」

 抵抗することはなくなったが、彼女はまだ羞恥心が勝っている。
 なので、完全に服は脱がさずに、首筋を舐めながら手だけを潜り込ませていく。

「んっ、ハァ…、アッ…」

 徐々に感度も上がってきている。男は初めてな筈なんだけど、何だろう、身の委ね方が少し熟れている気がするんだが…?
 まぁ、そんな些細な雑念は、直ぐに飛ばされるんだけどね。

「ああっ、んっ、ああん…」

 指先に保護粘膜を貼り、秘部へと滑らせて行くと、あるべき茂みが無かった。

「あ、あれ?」

「そ、その…、処理をしていない方が、良かったのでしょうか…?」

 彼女はどうやら、の処理をするタイプだったらしい。
 まぁ、好みは分かれると思うけど、俺はというと…問題無いです!

「それなら、今後はじっくりと見させてもらうよ」

 今後の楽しみとして考えよう。今は、邪魔が無い秘部へと指が滑り易くて助かる。

「…んっ、それをお望みでしたら…、欠かさず処理しますっ、ああっ」

「まぁ、今は我慢の限界かな。今直ぐにでも、君の中に入りたいと限界なんだよ」

 太腿に当たる硬いものに、ハウンも喉を鳴らす。
 いよいよ、求める事を許されないと決めていた背徳の感情が破られるのだ。

「お、お願いしますっ!私を貴方様専用にして下さいっ!」

「もちろんだ!」

 アゲノルは、一思いにズブリと勢いよく侵入させた。

「ーーーーんっ‼︎」

 充分に濡らせていたけれど、やはり多少の痛みは消せなかったようだ。

「ハァ、ハァ、う、嬉しいですぅ…とても、とても…。お願いです、私で気持ち良くなって下さいっ!」

 初めてだからと気を遣わず、望むままに求めて欲しいと瞳が訴えている。

「ハウン、ハウンっ!」

 アゲノルは望み通り、自身の快楽が求める思いを彼女にぶつけた。

「ああっ、あんっ、アゲノル様ぁっ、ああっ!」

 激しく、ひたすらに彼女に侵入し、掴み、味わった。
 感覚共有はしていない。だが、久しぶりに自身の快楽の感覚だけで果てることができた。

「…大丈夫かい?」

 ハウンは、膝を震わせながらも机にしがみつき、幸せそうな笑顔を見せた。

「…はい。アゲノル様…」

 アゲノルはハウンを優しく抱きしめて、おでこにキスをした。
 腕の中のハウンは、軽く抱きしめ返した後で呟いた。

「…いきなり六つ子は無理ですが、精一杯頑張らせて頂きます」

「ハハッ、1人ずつで良いさ」

 その後、片付けを終えてしばらすると、アーパスが帰って来た。

『喜びなさい、新しい住人を連れて来たわよ!』

 アーパスが連れて来たのは、魚との亜人である、人魚ヒューフシュ魚人メールミン達であった。

「アゲノル様、至急、部屋を作らなければなりませんね?」

「そうだね。やる事は山積みだけど、先ずは俺達の部屋から作らなきゃね」

『ん?』

 見つめ合い笑う2人の変化に、アーパスは気付かなかった。
 2人の見た目は変わらずとも、抑えていたその背徳感は消え、その先にある幸せをしっかりと感じているのだった。
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