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第2章 爆誕⁉︎召喚されし者達の女神

第15話 信仰心

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 ハヤトとモブリアは今、オリュンポスの街のヘルメス邸宅の離れ宅に宿泊している。

 ゼウスが、仕事柄留守が多いヘルメス邸に住む様に勧めてきたのだが、ハヤト達は敷地内にあるゲストハウスを借りる事にした。

 本邸より小規模の複数あるゲストハウスといえども、一つ一つがかなり広い。
 流石は、オリュンポス12神の1柱を担うヘルメスといったところか。

 2人が泊まるそのゲストハウスも、18畳1間の6DKと広い。
 6畳1間に慣れていたハヤトも、初めて見た時は思わず「広っ!」と驚いた。

「本邸に住む権利があると言われても、私以外にも異母兄弟が居られるらしいですし、あまりにも広過ぎて落ち着かないです」

「確かにそうだけど、その異母兄弟も住んではいないらしいよ?居るのは屋敷を管理、清掃している天使達だけみたいだ」

「だとしても、ハヤトさんと2人なのですから、このゲストハウスだけで充分じゃないですか?」

 モブリアはそう言ってやや頬を染めて照れるが、ハヤトは気付かずにそのまま家の扉を開けていた。

『お帰りなさいませ』

「えっ⁉︎誰⁉︎」

 玄関を開けて直ぐのところで、侍女姿の天使が待っていた。

『今日付けで配属が決まりました。ガブリエル様配下の天使が1人、サブリナと申します。妖精族から神格化し、天使となりました。神力は弱く、荒事は不向きなので家事全般を任されています。よろしくお願い申し上げます』

 緑のおさげ髪の天使は、キリッと目を光らせ姿勢の良い御辞儀を見せた。

「あの、頼んでいないのですが?」

『はい。私はガブリエル様の指示で来ています。尚、ガブリエル様も主神様からの指示で私を配属させたのだと思われます。故に、ハヤト様とモブダリア様の許可を頂いてはおりません。ですが、お2柱様が神である以上、最低でも1人以上の天使を従えねばなりません。これは、ユニバサリアの規則…と認識してくださいませ』

 うーん。確かに神としての品格も大事なんだろうけど。だけどこれは、いわゆる主神達からの監視要員じゃないかな?

「う~ん…断る選択肢無いやつだ」

「ハヤトさん、残念ですが仕方ありませんよ。ガブリエルさんも、主神様の指示なら断れなかったのでしょう」

 まぁ、侍女が居て困ることは無いし、逆に助かるのだけれど。
 問題があるとしたら、指示した主神が我欲の強い主神の場合だ。

『御安心ください。我々天使は神と同じ屋敷では就寝は致しません。決してお2柱様の邪魔は致しませんので』

「いや、何の心配…?」

 ニコニコと笑顔のサブリナに、何故かモブリアは目を逸らす。

「まぁ、いいや。いろいろと手伝ってくれるなら、人手が足りなかったから助かる」

 部屋は既に片付けられていて、ハヤトとモブリアの診断書の羊皮紙が、額縁に収まり壁に飾られていた。

「なんだか、賞状みたいだな」

「あら?下の空白場所に、新たに何か記入されていますよ?」

「本当だ。えっと、信仰心?……1。えっとつまり?」

「私の信仰心も1です。まだ何も活動していませんのに、不思議ですね?」

 ハヤト達が首を傾げていると、サブリナが拍手してきた。

『素晴らしいことです。信者とは違い、信仰心とは何も人間だけから得る訳ではありません。我々天使や、偉大なる神々からも得られます』

「えっ?という事は、俺達は誰かしら信仰されたって事?」

『はい。信仰とは即ち、相手を信じ敬うこと。故に、神話や伝記により偶像化された神々の信仰心は桁が違います。信仰心の多さに比例して、神力の総量と回復量は上昇します。因みに、ガブリエル様は神ではなく大天使ではありますが、人気と認知度が高いお方なので、信仰心は53万を超えております』

「ご、53万…⁉︎はは…圧倒的な戦力差を感じるな」

 信仰された1という数値に喜んでいた自分が恥ずかしい。
 しかし、神ではなく天使でこうも信仰心があるのは、やはり様々なジャンルで引用される存在だからかな?
 だけど、ガブリエルの認知度だけなら、それは逆に少ない数値とも言える気がする。
 信仰心として数えられるのも、何かしらの条件があるのかもしれない。

『戦力?貴方様方が戦う必要はありませんが?それに、2柱様には、神力では到底太刀打ちできない神の権能がございます。ですので、些細なことで使用する神力は天使達に任せ、神としての御力を存分に御使いください』

 神力の無駄遣いをしないように、天使達を使えという事か。

「分かった。あ、因みにサブリナの信仰心はどれくらいなのかな?雑務をこなしてもらうにしても、無理をさせる訳にはいかないからね?」

『……。私の信仰心は18にございます』

「えっ?」

 ボソッと小声で答えたサブリナは、笑顔のまま部屋から退室していった。
 ガブリエルの数値を聞いた後だから、ちょっと気の悪いことをしたかもしれない。

「ハヤトさん、彼女は信仰心は少なくとも、神格化されたのですから、神力の総量はあるのだと思いますよ?」

「そうだね。少なくとも、男神に成り立ての俺よりは多いだろうな」

 俺自身の神力量は500で、勝手に減ったり回復したりしている。
 これは、俺が持つ【安息】の権能が勝手に使用されたりしているかららしい。
 因みに【選別】の権能は、対象は関係無く一律に30を消費した。(果物等の物体、帰る道順等の行動等で試した)

 モブリアの女神となってからの神力量は1万程で、半神の時の3倍に増えたらしい。
 【転移】の権能に使用する消費値は、一律2000程で、転生は安易に試せないから分からない。
 【出会い】の権能に使用する消費値は、800程らしい。
 これらの消費値で分かるように、俺の権能よりも彼女の権能の方が、とても超稀有な権能だと分かる。

「とにかく今は、認知度を上げる為の行動を開始しないとな」

 ハヤトは、仮に決めた自室兼事務室に入る。
 室内には、地上で私物だった品々が置かれていて、その中には大学生時に買ったパソコンもあった。
 不思議な事に、回線は無くとも神界から地上へとネットは繋がっているのだ。
 おそらく、何処かにその手の神が居るのだろう。

「えっと…、私にはこの星の文明が分かりませんので、具体的に何をすれば良いのか分からないのですが…」

 パソコンを操作するハヤトを、モブリアは興味津々に見ている。

「そうだね。昔なら、人々の前に立ち神威や偉業を成して、神話や伝記として広めるところだろうけど。現代の地球では情報拡散は容易なんだ。ただ、信憑性は大事だから、先ずは噂を広げる事から初めて、後々はちょっとした画像も出してみようと思う」

 ブラフーマに宣言した通り、様々なSNSに先ずは噂を流す。

「『異世界転移の資格がある者には、満月の深夜0時に、モブダリアという名の女神が現れる』と、出だしはこれで良いだろう。これを世界中へと流す。SNSが無い地域には、別の掲示方法を考えないとな」

 こういったコメントに素早く反応が現れるのは、大抵は妄言だと批判する者達か、便乗して煽る者達だ。
 だがその大半が、実はかなり興味がある事を悟られないように隠している。

「す、凄い数の反応ですね」

「ああ、異世界ものの話が普及している先進国は当然だけど、人間の想像する世界は様々だ。未知なる環境に憧れを持つ人々は少なくはない」

 後は、このコメント投稿を数時間置きに流せばいい。

「じゃあ、次はテスターを探すかな」

「テスター?」

 ゲーム等では、いわゆるデバッガーと呼ばれる者達の事だ。

「そう。契約を交わし、期間的な仮の転移を経験してもらい、感想や注意点等を報告してもらうのさ。ついでに後から上げる画像も入手してもらう」

「しかし、天使ではなく人間に頼むのですか?」

「そりゃあ、対象者は人間なんだから、天使達ではデータにならないからね。問題なのは、テスターを雇う許可と、期間的な転移を受け入れてくれる神だよね」

 ブラフーマには、初依頼で応えると約束したから、試験的な転移ではダメだ。
 テスターに選ぶ人物をにしたいから、ここは日本の神々に許可をもらうしかないだろう。

「サブリナ、紹介して欲しい神がいるんだけど、案内と取り次ぎを頼めるかな?」

 呼ばれると直ぐに現れたサブリナは、もちろんですと胸を張った。
 神々との面識が無い自分にとって、やはり天使の助けは必要だなとつくづく思うハヤト達であった。

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