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第十三章 最終決戦

【外伝】ミミナガ族の英雄

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一人の老人が天に召されようとしている。
アヤカシによる被害でもなく、
魔王軍による強襲でもなく、

寿命だった。

その男の名はミミナガ族の族長ムスカリ。

ムスカリは、天命を待っている状態だった。

「あ、ああ……。お迎えがきた。パティーン様。」

族長ムスカリにパティーンの霊体が見える。

『久しいな。ムスカリ。死ぬ前に、一人の男を召喚して欲しい』

ん??
今、何と?
私はもう寿命が。

既にムスカリは話す気力も無い。

周囲の家族にはパティーンの姿が見えない。

ムスカリが死ぬ前に異様な行動を取ってるようにしか見えない。

「私よ!アンナよ!お父さん!」
「あなた!私よ!」
なんて手を握るもんだから、
内心ムスカリは五月蝿うるさいなと思っていた。

パティーン様。召喚とは誰を?
三要素を満たしているカブラギがいるのでしょうや?

おぼろな意識内で問いかける。

『ムスカリよ。時間が無い。急げ。』

朦朧とした意識で脳内で召喚術を唱える。

ムスカリのベッドの周りに光が集まる。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「はっ!俺は!
下駄箱の陰に隠れていた筈なのに」
中学生=鏑木清方かぶらぎきよかた=ブブキは、目を開けた途端に異世界マーラに召喚されていた。

そう。ブブキの召喚はミミナガ族の族長ムスカリと、パティーンの霊体が起こした事だった。

当然三要素の内の一つも当てはまらないブブキは聖騎士としては召喚されなかった。

同時に……。
そう神の摂理に反した召喚は、
死ぬ間際のムスカリに雷撃を浴びせた。

ドドォォォォン!!!

「何々?!」
「キャー!!」
「うぉぉっ!」
家族や見舞客は大慌て。

しかし、それは本当の雷ではない。
神のイカヅチ。
当然皆さんはご存知だろう。

辺りは煙が漂う。

その煙が晴れた頃、皆異変に気づく。

「何なの?家の中で雷?」
「どこか燃えてないか?!」
「大丈夫みたい」

あ!あぁ!!!!!

一斉に皆がムスカリの姿を見て驚く。

ムスカリの美しい耳が、
人間と等しいくらいに縮んでいた。

ミミナガ族の族長の耳は他のミミナガ族がこぞって見に来るほど長くて美しかった。

それが死ぬ間際に、
こんなに、こんなに短くなっちゃうなんて……。

ムスカリは、この時まだ息があった。

「大丈夫。大丈夫心配無い」
言葉には既に出来なかったが、うん、うんと相槌あいづちを打って皆をなだめる。

その一時間後に、ムスカリ息を引き取る。

ムスカリの顔は安堵からか、とても穏やかな顔をしていた。

奇しくも、同時期召喚された鏑木清方かぶらぎ きよかた=ブブキは、大型の蚊のアヤカシブンブーに刺された。

運命とは皮肉でもあり、計算されていると言える。

ムスカリが死んだ直後と、ブンブーに、ブブキが刺された時間は同時。

召喚士が死ねば、被召喚者はアヤカシとなる。

鏑木清方はアヤカシ化した。
オークキングとして。

パティーンは知っていた。
邪神を倒すには、ダブル聖騎士だけでは足りない。

そして、鏑木清方かぶらぎ きよかたはハサン=鏑木凝流かぶらぎ しこるの実の息子。

この事実は後に明らかになる。

ミミナガ族の族長ムスカリの死の真相。
安らかな英雄の死は誰も知らない。

この人知れず働いた大召喚により、
マーラの世界には平和が戻る。

アヤカシが現れない本来の魂の世界に戻るのだ。

本編へ続く
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