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第九章 光陰矢の如し

第61話 偽聖騎士ハサン

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シッポリ国中に、聖騎士討伐令が下る。

バルク・ブッケン国王は、
「聖騎士は偽聖騎士であり、魔王の手先」
として、風説を流布していく。

バルク王は偽聖騎士討伐隊を編成する。
軍勢は5000名。
 
ハサン、セシア、ジンタン、メリーの4人
に対して5,000の兵士。

ハサンはやりすぎたと思った。
荒御魂アラミタマを発動し
激情のままに兵士長バスクを切ってしまった。

兵士長を血祭りにしてしまったのだから、
只では済むまい。

まさか全肯定を会得した私なのに、
あんなに化身までして、
肉片一つ残さず浄化してしまうパワー。
 
ぶ、ぶべらぁ~
なんて漫画でしか聞いたことない断末魔だし、
【内在神の力】=化身の術は遥かに強力だなと改めて思う。


バルク国王に会って誤解を解こうと思った。

大丈夫。話せば分かる筈さ。
俺はマーラの世界を守護する聖騎士。
寧ろバルク国王の後ろ楯があれば、
旅ももっとスムーズに進むだろう。

俺達は、シッポリ国の街パレートに到着した。

パレートの街は近くに良質の鉱山がある為、
ドワーフの鍛冶屋が立ち並ぶ武器や防具の街として名高かった。

俺はジンタンの剣を探すべく、
鍛冶屋を色々物色していく。

「あんた、聖騎士のハサンだらう?」

だらう?だろうだろう?
変なイントネーションだなーと思いながら、
声の主を探したら一人のドワーフが話しかけてきた。

彼の名はミツヤ。
いかにも親方って感じ。
でも未だ40歳らしい。

おい!年下かよ!

ハサンさんって言え!
なーんて思いながらも
「いかにもだが、其処許そこもとは?」

こっちも『そこもと』なんて使ったりして!
使ったことねーよ!現代日本で!

ところが驚くべきミツヤの回答。
「ハサンか!やっぱりな!あんた指名書が出てるぞ?偽聖騎士なのか?」

何?指名書?
そうか。バスクをほふったのが、もう既に街に出回っているか。
これは厄介だぞ。

ジンタンもセシアも心配そうにこちらを見てくる。

「俺はあんたらが、偽聖騎士とは思えないんだ。センダー国の活躍や、魔将軍を打倒した噂は聞いている。
それに、あんたの目だ。あんたの目は覚悟の目をしている。俺には分かるんだ。」

ドワーフの中でも指折りの職人と言われているミツヤ。

鉱石を見る目だけではなく、人を見る目もあるんだな!

これこそ観察眼というべきか、職人の勘というべきか、
本当に直感は人を助けてくれるよなと思う。

衛兵達がこちらに気づき、何やら耳打ちしている。

やばい!気付かれた。

「ハサン!こっちだ!」
ミツヤは俺達を路地裏へと導く。

衛兵達は後を追う。
しかし、路地裏の角を曲がると、
ハサン達の姿は消えていた。

ドワーフのミツヤはドワーフに伝わる隠れマントで、咄嗟にハサン達の姿を覆っていた。

それで、兵士達はハサン達の姿が同化しているので見つけることが出来なかったのだ。

助かった。
無用な殺生はしたくない。

「ありがとう。ミツヤ。本当に助かった。」
お礼を述べることで更にハサンの経験値は上がる。

いつしかハサンのレベルは35を迎えていた。

これまでの幾多の経験がハサンを鍛え上げた。
幾つかの上位魔法も操れるようになっていた。

それは従者であるメイやジンタンも、召喚士のセシアも同様である。

かといって大手を振るって街を徘徊するのは得策じゃないな。

「俺の隠れ家に行こう」
ミツヤは隠れマントを剥ぐと、ミツヤが普段使っている作業場ではなく、郊外の作業場に連れてきてくれた。

何時間経過しただろう。
すっかり夜が更けていく。

これは明日にした方が良いな。

「ミツヤありがとう。出来れば今日は泊めて貰えないかな。動かない方がいいと思う。」
ハサンはミツヤに頼む。

ミツヤは快く応じる。

街が騒がしくなってきた。

「偽聖騎士ハサンが、この街に潜伏している」との噂により物々しい雰囲気へと変わる。

街から人々の姿が消えて、兵士達の姿が増え始める。

そして次第に隠れ家に多数の兵士が集まってくる。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

Zzz……。

ハサンとセシアとメイは疲れ果て寝ている。相変わらず緊張感が無い。

ジンタンは「しょうが無いなー」と思いながら、付近の様子に異変が無いか辺りを警戒している。

パチ・・・パチッ

ん?何か焦げ臭い。

はっ!気付いた瞬間既に火の手は回ってきていた。

隠れ家に火を付けられた!
まずい!

「ハサン様!罠です!」

次回へ続く
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