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第十章 幻夢

第65話 邪神アドヴァンの居場所

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ハサンは温泉に入る。
ここパレートの街の郊外には
温泉が湧くのである。

ここシッポリ国も温泉がよく出る。

シローヌやセシアやジンタンに
事の顛末を話し、旅の宿を探す。

はぁ~。
生き返るな。

そう言えば小さい頃に親に連れて行ってもらった青森県の温泉『古牧温泉』を思い出した。

かっぱ沼というのが敷地内にあって、とんでもなく広い印象があった。

かっぱ沼には、ピンクのかっぱ君が
我々を出迎えてくれていた。

初めて芸能人にも会った。
尾形大作だ。

無錫旅情がヒットしたのだが、
以降はヒットが出ずに
一発屋の印象が強い演歌歌手だ。

無賃乗車の歌だと長年思ってたけど、
中国の無錫むしゅくという地名だと最近知った。

そんな背景はさておき、
温泉も広くて、泊りがけの温泉旅に
子供心に胸がときめいた。

2004年に経営破綻したと聞いたのは、
つい最近で星野リゾートが
「青森屋」として名称を変えて
再建しているとの事。

露天風呂でお酒をチビリながら、
ジンタンと話をする。

「ジンタン。魔王スマターはどこにいるのかね?」

ジンタンはやれやれ、俺に聞くなよ、
知るわけねーよという顔をしつつ、
ハサンに助言してくれる。

「正直皆目検討も付きません。
私が斥候として情報を集めてきましょうか?」

ジンタンは頼りになるんだよね。
剣士としても隠密としても優秀なんだ。


シローヌも魔王スマターを探してるみたい。
でも一向に情報が無い。

寧ろ、相手の出方を待つか。

「ジンタン。斥候を頼む。
期間は一ヶ月。
我々はサシマ国を目指す。
サシマ国の首都イグサで待つ。」

俺はジンタンに斥候を頼むことにした。
メイがジンタンを好きなのは薄々気付いてるけどしょうがないよな。

「御意」とジンタン。

まあ、呑もうや。
男同士語ろうぜ

ってなわけで二人の語らいは続く。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

一方女風呂では、
セシアとメイ、シオリヒババンゴが恋バナをしている。

「メイ、アタイねハサンが好きなの。
なんかマトモに目が見れないの」

セシアは自分より半分以上年が離れてるメイにあられもなく本心を晒す。

はーっ。この人は乙女だなー。
10代の恋愛じゃないんだからと、
10代のメイが溜息を付く。

「それより、あなたジンタンどう思ってるのよ?」
セシアは急に矛先をメイに向ける。

「な、何を言ってるんですか?!
ジンタンは旅の仲間であり、
お兄ちゃんみたいな存在だとお、思ってますが、な、何も無いですよ!」

あからさまな同様。
違う、違うと釈明しているが
顔は真っ赤である。

「メイが旅の道中にジンタンを見ている顔が恋してる!って眼差しで見てるから、あのハサンでさえ気付いてるわよ」

ば、バレテーラ!

メイとセシアはアハハ、うふふと盛り上がる。

ヒババンゴことシオリは微笑ましく二人の話に耳を傾けている。
無論今は人型の姿を取りながらである。

湯けむりの奥に人影が見える。

「シローヌさん!」

シローヌも人知れず温泉で、疲れを癒やしていた。

彼女は長い間マーラに生き続けているが故に温泉には詳しかった。

それに亜人だった頃の、アドヴァンの事も話してくれた。

アドヴァンは優しい幼馴染。
仄かに恋心もあったと吐露してくれた。

あの時、海岸の洞窟にさえ行かなければ、今も後悔が募るのだという。

シローヌは200年以上も生きている。
時の移り変わりを肌で感じてきた事、
何十年に一度召喚される聖騎士達の戦いをサポートしてきたこと。

シオリは「久しぶりだな。シローヌ」と声を交わす。

かつて聖騎士シオリとして魔王スマターの一歩手前まで辿り着くもジンタンの父タンレンとの恋を選んだシオリはジンタンを産んで姿を消した。

そして、里の娘メイを我が子のように育ててきたのである。

シローヌは、かつて魔王スマターが天空の城に居を構えていた時に一度会った事があると言った。

天空の城とは、特別な秘宝で雲を固形化出来る秘術でその巨大な雲の上に城を建てたのだと言う。

ところが、誰も辿り着かないし、暇すぎるらしく気が付いたら天空の城は廃墟になっていたとの事だった。

みんな、クスクス笑う。
スマターはアホだね。
考えたら分かるよね、
寂しがり屋なんだねと。

もしかしたら前々回は山の上で、
その前は天空の城、
じゃあ今回はひょっとしたら海なんじゃない?!

なんてセシアが言い出し笑っていたのだが、本当に海の近くに魔王スマターの城はあった。

だが、孤島過ぎて誰も見つけれなかった。
この時の皆はセシアの冗談が後に事実と分かるが、それはまだ先の話。

「ところでアドヴァンは今どこにいるの
?」
セシアはシローヌに聞く。

「魔王スマターが現れて以来、アドヴァンのオドが追えない。
でも私が生きてるってことは当然アドヴァンも生きている。私も探している。」

アドヴァンはどこにいるのか?
先ずはスマターを探さなくては。

温かい湯船が少し冷えていくのを
皆一様に感じていた。
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